師手ということ
1999.11.01 01:21
3世宗家・相久が若手の頃、大先生はいつも「上段者と初心者」の話をしておられたそうです。
曰く「上段者とは初心者にやる気を出させ、長続きさせられる者であって、ワザがうまいとか稽古年齢があるだけで上段者になれるものではありません。古い者でも上段者ではなく、初心者の者もおります」という内容です。
当時、70歳を超えた大先生が体術を指導されるときは、まずワザを披露されます。次に大部分の時間を大先生はワザを掛けるのではなく、弟子にワザを掛けさせることに費やされました。
そのとき大先生は「まだまだ」というのが口癖でした。
関節を極めるワザにおいて、しなるような柔軟性は、大先生の腕にも腰にも足にも首にもありませんでした。
それでも「まだまだ」と気合いをかけてくださいました。20代の青年の相久が70代の老先生を心の底から敬服する稽古の一幕でした。
平成11年、相久の回顧より抜粋