《グルーヴとリズムの小話集》第6話:内鳴りの音と、世界に渡る拍
2025.12.21 02:10
音が鳴っているかどうか。
それは意外と、本人にはわからない。
頭の中でははっきりしている。
身体の中でも、確かに何かが動いている。
リズムは感じているし、満たされてもいる。
でも、ふと気づく。
空気が揺れていない。
自己完結しているときの音は、
鳴っていないわけじゃない。
ただ、まだ外に渡っていない。
それは、
ヘッドホンの中だけで鳴っている音。
剣道で言えば、踏み込む直前の静止。
ドラムで言えば、スティックがスネアドラムに触れる寸前。
「内鳴り」
そんな言葉がしっくりくる。
内鳴りの音は、とても繊細で、正直で、豊かだ。
だからこそ、大切に抱えたままにしてしまう。
壊したくないし、ズレたくないし、
何より「これでいいのか」を確かめたくなる。
けれど、音というものは不思議で、
返ってきて初めて、音になる。
空気を揺らし、
反射が生まれ、
予想外の響きが混ざったとき、
音は「出来事」になる。
自己完結は悪いことじゃない。
むしろ、深いグルーヴはそこから生まれる。
ただ、そこで止めてしまうと、
リズムは循環しない。
外に置く。
少しだけ、世界に渡す。
完成させる、というより、
拍を置く。
すると返ってくる。
思っていたよりも軽い音で。
思っていたよりも、ちゃんと自分の音で。
鳴ってから考えるのではなく、
置いてから聴く。
音は、もう十分に鳴る準備ができている。
あとは、空気に手渡すだけ。
水彩で絵のラフ案
※この絵は後でアクリル絵の具で調えます