「警視庁物語 夜の野獣」
シリーズ第6弾で、12月22日公開の正月映画ということもあってか、上映時間83分と、シリーズの中でもやや長めの作品になっている。
須藤健さんがレギュラー刑事役ではなく一般市民役で登場し、メインの刑事の一人は波島進さんが演じているのと、石島房太郎さん渡辺刑事が結構活躍している。
今回は、スリが発端になった殺人事件で、波島進さん演じる若手刑事の山村刑事役が熱意を見せる一編になっている。
ちなみに、キネ旬データには横田小吉役が中村是好となっているが、全くの別人で、一言のセリフもない。
時代劇でお馴染みの稲葉義男さんや阿部九洲男さんが現代劇に出ているのも珍しい気がする。
若い頃の潮健児さんなども出ている。
このシリーズ、一見地味な俳優中心の低予算で地味な展開に思いがちだが、いくつかのシーンでは本格的にエキストラを使い、群衆シーンを撮っているように、本作でも電車内やホームでのシーンは、エキストラを使って、綿密な打ち合わせの上でないと無理なように思える。
この当時のタクシーは、ルノーが混じっているようだが、かなり小型で可愛らしい。
住宅地内で、子供たちは、西部劇ごっこに興じているあたりが、当時を偲ばせる。
クライマックスは、ちょっと捻りを効かせた追跡劇になっており、最後はよくある操車場内での追い込みと夜の帰宅シーンで締めくくっている。
【以下、ストーリー】
1957年、東映、長谷川公之脚本、小沢茂弘監督作品
夜、走る丸の内線の中、小柄な初老のスーツにコート姿の男が、別のサラリーマン風の乗客のそばに近づく。
トンネルを出た電車では、先ほどの小柄な男がまた別の乗客に近づくと、何かを手渡していた。
小石川駅に電車が停まった時、一人のサラリーマン風の乗客(牧野狂介)がポケットの中を見て驚いたように周囲を見る。
ホームに逃げるように降り立った初老の男ともう一人の帽子の男に気づいたその男は、後を追おうとするが、出口を乗客を塞がれたので、退いてくれよ!と言いながら、ホームになんとか降り立つが、すでにスリは逃げおうせていた。
改札口を逃げる初老の男の襟首を掴んだ帽子の男は逃げるが、その後を、待て!待ってくれよ!と叫びながら、擦られた乗客が追いかける。
階段を登った空き地に来た帽子の男は立ち止まり、振り返って、なんかようなのかい?と聞くので、追ってきた乗客は、君たちだろう?俺の財布を!と問いかけると、あ、あいつだ!と乗客は初老の男に気付き、おい!気君!と言いながら近づこうとするが、それを帽子の男が止め、投げ飛ばしたので、転んだ乗客が何をするんだ!と怒ると、帽子の男がナイフを出したことに気づく。
立ち上がった乗客を掴んだ帽子の男はその場でナイフを乗客を刺す。
乗客はその場に崩れ落ちる。
翌朝、現場は警察と鑑識、そして取材に駆けつけた新聞記者たちと野次馬で騒然としてた。
世界最大の人口を誇る大東京の片隅で、深夜行われた殺人は、翌る日の朝、通学の児童が発見、付近の交番へ届け出た。
交番からの連絡で、地元の警察署は直ちに警視庁捜査第一課に連絡、殺人現場に急行した刑事たちは、鑑識課員と共に現状検証を開始した。(とナレーションが重なる)
長田部長刑事(堀雄二)は、現場近くの草むらに落ちていた土産物のような包装された小箱を拾い上げる。
現場で見守っていた捜査第一課長(松本克平)に近づいた主任警部(神田隆)は、傷口の様子から見て、凶器はジャックナイフに間違いないだろうとのことですが…と報告する。
そこにやってきた長田部長刑事が、課長、草むらにこんなものがと言いながら、今拾った小箱を見せたので、開けてみた前と課長は命じる。
切り傷や突き傷が5つもあるという点から考えて、ホシは被害者の生き返るのをよほど恐れていたに違いないと思いますが…と主任が続ける。
課長も、うん…、被害者に面を取られたとったのかもしれんなと答える。
はあ…と主任が答えると、包みを開けていた長田部長刑事が、箱の中を見て、おもちゃですと報告する。
主任が中身を取り出すと、それはモフモフしたアヒルらしきおもちゃが嘴を開いてガーガー鳴くものだった。
さらに近づいてきた山村刑事(波島進)が、主任、被害者のポケットにはこんなもんしかありませんでしたというので、現金はないのかね?と主任は聞くと、ああというので、やっぱり、物取りだな、これは…と課長が判断する。
定期入れの身分証明書で、被害者の身元はすぐに判明した。山田栄三41歳、平凡なサラリーマンである。(と、線路脇の被害者宅に来た警官を写しながらナレーションが重なる)
林刑事(花澤徳衛)から、遺留品を見せられた妻は、一度もうちを開けたことがなかったので、もしや怪我でもしたのではないかと思ったのです…と山田の妻(風見章子)は悲しげに答える。
まさか…、まさか、こんなことになろうとはん〜と言いながら、妻はアヒルのおもちゃを手に取って嘆く。
ねえ…、ところで奥さん…と林刑事が話を聞こうとすると、奥の部屋から赤ん坊の鳴き声が聞こえてくる。
妻はアヒルのおもちゃをベビーベッドの赤ん坊の前に持って行き、坊やとあやすと、赤ん坊は嬉しそうにおもちゃを受け取ろうとする。
そんな赤ん坊に、坊や…、お父ちゃん、死んじゃったわよ…と泣きながら妻は話しかける。
こうして悲嘆に暮れる人からも聞くだけのことは聞かなければならない、刑事とは因果な商売である、一方、被害者の勤務先にも聞き込みの刑事はとんでいた…(とナレーションが重なる)
被害者の勤務していた「大田毛織」で、昨夜、山田さんがあんなところにいたわけをご存じありませんか?と山村刑事から聞かれた社員(南川直)は、さあ…というだけで背を向けるので、あの辺に親戚や友人はないんでしょうか?と別の社員に気いいて見るが、ええ…、聞いたこともありませんねとにべもない答えしか返ってこなかった。
昨夜、山田さんと一緒に飲んだって方は?と聞くと、私ですが?と名乗り出た社員(増田順二)がいたので。すると山田さんは昨日出た給料に手をつけたわけですね?と山村刑事が近づいて聞くと、それは自分の給料ですからねと相手は答える。
いやあ、僕はただ、山田さんが現金をいくらくらい持っていたか…と山村刑事が作り笑顔で説明すると、一緒に飲んだからって、人の財布の中まで知りませんよと社員は呆れたように言い返してくる。
そうですか…と落胆した山村刑事は、山田さんはいつも財布をお持ちだったのですか?と期待せず聞くと、持ってましたよ、黒い皮のね…と先ほど答えた社員が教える。
黒い皮!ところで、山田さんに女関係はなかったでしょうか?と聞くと、そんなことまで聞かなきゃならんのですか!とさらに別の社員(高原秀麿)が文句を言ってくる。
山村刑事は、いやあ、何しろ、殺されたところは自宅とはだいぶ遠い所ですからね…、ひょっとすると…と言い訳すると、バカなこといちゃいけません、あんな女房高校な良い親父はソウザエラにはいませんよと、一緒に飲んだという社員が言い返してくる。
みなさん、どなたもご存じありませんか?と山村刑事は部屋中の社員に声をかけるが、返事をするものは一人もいなかった。
相手に嫌われても憎まれても刑事は聞き込みを続けてゆく、被害者の日常生活を知ることは現場の聞き込みとともに捜査の第一歩なのだ(とナレーションが重なる)
とある売店にやってきた刑事が、あの〜、警視庁の者なんですがと笑顔で店員に話しかける。
誰か犯人らしいい後ろ姿をチラッとでも見かけた人はいないだろうか?何か手掛かりを知っている人はいないだろうか?ここでも刑事の期待は裏切られた、しかし諦めてはならない、刑事に必要なのは粘りとそして足なのだ(路面電車が通過する道路脇で、割烹着姿の奥さん二人に話を聞く刑事の姿をバックにナレーション)
殺人現場の草っ原を捜査していた長田部長刑事は、何かを咥えた犬を連れた男の子を目にとめる。
近づくと、犬が口から離したのは黒皮の財布で、拾い上げた長田は、血が付いてるな…、坊や、これどこで?と聞くと、あそこと少年は指差すので、材木んとこかい?と聞くとうんと言う。
金子刑事とともに、子供が喧嘩をしていた材木のところに来た長田部長刑事は、そこで女ものの中身が抜かれた財布も拾い上げる。
時計店に来た林刑事は、奥さんの話だと山田さんは昨夜修理した腕時計を昨夜持ち帰ったはずだというんですがね?と尋ねると、ははっ、奥さんのでございますね?と店主(東野英治郎)は答える。
ええ、確かに昨日、お渡ししましたというので、ああ、そうですか、そうすると、そいつもやられているわけだな…、で、どんな型の奴だったんですかね?と林刑事が聞くと、あれはこれと同じものでございまして、半年ゲップの約束で、山田さんにお渡しいたしましたと店主は同型の時計を出して説明する。
山田さんに売った奴の番号わかりませんか?と林刑事が聞くと、あ、わかります、密輸品じゃございませんからと店主は答えたので、電話借りますよと林刑事は頼み、あ、どうぞと主人も承知する。
