「美しさ」が命を脅かすとき ― 星空模様のカエルが教えてくれること ―
夜空に星を散りばめたような、不思議な模様を持つ小さなカエル。
インド西部・西ガーツ山脈の熱帯雨林にだけ生息するギャラクシーフロッグは、「世界で最も美しい両生類の一つ」とも称される希少種です。
指先ほどの大きさで、岩の隙間や朽ちた丸太の下、落ち葉の陰にひっそりと暮らす存在。まさに“知る人ぞ知る”森の宝石でした。
ところが、その美しさそのものが、彼らを追い詰めていると、科学者たちが警鐘を鳴らしています。
写真を撮るために、森が壊される
研究によると、2020年初頭に7匹のギャラクシーフロッグの群れが確認されていました。しかし、コロナ禍による調査中断を経て再び訪れたとき、その群れは丸ごと姿を消していたのです。
原因として指摘されたのが、無秩序な撮影旅行。
完璧な一枚を求める写真家たちが、丸太を動かし、落ち葉をかき分け、カエルを苔の上に移動させる。高出力のフラッシュを何時間も浴びせ、素手で何度も触れる――。
人間にとっては「一瞬のシャッター」でも、カエルにとっては生存を脅かす長時間のストレスでした。
「撮ること」と「守ること」は両立できるのか
写真撮影そのものが悪なのではありません。
研究者自身も、「適切に行われれば、写真は自然保護にとって大きな力になる」と語っています。
問題は、
* 生き物の生活空間を壊すこと
* 触れること
* 無理に動かすこと
* その影響を想像しないこと
こうした想像力の欠如です。
「きれいだから残したい」という気持ちが、「きれいだから消してしまった」という結果につながる――この皮肉は、とても重く胸に残ります。
小さな命からの、静かな警告
ギャラクシーフロッグは、宇宙の星屑のような姿をしています。
でも彼らは、写真の中の存在ではなく、森の中で静かに生きる命です。
もしこのカエルが姿を消したとしても、世界はすぐには気づかないかもしれません。
それでも確実に、「人間が自然とどう向き合ってきたか」という答えが、そこに残ります。
シャッターを切る前に、一歩引いて考える。
その一瞬の配慮が、未来に星空を残すことにつながるのかもしれません。