憲法のお勉強 第19日
法人の人権つづき
(b)南九州税理士会政治献金事件【最高裁 平成8年3月19日判決】
【事案】
※強制加入の公益法人「南九州税理士会」が、税理士法改正が業界に有利に動くように、南九州各県税理士政治連盟への政治工作資金として特別会費5千円を徴収する旨を決定。
⇒しかし、この決議に反対した税理士が、会費納入を拒否した。
そこで、当該税理士会は、同会員である税理士を、会則で定められた会員滞納者に対する役員の選挙権及び被選挙権停止条項を行使するが、処置を受けた会員税理士は、会費納入義務の不存在確認及び損害賠償請求訴訟を提起したという事案。
【争点1】
政治団体への政治献金をするために会員から特別会費を徴収する旨の税理士会の決議は有効かという問題。
⇒否定している。
【判旨1】
税理士会が政治団体に金員の寄付することは、税理士にかかる法令の制定改廃に関する政治的欲求を実現するためのものであっても、税理士会の目的の範囲外の行為であり、右寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の決議は無効である。
【争点2】
税理士会は、政治団体に対する政治献金について、会員に協力を義務づけることができるか⇒否定している。
【判旨2】
政治団体に対する政治献金は、選挙における投票の事由と表裏を成すものとして、会員各人が市民として個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるから、会員に協力を義務付けることはできない。
(c)群馬司法書士会事件【最高裁 平成14年4月25日】
【事案】
群馬司法書士会では、この阪神大震災によって被災した、司法書士および司法書士会の復興を支援するために、復興支援拠出金を、阪神大震災救援司法書士対策本部に拠出することになった。そのために、役員手当を減額した分の一般会計からの繰越金をあて、さらに、会員から、登記申請一件当たり50円の負担金(復興支援証紙)の徴収が、同年2月に群馬司法書士会の総会決議で決定された。
この負担金徴収につき、群馬司法書士会員が、
1)拠出金寄附は、群馬司法書士会の目的の範囲外の行為
2)司法書士会は強制加入団体ですから、会員に負担を強制することは不可能。
を理由として、総会決議を無効とし、負担金の支払い義務がないことの確認を求めた事件である。
【争点1】
司法書士会は、他の司法書士会に寄付できるか?
⇒できる。
【判旨】
司法書士会は、その目的を遂行する上で、他の司法書士会と提携・協力・援助等をすることも活動の範囲に含まれる為、復興支援の為の寄付は、群馬司法書士会の権利能力の範囲内である。
【争点2】
他の司法書士会への寄付を目的とする特別負担金の徴収は会員の思想を侵害するか?
⇒侵害しない。
【判旨】
本件、負担金の徴収は、会員の政治的・宗教的立場や、思想・信条の自由を侵害するようなものではなく、司法書士団体が強制加入団体であることを考慮しても、会員の協力義務を否定すべき事情はない。