刑事は新しい聞き込みがあれば直ちに事件が起きた地区の警察署に設けられた捜査本部へ連絡する。
富坂警察署内に設けられた「坂田栄三殺害事件捜査本部」の貼り紙がかけられた部屋
電話を受けた主任は、はい、あ、林君かと報告を聞く。
捜査本部はいわば捜査の中枢で、集まってくる情報を整理し、検討し、捜査方針を立てる(とナレーションが重なる)
うん、で、その時計の型は?ガーバンゴア?良し、良し、わかった、ご苦労と電話を切るが、その会話を長田部長刑事も山村刑事も聞き取っていた。
主任は、山村君、女物の腕時計の板触れだと言いながら、メモを渡したので、山村は、はいと返事して出かけてゆく。
さらに主任は、あ、長田君、この女物の財布は、被害者の奥さんも知らんと言うんだね?と確認する。
は、あんなところから持ち主の違う財布が二つも出てきたとなると、ホシはあの辺で街強盗でもやったんじゃない絵消化と机から立ち上がった長田部長刑事は答える。
うん、腕時計も取ってるんだしな、しかしそれなら、この持ち主から被害届出ているだろうと主任は応じる。
はあ、私もそう思って各署へ問い合わせてもらいましたが…と長田が言うと、うん、指紋は拭き取った様子だし、持ち主はわからんだろうな~と主任も諦める。
他に手掛かりでもあれば別ですが、あの原っぱをもう一度徹底的に探してみようと思いますと長田が答えると、金子刑事(山本麟一)もそばにやってくる。
主任も、うん、念のためやってみるか、この署の連中に手伝ってもらえと乗り気になる。
長田部長刑事と金子刑事が出かけると、腕時計の札手配しましたと山村刑事が報告に来る。
そこに電話がかかってきたので、山村刑事が受話器を取り、はい、捜査本部と答え、鑑識からですと言いながら受話器を主任に渡す。
はい!うん、黒皮財布についていた血は被害者の血と同じ、AのMN型?すると被害者の血と考えても良いですか?そうですか、いやどうも…と主任は礼を言う。
ホシはあそこで財布を2つ捨てたと言うわけか…と主任はその場にいた山村刑事に聞かせるように言う。
その後、原っぱの捜査をしていた金子刑事は、丘の上から見える丸の内線を何げなく目にしていたが、その関連性には気付かなかった。
夕方近くになった時、部長!と呼びかけながら長田部長刑事に近づいてきた警官が、イヤリングが落ちていましたと言って差し出してくる。
団地の風景(翌日の朝である、広い東京中ではともかく、この辺は一晩中、強盗も殺人も交通事故も起こらず、平和であった…とナレーションが重なる)
夫を送り出す奥さんが、さ、キャン、いってらっしゃいって、バイバイ!と抱いた子犬に話しかけ、あの…、お帰りは?と夫に尋ねる。
重役風の夫秋葉修造(須藤健)は、うん、今日ぐらいは早く帰れるだろう、じゃあと答え、出かける。
いってらっしゃいと見送った妻のところにやってきた長田部長刑事は、やあ、 秋葉広子(浜田百合子)さんですねと声をかける。
はい、そうですけど?と広子が答えると、長田は警察手帳を見せながら、警察の者ですが、あなたが昨日お出しになった遺失物届のことでちょっと…と伝える。
すると広子は、まあ!ありましたの?それはわざわざ…、あれはこないだの誕生日に主人からプレゼントされたばかりで…と嬉しそうに答える。
あ、これですか?と言いながら、長田がポケットからイヤリングを取り出すと、ええ、そうですわ!で、どこに?とひろこが聞くので、地下鉄の近くの原っぱですと長田部長刑事は教えると、え!ああ…と弘子は動揺したような態度になる。
確か、なくされたのは一昨日でしたね?と長田が聞くと、そこに戻ってきた秋葉に気づいて、ええ…、あの~、私、後で警察伺いますと弘子は伏し目がちに答え、あの…、あなた、どうなさったの?と夫に聞く。
秋葉は、忘れ物だよ、ほら、あの封筒の…というので、あら、だから私が…と広子は答えるが、長田に気づいた秋葉は、何だい、そこの人はと広子に聞く。
え、あの~、教会で寄付してくれって…と広子はとっさにごまかし、じゃあ、ちょっと取ってきますわと言いながら家に戻るので、あ、トースターの脇に置いてあるよと秋葉が呼びかける。
その場に待っていた長田が会釈をすると、大変ですな、朝から…と秋葉は労うので、あ、いや…と長田は戸惑う。
そこに、ありましたわと広子が封筒を持ってきたので、あ、ありがとう、ありがとうと受け取った秋葉は、寄付、少しぐらいならしてあげなさいと言い聞かせる。
え?はいと答えた広子は、また、いってらっしゃいと秋葉を送り出すものの、背後にまだいる長田部長刑事のことが気がかりのようだった。
じゃあ、行ってきますと出かけて行く刑事を見送り、窓から外を眺めていた主任のもとに、主任、池袋から聞いてきたと言って、財布の主が出頭してますが?と警官が知らせに来る。
ほお…、例の女物のかね?と主任は意外そうに聞き返し、はいと警官が言うので、良し、すぐ通したまえと指示する。
林刑事が主任に近づき、何事か話そうとした時、ドアが開いて部屋に入ってきたのは、どう見てもゲイの男娼(軽部昭二)だった。
あんたが例の財布の?と主任が聞くと、ええ、わざわざこんなところまで来るつもりじゃなかったんですけど、池袋の旦那がどうしても行って来いっておっしゃるでしょう?だから…と男娼は言う。
そりゃどうも…と驚いた主任は椅子を引いて、ま、かけなさいと薦める。
すみませんと言って男娼が座ると、早速ですが、あんたのはどんな財布ですか?念の為、ちょっと…と主任が聞く。
花模様の臈纈染なんですけど、まだ買ったばかりなのに擦られちゃって…、私、悔しくって…と男娼は答える。
それを聞いた林刑事は、擦られた!と真顔で聞き返す。
男娼は自分を見ている山村刑事に愛想笑いしてきたので、山村は驚いて身を引き、金子刑事は愉快そうにその様子を見ていた。
これですかな?と湯人が財布を出して見せると、まあ、そうよ、一昨日の晩、地下鉄を降りたらハンドバッグの口金が開いているでしょう?きっとあいつがやったのよ、私にぴったりくっ付いてくるからさと談笑は言う。
云々と林刑事が相槌を打つと、まさかスリだとは思わなかったけど…と男娼が言うので、なるほどね…、で、その箱師の人相覚えてるかね?と林刑事が突っ込む。
ええ、大体は…と言うので、あ、そう…と答えた林刑事だったが、そこに弘子を連れた長田部長刑事が帰ってくる。
長田から事情を聞いた主任は、じゃあ林くん頼むと指示し、あ、じゃあ、ちょっと君ね…と林刑事が男娼を誘ったので、まだどっかに行かなきゃならないの?と男娼は不満を口にする。
林刑事は、もう取っと付き合ってよと頼んで、男娼を部屋の外に連れて行く。
部屋を出る時、男娼はそこに立っていた広子を見て、つんとした表情になる。
長田部長刑事はそんな広子に、どうぞこちらへと声をかけ、主任の机の前の椅子を勧める。
あなたがあの原っぱの近くを通られたのは一昨日の夜11時くらいだそうですが…と主任は切り出す。
はいと広子が頷くと、そんなに遅くどちらへお出かけだったんですか?と主任は聞く。
ちょっと親戚へ…と言うので、どちらなんです?そのご親戚はと主任が聞くと、あの…、あそこから少し行った所の…と広子は言うので、番地をおっしゃっていただきませんか?と主任が追及すると、広子は顔を伏せてしまったので、いや、まあ、結構ですと主任は苦笑する。
実はイヤリングが落ちていた場所が、近くを通られたにしてはだいぶ草深いところなので…と主任は説明する。
しかもその辺の草には、誰かが腰を下ろしていた様子があったんですよと長田部長刑事も付け加える。
タバコの吸い殻が8本も落ちてましてね…、その内2本は口紅がついたのが…、まあ、吸い口の唾液で吸っていた人2人の血液型を今調べてはいるんですがね、口紅のついた2本は」奥さんのじゃありませんか?と主任が言うと、あの~、主人には内緒にして欲しいんですけどと広子は口を開く。
どなたかとご一緒だったんですな?と長田部長刑事が話しかける。
はいと広子が頷いたので、何時頃でしょう?と聞くと、9時過ぎから11時頃までですと広子は答える。
そうですか、実は一昨日の夜11時頃、あの下の原っぱで殺人事件があったんですよと長田部長刑事は明かす。
広子は驚いたように長田を見つめるが、ですから、何もかも正直に言っていただかないと大変面倒なことになるんですがね…と長田部長刑事は言い聞かせる。
奥さんは誰と一緒だったんです?と主任が問いただすと、広子は迷うようなそぶりを見せたので、隠さないで、秘密な事でしたら口外しませんからと付け加える。
広子は、あの~…と口を開く。
大学の校庭で、男女がバレーボールに興じている。
そこにやって来た金子刑事は、木村秀三(田口耕平)さんですね?と学生に声をかけ、ちょっと…と場所を移動する。
捜査本部では、広子が長田部長刑事に、あの~、帰ってはいけませんでしょうか?と聞いていた。
