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源法律研修所

ブーメラン発言

2025.12.06 10:24

 『実用日本語表現辞典』によれば、

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 「ブーメラン発言」とは、他者を批判・糾弾するはずの発言の内容が、そのまま自分自身にも該当し、自らの首を絞める結果となるような発言のことである。要するに「人のふり見て我がふり直せ」と咎められるような発言のことである。 

 「ブーメラン発言」という表現は、単に「自分にも当てはまる内容で相手を口撃すること」自体を指す以上に、「そのような状況に陥っても自分の非については認めない(二重基準)か顧みない(厚顔無恥)」ような態度に対する揶揄や侮蔑の意味を込めて用いられる傾向が色濃い。 

 とりわけブーメラン発言が多くて目立つ人物や団体は「ブーメラン職人」と呼ばれることがある。その言動は芸風になぞらえて「ブーメラン芸」と呼ばれることがある。また、発言に限らず言動全体が「自分の身に返ってくる」ような状況は「ブーメラン現象」と表現されることがある。 

 こうした状況は「天に向かって唾を吐く」とも表現される。これは本来「吐いた唾が自分に降りかかる」という趣旨で自業自得・自縄自縛を表現する慣用句であるが、昨今では「目上の者を罵ったり害したりする」という意味と誤解されがちであり、ブーメランの意味で認識されることはむしろ少ない。 

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 左翼は、「ブーメラン発言」が非常に多い。これにもちゃんと理由がある。


 「共産主義者は、かれらの目的が、これまでのいっさいの社会秩序を暴力的に転覆することによってしか達成され得ないことを公然と宣言する。支配階級よ、共産主義革命の前に慄(おのの)くがいい。プロレタリアには、革命において鉄鎖のほかに失うものは何もない。かれらには獲得すべき全世界がある。  

 全世界のプロレタリア、団結せよ!」(金塚貞文訳『共産主義者宣言』太田出版97頁)。


 このように法秩序、道徳、慣習、伝統、文化、宗教、礼儀作法・マナーなど、これまでの一切の社会秩序を暴力的に転覆することを公然と宣言している以上、破壊対象たる法も道徳も守らないし、このことにいささかも痛痒(つうよう)を感じないので、息を吐くように平気で嘘を言うし、ダブルスタンダードであり、厚顔無恥なのだ。

 そのため、「ブーメラン発言」が多くなるわけだ。


 さて、ネットで話題になっていたので、備忘録としてリンクを貼っておく。

 なお、「ブーメラン現象」は、『デジタル大辞泉』(小学館)に載っている。

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 自分の行為の影響がそのまま自分に及ぶこと。他人の失敗や不正を批判した者が同様の行為をしていたと後になって発覚し、自らも批判を受けること。→天に向かって唾を吐く

  [補説] 平成16年(2004)に自民党の閣僚らが過去に公的年金を未納だった期間があることが発覚。当時野党の民主党が激しく批判したが、直後に同党幹部らにも未納期間があったことが判明し、主にインターネット上で「ブーメラン現象」と揶揄された。

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 驚いたことに、Wikipediaによると、この「ブーメラン現象」は、刑法学でも用いられているらしい。

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 故意または過失を構成要件要素とする日本刑法学の通説を前提とする場合に発生するとされる問題。 

 故意犯が成立しないとなった後に、過失犯の検討に移ることになる現象を意味する。 

 誤想防衛の場合には、行為者は違法性阻却事由該当事実があると認識しているから、故意が阻却され、故意犯が成立しない(通説)。ここで、誤想したことについて過失がある場合、過失犯を処罰する規定が当該罪に存在するときには、過失犯が成立する(たとえば殺人の故意が阻却されたあとの過失致死)。このとき、一旦構成要件段階で故意(構成要件的故意)があることが認められたはずなのに、行為者の責任を検討する段階で故意(責任故意)が阻却され、次に再び過失行為として構成要件該当性を検討することになってしまう。そのため、そもそも構成要件の段階で故意犯と過失犯を特徴づけてそれぞれ限定すること自体に疑問が呈されることになる。 

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 これかぁ〜〜〜。学生時代に大塚仁『刑法概説(総論)』(有斐閣)を読んだとき、同じ疑問が浮かんだわ!まさかこれが「ブーメラン現象」と呼ばれているとは思わなかった。笑

 しかし、故意犯と過失犯は、罰条が異なるから、故意犯の構成要件該当性が認められた後で、責任故意が阻却された場合に、再び過失犯の構成要件該当性を検討することは、矛盾ではなく、これを「ブーメラン現象」と呼ぶのは、如何なものかと思う。