2月25日 宇検村 → 瀬戸内町古仁屋[奄美大島](41km)
バンクベッドのルーフウインドウからの強い日差しで目覚める。
「朝からソーラー日和だ!」と喜んでいると、頭上にはさっと灰色の雲が。
島の天気は変わりやすい。
一夜を過ごした宇検村総合運動公園には、南洋の木々に囲まれた広い芝生と運動器具、立派な陸上トラックまである。
午前中はのんびりして、近くの「宇検食堂」で少し早めのランチをとる。
料理を待っている間、今日付けの地元紙『奄美新聞』をめくっていると、7面に「沖縄県民投票/『反対』4分の1強/首相と米へ知事通知へ」の見出しが。
『奄美新聞』だと7面なんだなぁ、と思いつつ『南日本新聞』に目をやると、昨日の日付ながら堂々の一面を飾っていた。
さて、話は戻して、この食堂。
腕の確かなシェフがいらっしゃるのか、地元の食材を活かした洗練された料理がリーズナブルなお値段でいただけるという、非常に有難いレストランであった。
お腹も満たされたところで、今日は、ここから海岸線沿いに、瀬戸内町の古仁屋港を目指して走ることに。
この港から、加計呂麻島行きの船が出ているのだ。
加計呂麻島は、映画『男はつらいよ 紅の花』で、浅丘ルリ子扮するリリーが暮らしていた島。
そこに寅さんが居候し、偶然甥っ子の満男が訪ねて来るところから物語が展開して行く。
この島には、どうしても立ち寄っておきたかった。
観光案内板の地図を見ると、リアス式海岸沿いはデコボコに湾曲した道が続いている。
カーブが続く道沿いを運転させることに抵抗があったKが、心配してフロントスタッフに道中の安全性を問うと、
「道路は二車線で崖崩れもなく安全な道。時間に余裕があれば、是非、走ってみて欲しい」
と、レストランスタッフ。
近くにいた地元のおじさんからも、「景色が綺麗だから、行ったほうがいいよ〜♪」と勧められ、すっかりその気になる。
焼内湾の深い入江には、ところどころに定置網がある。
宇検村特産のエビの養殖だろうか。
そこから先は、対岸に加計呂麻島を望む、まるで瀬戸内海のような内海の光景が広がる。
途中、油井小・中学校という、海岸に張り付いたような小さな学校がある。
教室からは、生徒たちの声が聞こえてくる。
校庭の入り口には、昔懐かしい 小ぶりな二宮金次郎像が。
エメラルドグリーンの海に見とれながら、小さな集落を幾つか通り過ぎる。
一時間半ほど走ったところで、ようやく瀬戸内町古仁屋港に辿り着いた。
瀬戸内町は、クロマグロ養殖日本一。
この町には「近大マグロ」で知られる近畿大学の研究施設があり、世界で初めてクロマグロの卵から完全養殖の実用化に成功したのだそうだ。
このマグロのオブジェの前には、フェリーターミナルがある。
加計呂麻島へと向かうフェリーのターミナルビルは、「せとうち海の駅」となっている。
明日は、日帰りで加計呂麻島に行くので、海の駅にある観光案内所で御相談。
古仁屋からのフェリーは、どちらも20分ほどで瀬相(せそう)港か、生間(いけんま)港に着く。
『男はつらいよ〜寅次郎紅の花』のロケ地になったのは、東にある生間集落の方なので、そこでレンタカーを借りて回るのが良いだろう、ということになる。
早速、生間のレンタカー会社連絡し、レンタカーを予約する。
軽自動車が1日3000円だから、往復1万円近くかけてキャンピングカーで移動する必要はないし、そもそも島の道は細いので、キャンピングカーで回るのは難しい。
明日の手配が済んだので、夕方までAコープで買い物をしたり、港を出入りするフェリーと海上タクシーを眺めたりして過ごす。
今夜は、このフェリーターミナル「せとうち海の駅」脇の有料駐車場に車を停めることにする。
晩御飯は、徒歩5分ほどのところにある「なにわ食堂」へ。
ここは、ネットで「ちゃんぽんが安くて美味しかった」との情報を得ていた。
お目当てのちゃんぽんはもちろん美味しかったのだが、店員さんの表情が穏やかでいい。
優しい心持ちが、ストレートに伝わってくる。
持ち込みの缶ビールを飲みながら麺をすすっていると、店の奥からおばあさんが出てきて、「ちょっとしかないけど持ってって〜」とタンカンが一杯入った袋をテーブルに置いた。
そして、そのうちの何個かを、食べやすいようにわざわざ切り分けて、持ってきてくれる。
いやはや、大感激‼︎
手持ちのビールはそっちのけで、剥いてくださった皿一杯のタンカンを二人で完食。
ちゃんぽんもスープまで、しっかりと飲みしてしまった。
店内には、相撲関連の写真が飾られていたので、「このあたりは相撲の土俵が多いですね」と尋ねてみると、なんと息子さんも地元の横綱で、鹿児島の高校から日大に進学し、名門・日大相撲部に入部したそうだ。
残念なことに、身長が足らずプロにはなれなかったが、地元の役場に就職し、後進の指導にあたっているとのことだった。
お礼を言って店を出ると、店の暖簾をたくし上げ、「また、よって下さいね〜」と頭を下げ、見送ってくれる。
お腹も心も満たされた気持ちで、頂いたタンカンをぶら下げ、食堂をあとにしたKY。
通りすがりの店の窓には、ちょこんと猫が乗っている。
まるで置物のように、じっとしている。
この町、かなり好きかもしれない。