もうちょっと…と、奥さんのおっしゃったことが間違いないとわかるまで、もうちょっとお待ちくださいと長田部長刑事は答え、如何ですか?とタバコを勧めるが、あ、いいえと広子は遠慮する。
そこに、金子刑事が学生服の木村を連れて来たので、広子は仰天する。
木村の方も弘子の顔を見て顔を背けたので、広子も項垂れる。
長田部長刑事は、奥さん、いらんことを言うようですが、ご主人を大事にせんといかんですなと言葉をかける。
はい…と答えた広子は、私もうこれからは…と反省したように言う。
刑事たちとの打ち合わせを終え、立ち上がった主任は、あなた方はあの原っぱで、2人連れの男を確かに見かけたんですな?と確認する。
ええ、帰ろうってことになって、ふと気がつくと、積み上げた材木の辺りに2人の男が何かしてたんですと木村が答える。
そして背の小さい方は地下鉄の方へ降りて行き、背の高い方だけが道路のほうに行ったんですと言うので、舗装道路の方ですか?と主任が聞き返すと、ええ、そしたら、ちょうどルノーが走ってきて、そいつはそれに乗ったんですと木村は言う。
ナンバー分かりませんか?と主任が聞くが、さあ?そこまでは…と木村は言う。
それからあなた方はどうしました?と主任が広子に向かって聞くと、急いで地下鉄の方へ降りたんですと木村が説明するので、死体には全然気づかなかったんですか?と確認すると、ええ、一体どこで殺されたんです?と逆に木村が聞いてくる。
主任は、山村君、あの時刻にあの場所で客を拾ったルノーを問い合わせてくれんかと頼む。
鑑識課
鑑識課には手口や指紋で犯人を割り出す膨大なリストがある、電車などの乗り物でスリを働く、いわゆる箱師たちもその大部分はリストが作られ、人相も正面と真横の写真でわかる仕掛けになっている、正、それは前科のあるものの場合だけである(と、箱師の写真を確認する男娼の姿を背景にナレーションが重なる)
捜査本部に戻って来た山村刑事が、ルノーを使ってるタクシー会社に全部当たってみましたが、あん時刻にあの場所から客を拾ったのは一台もありませんでしたと主任に報告する。
おそらくそのタクシーは煙突でもやったんでしょうと長田部長刑事が推測すると、うん、俺も今それを考えていたt頃なんだ、煙突なら営業日記に記入せんからな~と主任も答える。
そこに鑑識から林刑事が戻ってきて、主任、ありました、ありましたと言いながら、箱師の写真を取り出す。
それをみた主任は、ほお、これがあの麗人のハンドバッグから擦ったやつか、横田小吉(不明)58歳、身長5尺1寸、スリ、前科11犯、住所不定か…と裏面を読み上げる。
こいつがあの原っぱに来た小男の方だと上手いんだがなと長田部長刑事は指摘したので、そうですね~と林刑事も答えるが、主任はすぐ手配したまえと指示する。
すると山村刑事が、主任、私はルノーで走り去ったと言う背の高いのをなんとか追ってみたいと思うんですがと志願する。
ほお、何かうまい方法でもあるのかね?と主任が聞き返すと、ええ、交通課の話だと、エントツをいつもやっている不良運転手の溜まり場があるそうなんで。そこへ潜入して聞き込みをやってみたいと思うんですと山村刑事は答える。
なるほど…、しかしうまく行くかね?と主任は不安がる。
運転手に扮した山村刑事はルノーに乗って、夜、その溜まり場に単身乗り込み、よお!どうだい、景気は?と外でタバコを吸っていたメガネの運転手(大東良)に話しかける。
さっぱりさ、ルノーか?ルノーのレートも下がったってね?と、山村を仲間と思った相手は気安く聞いてくる。
うん、国産車がこう出回っちゃあねと山村も話を合わせる。
全くだと相手が言うので、会社に尻は叩かれるし、歩合は減らされる、これじゃあエントツしたくなるよと小声で山村が囁きかけると、同感だよと相手は肩を叩いて、一緒に溜まり場になっている定食屋に入る。
メガネの運転手は中で食事をしていた仲間に、どうだい、景気は?と話しかけると、まあまあだななどと相手は答える。
客が大きなカレー一つ!と注文したので、はい、大盛りカレーと女店員が答える中、山村は、メガネの運転手が話しかけた席の隣のテーブル席に腰掛ける。
売り上げに見せかけ、持っていた札束を勘定し始めた山村が、隣の席の運転手に、よお、今日のルノーのレートは?と話しかける。
相手は、まあ13やったら良いところやねえかと答える。
山村が数えていた札束を見た隣の運転手(清村耕次)が、だいぶやったじゃないかと声をかけて来たので、ああ、ついたんだっよ、横浜さ、おい、酒くれと山村は演技をする。
すると、メガネの運転手が、今日も新宿で会ったぜ、煙突掃除と隣の席の運転手に話しかける。
ああ、あのメガネかけた、ひどいんだろ?と同席の運転手が答えると、そう、そうなんだよ、いつだったか、あいつに見つかっちゃってな、うるせえんだよ、あの野郎!と隣の席の三人が話し合い始める。
すると、奥で飲んでいた運転手(富田仲次郎)が、焼きを入れてやれよ、うるせえ奴じゃと口を挟んでくる。
さらにその奥の運転手は、おい、そこの若いの!と山村刑事を指差してくる。
え?俺かい?と山村が返事をすると、店内の運転手全員が見守る中、ちょっとこっち来なと奥の運転手は手招く。
何だいと?とコップ酒を持って山村が近づくと、お前さん、どこのタクシーだ?と相手が聞いてくる。
暁タクシーよと答えると、暁?どこの?会社はどこにあるのかってんだよと相手は立ち上がってん睨んでくる。
赤羽さと山村が答えると、赤羽?ロクさん、おめえさん、暁タクシーなんて知ってるか?と立ち上がった運転手が近くにいた他の運転手に聞く。
すると聞かれた運転手がいいやと答えたので、聞いたかい?赤羽の門が知らねえとよと立ち上がった運転手は山村に伝える。
山村がその場を離れようとすると、突き飛ばしてきた相手は、おめえさん、指導員だろう?旅客自動車運営員会とやらのよと相手は指摘してくる。
山村は、違うよ、すまねえ、実は1人で潜りでやっているタクシーなんだと頭をかきながら弁明するが、相手は、ふん、小細工はやめな!と言うので、山村は無表情になるが、客たちが騒ぎ出したので、大人しく帰らねえかよとまた突き飛ばすと、おいみんな、こちら指導員の旦那だから、顔よく拝んどいて、街で見かけたらバンパーに引っ掛けて殺したりしねえように良く注意しろよと相手は呼びかける。
大人しく引き下がってもらおうというと、てめえなんか来るところじゃねえよ!と、他の客が山村の上着を投げて寄越したので、山村刑事は他の客に追い出されるように引き下がるしかなかった。
上着を着てルノーに乗り込もうとすると、中に長田部長刑事が載っていたので、あ、長田さん!と山村刑事は喜ぶ。
どうだった?と長田が聞いて来たので、ええ、指導員と間違えられて散々でしたと山村刑事は打ち明ける。
そうかい、実は心配になって来てみたんだがねと長田が言うので、完全な黒星でしたと山村も負けを認め、運転席に乗り込むので、まあ良いさ、捜査に落胆は禁物だよ、夜泣きそばでもやってたらいっぱいずつやってくか?と長田は慰める。
山村は笑顔になって、はっと答えるとルノーを走らせる。
その頃本部では、みんな帰った中、所轄の刑事と林刑事が2人でラーメンを啜っていた。
その時電話が鳴ったので、素早く林刑事が受話器を取り、はいはい、本部です、え?本部ですが…、もしもし?え、犯人を教える?と応答したので、ラーメンを食べていた刑事も注目する。
あんた、本当に知ってるんですか!もしもし?あんた、どなたです?ええ?もしもし!もしもし!もしもし…と林刑事は呼びかけるが、その声で隣室からやって来た金子刑事が、切れたんですか?と聞くと、うんと答えて林刑事は受話器を置く。
イタズラじゃないですかね?と金子刑事は言うが、林刑事は気になるようだった。
明くる朝、すなわち捜査開始以来3日目の朝、またも事件が発生した、国電の線路上で発見された男の礫死体を当局は他殺と断定、この現場にも捜査一家は刑事を派遣した(と、電車が走る線路脇の道を走る人々、鑑識現場の様子を背景にナレーション)
遺体の喉の辺りには締めたような痕がありますと捜査第一課長に、鑑識課員が報告する。
両腕には力一杯掴まれた痕が歴然としています、後は右手のひらの中には5本ばかり黒い髪の毛を握ってましたね、やっぱり扼殺されたんじゃないでしょうかと、鑑識課員は推測する。
この死体は確かごま塩の五分刈りでしたね?と所轄刑事(菅沼正)が確認すると、握っているのは本人のもんじゃありません、もっと若い人と鑑識課員は答える。
なるほど、実はあの辺の草が相当踏み倒されて乱れた足跡も残ってるんです、きっと揉み合ったんでしょうなと第一課長が推測する。
そこに林刑事が車で駆けつけ、所轄刑事と挨拶する。
よお林君!と呼んだ所轄刑事に、連絡ありがとう、俺たちの殺しに関係あるらしいって話だが?と林刑事が聞くと、うん、まあ、仏様を見てくれよと所轄刑事は勧める。
