amazon 世界最先端の戦略がわかる
前回ブログに続いて、成毛さんのAmazon本を読んで同じく、もしくはそれ以上の感銘を受けたのでブログ記事として残しておく。サブタイトルに「この1社さえ知ればいい」とあるけど、まさにその通りだな、と思えるくらい圧倒的な企業である事がわかる。
■CCC(Cash Conversion Cycle)
Amazonの潤沢なキャッシュフロー経営を支えている概念で、顧客から代金を回収するまでの期間であり、Amazonはこれがマイナス28.5日という。ものを売る1ヶ月前には現金が「事前に」お財布に入っている状態とのこと。対して、ウォルマートは+12日、一般的には+10~20日とも言われている。マーケットプレイスの売上は一時的にAmazon内に「預り金」としてストックされ、無利子で19億ドル利用可能なのがAmazonである。
■マーケットプレイス
全世界で約200万社が利用、商品数が3.5億品目にも及び、直販の30倍以上
■FBA(Fulfilment by Amazon)
背景として、古本の「せどり」があり、古本の目利きが安く見つけて売っているモデルからヒントを得たらしい。配送に関わる人手や倉庫を持てない中小企業などにとっては有難いサービスであり、その流通性の高さから、今や大企業もこぞって利用を開始している。
利用料金は月額の固定費がなく、商品の面積×日数の保管手数料プラス配送代行の手数料のみである。更に、FBA利用すると自社商品に「Prime」マークを表示できるメリットもある。
「Prime」マークには高度な条件があり、過去30日以内の期日内配送率96%以上、追跡可能率94%以上、出荷キャンセル率1%未満などだ。越境ECの形で、欧州7カ国、計29箇所の倉庫に自動的に分配することも可能だ。
■倉庫テクノロジー
KIVAを買収してKivaSystemと言われるロボットが自動配送に貢献している。今までは従業員の1日の移動距離が最大32kmと途方も無いものだった。倉庫内は「FreeLocationSystem」を使っておりどの棚に何をおいてもよく、コンピュータに記憶だけさせている、建物さえあればどこでも即創業開始可能という利点がある。
■物流
再配達の課題として約2割、数として7.4億個ほど、年間9万人、時間で1.8億時間が浪費され、コスト2600億円が掛かっている。日本での荷物は約37億個、ドライバー不足による再配達問題は年々増えている、Amazonジャパンは2.5億個をヤマトに依頼している。
■AmazonPrime
一般ユーザーの年間消費額は約700ドル、プライム会員は1300ドルほど。
USでは当初79ドル→99ドル→119ドルと引き上がっている。低所得者(フードスタンプ所持者)へ従来の半額の6ドル/月で利用できるようにしている。US会員数は8500万人(US人口の25%、世帯数換算だと約70%)。世界16カ国で展開し、1億人を超えている。
年会費は前払いのため1年前に既に現金が手元に入っている状態である
国別売上高
US 1200億ドル
ドイツ 170億ドル
日本 120億ドル
イギリス 110億ドル
その他 170億ドル
■AWS
クラウド市場自体が爆発的に伸びており、グローバルで40~50%成長、その中でAmazonのシェアは3割、Microsoftが追い上げており2割ほど、Googleが1割ほどのシェアとなっている。価格競争力も高く、サービス開始10年から60回以上の値下げをしている。
政府系クライアントとして、CIA(Central Intelligence Agency)がついた事が大きい、もちろんNASA(National Aeronautics and Space Administration)も大きい影響を持っているが。日本ではメガバンクも採用をし始めている。世界のデータでクラウド化されているのはまだ5%程度、95%がポテンシャルとなっている。
■DataCenter
世界に53箇所を抱え、12箇所が追加の予定。Amazonのシェアは40%ほど、800万台ほどと想定。電力供給手段として風力発電事業にも着手している、再生可能エネルギーへの取り組みは既に40%以上を達成しているようだ。
■AmazonDash
低関与商品をいかに囲い込めるかが重要な鍵となっている。今まで消費財メーカーはCMなど予算投下に躍起になり、消費者は無意識に商品を選択している。今後のマス予算がここに流れるかもしれない、ボタンは3~5年で電池がなくなるのでこのタイミングに集中しそう。既に18ブランドから200ブランド以上に成長している。
ADRS(AmazonDashReprenishmentService)はボタンすら必要なくIoTで自動発注される(ブラザーのプリンターやGEの洗濯機など)。
■AmazonBooks
シアトルに2015年10月にオープン、評価4以上の本のみが陳列。Kindleで3日以内に読める、ほしい物リストに入っている旅行本TOP5など、リアルとネットの融合を実現している。
■AmazonEcho
Alexa対応機器が既に多く開発されており、Amazonはソフトウェアキットを開放している。USではAlexaの機能を利用して3000以上の技術が既に誕生している、家庭内のポストスマホとして各家電メーカーが注力し始めている。
■AmazonLending
金融業界が決算書や外部情報を見て数十日をかけて曖昧に評価しているのに対し、Amazonは現物の流通データや在庫データ、売上などほぼすべてのリアルデータを把握している。常にLendingの機会を狙っており、アプローチのタイミングで既に審査を終えている、自動通知によって即借り入れが出来る。
融資可能額は10~5000万円、返済期間は3-6-12ヶ月から選択、申し込めば24時間以内に借り入れ可能、繰り上げ返済の手数料も掛からない。米英日で展開しており、貸付総額は30億ドル、FBAに伴い急拡大している。金利は6~17%で非常に高いが、面倒な手続きが無くリアルタイムで評価をしてくれる利点にある。
■NVOCC(NonVesselOperatingCommonCarrier)
自社で船を持たずに他社の船を使って輸送をしている
■数値
EC市場シェアで、Amazonは40%超、取扱い高は20兆円へ。独占禁止法への懸念もあるが、そもそもUS小売業全体の1割ほどがECであるため、実質的には4%程度である。
「地球上で最も豊富な品揃え」SKU(Stock Keeping Unit)は少なくとも1220万品目以上であり、ここに色・サイズ違いなどの変数を掛け合わせるととんでもない数字になる。車でさえ販売されており、ユニークなところで、僧侶を派遣する「お坊さん便」も始まっている。
イオン 8.4兆円
セブン&アイ 6兆円
ファストリ 1.9兆円
ヤマダ電機 1.5兆円
AmazonJapan 1.3兆円
三越伊勢丹 1.3兆円
Jフロント 1.2兆円
Amazonの売上
本業の小売 60%
マーケットプレイス手数料 20%
AWS 10%
会員費 5%
その他5%
■M&A
ホールフーズ(生鮮食品) 137億ドル
→全米に450のリアル店舗を持っている利点、生鮮食品を扱うノウハウ、顧客データが似通う
ザッポス(靴EC) 12億ドル
ダイアパーズ(ベビー用品)
→競合サービスを立ち上げ徹底した低価格勝負で自社に引き入れる
■VS楽天
マーケットプレイスは支払いがAmazon経由の決済となるため、消費者の購買行動が細かく分かってしまう。
出展企業から料金を得ている楽天は、3000億円ほどの収益で4.5万店舗ほど、月商1億円以上が160店舗ほどある。
一方Amazonは自社商品がメインで、それ以外をマーケットプレイスが補完していて、お客さんはあくまで消費者である。
物流拠点は楽天が3箇所、延べ床面積が15万m2に対し、Amazonは15箇所、小田原1箇所のみで20万m2と凌駕している。