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HARUTO SAKATA PHOTOGRAPHY

Archive / 成田空港 空と大地の歴史館 第19回 企画展示 写真展「三里塚と一鍬田 過去と現在」

2025.12.30 15:00

千葉県芝山町にある三里塚闘争の歴史資料館「成田空港 空と大地の歴史館」にて、2025年7月23日(水)から12月21日(日)まで企画展を開催しました。本展は、成田空港の機能強化(第三滑走路の建設およびB滑走路の延伸など)により失われる多古町一鍬田集落を撮影した齊藤小弥太氏との二人展です。

→ 成田空港 空と大地の歴史館 ホームページ
→ 第19回 企画展示チラシ

⇧11月下旬に追加で展示した文書パネル

【展示概要】(成田空港 空と大地の歴史館 ホームページより)

三里塚闘争の開始からおよそ60年が経過した現在、成田空港の更なる機能強化に伴う新滑走路の建設等により、家屋等の移転が進み、2025年5月からは本格的な工事が始まりました。本展示の企画者である写真家・佐方晴登氏および齊藤小弥太氏は、数年前より、かつて闘争が起きた三里塚地区と、今回の機能強化により姿を変えつつある多古町一鍬田地区に継続的に足を運び、過去の出来事に思いを馳せ、現在の空港拡張の様子を写真に収めてこられました。当地にお住まいの方々や移転の対象となっている方々、また当館に訪れる皆さまにとって、本企画展が、過去の闘争や現在の情況に思いを巡らせていただく機会となれば幸いです。そして、「土地の記憶」の記録と伝承が、未来へと受け継がれていく一助となることを願っております。


展示キャプション

キャプションその1

三里塚の過去ー

大きな物語の歴史 佐方 晴登

私が三里塚闘争に関心を持ったのは、2021年の夏頃からである。元々断片的に闘争について知っていた私は、三里塚を撮影した写真家の展覧会が開催される事を知った。この地に関心が向いた私は、リサーチを進め、当時の状況について詳しく知るようになった。また、現地を見てみたいという好奇心に駆られ、足繁く通うことになった。

現代の政治問題とも繋がるこの住民運動は、社会に対する異議申し立てをする者にとっては絶好の場所なのだろう。多種多様な人々がこの地を訪れ、そして去った。私も当初それを模索していた。しかし、膨大な歴史を抱えるこの土地は、個人の思想など跳ね返してしまう強力な力があるように感じた。

私は中立を標榜し、闘争が起きた土地の風景を見つめることにした。現在も継続中の運動ではあるが、歴史化した事象として捉え、客観的視点で見てみたいと思ったのだ。小川紳介は、中立は欺瞞であり、農民の立場で撮るべきだと言ったそうだが、私は「加担する映画」の方法論ではなく、理想としての中道を貫きたいと考えた。

フランスの哲学者、ジャン=フランソワ・リオタールは、マルクス主義などの既存の知的体系を「大きな物語」として批判し、ポストモダン時代の到来を先見した。だが、未だ「大きな物語」は再生産され、現在でも生き残っている。むしろその影響力が徐徐に増しているのではないだろうか。そのメタ物語の是非はさておき、現代に生きる私達はその「物語=歴史」を批評的に分析する必要性があるのではないか。

過去の大きな物語を、風景を通じて見るとはどういう事か。本気で革命を信じた学生達。空港建設が中止され、新たな解放区、ユートピア建設を夢見た農民達。空港によって国の発展を願った人々。大きな物語が復権しつつある現在、往時のイデオロギー対立の構造を、風景を通じて見る事で、新たなる思想を導き出せないだろうか。


11月下旬に追加したキャプション(その1に追加)

2025年11月17日

左の文章(注:ステートメントがこの文章の左側に配置されていた)には足りない視点があると気づいた。ただ「生活を守りたかった」という農民の本心だ。三里塚闘争は左翼的な運動だと思われがちだが、本来は生活保守の為の運動であったはずだ。今まで私は、支援者のイデオロギーや、国家側の考え方、そして闘争の先にある社会(農)の理想像のようなものに関心があり、左の文章のようなコンセプトで作品を制作していた。しかし、闘争においてとても大事なものが、作品から抜け落ちていたのではないか。