被らせていたシートをめくって遺体の顔を見た林刑事は、お?これは!と驚いたので、やっぱりそうか…と所轄刑事は納得し、課長と互いに顔を見合わせる。
横田小吉ってスリの爺さんだ、昨夜手配したばかりだったと林刑事は教える。
そこに老婆(近衛秀子)を連れた刑事(滝謙太郎)が近づいてきて、この近くのタバコ屋さんですが、昨夜11時過ぎに店の赤電話を借りに来た男じゃないかと言ってますので、面通しを頼みましたと課長に報告する。
ご苦労さんと課長が労い、さあ、おばあさんと刑事が促す。
遺体の顔を見た老婆は、ああ!と言ったので、間違いありませんか?と刑事が確認すると、はい、この人が電話をかけてたらもう1人若い人が来て、無理やりこっちの方に連れていきましたよと老婆は証言する。
それを聞いていた林刑事は、課長にじゃあと挨拶して戻って行く。
捜査第一課が手配したスリは死んだことが確認された、しかし捜査第三課の刑事たちは、相変わらず今朝も網を張っている、浜の真砂は尽きるともスリは尽きないからである…(走る列車内の様子を背景に、ナレーションが重なる)
列車に乗っていた捜査第三課野本部長刑事(加藤嘉)と婦人警官(山本緑)は、さりげなく車内の様子を伺っていた。
野本部長刑事と婦人警官が乗客の中に入り込むと、同じように乗客の中に入り込んできた男女(千石規子 、稲葉義男)があった。
2人に気づいた野本部長刑事と婦人警官がさりげなく近づく。
すると、女の方がサラリーマンのスーツの下から財布を抜くのが見えた。
それを男の方が受け取った瞬間、野本が手を押さえたので、気づかれたと知った男スリは車内を逃走しようとしたので野本部長刑事が抵抗するな!と諌めながら組み付く。
次に停まった駅で、何しやがんでえ!と言いながらドアから逃げようとする男スリを野本部長刑事が押さえ込み、手錠をかけたので、ホーム上は野次馬が取り囲む。
女スリを確保していた婦人警官は、被害者の方も一緒に来てくださいと言って、野本部長刑事の後に続く。
捜査本部に戻ってきた林刑事が、他の刑事たちを前に、机に地図を置いて、現場はここなんですがねと報告すると、すると昨夜、電話で本ボシを密告すると言ってきた男は、時刻と状況から殺されや横田小吉と考えても良いわけだな〜と主任が指摘する。
林刑事は、はあ…と肯定する。
主任、小吉をタバコ家の電話から無理やり連れ去った若い男というのは、我々が追っているルノーで立ち去った男と一本じゃないでしょうか?と長田部長刑事が指摘する。
うん…、共犯の小吉が密告しそうなので殺してしまったってわけか…と主任も賛同すると、はあと長田は返事する。
そうすれば一種の仲間割れなんだから、スリ仲間で聞き込めんもんでしょうか?と林刑事は提案する。
そう…、一応、捜査三課に依頼してみるか…、金子君、君、三課の方に出向いて、連行されて来るスリに片っ端に当たってみてくれんかね?と主任が頼むと、はあ、じゃあ、早速…と金子刑事は出かける。
一旦会議が終わるが、主任は山村刑事が、ここをちょっと…と新聞紙を見せてきたので、うん?親切な運転さん?これは投書だね…と言うので、それを聞いた林刑事は、山村君、何だい?と林刑事が興味を持って聞いてくる。
つまり、起き忘れていた重要書類をルノーの運転手が封筒に刷り込んだ社名を頼って届けてくれたと言う美談なんですが…と山村刑事は答える。
それ0は「ちまた」という新聞の投稿欄に載った記事だった。
98=
うん…この投書主は、あの晩、あの原っぱの近くで降りてるらしいねと主任は気づく。
.,/98/=
はあ、そこなんですと山村刑事は指摘する。
こ0な21いだ手配した時は、あの原っぱ近くから客w拾ったルノーを目当てでやりましたが、改め7てもう一度あの近くで午後11時前後に客を下ろしたのを調べてはどうでしょうと山村は進言する。
いや、しかし、それは大変な仕事だぞと林刑事が意見を言うので、大変でもやってみたいと思うんですが…と山村刑事は張り切る。
うん…、タクシー会社がそこまで協力するかね?と主任も不安がるので、いや軒並みに回って調べるつもりですと山村刑事は訴える。
その熱意を感じた主任は、そうか、良かろう、やりたまえと命じる。
警視庁に来た金子刑事は、三課の野本部長刑事を訪ねる。
野本は金子に、捕まえたばかりの男女スリを紹介したので、まずは女スリに金子刑事が持参した横田小吉の写真を見せると、女スリが反応したので、知ってるのか?と聞くが、金子君、そいつはダメなんだと言いながら人差し指を自分の口の前に出して見せる。
女スリは口が不自由と知った金子刑事は、そうですかと言い、お前はどうだと男スリの方に写真を見せる。
男スリは、あ、これは!と驚いたので、知ってるんだね?と金子刑事が聞くと、知ってるも何も、あっしどものお父っつぁんでさあと、女スリの顔をチラ見して言うではないか。
ほお~と金子刑事が驚くと、こいつの実の父親で…、やっぱりパクられたんですか?と男スリが言うので、いや、殺されたよと教えると、男スリはえっ!と驚く。
しかし女スリは耳が聞こえないのでそれを理解してないようだった。
いつです?と男スリが聞くので、昨夜遅くらしい、今朝早く死体が見つかったんだと金子刑事が教えると、そりゃ~と男スリは狼狽するので、母ちゃんにも知らせてやんなと金子刑事は女スリをチラ見しながら言い聞かせる。
へえと答えた男スリは、小吉の写真を女スリに見せ、ジェスチャーで知らせると、女スリは驚愕のあまり喚き出す。
それを気の毒そうに見やりながら、誰に殺されたか、見当がつかんかね?と金子刑事が男スリに聞くと、そう…、でも、お父っつぁんは薄々解ってたらしいんです都男スリが言うので、…と言うと?と金子刑事が聞くと、一昨日の晩会った時、そんなこと言ってました、なんでも、仲間が殺しをやったんで意見したが、そいつが不味かったって…と答える。
その仲間ってのは誰だね?と聞くと、さあ~、そいつはちょっと…と言うので、とぼけんじゃないよ!と金子刑事が声を荒げると、いや、どうしても口を割ってくれなかったんですよ、お父っつぁんは仁義の硬い昔の人でしたから…と男スリはいう。
お父っつぁんもやっぱり、箱師専門だったのか?と金子刑事が聞くと、ええと言うので、すぐに金子刑事は本部で電話を入れる。
本部で受話器を取った主任は、はい?やあ金子君か…、何!小吉の娘夫婦が!そうか…、それは良かったですと喜ぶが、うん、うん…、小吉が殺されそうだと漏らしていた?で、その仲間ってのは?集団スリを組んでいた中の1人ってんだね?うん、うん…と会話を続けていた時、警官が赤ん坊を背負った女性を案内してきたので、ああ、山田さんの?その節はどうも…と林刑事が声をかけ近づく。
あの~、実はこんなことをご相談に上がるのは何かと思いましたが…、時計屋さんからこんなものが…と山田の細君は言いながら葉書を取り出す。
そうですかと受け取った林刑事は、ええと…、まずはどうぞこちらへと席を探す。
そんな山田の細君に、どうも…と挨拶した主任は、じゃあそうしようと言って電話を切ると、うん、中田君、早津君(外野村晋)、三課が協力してくれるそうだから、君たちは集団スリを専門に捕まえるんだ、その中にきっとホシはいるに違いない、良いね?と指示を出す。
一方、隣室で時計屋からの手紙を読んだ林刑事は、ああ、あの腕時計の残金を払えっていうんですねと納得する。
品物も取られてしまっているのに、いっぺんに払えなんて、いくらうちの人が死んだからって随分だと思うんです、まだ退職金だって降りてませんし…、これからどうやっていこうかと、そればっかり考えてますのに…と山田の妻は愚痴をいう。
それを聞いた林刑事は、ええ、よくわかりました、時計屋には私から交渉してあげましょうと答え、すぐさま、本部の電話でえ時計屋を呼ぶと、あ、こないだお邪魔した本庁の林ですがね…と問い合わせる。
電話を受けた時計屋の主人は、はい、はい、ああ、刑事さん、ああ、いつぞやは…、は?山田さんの請求が?あ、そうでございましたか、あいすみません、店員が事務的に出してしまったんでございましょう、ええ、良いよ、勘定なんていつでもお宜しいように…、じゃあ、ごめんくださいまし…と言って電話を切るが、何も警察に言いつけに行くことなんかないじゃないか、犯人が捕まらなきゃ、いつまで経っても時計なんかでやしないよ…とぼやく。
「東京コンドルタクシー株式会社」で、山村刑事は一人地道な捜査を続けていた。
一方、本庁の三課では、野本部長刑事が16mmフィルムを映写しながら、長田部長刑事らにスリの実態を伝える講義をしていた。
これが「サシ」です、犯人は常に向かい合って狙います、エレベーターとか電車の中とか、主に立ち止まっている時ですね、それから犯人が集団の場合は、しのいだ…、つまりスリとったものは次から次へとリレーされて最後の男…、まあ俗に言う吸い取りまで届くと言う仕掛けですと野本の解説は続く。
