Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

サナエノミクス

2025.11.17 01:08

高市首相は、「3本の矢」(①金融政策②財政政策③成長戦略)を組み合わせた「アベノミクス」を継承する「サナエノミクス」を掲げ、日本経済の強化を目指す政策を打ち出した。主として、所得、消費者マインド、企業収益、税収を押し上げ、経済回復の好循環を促進を狙う。当面の経済対策として物価抑制に焦点を当て、具体策としては、電気・ガス料金の支援、ガソリン暫定税率の廃止(与野党6党が12月末廃止で合意)、中小企業の賃上げ補助、地方交付税の拡充、成長戦略の一環として造船業向け基金の設立、防衛力強化などが議論されている。いずれも財政支出拡大を伴う政策であり、同時に日銀の利上げをけん制するなど、金融・財政両面でアベノミクスを踏襲している。

財源については、政府・与野党ともに明確な議論を避けており、最終的に2025年度補正予算案を編成し、今国会で成立させる方針だ。単年度でのプライマリーバランス黒字化目標も封印し、各省庁からの政策要求に上限額(財政キャップ)を設けない方向で調整が進む。政権内には、非常事態として24年度補正予算の約13兆9000億円を上回る規模が必要との声もある。城内実経済財政相は「財政の信認が揺るがない限りあらゆる手段を使ってもいい」と発言し、国債増発を示唆した。

高市政権は、健全財政を掲げる維新と連立を組み、麻生氏・鈴木氏を副総裁・幹事長に、また財務に詳しい片山氏を財務相に起用したことで、当初はバラマキ懸念が後退した。しかし、経済財政諮問会議や日本成長戦略会議のメンバーにリフレ派を登用し、公約に掲げた積極財政路線へと舵を切りつつある。

リフレ派が拠り所とするのは「減税乗数」と「税収弾性率」に関する仮説である。減税乗数(1の減税がどれだけの最終需要を生むか)を2~3倍、税収弾性率(1%のGDP成長が税収を何%押し上げるか)を過去10年平均の3.23倍と仮定すると、6兆円の減税(GDP比1%)は12~18兆円の需要を創出し、GDPを2~3%押し上げる結果、税収を6.46~9.69%増加させる。現在の税収約80兆円を基準にすると、6兆円の減税が5.17~7.7兆円の税収増をもたらし、翌年度に減税分をほぼ相殺できる計算となる。

ただし、この仮説が成立するなら税金をゼロにすべきという極論が成り立ってしまう。政府の公式見解による税収弾性率は1.2程度に過ぎず、また近年の可処分所得の減少は増税ではなく社会保険料負担の増加に起因している点も看過できない。

アベノミクスの3本の矢のうち成長戦略に対しては評価が分かれるが、デフレ対策としての金融緩和と財政支出拡大は一定の効果を上げたとされる。高市首相は物価高対策を最優先に掲げるものの、現在の消費者物価が3%程度に上昇しているのはコメなど食品価格の上昇によるもので、「デフレ脱却宣言までには至らない」と改めて語った。また、「適切な金融政策運営を大いに期待する」と述べ、日銀に対して緩和継続を事実上求めた。一方、ガソリン税廃止による税収減の穴埋めに研究開発税制の見直しを充てる案が浮上しており、近年日本の基礎研究軽視の姿勢を継続する懸念もある。良くも悪くも、サナエノミクスはアベノミクスの継承である。

サナエノミクスの市場への影響としては、赤字国債増発による財政支出拡大で円安要因となる。物価高対策を掲げながらも、財政拡張は結局物価上昇を誘発する。利上げが遅れれば円安とともにさらに物価上昇が加速するので、インフレトレードが基本となる。つまり、株式、不動産、金などのインフレヘッジ資産価格は上昇し易い。一方、財政の信認が揺るぐまで国債増発を止めなければ、最終的には信認が揺るぐので、金利は長期的に上昇すると思われる。