中心を取るとはどういうことか —— 村島弘之/剣道歴20年
2026.01.16 06:23
「中心を取れ」
剣道を学ぶ中で、何度も耳にする言葉だ。
しかし、それを正確に説明できる人は、意外と少ない。
中心とは、
竹刀の位置だけを指す言葉ではない。
確かに、
自分の剣先が相手の剣先を制し、
身体の正中線に通っていることは重要だ。
だがそれは、中心の“形”にすぎない。
本当の中心とは、
主導権がどちらにあるかという状態だ。
中心を取っているとき、
こちらは慌てない。
相手が動けば、対応できる余白がある。
だが相手は、
こちらの出方を気にせずにはいられない。
それは、
間合い、姿勢、気持ちが
一点に揃っているから生まれる。
中心を取ろうとして、
力で押さえ込もうとすると、
剣先は重くなり、動きが止まる。
結果、中心はかえって外れる。
中心は、
奪うものではなく、居続けるものだ。
正しい姿勢で立ち、
呼吸を整え、
相手と正対する。
その積み重ねの中で、
自然と相手が外れていく。
審査で「中心が取れている」と感じる剣士は、
打つ前から落ち着いている。
無理に一本を出そうとしない。
打たずとも、
場を支配している。
中心を取るとは、
相手を制することではない。
自分が崩れない場所に立ち続けることだ。
その場所に居続けられたとき、
相手は先に動かざるを得なくなる。
そこに生まれるのが、
必然の一本である。
中心とは、
剣先の位置ではなく、
剣道の在り方そのものなのだと思う。