これは「肩越し」、絵の低い奴はこれが専門です、まあ、集団スリって奴は大体何かの「ピーチ」、つまり手下ですが、そいつらが5人ぐらい組になってしのぎ、組のメンバーは時に応じて組み替えると言う仕掛けです、つまり、え~、顔ぶれを変えると言うわけですな…と野本の説明は続く。
あ、それからこれは、さっきの「肩越し」の逆で、犯人の方の背が高いと、いわゆる「背越し」と言うてですと野本は映像を見ながら言う。
一方、山村刑事のタクシー会社訪問は続いており、つまりこの近くで客を下ろしたと思われるルノーなんですがね…と趣旨を説明すると、はあ、そうですね~、事務所で調べてみましょうと会社の人が言うので、お願いしますと山村は答える。
長田部長刑事は野本部長掲示と共に山手線に乗り込んでみる。
銀座のビルには「100円ランチ」の垂れ幕が下がっていたが、その銀座がネオン煌めく夜になる。
「モーターズ共進」と言うタクシー会社では、受付でメモを取った社員から、この三人だけで宜しいんですね?と聞かれた山村刑事が、ええ、間違いなく本部に出頭してもらえますかね?と頼んでいた。
すると社員が、明日は当番日ですから大丈夫だと思いますと答えたので、山村は笑顔になり、お願いしますといい、ご苦労さんでしたと社員も挨拶する。
深夜0時間近、丸の内線は終点池袋に到着する。
降り立った長田と野本だったが、やあ!と帽子を取って野本に挨拶して帰る中年サラリーマンがいた。
どなたです?と長田が聞くと、スリです、三課に長くいると顔を覚えられてね…と野本は苦笑しながら答える。
そんなの元は、地下鉄構内のショーウィンドーの前で止まると、長田さん、事件が解決したら、奥さんに1つどうです?と、飾ってあった婦人用品を見ながら笑う。
構内アナウンスが、本日の運転はこれで全部終了でございますと伝える中、長田は顔の汗を手で拭いて帰路に着く。
翌日は雨だったが、捜査本部では、林刑事が新聞に載った小吉殺しの記事を主任に見せていた。
「殺人容疑者が殺された」「小石川事件 捜査四日目で振出しへ」「指名手配中に死体となる」「仲間割れのリンチか」などという見出しを主任は読むと、「振り出しへ」か…、山村君は?と林刑事に聞く。
お茶を飲みかけていた林刑事は、下の調べ室で運転手当たっていますと教える。
それを聞いた主任は、渡辺君(石島房太郎)、すまんが手伝ってくれと頼む。
取調室では、出頭した数人の運転手たち(岡部正純ら)が、ああ、早く来てくんねえかな…、一体何を調べようってんだろう?全く、置き場の時でも良さそうなもんなんだがな〜などと雑談していた。
そこに渡辺刑事が取調室に入ってゆく。
室内では、山村刑事が別の運転手を前に、するとそこで客を下ろした後、君は池袋まで空車で行ったんですね?と話を聞いていた。
ええ、あの時間じゃ、盛場に出た方が間違い無いですからねと運転手は答える。
そうすると、この電車通りを行ったのかね?と山村刑事は机に置かれた地図を指しながら聞く。
ええというので、じゃあ、一斉検査に引っかかったろう?と山村が指摘すると、はあ?と運転手は驚き、あの晩はこの辺でやってたんですよと山村は教える。
しかし運転手は、そうね〜、やってなかったですねと言うと、そうですか、どうもご苦労さんでしたと山村刑事があっさり納得したので、あの〜、もう良いんですか?と運転手が戸惑ったので、ええ、仕事の邪魔して悪かったなと詫びる。
いやあ、旦那にそう言われちゃ〜と恐縮した運転手は立ち上がり、じゃあどうも…と頭を下げ出てゆく。
出そうもありませんねと山村がぼやくと、渡辺刑事も、ああ…と言いながら頭を掻く。
入り口にいた警官が、次の方どうぞと、待っていた運転手に声をかける。
新しい運転手が来ると、免許証と山村刑事は要求し、相手が出した免許証を見ると、阿部三郎…、あ、あなたですか?こないだ新聞に親切な運転手さんって出てたの?と気づく。
いやあ、お恥ずかしい話ですよ、ただ当たり前のことをしただけなのに、あんな風に書かれちまいまして…と阿部は笑顔で答える。
いや、その当たり前がなかなかできんからね、早速ですが、あの晩、忘れ物をした客を降ろしてからどっちの方に行かれましたか?と山村刑事は聞く。
ああ、池袋ですと阿部は答えたので、通った道は?と聞くと、電車通りですと言うので、これですか?と地図で示すと、ええ、そうですと阿部は答える。
とすると、この辺で一斉をやってたはずですが?と山村刑事がさっきと同じような質問をすると、一斉?ああ、やってましたっけと阿部は笑顔で答えたので、阿部さん、あなた、こっちの原っぱの方に来たんじゃありませんか?と山村は地図を指して指摘する。
は?いえ、私、今旦那に申し上げた通り…と言うので、君、本当は、電車通りでは一斉なんかやってなかったんだよと渡辺刑事が教える。
それを着た阿部は項垂れたので、どうなんですか?と山村刑事が再度聞くと、すいませんと詫びるので、じゃあ原っぱの脇を通ったのか?と渡辺刑事が攻めると、はいと言うので、誰か乗せたのか?と質問を続ける。
すると阿部は、すいません、旦那、会社には内緒にしてくださいませんか?実はそのちょっとエントツで…と打ち明ける。
煙突がバレたらクビになるんだろう?と渡辺刑事が確認すると、ええ、そうなんですと阿部は答える。
美談の主がエントツとは残念だね〜と渡辺刑事は呆れる。
申し訳ありません、ついその〜と阿部が言い訳をしようとしたので、で、煙突の客は男か女か?と山村刑事が聞くと、若い男でしたと阿部は言うので、降ろした場所は?と渡辺刑事が聞く。
「青葉荘」と言うアパートの周辺も土砂降りだった。
阿部の運転するルノーでそのアパート前まで乗せてもらった山村と渡辺刑事は、降りた阿部からあの部屋でうと二階の一室を教えられる。
どうしてあの部屋とわかるんだね?と山村刑事が聞くと、釣り銭がないって言いましたら、じゃあ細かいのを取ってくるからってあの部屋に…と阿部は答える。
はあ…、今は誰もいないらしいなと山村刑事が二階を見上げると、山村君と先に入り口に入っていた渡辺刑事が呼ぶのでそちらに向かう。
細野雪江、商売は踊り子ということだと、今管理人から聞いたことを渡辺刑事が教える。
いやどうも…と山村が礼を言うと、あお〜、何か細野さんが?と管理人(吉川英蘭)が聞いてきたので、
ちょっと…、今は留守ですか?と山村が聞くと、さあ、今いるかと思うと、二日も帰ってこなかったり、よくわからんですが…と管理人は困り顔で答えるので、一人暮らしなんですか?と山村が聞くと、はあ…、でも時々若い男が訪ねてきているようですよ、背の高い…と管理人は言う。
背の高い男?と山村刑事は確認する。
キャバレーで踊っていた踊り子(奈良あけみ)に、君、警視庁の方だ!と支配人らしき男が呼びにくる。
じゃあどうぞ…と支配人がその場から離れると、支配人さんに聞いたんですが、あなた細野雪江さんと一番親しかったそうですが、いつ辞めたんですか?と山村刑事が聞くと、ええ、もう三月くらい前ですよ、いつまで踊っても使用がないからって…と踊り子は言って立ち去るとするので。ねえ君、今何やってるんだろう?と追い縋って聞くと、刑事さんじゃ、ちょっと言いにくいわと言う。
パン助か?と聞くと、いやそれほどじゃあ〜、ほら、この頃流行っているでしょう?コールガール、私にもやらないかって随分勧められたわと踊り子は言うので、細野さんにかい?と聞くと、ううん、村子クラブの会長さんとか言う人によと踊り子は教える。
会長さん?で、その男の事務所わかるかね?と聞くと、ええっと、あれ+、ちょっと待ってね、あ、ありましたわと言って踊り子が出したのは一枚の名刺だった。
山科と書かれたその名刺を持って本部に帰ってきた山村刑事は、そんなわけで、細野のアパートには渡辺さんに残って張り込んでおりますが、もっと積極的に出てみたらどうでしょう?と主任に提案する。
っていうと、この山梨って男に電話でもしてみようってのかい?と名刺を持った主任が聞く。
ええ、細野にコールしてみようと思うんですと山村が言うと、うんと主任は頷き、商売だから、案外簡単いでてくるかもしれないなと林刑事も答える。
良し、やりたまえ!と主任は指示する。
山村刑事はその場から電話をかけ、あ、もしもし、山科さんいますか?と問いただすと、交換らしいですと主任に伝える。
送話口を塞いで、出ましたと言うと、もしもし、女の子を世話して欲しいんだがねと電話相手に話しかける。
え、うん、そう…、え?いやそれがその〜。実はその会員じゃないんだけど、会員の人から評判を聞いたもんでねと山村は調子良く話す。
良いじゃないか、そんな硬いこと言わなくってさ〜と粘っていた山村が、おい君!もしもし、もしもしと呼びかけ出したので、相手に断られたとわかる。
