どこでもいいよ、と言いながら思っていること
成人し、親にもなっている我が子と会食をするとき、
店選びや注文は、いつも子どもがします。
私はそれに口を出さず、「それでいいよ」と言う側です。
お代は、なぜかこちら持ちになります。
別に不満があるわけではありません。
子と一緒に食事ができる時間は、何よりも大切ですし、
そのためにお金を使うことを惜しいとも思っていません。
ただ、心のどこかで、
「たまには自分の好きなものを、遠慮なく食べたい」
そんな気持ちが、静かに顔を出します。
一人で行けばいい、という考え方もあります。
実際、そのほうが気楽なのかもしれません。
けれど、気持ちとしては違います。
私は、子と一緒に行きたいのです。
同じ時間、同じ空間で、食事をしながら話をしたいのです。
有名なスイーツには、あまり興味がありません。
肉料理よりも、どちらかといえば魚がいいです。
量はいらないので、
質の良いものを少しだけ、ゆっくり味わいたいと思っています。
ですが、子が選ぶ店は、
値段は高く、見た目はおしゃれで、若い人向けです。
イタリアン、居酒屋、焼肉、ラーメン。
どれも否定する気はありませんが、
正直に言えば、今の私の好みではありません。
本当は、
落ち着いた雰囲気の店で、
ゆっくり話ができる場所がいいのです。
食事そのものより、
子との時間を、きちんと味わえる店に一緒に行きたいのです。
けれど、その気持ちをどう伝えればいいのか分からず、
今日も私は遠慮してしまいます。
「どこでもいいよ」
その一言で、自分の本音を飲み込んでしまいます。
いつか、この気持ちを察して、
「今日は、こういう店にしようか」
そう気遣ってくれたらいいのにと、
ずっと心のどこかで願っています。
親になった子を前に、
親であり続けることと、
一人の人間としての自分との間で、
今日も私は、静かに揺れています。