井伊辰也
美しき春野地雷いくつ爆ぜた 辰也
迎へ梅雨うなだけてゐるショベルカー 同
星月夜龍はゆつくり石と化し 同
Facebook徳重 英子さん投稿記事
「春風駘蕩たる二人のコラボレーションです。」製作は我が番組のレギュラー作家
井伊辰也さん久しぶりに創ってくれて嬉しいです。
番組の私の俳句は結構井伊さんの作品に添う会話のように詠んでいたりします。^_^
FacebookくりすたるのRadio Show 〈カラビナ・イン・ブルー〉 ~あなたのブルーな心に寄り添いたい~ リスナーホームさん投稿記事
「玻璃&辰也」
スイートピー貰ひたる子も頬を染め 初恋のときめきに似て春の風邪
堂々と生きてまた春巡りくる トンネルの反対側はきつと春
暮れ残る黄をたたみけり郷の蝶 リハビリの一足ごとの春野かな
親も子もよく鳴いておる巣立かな 春の闇当直室の謎の匂ひ
しやぼん玉記憶に謎のスワヒリ語 会釈して鳩が過ぎゆく春の駅
両の手に載せて見てゐる紙雛 男らの恐々と雛飾りをり
バレンタイン手打うどんじゃだめかしら 寒戻るときどき恐き花言葉
なにもかも晒して眠る仔猫かな ひとひらの春雪のせて出す葉書
井伊辰也
スイートピー束ねてゐたり頬熱く 流行風邪ヘビロテすなる大瀧詠一
まつすぐに生くる吾の春もうじきの トンネルの脇の蒲公英胸拡げ
郷の蝶真つ黄拡ぐおもいきり リハビリの一歩二歩や春野征く
お互ひにぴいぴい哭くる巣立かな 春の闇職員室の匂ひかな
チェコ人のかろき誘惑春の闇 春の駅鳩の交尾を観てゐたり
お囃子のキスキスキスと雛祭り 女らの嬉々と牛車を飾りをり
直筆の幼稚な文字やバレンタイン 冴え返る花言葉から探す花
クリスマス仔犬仔猫の罵倒かな ラブレター吹雪背ナより轟轟と 徳重玻璃
https://defining21.rssing.com/chan-11428025/article1439.html 【〔今週号の表紙〕第422号 道路 井伊辰也】より
井伊辰也
古い道路だと普通に見かけるひび割れ。よく見ると、思いのほか美しいデザイン。よくよく考えると、世界に一つしかないオリジナリティ溢れるデザイン。いや、そこまで持ち上げるほどでもないか…。
アメリカ合衆国アラスカ州アンカレッジ市。日本のどこよりも北に位置する。冬の道路は雪と氷に覆われ、除雪車で除雪したり融雪剤を撒いたりするも、道路の表面が明瞭に見えることはない。三月になると雪と氷が融け始め、凹んだ所は水たまりになる。自動車がその水を跳ね上げ、滴らせて走るため、道路は常に湿っている。例年通りなら最後の雪が四月中旬に降り、そこを境に冬を象徴する景色は急速に見られなくなっていく。四月中旬から五月初旬にかけて、冬の間に撒かれた滑り止めの小石や土、堆積した落ち葉などが道路から除かれる。そうしてようやく道路の表面が明瞭に見えるようになる。
五月の道路は新鮮に映る。なにせきちんとした姿でのお目見えは、ほぼ半年ぶりだから。湿り気を帯びたひびによる模様が際立ち、自ずと道路に目がいってしまう。
この模様が薄れるためか、あるいはこの模様を見慣れるためか、何はともあれ気にならなくなってくる頃、アンカレッジは白夜の街になる。