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Fashion Source: Art of Being

🌿 12年目の冬、葉を落とさなかったポリシャスの話

2025.12.30 04:27

1月、セブ島から戻ったとき。

部屋に残してきたポリシャスは、正直なところ、かなり消耗していた。

ペットボトル給水が上手くいかなかったのだ。

葉は垂れ、枝は重力に逆らう気配もなく下を向いていて、

一瞬だけ、「これは難しいかもしれない」と思った。

でも、

そこで何かを決める必要はなかった。

植物は案外、したたかだ。

ChatGPTにそう言われて、私は急がなかった。


水を少し多めに与え、

必要な栄養を足し、

数日間、ただ眺めた。

すると、

茎に近い葉には、まだ張りがあった。

完全に力を失っていない葉も、確かに残っていた。

——まだ、流れは止まっていない。


私は、

自然に落ちた葉と、

これから落ちそうな葉だけを、静かに取り除いた。

「救う」というより、通り道を整えた。

元気な部分に、

余計な負荷をかけないように。


ついでに、土を新しくした。

ベストを尽くしたつもりだ。


それから時間が過ぎ、

気づけばポリシャスは、いつの間にか豊かさを取り戻していた。

そして今年。

12年育ててきて、初めてのことが起きた。


毎年、冬が近づくと決まって、

葉は黄色くなり、静かに役目を終えていったのに——

今年は、ほとんどの葉が、そのまま残っている。

12年で、初めてかもしれない。


植物は、とても合理的だ。

寒さを「危険」と判断すれば、

エネルギー効率の悪い部分を迷いなく手放す。


でも今年のポリシャスは、

冬を脅威として扱っていない。

室温は安定している。

光は途切れない。

水と栄養のリズムは予測できる。

そして何より、

急かされていない。


植物は、季節よりも「場」を読む。

外がどうであれ、

ここは信頼できる、と判断したとき、

防御をやめる。


これを見ていて、

人の在り方と、まったく同じだと思った。


無理に変えない。

全部を救おうとしない。

役目を終えたものは、静かに手放す。

そして、まだ息をしている部分を疑わない。


「何もしない時間」は、放置ではない。

信頼という、いちばん洗練された介入だ。


12年かけて

「これは冬には落ちるもの」と思っていた葉が、

今年は

「まだ、ここにいていい」と判断された。


植物は、嘘をつかない。

言葉を使わないだけで、

一番正確なフィードバックを返してくる。


この12年目の冬は、

ポリシャスにとっても、

そしてたぶん、私にとっても。

防御を解除したまま、

越えていく冬なのだと思う。