アドラー心理学に於ける「人生はダンスのように」
2025.12.21 05:02
序章|人生は、目的地ではなく「踊っている時間」そのもの
アドラー心理学において、しばしば引用される印象的な比喩がある。
それが――**「人生はダンスのようなものだ」**という言葉である。
人はつい、人生を「どこへ行くか」「何を達成するか」という目的地中心の物語として捉えがちだ。
成功、結婚、地位、承認、幸福――
それらを“ゴール”として設定し、そこに到達できたか否かで人生の価値を測ろうとする。
しかし、アドラーは静かに、しかし根本からそれを否定する。
人生の価値は、
どこへ行ったかではなく、
いま、どのように踊っているか
によって決まる。
この視点は、現代人が抱える不安――
「正解を選ばなければならない」
「失敗してはいけない」
「出遅れてはいけない」
という強迫的な生き方を、根こそぎほどいていく力を持っている。
第Ⅰ部|「人生はダンス」――アドラー心理学の核心
1. なぜアドラーは「ダンス」という比喩を選んだのか
アドラー心理学の最大の特徴は、 人間を原因で縛られた存在ではなく、 目的を選びながら生きる存在として捉えた点にある。 過去のトラウマ、環境、才能の有無―― それらが人生を「決定する」のではない。 人はいつでも、 これからどう生きるかを“選び続けている”。 ダンスとは何か。 正解の振り付けはない 間違えても踊り直せる 上手さよりも「参加していること」に意味がある 観客の評価より、リズムに身を委ねているかが重要 人生をダンスに喩えた瞬間、 「失敗」という概念そのものが、別の姿を帯び始める。 失敗とは、 踊るのをやめてしまった状態なのだ。
2. 「準備が整ってから踊る」という幻想
多くの人はこう考える。 自信がついたら動こう 傷が癒えたら恋をしよう 条件が揃ったら結婚しよう だがアドラーは、真逆のことを言う。 踊りながら、自信は生まれる。 踊りながら、傷は意味を持つ。 ダンスフロアの外で、 いつまでも完璧な一歩を待っている人は、 永遠に音楽を体験できない。 人生も同じだ。