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人事と行動科学を結びつける 〜人事のプロ化が求められる社会〜 #HLC

2019.02.28 05:49

会社にマッチした人材を採用し、また新たな会社へと成長させる。採用担当者は「会社の未来を創る人」と言っても過言ではありません。

そこで今回は企業の採用活動・求職者の就職活動の両方の活動指南をメディアのコラムなどで展開している曽和さんをお招きし、「人事と採用のセオリー」をテーマに講演していただきました。


<登壇者プロフィール> 

◯株式会社 人材研究所代表取締役社長 曽和利光氏

1971年、愛知県豊田市出身。灘高等学校を経て1990年に京都大学教育学部に入学、1995年に同学部教育心理学科を卒業。

株式会社リクルートで人事採用部門を担当、最終的にはゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。

「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法が特徴とされる。

2011年に株式会社 人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。

企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。


人事が実体験だけで

誤った持論を展開してしまっている

『人事と採用のセオリー』を曽和さんが執筆した背景には、2つの問題意識があったそうです。まず一つは、せっかく心理学や組織論などの理論が存在するのに、それらの行動科学の知見が人事に応用されていないこと、もう一つはそれに伴って実体験だけで持論を展開してしまっていたり、素人理論が人事の世界で良しとされてしまっていたりすることだと曽和さんはお話してくださいました。

今回の定例会では、

①すでにアカデミックの観点から証明されている「理論」

②理論では証明できていないが実践する人たちが使っている「持論」

の二つの軸で色々な理論や持論をご教示くださいました。


ダニング=クルーガー効果

理論の面で沢山の効果をお話ししていただきましたが、こちらではダニング=クルーガー効果についてご紹介いたします。この効果で証明されているのは、能力の低い人ほど自分を過大評価し、能力の高い人ほど自分を過小評価することです。努力しても評価されないという感覚を持つ社員がいるのはこの効果のせいではないかと曽和さんはおっしゃいます。この効果を知らないで人事をしていると、「言ったもの勝ち」を会社で許してしまい、本当は能力がない人を評価してしまう可能性があるということになります。

次に理論として証明はできていないが、人事の実践者たちが使用している持論、すなわち理論と持論の間に位置する事柄についてのディスカッションの一部をご紹介します。


面接経験は長いほうが良いのか!?

まず、最初に面接経験は当然長いほうがいいと考えられがちですが、実際はそうでない可能性があるとのことです。面接経験が長くなればなるほど、優秀な人材に関するステレオタイプが形成されてしまうことがあるため、絶対に長いほうがよいとは限らないとのことです。


面接で個人の何がわかるの??

続いて、面接でわかりやすいパーソナリティーは、「外向性」「情緒安定性」で、面接で見ることが難しいのは「誠実性」「知能」であると曽和さんはおっしゃいます。この「誠実性」と「知能」は、面接で見ているつもりになっていますが、実際は見ることが難しい可能性があるものだそうです。しかし、一般論でいうと「誠実性」と「知能」のほうがパフォーマンスとの相関が高いもので、実際はこちらを見極めなければならないのに、面接では見ることができていないのが現状だと言及されました。


セオリーが浸透しないワケ


アメリカでは、採用面接の研究は多くされているが、日本では全く浸透していないのが現状だと曽和さんはおっしゃいます。実際、このような人事のセオリーが浸透しないのは、心理学の適応領域がビジネス以外のものに多く、人事の領域には入ってこないことや難しい心理学用語が多いせいで学習コストが高いこと、また理論がパッと聞くと当たり前で、どのように利用したらいいかわからず、あまり興味を持ってもらえていないことが原因としてあるそうです。同時に専門家の方でもまだ証明できていないことが沢山あるということも言及されました。これらの理論や持論をわからないまま終わらせてしまうのではなく、学んで人事に実際に生かしていくことで生産性の向上に繋がり、日本の人事がよくなっていくのではないかいう曽和さんは最後にコメントをしました。



<質疑応答タイム>


Q.そもそも面接が必要なのかという疑問があるのですが、面接の所感は?

A. これは、みんなで解いていかなければいけない難問です。面接は精度が荒く、インターンシップやワークサンプル、能力テストなどの方が妥当性は高く、実際AIが人を見た方が定着率もパフォーマンスも高いこともあります。では、面接を全くしないという判断ができるのか、ということになってきます。同質性が高くても問題ない事業形態であれば、コミュニケーションコストも下がるので面接はしなくても問題はないです。しかし、色々な人がいないとできないような事業なら、面接をしないということはマイナスになってしまいます。一概には言えないので、その企業にあった選考方法を使用することが重要です。


<MVQ選出>

数多くの質問の中から今回もMVQを選出させていただきました。今回はMVQ本として曽和さん著作のこちらの本を選ばせていただきました >>『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則 』

今回も沢山の方にご参加いただきました。皆様お忙しい中ご参加いただきありがとうございました。