左の文章を加筆・修正したものを、追加で展示する。以下、改訂版である。(「〜分析する必要性があるのではないか。」まで同上)

「過去の「大きな物語」を、風景を通じて見るとはどういう事か。空港によって国の発展を願った人々。本気で革命を信じた活動家たち。空港建設が中止され、農のユートピア建設を夢見た人達。そして、ただ生活を守りたいと願い、果敢に闘った農民たち。大きな物語が復権しつつある現在、かつての対立構造を風景を通して見つめ直すことで、新たな思想を生み出すことはできないだろうか。」


キャプションその2

三里塚闘争をどう捉え、再検証していくか?作品制作が進むほど、私の闘争に対する考えが変化していった。

当初は、「理想としての中立」を標榜し、空港反対派か空港公団(空港会社)のどちらにも与する事がない状態を望んでいた。しかし、世界の様々な社会運動の歴史をリサーチしていくにつれ、私の立場は歴史に対してとても暴力的で、政治的に漂白された意味のないものではないかと考えるようになった。運動の主体になることがない、どこまでも外部でしかないドキュメンタリー写真では、社会は変革しないのではないか。

しかし、往年の小川プロが取り組んだように、「加担するドキュメンタリー」を繰り返す事はできない。三里塚闘争は、双方に死者が出るほど過激化し、一部支援者はその殺人行為を推奨していた。私は積極的な人間に対する暴力は、長期的には意味をなさないと考えている。言うまでもなく、政治権力に対しての受動的ではない非暴力直接行動は肯定したいと思う。

また、今まで私は三里塚闘争を20世紀型のイデオロギー闘争だと考えてきた。しかし、闘争に関わってきた方に話を聞いたり、当時の文献を読むと、闘争において一番重要なのはイデオロギッシュな部分ではなく、(安直なヒューマニズムを避ける為、このナイーブな言い方は避けてきたが)人間の「生」なのではないかと考えるようになった。マルクス主義のような「大きな物語」ではなく、農民の個々の抵抗や語り等の「小さな物語」こそ重要であり、今までの作品に足りない部分だと考えるようになった。

今後は、「大きな物語」に収斂されないような、「小さな物語」を中心とした、表現や行動を目指し、三里塚闘争の再検証を作品の鑑賞者と共に進めていきたいと思う。


【イベント】

2025年8月2日(土) 14:00 - 15:00
展示作家2名によるトークイベントを開催。


【展覧会ZINE配布】

⇩ 1000部限定で小冊子を無料配布
A4 26p カラー

【展示作家】

佐方 晴登 Sakata Haruto
2000年京都府生まれ、愛知県出身。名古屋ビジュアルアーツ写真学科作家専攻卒業。写真家/アーティスト。現在愛知と東京の二拠点で活動中。 写真を「思考の触媒」として使用し、政治性を内包した表現を目指している。近年は三里塚地区に継続的に足を運び、三里塚闘争の歴史、成田空港の機能強化で土地買収が進む地域を撮影した作品等を制作、発表している。
齊藤 小弥太 Saito Koyata
1986年神奈川県生まれ。日本写真芸術専門学校を卒業後、 スタジオ勤務を経てドキュメンタリー写真家として国内外問わず撮影を続けている。2019年からは成田空港の第3滑走路新設に伴い失われゆく多古町一鍬田集落での撮影を行なっている。時代の変化と共に変わりゆく人々の営みにカメラを向けている。


【展覧会情報】

開催期間:2025年7月23日(水) - 12月21日(日)
開館時間:10:00 - 17:00 (※入館は16:30まで)
休館日:月曜 (祝日または振替休日の場合はその翌日)
入館料:無料
会場:成田空港 空と大地の歴史館 企画展示室
(〒289-1608千葉県山武郡芝山町岩山113-2)