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できた!がふえる - なないろ式学習法の実践ブログ

苦手を抱えたまま教師になる——“特性のある先生”が見た学校現場

2025.12.08 15:00

■ はじめに——“特性を抱えた教師”は教育現場に何をもたらすか

近年、「特性のある子ども」への支援が注目されていますが、実は

特性を抱えているのは子どもだけではありません。

教師自身にも、

・注意の偏り

・感覚過敏

・多動傾向

・処理速度の差

といった特性をもつ方が多くいます。

しかし学校という組織は、暗黙のうちに「標準的な教師像」を前提に運営されており、教師の特性が可視化されにくい構造になっています。

私は大学卒業後、県内私立高校で15年間教員として働きました。その間、

“みんなと同じように働くことが難しい教師”としての苦悩と、

その経験から見えてきた課題があります。


■ 式典・行事が“苦痛でしかない”——座り続けられない教師の実態

式典(入学式・卒業式・始業式・終業式など)は、多くの学校にとって重要な儀式です。

しかし、私にとってはこれが 最も耐え難い時間でした。

教師席に長時間座り続けること自体が困難で、

・背中がざわつく

・足が動いてしまう

・周囲の視線が気になる

・頭がぼんやりしてくる

といった状態になり、「先生なんだから我慢しなければ」と自分を追い込むばかりでした。

特性のある生徒が式典を苦手とするのは一般的ですが、

**同じ特性を抱える教員は“苦手を表明できない”**という点がより深刻です。

生徒はサポート対象になっても、教師は「できて当然」と見なされる——

これは学校組織の盲点と言えるでしょう。


■ 講演会・研修への参加も苦痛——“一方的な話を聞く”という高負荷

特性の一つとして、私は

「単調な話を長時間聞き続ける」ことが著しく困難でした。

教員研修や講演会では、90分以上の講話形式が一般的です。

しかし私は

・内容が興味関心と離れている

・体を動かす機会がない

・空気が静まり返っている

という条件が重なるだけで、集中が維持できませんでした。

“大人”“教師”であっても、

脳の特性は学生時代から変わりません。

ところが、多くの教員研修は

「すべての教師は一律に聴講できる」

という前提で組まれています。

この構造が

教師の学びの質を下げ、負担を増やしている

という点は、現場としてもっと議論されるべきだと強く感じています。


■ 黒板にまっすぐ字を書けない——“書字の困難さ”は教師も例外ではない

教員として致命的に見えるかもしれませんが、私は

黒板に文字をまっすぐ書くことができませんでした。

・罫線がないと文字が曲がる

・図形が歪む

・□で囲むとフニャッとしてしまう

これは教員として能力が低いのではなく、

「空間認知」と「運動制御」の特性によるものです。

しかし当時の学校文化では、

「黒板の字が下手=やる気がない」

という解釈がされ、叱責を受けることもありました。

その結果、

特性が“怠慢”として誤解される

という状態に陥ってしまうわけです。


■ 特性を“弱み”ではなく“スタイル”に変えるための工夫

こうした苦手を抱えながら働く中で、私は次第に

環境を工夫することで特性は十分に補える

ということに気づきました。

● ① 式典・行事 → “記録係”を自ら担う

式典中でも自由に動ける業務があることを発見し、

校長に「記録撮影を担当させてほしい」と直談判しました。

これによって、

・立ち歩くことが許容される

・動くことで集中が保てる

・式典の場に「役割」をもって参加できる

という最適解を得ました。

● ② 講演会 → メモ・写真・ICTで“能動的に参加”する

特性のある教員にとって、

受動型研修は極めて負荷が高いものです。

私は研修時に

・写真を撮る

・資料に直接メモを書く

・気づきをICTにまとめる

など、能動的な作業を加えることで負荷を下げていました。

● ③ 黒板 → ICT活用による“弱みの転換”

黒板書字の困難さを補うために、

当時としては珍しく電子黒板・PC投影を授業に導入しました。

結果的に学校からは

「先進的な授業」と評価されることになりましたが、

動機は

“できないことから逃れたい”という切実な自己調整

に他なりません。

しかしこの経験から、

教師の特性が授業改善の原動力にもなる

ということを学びました。


■ 学校は“多様な子ども”を求めるのに、“多様な教師”には不寛容

現代の教育は

・多様性

・個別最適化

・特別支援の充実

を掲げています。

しかし実際の学校組織は、

教師に対しては「標準化・同質性」を強く求める傾向があります。

・朝礼や式典は一律の姿勢・参加

・研修は全員同じ形式

・黒板指導は固定的

・書類業務は処理速度が前提

これは、

特性のある教師にとっては非常に生きづらい環境

となります。

そして同時に、

特性のある教師は、特性のある生徒の理解者になりやすい

という重要な視点が、現場で十分に活用されていません。


■ 教師の特性は、必ず“生徒支援の武器”になる

私自身、苦手を抱えたまま教職を続けたことで、

特性のある生徒の行動に対して、

直感的な共感と観察の精度が高まっていきました。

・なぜ離席するのか

・なぜ集中できないのか

・なぜ行事が怖いのか

・なぜ宿題に手がつかないのか

これらは自分自身が経験してきた困難そのものでした。

特性がある教師は決して“欠けた存在”ではなく、

むしろ

多様な生徒支援の先駆者となりうる存在

です。


■ まとめ——教師もまた“多様性の対象”である

第1話では、私自身の子ども時代の特性を紹介しました。

第2話では、そのまま大人になり、教職に就いたときに直面した現実をお伝えしました。

ここで強調したいことは1つです。

👉 学校は「多様な子ども」を受け入れようとする一方で、

  「多様な教師」を受け入れる準備がまだ十分ではない。

教師の特性を正しく理解し、その強みを活かせる環境が整えば、

それは必ず 生徒支援の質の向上 につながります。

特性のある教師の存在は、

“弱さ”ではなく“教育改善のヒント”なのです。


📚 明日の予告

【水曜日】第3話:

「学校に馴染めない生徒たち——“解放区”が生まれた背景」

・特性のある生徒が抱える“学校という環境”のしんどさ

・既存の相談体制の限界

・私が教室外に“逃げ場”を作った理由

そして、管理職から中止を求められた出来事

など、“現場の矛盾”をテーマにお届けします。

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