Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

大場六夫's Art Random 僕の美術教育論

子どもの眼

2025.12.22 14:55

子どもの眼

子どもは、日々の世界をどのように見ているのでしょうか。

おとなが見過ごしてしまうような小さな変化、ささやかな光や色、形の違いに、子どもは立ち止まり、じっと眼を向けます。

道ばたの石ころ、壁に映る影、偶然できた絵の具のにじみ。

それらはおとなにとって「背景」でも、子どもにとっては「発見」です。

その発見の瞬間、子どもの心の中では「これは何だろう」「どうしてだろう」という問いが生まれ、想像が静かに広がっていきます。

子どもが何かに夢中になるとき、そこには必ず“感じる”体験があります。

美しい、ふしぎ、ちょっと怖い、おもしろい——言葉になる前の感情が、制作への意欲を芽生えさせます。

描くこと、つくることは、その感情を確かめる行為であり、自分なりの答えを探す過程でもあります。

美術活動の中で見られる子どもの表現は、技術の巧拙では測れません。

そこにあるのは、子どもが世界をどう受け取り、どう解釈したかという“視点”そのものです。

おとなの常識や正解から少し離れた場所にこそ、子どもならではの自由な眼があります。

私たちおとなにできることは、その眼を「教える」ことではなく、「見つめ直す」こと。

子どもの表現に立ち止まり、「なぜこう描いたのだろう」と想像してみる。

そこから、おとな自身の感覚や美意識も、少しずつ柔らかくほぐれていきます。

子どもの眼は、世界を新しく照らします。

その眼差しに寄り添う時間は、子どもだけでなく、おとなにとっても、日常を豊かにする学びの時間なのだと感じています。