畜生…と山村が言うので、切れたか?と林刑事が確認し、だいぶん警戒してやがんなと主任を見る。
最近保安課がびしびし取り締まり始めたからな〜と主任は笑顔で答える中、山村刑事がまた電話をかけ始めたので、なんだ、もう一回掛け直すのか?と林刑事が聞くと、ええ、もしもし、電話局ですか?ちょっと伺いますが、お宅の局の3422番から5番までの所在地はどっか、知りたいんですが?え、だめ?そうですか…と言いながら山村が電話を切ったので、何だって?と林が聞くと、通信法違反になるから教えられないって言うんですと山村は答える。
はは〜と林刑事が感心すると、行って何とか山科の居所を調べてきますと山村刑事が言うと「、しかし我々の目的は会長の山科じゃなくて、コールガールの細野なんだからな、せめて細野の面でも取れてりゃ別なんだが…と主任が指摘する。
しかし、一応やってみますと山村刑事がやる気を見せたので、良し、俺も行こうと林刑事も声をかける。
国鉄線ご利用の方はお乗り換えでございますとのアナウンスが流れる中、長田部長刑事と、野本部長刑事はその日も丸の内線から降り立っていた。
階段のところで、婦人警官ら他の捜査陣と合流したので、どうだった?と長田が声をかけると、さっぱりです、上りに乗り換えてみますと言うので、うんと答えて自分らは国鉄線へと向かう。
雨の風景を窓から眺めていた主任は、電話が鳴ったのですぐに取り、はい、あ、山村君か?番号のうちがわかった!え?新宿三越脇の喫茶店?ふ〜ん「トレモロ」?と応答する。
「TEA ROOM TOREMOLLO」と窓ガラスに描かれた喫茶店に傘を刺した林刑事と山村刑事が入ると、いらっしゃいませ、いらっしゃいませとウエイターが入り口で出迎える。
店内では、全然苦手なんだよね、明後日学校行くからさ、貸してくんないかな?頼むよ!田中と「トレモロ」のきてるんだよ、うん、すぐ行くから待ってろよなどと学生らしき青年が席ごとに置かれた電話をしていた。
席につくとウエイトレスが来たので、これ、外からの通じるのかね?と席の横に置かれた電話のことを山村が聞くと、はい、交換台をお名前を通じてくださればお取り付けいたします、何にしましょうかとウエイトレスはいうの九で、あ、コーヒーでもらおうかと林刑事が注文する。
はい、お2つですね?と確認してウエイトレスは立ち去ったので、これが山科の事務所とはやつも考えたもんだと林刑事が感心する。
ええ、経費は1日コーヒー一杯で、それに第一、手入れされても安全ですからねと山村は説明する。
うん、ところでこの店のどっかに山科がいるはずなんだが…と林刑事は店内を見回す。
あそこにメガネをかけて一人の男がいますね、あいつ当たりじゃないでしょうか?と山村刑事が発見したので、うん、いずれにしても若いアベックじゃないだろうな…、一応試してみるかと林刑事も答える。
備え付けの電話の受話器を取った林刑事は、あ、もしもし、ここの店で山科って人は来てるはずなんだけどな、いる?そう、繋いでくれ、あ、もしもし山科さん?いや実はね、あんたんところに、良い子1人世話しようと思ってね、いやあんたんとこが上玉揃いだって評判聞いたんでね…、ぜひ世話したいと思ってさ…と話しかけている間、立ち上がった山村刑事が、電話をしている相手を見つけようとする。
先ほど目をつけたメガネの男は電話をしていなかった。
え?そんなに警戒することはないじゃないか、俺だって玉転がしで飯食っている男だよと林刑事が話を引き延ばす間、山村は必死に店内を見回していた。
え?お断りする?邪険なこと言うなよと林刑事はまだ引き延ばそうとしていたが、そこで電話を切られてしまう。
立ち上がった林刑事が山村刑事に近づくと、あいつです、あいつ確かに今電話を切りましたと山村刑事は店の奥でコーヒーを飲んでいた中年男を見ながらうので、良し、当たってみようと林刑事も一緒にその男の席へと向かったので、コーヒーを運んできたウエイトレスは戸惑い、あの〜と声をかけてきたので、あ、そこ置いといてと元いた席を指示した林刑事と一緒に向かった山村刑事は、山科さんですか?と女性と同席していた中年男に声をかけ、林刑事もちょっと御足労願えませんか?と警察手帳を見せながら申し出る。
何です?と山科(阿部九洲男)が聞くので、いや、ちょっとお伺いしたいことがありましてね、お手間は取らせませんと林刑事は同席の女性(三戸部スエ)を気にしながら伝える。
すると山科は黙って立ち上がって、女も同行する。
するとあんたはお客の呼んだ子を山科のところに連れて行くのが役目なんだね?と本部に来た女に主任は問いただす。
ええ、お客さんから紹介料をもらわなくちゃなりませんからと女は答えるので、じゃあ今日、細野雪江を誰かのところに連れて行ったかね?と聞くと、さあね、私は誰が細野さんやら知らないし、うちは買いも売りも全部番号で呼んでいますからと女は言う。
そこにやってきた林刑事は、主任、山科の持ち物を全部調べましたが、メモらしいものは1つもありませんと報告する。
ない?しかし会員の控えとか抱えている女の子の連絡先ぐらいどっかにありゃせんのかね?と主任は不思議がるが、はあ、全部調べたんですけど…と林刑事も困惑したように答える。
それを聞いていた女は笑いながら、そんなもんありゃしませんよ、あるとすれば会長さんの頭の中でしょうよと嘲ってくる。
頭の中?と林刑事が睨むと、ええ、会長さんは全部頭の中に覚えちゃってるんですと女は答える。
証拠を掴ませないってわけか…と主任は感心する。
外はまだ土砂降りだった。
そんな中、渡辺刑事はまだ細野のアパート「青葉荘」で張っていた。
そこにやってきたのは傘をさした山村刑事だったので、やあと渡辺は安堵の表情を浮かべる。
すみません、戻ってくるのがすっかり遅くなっちまってと山村刑事は詫び、現れませんか?と聞くので、渡辺刑事は、ああと無念そうに答える。
まさか勘づきゃせんだろうな?と山村は案じる。
取り調べを受けていた山科は、細野だか太野だか知りませんが、私は若い娘とはてんで関わりありませんよとタバコを吸いながら嘯いていた。
主任は机を叩いて、とぼけるんじゃない!と声を荒げる。
お前がコールガールクラブの会長だってことはちゃんとわかってるんだぞと攻めると、え?何か証拠でもあるんですか?と山科はとぼける。
あんたと一緒にいた女がそう言ってるんだよと、同席していた林刑事が言うと、当節自供というやつは信用しないことになってんじゃないんですか?何か裏付けになる証拠がない限りはね…と山科は自信ありげに言い返してくる。
だって君はあの喫茶店の電話使って取引やってるじゃないかと林刑事が突っ込むと、それは取引はあったかもしれませんが、何の取引だかわからなかったでしょう?通信の秘密は法律で守られているんですからねと山科は苦笑する。
人の電話を盗みぎくなんてことは、警察の方にだってできないはずですからな〜と山科が事情に精通しているようなので、主任も苦笑するしかなかった。
電車に乗っていた野本部長刑事は長田部長刑事の肩を叩いて客席で居眠りしていたサラリーマン客に目線を向ける。
その隣に座った男(潮健児)と、前に立った男がそのサラリーマンを囲んだからだ。
前に立った男がサラリーマンの膝に置いてあった鞄を片足でそっと横の男の方へずらし、隣の男がその鞄をさらに横に立っていた男に渡す。
それを見ていた長田は動こうとするが、それを野本が制してもう少し様子を見ることにする。
鞄を受け取った男はさらに別の男に鞄を渡し、さらに次の男に渡し、その男が車両を移ろうと歩き出したところで、野本部長刑事が飛びかかる。
駅に着いたので、集団スリは逃亡を図るが、野本と長田らは必死に数名のスリを取り押さえようと格闘する。
「青葉荘」前では、雨が上がった深夜になっても渡辺刑事と山村刑事の張り込みは続いていた。
そこにタクシーが近づいてきて停まり、そこから女が降り立ったので、渡辺刑事と山村刑事が注目する。
女性はそこで立っていた山村を避けて急いでアパートに入ろうとするが、あ、もしもし、細野雪江さんですね?と山村刑事が声をかける。
雪江(小宮光江)は山村を睨むような顔だったが、ええと答えたので、捜査一家のものですがと言いながら、警察手帳を出した山村刑事は、急に逃げ出そうとした雪江の腕を掴んで、待ちたまえ!と止めたので、何するんだよ!と雪江は抵抗するが、渡辺刑事も加勢する。
本部に連行して調べた雪江の腕時計の番号を照合した山村刑事は、殺された山田さんが盗られた腕時計に間違いありませんと主任に報告する。
そうかと言ってその腕時計を手にした主任は、それを見せながら、どうして手に入れた?と聞くが、雪江はそっぽを向いていた。
中身を見せてもらうよと断って、主任は雪江のバッグを改める。
手帳を見つけて山村刑事に渡した主任は、財布の中に男の写真を見つけたのでニヤリと笑う。
