イチョウの生命力
https://www.ichofarm.co.jp/vitality/ 【イチョウの生命力】より
第二次世界大戦において広島に原爆が投下され、70年間は植物は生育することが出来ないであろうといわれる中で、真っ先に新しく芽吹いたのは、イチョウであったという話は有名です。
昔からイチョウは丈夫な樹といわれてきました。寺院や公園で見るイチョウの樹は太く硬く、強そうな幹とよく茂った豊かな葉をもっています。しっかりとした根は時々地表にまで盛り上がって、新しい芽をつけることもあります。
樹皮は硬いコルク層に厚くおおわれて、気候の変化や厳しい自然災害に耐えられるようにできています。
江戸時代の大火に何度も見舞われたイチョウ、第二次大戦において広島に原爆が投下され、70年間植物は生育することが出来ないであろうといわれる中で、真っ先に新しく芽を吹き返したイチョウに、人々は驚異をもって「防火の樹」と呼んで祭っているところもあります。ちなみに、東京都の木はイチョウであり、東京大学の校章にイチョウ葉が使われています。
こうした丈夫な樹皮に守られた中心部は、十分な水分と澱粉質を含む細胞からできていて、しばしばこれが樹皮の表面を押し上げ、乳房のように垂れることから、乳イチョウ(乳の樹)と呼ばれ、乳が良く出るようにと、昔から母親たちの信仰の対象になっていました。
イチョウコラム
帰ってきた「生きた化石」イチョウ
イチョウは大変歴史の古い植物で、「生きた化石」とも呼ばれています。
現在のイチョウの祖先と考えられる葉の化石が、約2億7000万年前の古生代末の地層から発見されています。現存しているイチョウ(Ginkgo biloba L.)は中生代のジュラ紀に出現し、恐竜の仲間と共に繁栄したそうです。その後の気候変化などで大部分の仲間が絶滅した中で、現在のイチョウの種類だけが単独に生き残ったそうです。
中生代のイチョウの仲間の化石は、北半球を中心に世界各地で発見されており、日本でも山口県や北海道で見つかっています。日本でも一度絶滅し、仏教の伝来とともに持ち込まれたものが栽培によって生き残ったとされています。そのルーツは今でも謎に包まれています。1) 2)
■参考文献■
1) 植村和彦 プランタ,47,9(1996)
2) 加藤雅啓 プランタ,47,4(1996)
山登りにイチョウ葉エキス?
高い山に登ったときに息苦しさや気分が悪くなったりした経験がないでしょうか?高山におけるこのような疾病を高山病、山岳病、山酔いなどと呼び、頭痛、めまい、不眠、疲労感、不安、注意力低下、眠気や息苦しさなどの症状を起こすことがあります。これは、気圧の低下で空気が薄くなり、低酸素の状況におかれるためで、低音、低湿度、風、登山による疲労などの条件が重なって、重症になると肺うっ血、心不全を起こして死ぬこともあります。そのため、高山登山者は酸素ボンベを持ってでかけるそうです。
1996年、ヒマラヤの登山者グループ44人に対し、イチョウ葉抽出物を投与する試験が行われています。3) 44人のうち22人にはイチョウ葉抽出物を160mg、22人には偽薬を投与したところ、偽薬を投与したグループでは40.9%に急性高山病が発症したのに対し、イチョウ葉抽出物を投与したグループでは一人も高山病が発症しませんでした。また、手足の欠陥運動についてもイチョウ葉抽出物を投与したグループでは改善されていて、イチョウ葉抽出物は高山病の予防に有効であることが示されています。
■参考文献■
3) Roncin J.P., et al. Aviation, Space, and Environmental Medicine,67、445(1996)
https://www.medicalherb.or.jp/archives/3094 【Ginkgo イチョウ】より
わが国でもポピュラーなイチョウは、裸子植物で高さ30m、周囲10mにも達することがある高木です。
東京都のマークでおなじみの扇方の独特の形の葉は、秋に黄色に染まり落葉します。地球上に2憶5千万年前から存在していたことが知られ、「生きた化石」の異名を持ちます。また、イチョウは植物であるのに精子で繁殖することを、1896年東京大学(当時は帝国大学)の平瀬作五郎氏が発見し、世界中の植物学者を驚かせました。
わが国ではイチョウというとギンナンが有名ですが、イチョウの葉は現在欧米で最も注目を集めるメディカルハーブのひとつとなっています。植物療法の研究が最も進んでいるドイツの公的機関のコミッションEが、1999年にイチョウ葉を認知症とアルツハイマーの治療薬として認可したことからも、イチョウの葉への期待の大きさがわかります。イチョウはわが国でも長寿の象徴として知られ、また生命力が強いことでも知られていました。広島に原爆が投下されたときに、焼け野原の中から初めに芽生えたのがイチョウであったとされています。
ここ50年間のイチョウ葉の研究は、こうした逸話を裏づける結果となっています。
1950年代から今日まで、ドイツの研究者を中心に行われた研究は400を超え、臨床実験も50にのぼっています。イギリスの権威ある医学誌である『ランセット』も、1992年11月号でイチョウ葉の記憶力の低下、抑うつ、不安、めまい、耳鳴りなどの軽減効果を報告し、同様の症状に医薬品と比べてあらゆる点で効果は劣らない上、副作用がない点を強調しています。
こうしたイチョウ葉の効能を発揮させる有効成分は、現在のところビロバリド(bilobalide)などのテルペンラクトンとフラボノイド配糖体とされています。その作用機序は、テルペンラクトンによって血液の粘土が低下して血行が促進され、フラボノイド配糖体の抗酸化作用によって毛細血管が保護されるためと考えられています。わが国では本格的な高齢化社会を迎え、イチョウ葉の持つ機能性への期待がますます高まっています。
最後にイチョウの効能をまとめると、まず記憶力の低下や耳鳴り、めまいなどの脳循環不全、およびそれに伴う機能障害の改善があげられます。次に、全身の血液循環の改善や脳代謝の改善による脳梗塞や認知症、手足のしびれの改善です。さらに、強力な抗酸化作用と末梢循環の促進による糖尿病や動脈硬化の予防と多岐にわたります。
安全性:「メディカルハーブ安全性ハンドブック」ではクラス2d~特定の使用制限(MAO阻害薬に影響を与える可能性)
なお、現在ではMAO阻害薬が使用されることはほとんどありません。ドイツのコミッショEモノグラフでも相互作用についての記述はありませんが、PAF(血小板活性化因子)を強力に阻害するため、抗擬固薬との併用や出血傾向がある者の服用には注意すべきとの意見もあります。