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とある冒険者の手記

Another 緑柱石-乙女心は-

2025.11.15 11:02

ヴァルがヘリオとエタバンをしてから、早くも1年が経とうとしていた。

その間に、二人の関係は少しずつではあるが変化していた。

基本的にベタベタする関係ではないが、時折、ヴァルが読書中のヘリオに体を寄せ、それに気付いた彼が頭を撫でるか、肩を抱く様になった。

ちょっとした変化ではあるが、夫婦らしさが出てきている。

そして今まさに、ヴァルが体を寄せ、ヘリオは本に視線を落としたまま彼女頭を撫でていた。

その彼女の顔は、目を瞑り、気持ちよさそうだ。


「ヘリオ」

「ん?」


呼ばれて視線を向けると、突然頬に軽く口付けられた。


「!?」


普段されない事をされ、驚いて固まる。

それを見てヴァルは小さく笑った。


「おやすみ」


そう言って、彼女は自分のベッドに潜り込んだ。

ヘリオは固まったままだったが、次第に顔は紅くなっていった。



***************



「あらぁ~!ヘリオちゃんじゃなぁ~い♡」


ヘリオがグリダニア旧市街を歩いていると、声をかけられた。

振り向けば、そこに居たのはヴァル経由で知り合ったスイレンだった。


「スイレンか」

「覚えててくれて嬉しいわぁ♡今日はヴァルちゃんは一緒じゃないのね」

「今日は別行動だ」


そんな会話をしていると、スイレンが何かに注目していた。

なんだと思い、ヘリオも視線をそちらに向けると、そこに居たのは1組のカップルだった。


「ねぇ~、私の事好き?」

「なんでそんなこと聞くんだよ。言わなくても分かるだろ」

「えぇ~、だってぇ~、ちゃんと言葉で聞きたいんだもぉん」

「言わないぞ」

「ひどぉい!」


頬を膨らませる彼女。

すると、彼氏の方が急に彼女の顎を掴み口付けた。


「言わなくても、分かるよな?」

「もぉー!強引なんだから!………でも……好き……♡」


そこから、カップルはイチャつきながらどこかへと行ってしまった。


「はぁ……、人通りが多いところで、よくまぁイチャつけること」

「……」

「でも、好きな人に強引に攻められちゃうと、キュンキュンしちゃうわよねぇ♡」

「…そうなのか?」


スイレンの言葉に反応するヘリオ。


「まぁ、人によりけりでしょうけど、普段クールな彼に強引なアクション取られたら、ドキッとしちゃうもんよぉ♡」

「……」


考え込むヘリオを見て、スイレンは更に続けた。


「あなた達、あまりイチャつか無いタイプでしょ?ヘリオちゃんに強引にされたら、ヴァルちゃんメロメロになっちゃうんじゃないかしら♡」

「……どうだかな」

「絶対そうよぉ!あなた達、パートナーになって1年ぐらいなのに熟年夫婦みたいに落ち着きすぎなんだもの!」

「じゅ……熟年……?」

「乙女はいつでも刺激を求めてるものよ?」

「あんたは男だろ」

「もぉ!ワタシは身体は男でも、心は乙女なの!」

「……はぁ」


そんなやり取りをしつつも、ヘリオは何か思うところがあるのか、考え込んでいた。



***************



FCハウスのヘリオの個人部屋。

夕飯を終えたヴァルは、自分のベッドに座り軽いストレッチをしていた。


「なぁ」

「ん?なんだ」


唐突にヘリオに声をかけられ、返答する。

すると、彼は何も言わず近づいてきた。

不思議に思いながら、黙ってそれを見つめるヴァル。

すると、彼女の脇に手を付き、一気に距離が近づいた。


「え?」


珍しい至近距離にヴァルは驚き、思わず体を後退させる。


「な、なに?」


戸惑う彼女の顎を掴み、顔を近づけると、ヴァルの頬に紅みが差す。


「あんたも少し強引な方がいいのか?」

「……ん?」


ヘリオの言葉に、戸惑いからキョトン顔に一瞬で変わる。


「…何の話だ??」


ヴァルの問いかけに、ヘリオは顎から手を離し、経緯を説明する。


「……それで、行動してみた……のか?」

「……そうだ」


少し照れくさくなったのか、頬を紅らめてそっぽを向く彼を見て、ヴァルは思わず笑いだした。


「ふっ…ふふふっ、あははははっ!!」

「……なぜ笑う」

「いや、すまない。お前、本当に素直だよなぁ!ふふふふっ!」


笑いが止まらない彼女。

笑われて、ヘリオに恥ずかしさが込み上げた。


「……笑うなっ」

「んんっ!?」


再び勢いよく顎を掴まれたと思ったら、強引に口付けをされ、ヴァルは硬直した。

唇が離れる感覚に我に返ったヴァルは、そのままヘリオの首に抱きつき、今度は自分から口付けをした。


「んっ!?」


ヴァルの行動に驚き、バランスを崩したヘリオは、そのまま彼女を押し倒す形でベッドに倒れた。


「お、おいっ」


赤面し、彼女に抗議の声を上げる。


「先に強引に来たのはヘリオだろ?あたいに火をつけたんだ。責任、とってくれるよな?」

「…っ!!」


ヴァルはそう言って、再び彼の唇を奪ったのだった。