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ぶらり小布施を②

2018.11.01 02:18

ニュースレター「夢Kanou」第97号

(※このニュースレターは、平成30年11月に発行いたしました。)


 皆様いかがお過ごしでしょうか、台風が通過したら、急に涼しくなりましたね。体調は大丈夫ですか?もうすぐ紅葉も色づいて、絶好の紅葉狩りができますね。

 前号は葛飾北斎の大鳳凰図がある岩松院を書かせて頂きましたが、小布施のステキな街並みへ。岩松院からも街まで自転車を走らせます。「爽快だっ」と、知らない土地を回るのは楽しく、栗畑やブドウ畑の緑が目にも優しく映ります。

 葛飾北斎の美術館、北斎館を中心に、小布施の街はとてもキレイです。澄んだ水が流れる水路に沿って、石畳の細道や山里らしく熊笹の清しい植え込みなどが広がります。

 その中でも、桝一市村酒造場さんと言う、古めかしい造り酒屋が建ちます。「すごい商家だな」っと、お店の隣の立派な門の前には池があり、その池は塀の奥へと続いて澄んだ水を湛えます。

 早速お店に入ると、私の背よりも大きな桶が展示してあります。

 20年くらい前に、こちらのお酒を頂いたことがありました。「香りの良い日本酒だな!」と、まだ日本酒の美味しさが分からない頃でしたが、やわらかい木の香りの良さと、美味しさに驚いたことがあります。

 実は桝一市村酒造場さんの香りの良いお酒は、仕込む桶を木桶にしたことだそうです。長い時代、木桶で仕込まれていた日本酒ですが、戦後の高度成長期にはホーローや合成樹脂などのタンクにとって代りました。

 桶仕込みは金属製のタンク等に比べると、効率的でないそうです。ですがタンク仕込みにはない独特の味わいのある日本酒が生まれ、更に仕込方の違いでそれぞれに個性を持った酒に仕上がりそうです。

「きっと手間が掛かるのだろうな?」と思いながら、大きな桶を見上げます。先日、あるテレビ番組で木桶についてやっていて、酒などを仕込む大きな木桶を造る会社は、関西の方に一社しか無くなってしまったとの事です。とても貴重なのですね。


 お店を出て、街を散策。小布施は特に女性に人気な街だそうで、完全な観光地になっておらず、地元の方の生活感も感じ、どこか落ち着きます。

 以前、海外からみえた女性が小布施の会社に入社して街づくりに協力され、トタン塀やブロック塀などを取り除き、従来通りの木の塀や生垣を復活して街づくりを行った。と言う話を聞いた事があります。「女性の視点で街を整備したから女性に人気があるのかな?」などと思いながら歩きました。

 時刻は12時を回りました。

「やっぱり栗でしょう!」と栗菓子で有名な桜井甘精堂さんで、栗ご飯のセットを注文。

 鮎の甘露煮に珍しい蕎麦のスープ、そして栗ご飯。ほっくりとした大粒の栗に「栗が美味しい!」と、クラシカルな街並みを望む席で、ゆっくりとランチを楽しみました。

 次は葛飾北斎の肉筆画美術館の北斎館へ。北斎の生涯の解説に始まり数々の作品が展示されています。北斎と言うと、真っ先に思い浮かぶのが富士山を描いた富嶽三十六景。

「こんなに色々なジャンルの絵を描いたんだ」と、荒々しい浪の間から覗く富士山の絵もあれば、雅な宮中女官。また花鳥画や龍の絵、そして何とも驚いたのが、漫画までを描いたのです。

「やっぱり基礎がしっかりしている人は何でも熟せるのだな」と、深く感じました。

 北斎は258年前の宝暦10年に武蔵国葛飾郡本所割下水(東京都墨田区の両国駅のあたり)で生まれたのが縁で「葛飾」と名乗ったそうです。30回も改名をし、また90年の生涯のうちに93回も引越しをしたと言うのには驚きですね。

 先ほどの桝一市村酒造場の十二代目の祖の高井 鴻山さんが、北斎を小布施に招き、83歳から89歳まで4度滞在したそうです。

「これは美しい!こんな間近で見られて、良かった」。第四展示室には絢爛な山車が2基展示され、あの岩松院で見た大鳳凰図を小さくした様な絵と対に龍の絵。もう一基には飛び出てくるのではないかと思うくらい、迫力ある男浪女浪の図が山車の天井に描かれていています。

 この山車は現在お祭りで使われているのかは不明ですが、町の人の貴重な財産ですね。もう一度、また北斎館と、今回見れなかった高井鴻山記念館をゆっくり訪ねてみたいと思いました。

「あっ、そうだ。あの病院どこだったかな?」と、北斎館を後に以前友人が入院していた病院に向かいます。「あ、ここだ」と、玄関の前には同院でやられているパン屋さんがあり、まるでホテルのよう。見舞いに来た時の事が思い出されました。「あれから7か・・・」。今回、小布施を回れてまたひとつ願いが叶いました。

「さっ、帰ろうか!」栗畑の間を抜け、少しの疲れと心地よさを感じ、駅まで向かいます。

「昔ながら」を復活させた街。北斎、福島正則、小林一茶と歴史文化と深く関わる街。いつまでもこの風景を残して欲しいと小布施を後にいたしました。