《ルビーの夢》―石の声を聴く―
《ルビーの夢》―石の声を聴く―
旅人は、小さな谷にたどり着いた。
そこには、星明かりを受けて赤く輝く石が静かに眠っていた。
手に取ると、ルビーの見る夢が流れ込んできた。
それは、まるで夢そのものが語りかけてくるような、やわらかな響きだった。
「私は、情熱の石と呼ばれてきたけれど―― ほんとうは、静かな光にも憧れていたの……」
ルビーは、静かに語り始めた。
透明な水晶を通して、その夢は旅人の心に染み込んでいく。
「燃えるような赤も好き。
でも、いつか落ち着きのある紅(くれない)の色で、見る人の心を温めたいの。
派手な炎じゃなくて、 夜のランプのように、そっと照らす光になりたいの。」
旅人は微笑み、ペンダントに指を添えた。
銅の粉がほのかに揺らめき、その夢を祝福するように輝きを増していく。
「旅人よ。 あなたの中にも、まだ形になっていない“夢”があるでしょう? どうか、それを恐れないで。ゆっくりでいいの。 あなたの炎が、あなただけの色で灯る日を、 私はずっとここで見守っているから。」
夜が明けるころ、旅人の胸には温かな光が宿っていた。
それは情熱の赤でも、哀しみの紅でもなく、 ――“願うという名の、やさしい炎”だった。
旅人はまた歩き出した。 道の向こうには、まだ見ぬ朝の光が広がっている。
旅人の旅は、ゆるやかに始まっていた――。
ルビー、その光の意味――
ルビーは「情熱」「生命力」「行動力」を象徴する石です。
人生に変化を起こしたいとき、眠っていた才能を呼び覚まし、前に進む勇気を与えてくれるといわれます。 その燃えるような赤は、心の奥にある“火”を再び灯す光。
ハートチャクラとルートチャクラの両方に対応し、 愛と生命力を結びつけるエネルギーを持ちます。 無条件の愛を育み、自己愛や他者への信頼を取り戻し、感情を癒やしてくれる石でもあります。
古くから「王の石(King of Gemstones)」と呼ばれ、 権威や地位、繁栄、守護の象徴として人々に大切にされてきました。
悪しきものから身を守り、幸運と富を引き寄せるとも伝えられています。
また、困難を乗り越える“不屈の力”と“内なる目覚め”を導く石として、 心の炎を絶やさぬよう静かに励まし、 本来の自分の強さと輝きを思い出させてくれます。
そして、ルビーは七月の誕生石であり、蟹座や獅子座を守護する石としても知られています。
五行では「火」のエレメントに属し、意志と生命力を司るエネルギーを象徴します。