一世一代

　茶道は、動静一如の心境を体得させるといいます。

　財界の益田孝（ますだたかし）氏は、茶席を開いて客を招くたびに、

「今日こそは、私の一世一代のお茶、これが私の最後のお茶であろう。」

　いつもそういうので、客が、

「また一世一代でございますか。」

　ことごとに一世一代の気力をもってあたる。

　今日を最後と観念する。このほかに、真剣な生活充実の道はないと思うのであります。