昇段審査で緊張に飲まれないために —— 村島弘之/剣道歴20年
2026.01.16 06:16
昇段審査の会場に立つと、
普段の稽古場とは空気が違うことに気づく。
視線、静けさ、張りつめた気配。
それだけで、心拍は自然と速くなる。
緊張しない剣士はいない。
まずは、その事実を受け入れることから始めたい。
「緊張してはいけない」と思うほど、
身体は固まり、呼吸は浅くなる。
緊張は敵ではなく、
剣道に真剣である証だと捉える。
審査で大切なのは、
平常心になることではない。
乱れた心を、立て直す力だ。
打つ前に、深く一度、息を吐く。
構えたとき、肩の力を落とす。
相手を見る前に、自分の足裏を感じる。
それだけで、心は現在に戻ってくる。
緊張すると、人は「結果」を見始める。
合格か、不合格か。
評価されている自分。
周囲の目。
だが審査の最中に見るべきものは、
ただ一つ——相手との関係だけだ。
間合い。
機会。
打つべきか、待つべきか。
その一瞬に集中できたとき、
緊張は背景に退く。
上手くやろうとしない。
強く見せようとしない。
いつもの剣道を、少し丁寧に行う。
それで十分だ。
もし一本が出なくても、
崩れても、
立て直す姿勢を失わなければいい。
剣道は、失敗の後ろ姿も見ている。
昇段審査とは、
完成度を示す場ではない。
剣道とどう向き合ってきたかが、
自然と滲み出る場だ。
緊張に飲まれそうになったら、
思い出してほしい。
あなたは、
今日のためだけに
竹刀を握ってきたわけではない。
これまで積み重ねた時間は、
静かに、
必ず、
あなたの足元を支えている。