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源法律研修所

職務代理者はつらいよ

2025.12.08 11:52

 静岡県の伊東市の小野市長が市長選に敗れて、田久保市長になって、経歴詐称疑惑問題で市長と議会の対立が激しいため、副市長2名(伊東市副市長定数条例)の選任に関する議会の同意(地方自治法第162条第2項)が得られなかったのだろうか、副市長が不在だ。

 田久保市長は、二度目の不信任議決を受けて失職しており、現在、市長も副市長も欠けている。


 市長だけでなく副市長も欠けたときには、規則で定める上席の職員が市長の職務を代理する(地方自治法第152条第3項)。講学上は、法定代理と呼ばれるが、実務では、職務代理と呼ばれる。


 伊東市長の職務を代理する者に関する規則(平成17年3月31日 伊東市規則第29号)によれば、

(1) 市長戦略監の職にある者 

(2) 企画部長の職にある者 

(3) 総務部長の職にある者

の順序により職務を代理することになっている。


 そして、伊東市市長戦略監設置規則によれば、市長戦略監は、職員の中から市長が任命し(同規則第2条)、「市長戦略監の職務は、市長の命を受けて行う特定事項」とされている(同規則第4条)。

 ところが、平成31年4月1日付け人事発令において、市長戦略監は、企画部長の兼務職となっている。おそらくこの人事発令が今も生きているのだろう。


 それ故、下記の記事にあるように、近持剛史企画部長が市長の職務代理者を務めているわけだ。

 企画部長の仕事のほかに、市長決裁事項及び副市長の専決事項並びにイベントの出席など市長の代わりを務めなければならず、1か月のうち休みが1日にならざるを得ないのだろう。くれぐれもご自愛いただだきたい。

 新市長は、ボーナスをアップしてあげて欲しい。


 法的な話に戻すと、近持剛史企画部長が過労で倒れたりしないように、例えば、「市長職務代理者は、地方自治法第153条第1項の規定に基づき、次に掲げる職務を◯◯部長に委任することができる。」というような条文を伊東市長の職務を代理する者に関する規則に追加して、部長同士で事務分担できるようにしたらどうだろうか。


 なお、記事によると、教育委員会の教育長も欠けているそうだ。

 教育委員会の教育長は、「地方公共団体の長が、議会の同意を得て、任命する」ことになっている(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第4条第1項)。

 これも、田久保市長の経歴詐称問題で、議会の同意が得られなかったのだろう。


 この点、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)第13条第2項で、「教育長が欠けたときは、あらかじめその指名する委員がその職務を行う」ことになっている。


 これを受けて、伊東市教育委員会教育長職務代理者等に関する規則(令和7年10月1日 伊東市教委規則第7号)第2条第1項は、「教育長職務代理者は、あらかじめ教育委員会の委員のうちから教育長が指名する」ことになっているのだが、本件のように教育長及び教育長職務代理者がともに欠けたときは、教育委員のうち最も在任期間が長い者が、教育長職務代理者に指名されたものとみなすと定められている(同規則第2条第3項)。