主任はその写真を取り出し、君はこの男から時計をもらったんじゃないのか?と聞くが、雪江が無視するので、正直に言わないか!と山村刑事も攻める。
しかし雪江は頑なに沈黙を続けるので、主任は林君と呼び、何事かをささやきかける。
林刑事はすぐさま退室し、山村刑事は雪江に対し、おい、四日前の夜、アパートに入って行ったのはあの男なんだろう?と聞く。
それでも雪江が無視するので、山村刑事は主任に、連れてきますと小声で伝えると自分も部屋を後にしたので、流石に雪江は不安そうな顔になる。
林刑事が男の写真を持って店に来たのは、横田小吉殺しの時の目撃者の老婆のタバコ屋だった。
ああ、これはこないだの夜、殺された人があの電話かけてる時やってきて無理やり連れ立った若い人じゃありませんかねと老婆が言うので、やっぱり!それ間違いありませんね?と林刑事は確認する。
ええ、間違いありませんと老婆が言うので、林刑事はありがとうと礼を言って、すぐさま帰って行く。
帰ってきた林刑事から報告を受けた主任は、そうか…、するとこいつは小吉殺しのホシと決まったわけだが、おい、こいつのアジトを言わないか?と雪江に迫るが、雪江は口を開こうとしなかった。
そこに山村刑事が連れてきたのはルノーの運転手阿部三郎だった。
やあ、夜分にどうも…と主任が恐縮すると、いやいやと阿部は言うので、こいつなんだけどねと言いながら主任から受け取った男の写真を山村刑事は見せる。
あ、この人ですよ、私はあの晩、確かにこの人をあそこのアパートまでと阿部が証言したので、そうか、ありがとう、帰って良いよと山村は答える。
はいと阿部は答え、ご苦労さんと主任が声をかける。
阿部が部屋を出て行くと、やっぱり小吉殺しとルノーの男が1本だったんですねと林刑事が主任に話しかける。
うんと答えた主任は、おい、この辺で口を割ったらどうだい?え?証拠はみんな揃ってんだぞと雪江に話しかけるが、雪江は無視してバッグからタバコを取ろうとするので、林刑事がそのバッグを取って元に戻す。
その頃、本庁三課に連れてこられた集団スリの内3人の男を前にした野本部長掲示は、逃げた2人の行先を正直に言ったらどうだ、ああ!と問い詰めていた。
お前たちの中で…とと言いながら長田部長刑事が立ち上がった時、旦那!と一人のスリ(潮健児)が声をかけてきたので、なんだ?と野本が聞くと、ちょっと電話を拝借したいんで…と言う。
どうするんだ?と野本が聞くと、ええ、パクられたことを弁護人に連絡したいんですよと損擦りは言い出す。
抜け目のないやつだな、それなら後でしといてやるよと野本は苦笑しながら答えると、よろしくお願いしますとスリは言う。
おい、君たち!逃げた奴のことはともかくとして、お前たちの中まで横田小吉を殺した奴がいるはずなんだが、誰か知らんかね?仲間同士の噂で来てんだろう?と長田部長刑事が改めて聞く。
すると、別のスリが、旦那、今夜もいい加減寝かしてくださいよと文句を言ってくる。
聞いてるのか、聞いてないのか!と長田が声を荒げると、そこに林刑事がやって来て、ホシの写真を長田部長刑事に見せる。
長田は、君、これが本星か?と林に聞きながら、野本部長刑事にも見せる。
これさっき逃した2人のうちの1人だと野本が指摘するので、林刑事はえっ!と声を出してしまう。
長田部長刑事は3人のスリたちに、おい、逃げた奴のヤサを言え!言わんか!と声を張りあげるが、3人は反応しなかった。
捜査第五日目(翌朝の特別捜査本部のドアの映像にテロップ)
渡辺刑事が肩をすくめて帰って来たので、ご苦労さん、早津君と交代したんだねと長田部長刑事が労う。
スケのアパートを一晩中張ってましたがね、とうとうそれらしい男はやって来ませんでしたよと渡辺刑事はコートを脱ぎながら報告する。
そう…、そりゃご苦労さん、まあ飯をやってくれと長田部長が言うと、電話が鳴る。
山村刑事が受話器を取り、はい、捜査本部、え!昨夜手配した写真の男に!うん、うん、はいわかりましたと答え受話器をおくと、昨夜遅く、本藤町の管内でパトロール中の警官が2人組に襲われまして、全治四週間の重傷とか…と報告したので、ウンと長田は答え、それを渡辺刑事と、隣で飯を食っていた金子刑事も出て来て聞く。
そのホシなんですが、1人は例のやつに間違いないそうですと、山村刑事は続ける。
例の奴?と長田が聞き返すと、ええ、うちで手配した写真を見て被害者の警官が間違いないと言ってるそうですと山村刑事は答える。
う〜ん…、で、被害者は今警察病院かね?と長田は聞き、はいと山村が答えると、立ち上がって上着を探す。
東京警察病院
ベッドに寝ていた顔に包帯を巻いた警官(岩上瑛)は、訪問を受けた長田部長刑事と山村刑事の前で、その2人がなんとなく挙動不審なんで、職務質問やったんで絵鵜と答える。
するとやにわに襲いかかってきて。随分やり合ったんですが…、不覚でした…、拳銃を…と、無念そうに打ち明ける。
え?拳銃を!と山村は驚く。
それを聞いていた長田部長刑事は、それに頷き、いやあ、私が取り逃しさえしなければ…と悔しがる。
警官が何か言いたげだったが苦しんだので、痛むかね?と長田が労うと、はあ、左手の骨が折れたるらしいんですと警官が言うので、ホシは人相写真から前科もんじゃないと判明したんだが…、きっと我々が捉えるから、君は養生に専念したまえと長田は話しかける。
かなり手強い奴ですは、それに拳銃も持ってるだろうし…と警官は助言する。
大丈夫だよ、危ない橋を渡ってまで拳銃を手に入れたのは、やつが焦り始めた証拠なんだって…、こっちの網にかかるのはもう時間の問題だよと長田は慰める。
青葉層の前で張っていた早津刑事(外野村晋)に、刑事さん、刑事さん!と管理人が呼びに来たので、どうしました?と聞くと、電話ですよ、細野さんに男の声で…と管理人が知らせたので、何!と驚く。
今いるかどうかちょっと見てくると言って待たして…と言うので、ありがとうと答えた早津刑事は管理人室へ向かう。
一緒に戻って来た管理人が、公衆電話のようですよと囁きかける。
早津刑事が置かれていた受話器に耳を近づけると、汽笛のような音が聞こえ、おい、大威張りで行ってこいよ、だからってパクられに行くわけじゃないんだからと言う男の声が聞こえ、さらに列車の走るような音が聞こえた。
はやつが管理人に指を指すと、管理人が受話器を代わり、あ、もしもしお待ちどうさんでした、いらっしゃらんようですが、どなた様ですか?は?また電話を?そうですか、いえ…と答えて電話は切れたようだった。
本部に戻ってきた山村刑事に、どうだった?と林刑事が労い、長田くんは?と主任も聞く。
三課の方に回りましたと山村刑事は答えたところで電話がかかって来たので、受話器を取った主任は、はい本部!おお早津君かね、どうだね?と聞くと、うん、細野に電話があった…、うん、ってことは警視庁のことだな?うん、良しと答え受話器を置くと、横の電話を取り上げ、本庁へ、至急三課を頼む!と依頼する。
その三課では、昨夜弁護士を頼んでいたスリが連れて来られ他ので、長田部長刑事が自分のタバコを差し出してやる。
スリがタバコを吸い始めると、奴は殺しと傷害の容疑者なんだと長田部長刑事は教え、お前たちもこれ以上黙秘権を続けると、集団スリの罪だけでは済まされなくなるぞと言い聞かせる。
さあ、奴のアジトを言わないかとの元部長刑事も迫るが、スリは無視していたが、その時女性警官が入ってきて、長田さんちょっとと声をかける。
廊下に出て、何です?と長田が聞くと、さっきお宅の本部から電話がありましたが、あの三人に弁護人の依頼っだと言って、今差し入れに来てる男がどうやらカスリ党の仲間らしいんですよと女性警官は伝える。
ふ〜んと長田が聞くと、あの男ですが…と女性警官が廊下の奥に目をやって外来者を見たので、あいつが差し入れに来たんですか?と長田が聞くと、はいと言う。
長田部長刑事は、帰って行くその男(大村文武)の後をつけることにする。
男は路面電車に乗り込んだので、長田部長刑事も後ろの降車口から乗り込む。
男が電車を降りたのと同じ停留所で降りた長田は、信号無視して道路を渡る男を追おうと、自分も信号を無視して渡りかけると、おい、信号を見て!信号を!と交通警官(萩原満)に注意されてしまう。
長田は、あ、どうもすみませんと素直に詫びるが、追っていた男がまた別の路面電車に乗ったので、慌てて自分も乗り込む。
やがて、日暮里で男がまた降りたので、長田部長刑事も降りて尾行を続けるが、途中で相手に気づかれたらしく、踏切の遮断機が降りて来た途中に男は急に走り出して渡ってしまう。
驚いた長田部長刑事も後を追おうとするが、すでに遮断機が降りた後でどうすることもできなかった。
長田の前を蒸気機関車が延々と通り過ぎて行く。
遮断機が上がったので、踏切を渡ったないわ長慶寺だったが、すでに男の姿はなく、近くの公衆電話から本部へ電話することにする。
