中立金利って何?
昨年12月の日銀会合において、政策金利は0.75%に引上げられた。利上げは予想通りだったが、中立金利(1~2.5%)の下限に近付くことで利上げ打止め感が出ることを避けるため、日銀は中立金利の見直しをするのではとの観測があったが見送られた。ここで中立金利とは何かをおさらいしてみる。
中立金利とは、景気や物価に対して中立的な名目金利の水準であり、自然利子率+物価上昇率で計算される。日銀の推計値は現在1~2.5%だが、長期の物価上昇率目標が2%であることから、自然利子率の推計値は▲1~0.5%となる。推計手法としては、2024年の日銀WP(ワーキングペーパー)「自然利子率の計測をめぐる近年の動向」によれば、大きく4つの類型があり、各類型でも様々な手法が研究されている。類型別に考え方と代表的なモデルを表1に示した。
表1. 自然利子率の計測をめぐる近年の動向 出所(日本銀行)
類型 考え方 代表的モデル
時系列モデル 金利の長期トレンドを時系列データから推計 鎌田、岩崎、Del Negro et al.
期間構造モデル 金利の期間構造から予想パスを抽出し推計 DKW、Goy&岩崎、KWW
準構造モデル IS曲線などの構造方程式を仮定し中立値推計 HLW,今久保・小島・中島,中島
構造モデル 経済行動にミクロ的要素を加え均衡点を推計 岡崎・須藤、BJM
表1を見ると、時系列モデルとして①Del Negro et al. ②Goy&岩崎、準構造モデルとして③HLW ④小久保・小島・中島 ⑤Nakajima et al.、構造モデルとして⑥岡崎・須藤を用いて自然利子率を推計している。過去30年の推計結果を図1に示したが、植田総裁も認めるように比較的幅を持って推移する。日銀WPでは23年時点のレンジが▲1~0.5%で、植田総裁はこの推計値を用いていると思われる。つまり足元のデータを用いて各モデルで再計算するとレンジは変わる可能性が高い。日銀は最新の計算結果を持つはずだが、何らかの理由で今回公表を見送ったようだ。さて、筆者はデリバティブトレーダー時代に、主として日銀WPの類型による期間構造モデルを用いていた。ここでそのモデルで直近の自然利子率を推計してみる。手法は国債カーブの期間構造から各年限のBEI(ブレークイーブンインデックス)を引いて求める。図2は26年1月と22年12月(図1作成時点)の筆者による自然利子率カーブ推計結果である。期間構造モデルの利点は、年限毎に推計できることで、植田総裁が会見で言及した1~3年の動きもチェックできる。1~3年ゾーンの平均値は22年カーブの▲1.37%に対し、足元で▲0.57%まで上昇したが、これと似たような現象が日銀各モデルでも発生していると予想され、変化が大きく、幅も広がったため発表を控えたとの邪推もできる。