なぜ年を重ねると、和食が心にしみるのか。年齢による食のこだわりの変化とは
食事へのこだわりは、年齢とともに少しずつ、しかし確実に変わっていきます。それは好みが変わるというよりも、その時々の体や心の状態を、食が正直に映し出しているからかもしれません。
子ども時代、味覚の中心にあるのは「甘さ」と「わかりやすさ」です。お菓子や甘い飲み物、カレーやハンバーグのようなはっきりした味は、安心感そのものです。味覚がまだ発達途中のため、苦味や酸味には敏感で、自然と甘くて濃い味を好みます。この頃の「おいしい」は、「楽しい」「うれしい」とほぼ同義で、食事は純粋な喜びの時間でした。
思春期から若い頃になると、食事の目的は大きく変わります。体力も代謝も高く、成長にエネルギーを必要とするため、自然と量と満足感を求めるようになります。肉や揚げ物など、がっつりした食事が魅力的に感じられ、味よりも「お腹がいっぱいになるかどうか」が重要になります。外食やファストフードを好み、「食べたいものを好きなだけ食べる」自由さが、この時期ならではの楽しみです。
やがて家庭を持ち、親になる頃には、食事への意識が大きく変わります。自分の好みよりも、家族の健康が優先されるようになります。栄養バランスや食材の安全性を考え、野菜を増やしたり、油を控えたりと、食事は「体をつくるもの」へと意味を変えていきます。毎日の献立に悩みながらも、食べる人の顔を思い浮かべる時間が増えていきます。
中高年になると、さらに体の声がはっきりと聞こえてきます。脂っこいものが重く感じたり、量より質を大切にしたくなったりします。味付けも自然と薄味になり、「翌日も楽でいられるかどうか」が食事選びの基準になります。無理をしないことが、何よりのごちそうになります。
そして老後。ここであらためて、和食の良さがしみてきます。和風味付け、日本の基本調味料で作る料理は、派手さはなくても体にやさしく、心を落ち着かせてくれます。寿司、魚料理や少量の質の良い調味料で味わう素材の味。食事は栄養を摂るだけのものではなく、安心や思い出を味わう時間へと変わっていくのです。
食事の好みの変化は、衰えではなく、自分に合う生き方を知っていく過程なのかもしれません。