はい、捜査本部、ああ、長田君!何!差し入れに来たやつを見失った?どこなんだ場所は?うん、うん、今のところ唯一の手掛かりなんだ、何がなんでも探し出してくれ、うん、林君を応援に出すからな、徹底的に探してくれよ、頼んだよと電話を受けた主任は依頼する。
地元の交番前に来た林刑事は、あ、長田さん!と合流し、見つかりましたか?と近づいて聞き、いや…という長田に、じゃあ、一緒に探しましょうと言って林は持参した拳銃を手渡す。
本部では主任が、山村君、細野雪江を泳がせようと提案する。
釈放するんですか?と山村は驚く。
鉄道の高架橋の辺りに来て、この辺りで手がかりがあったらなと言う長田に、特徴は白と靴のコンビの靴でしたね?と林刑事が確認する。
それに皮のジャンパーだ、24〜5の一見チンピラ風の奴だよと長田部長刑事は教えると、林刑事は、よ〜しと張り切る。
その頃、捜査本部のある警察署から細野雪江が釈放されて出てくるが、その後から金子刑事と山村刑事2人が尾行する。
雪江はすぐにタクシーを呼び止めて乗り込んだので、慌てて刑事たちもタクシーを停めて後をつける。
雪江のタクシーに接近したので、近づいた、もっと低くしろ!と山村刑事は金子刑事に注意する。
付かず離れず、頼んだよ、運転手さんと金子刑事は声をかけ、後部座席で姿勢を低くする。
山村刑事は、畜生!逃すもんか!と前方を睨みつける。
子供たちが西部劇ごっこで遊んでいる住宅地を回っていた林刑事たちだったが、ダメですね、下駄一足だけですと、玄関先を見て落胆していた。
どこかの母親が早くおかえり!と呼びに来たので、うん、みんな帰ろうぜ!と西部劇ごっこに興じていた子供たちが帰って行く。
タクシーが止まり、中から雪江が降り立ったのは、先ほど長田部長刑事が男に巻かれた辺りだった。
そこに、山村と金子の2刑事が乗ったタクシーも停まる。
近づいて来た雪江に気づいた長田部長刑事は、林君!と呼びかけ、物陰に身を隠す。
雪江は住宅地の中の一軒家に入って行き、その後から金子刑事と山村刑事が近づいて来ていた。
物陰から出てきた長田部長刑事と林刑事に気づいた山村刑事が、あっ!と声を上げるが、林刑事は指で口を押さえ、目の前の家を指差す。
玄関ガラスの割れ目から中を覗き込んだ林刑事が、長田さん、白と黒のコンビの靴がありましたよと教える。
本当か!と長田は答えるが、もうちょっとでかく割れていると全部見えるんですがねと林刑事は悔しがるので、うん、おそらくここが奴らのアジトだろう、しかし、今ホシがいるかどうかはっきりせんから、しばらく張り込もうと長田は提案し、じゃあ僕は裏抜け口があるかないか調べてきますと山村が言うので、頼むと長田は答える。
ハヤシ刑事が、長田さん、もう一回見て来ますと言うので、大丈夫かい?と案じるが、金子刑事と共に、近くに身を隠す。
玄関先に林刑事が近づいた時、中の電気がついて男の影が写り、玄関が開いたので、棒立ちになった林圭司は、出て来た男の顔を見て気まずそうに近くで立ち小便をする振りをする。
そんな林刑事を見ながら、男は出かけて行く。
その男の様子を見ていた長田部長刑事は、あいつは昨夜本星と逃げた集団スリの片割れだよと金子刑事に教える。
金子刑事が林刑事と合流し、今出ていった男を尾行すると、山村刑事が戻ってきて、あの家は裏から逃げられませんと長田部長刑事に教える。
林刑事らが尾行した男は、近くの中華そば屋に入ったので、林刑事はその前にあった今川焼き屋で10円くれと買う。
すると店から男が出て来て帰って行ったので、金子刑事が急いで中華そば屋に入り、今来た男の目的を確認する。
本部では、アパートに張り込んでいる渡辺君からも何も言ってこないとこを見ると、雪江はアパートへは帰らなかったらしいなと主任が地元署員たちに話していた。
長田さんのくみも金子君のくみもなんとも連絡して来ませんねと早津刑事が心配する。
まさかみんな巻かれたわけじゃあるまいねと冗談めかして主任が答える。
そこに電話がかかってくる。
はい!やあ金子君か!今どっかね?中華そば屋、ほお…、何!ヤサがわかった!え、集団スリの片割れが中華そばを4つ注文した!うん、ちょっと待ってよ、その片割れと細野と差し入れに来た奴と、後1人が本星かも知れんな!と主任は興奮気味になる。
良し!そのまま張り込んどくれ、もし奴がいるとするとすりゃ拳銃があるはずだからな、十分に注意しろよ、で、場所は、うん、良し!逮捕状は俺次第、俺が持ってく、うん、早津君、すぐ地検に行って奴の逮捕状を請求してくれ、大至急だと指示する。
一方、現場に戻った金子刑事が長田部長刑事らと合流し、主任からの伝言を伝える。
そうか…、逮捕状さえ届けば、踏み込んで確かめることもできるわけだなと長田部長刑事は納得する。
しかし山村刑事は、焦ったいですねと苛立つので、慌てなさんな、こうやって張り込んでる限りえはあ、袋の鼠も同然だからなと林刑事が慰める。
そこに中華そば屋の出前が来たので、金子刑事が君!と呼び止め、店で見せた本星の写真をもう一度出してみせ、くどいようだけどこいつだからねと頼むと、へえ、いるかいないかだけに良いんですね?と出前は承知する。
金子は、うん、頼むよと声をかけ、急いで自分は身を隠す。
毎度ありい!と言って出て来た出前が金子刑事に近づき何事かを告げると、金子刑事は長田部長刑事に近づいて、いましたと知らせ、踏み込みましょうか?と山村が提案するが、まあ待て、本部から応援が来るまで待とう、奴が拳銃で暴れたりすると、それこそ気違いに刃物だからなと長田部長刑事は諌める。
こうして4人が張ってりゃ、逃げられっこありませんからねと林刑事も言う。
すると玄関が開いたので、4人は慌てて物陰に身を隠す。
最初に出て来たのは雪江で、周囲を見回すと、大丈夫よ、早く行きましょうと中の男に声をかける。
雪江と男が2人が出かけると、奴ですね?と金子刑事が気づき、はあ、革ジャンパーだけ残ったなと林刑事が指摘する。
良し、つけよう、山村君、君だけもう少し張ってくれと長田は指示し、金子刑事と林刑事を連れて3人の男女をつけていく。
やがて車が現場近くに到着し、降り立った主任が、尾行していた長田を見つけ、長田君!逮捕状だと渡すが、ホシは今行きましたと答え、長田らはホシたちの後を走って追いかける。
待て!と呼びかけられた3人が慌てて逃げ用としたところに、反対方向から来たアベックの乗った自転車が衝突し、立ち止まったところで刑事たちが一斉に飛びかかるが、その中に本星はいなかったので、ちくしょう!残った奴がホシです!と長田は叫ぶ。
一人さっきの自宅へ駆け戻った長田部長刑事は、山村君!山村君!と呼びかけるが、次の瞬間裏手から銃声が聞こえる。
山村刑事は裏の金網の塀を越えて逃亡した本星を追いかけていた。
革ジャンパーを着て逃げる本星(関山耕司)を必死に追いかける山村刑事。
遅れて裏手に来た長田部長刑事も、金網の塀を乗り越えていた。
本星は操車場内に侵入し、待て!と追って来た山村刑事にまた発砲する。
それを追って操車場に向かっていた長田を見つけた林刑事と金子刑事らが合流する。
止まった列車の間を逃げる本星はさらに二発打ってくるが、腹張って避けた山村刑事は、追いついた長田たちに、奴はまだ2発残しているんです、注意してくださいと呼びかける。
そして列車の下を潜り抜け、刑事らは二手に分かれることにする。
そんな追っ手に気づいた本星は、列車の下で刑事たちの動きを探っていた。
やがて応援のパトカーのサイレンが接近して来たので、列車の下に潜んでいた本星は怯える。
降り立った数十人の警官たちが操車場を取り囲む。
そんな中、長田部長刑事が空に向かって威嚇射撃をしたので、犯人は驚き、畜生と叫んで最後の二発を撃ち返したので、その音で居場所に気づいた刑事たちが、一斉に犯人を追い詰める。
犯人は操車場脇の小川の中に身を潜めるが、追って来た山村刑事が気づき飛びかかる。
そこに他の刑事も近づいてくる。
金子刑事も川に飛び込み、山村刑事を応援する。
川の中で山村刑事が犯人を何発も殴りつける。
そこにパトカーと警官隊も駆けつけ包囲する。
土手に這い上がった犯人は、わあ、助けてくれえ!と最後の大暴れをするが、山村刑事が腰払いをして投げ飛ばす。
泥だらけになって倒れ込んだ犯人を山村刑事がつかみ起こし、一緒に掴んだ金子刑事が手錠をかけ、2人で連行する。
すでに捕まった雪江たちが警察車両に乗っていたので、満員だな、こりゃとないわ長刑事が困惑すると、山村君、金子君、君たちはあれでこいつを、僕たちは表通りで拾うよと指示した主任が、長田部長刑事と林刑事の3人で後に残る。
犯人たちを乗せた警察車両が出発する中、林刑事が取り出した菓子のようなものを主任と長田に分け与え、3人は表通りの方に向かって歩いて行き、その横をパトカーが追い抜いて行く。
(その後ろ姿に「刑法第240条 強盗 人ヲ死ニ致シメタルトキハ、死刑又ハ無期懲役ニ処ス」とテロップが重なる)
終