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寄り添い通話フラット

ふとした瞬間に思い出す人たちのこと。時を紡いでも今もなお

2026.01.18 08:05

三十年ほど前の冬のことです。

会社の同僚たちと一緒に、朝早くから雪かきをした日がありました。前の晩から降り続いた雪は想像以上で、駐車場も通路もすっかり埋もれていました。仕事を始める前に、まず雪をどかさなければならず、皆で黙々とスコップを動かしたのを覚えています。

手袋の中の指先はじんじんと冷え、息を吐くたび白く曇りました。「腰が痛いな」「まだ終わらないのか」などと、誰からともなく弱音がこぼれます。それでも同期の仲間と顔を見合わせると、不思議と力が湧いてきました。同じ年代、同じ立場で働いていたからこそ、言葉にしなくても通じるものがあったのだと思います。

ようやく雪かきが終わったころ、上司が笑いながら近づいてきました。そして自動販売機で温かいしるこの缶を買って、私たちに配ってくれたのです。冷え切った手で缶を握り、プルトップを開けると、甘い香りが立ちのぼりました。皆で並んで飲んだあのしるこの味は、今でもはっきり思い出せます。大変だったはずなのに、なぜか心がほっとする時間でした。

それから月日は流れ、私は引退し、今は一人で暮らしています。今年の大雪の日、庭の雪かきをしていると、スコップを雪に入れた瞬間、あの頃の光景がふっと浮かびました。寒さも、重たい雪の感触も、そして同僚たちの笑顔も、体が覚えていたかのように。

今は一人で黙々と雪をかいていますが、不思議と寂しさはありません。あの時代を共に過ごした人たちが、今も心の中に生きているからでしょう。雪かきという同じ動作が、三十年前の記憶をそっと呼び起こしてくれるのです。

こうした思い出は、特別な出来事ではありません。けれど、人生をしっかり歩いてきたからこそ残る、あたたかな記憶です。大雪の日にふと思い出す昔の仲間や、何気ないご褒美のしるこ缶。それらは、今の自分を支えてくれる大切な一部なのだと思います。

そして、こんな思い出を胸にしまっておくだけでなく、誰かに話してみるのも悪くないですよね。だれかに思い出話をきいてもらうのも、わるくないよね、と思えるようになりました。