「俺の拳銃は素早い」
鈴木清順監督の助監督時代の作品であると同時に、まだキャストロールに名前も出ず、豊頬手術前の宍戸錠さんの姿をちらり見られる作品。
主役を演じている河津清三郎さんは、同年、東宝「幽霊男」では金田一耕助まで演じており、当時はすでに恰幅の良い中年なのだが、戦前から活躍されたベテランのようだ。
旧式の車に乗り、ヨレヨレのコートを着た様は、まるでコロンボみたいだが、腕っぷしは強く、ハードボイルド風の風貌も併せ持っている。
同じく、本作にも登場している清水将夫さんとは、戦前「新興キネマ」に一緒にいた方らしく、菅井一郎さんや田中春男さんとも仲間だったようだ。
名和宏さんが興信所の助手のような役柄で登場しているが、まだほっそりしており、長身のイケメンである。
しかも、子供を相手に優しいお兄さんみたいなキャラクターということもあり、その後、個性の強い悪役俳優になるとはこの当時は想像もできない。
宍戸さんがまだエキストラ的ポジションだった時期にすでにセリフのある主役級の役を演じておられるので、普通だったらその後、日活の主役級になるはずだったのだろうが、石原裕次郎人気の影に隠れてしまったので、他社に移るしかなかったのかもしれない。
また、警官役の柳谷寛さんも、河津さんを助ける助手のような役目で登場するが、東映版「月光仮面」で祝探偵の助手袋五郎八や、「ウルトラQ」「2020年の挑戦」で老刑事役を演じた人でもある。
その「ウルトラQ」の編集長役でも知られる田島義文さんや伊豆肇さんなども出ている。
内容は通俗ミステリで、子供が事件の一部を目撃していると言うよくあるパターンなのだが、探偵役の河津さんは、喧嘩をしたり、女にキスしたりと遊び人タイプになっており、ちょっとハードボイルドっぽい雰囲気のキャラクターになっているが、麻薬が絡む話で、冒頭でひょんなことからそれに関係してしまった素人職業女性が、別の麻薬中毒者と友人関係だったなどと言う展開は、かなりご都合主義ではある。
一番わからないのは、犯行を子供から見られてしまった犯人は、その時変装していた姿だったので、犯人は子供の証言を恐れる理由は何もないはずなのに、なぜか子供の前に姿を現し、変装していたことを子供と親に明かしてしまっている。
万一を恐れて子供の口封じをすると言うならまだわかるのだが、黙っているんだと脅しただけで、そのまま子供も母親も生かして帰ってしまっているのが理解不能。
子供に再会した時、変装をしてない姿に子供が気づいてないとわかった段階で、黙って帰っていた方が絶対安全だったように思う。
探偵役と事件関係者の女が訳あり風になるなどと言う展開も、ロマンス要素のつもりなのだろが、ミステリとしては内容を冗漫にしている感じに見える。
謎が弱い分、アクションやラブロマンスで話を水増ししているように感じなくもない。
石原裕次郎人気が爆発する前に日活作品なので、会社を代表するようなスターがいないことはわかるし、50年代頃までは中年男と若い娘のアバンチュール映画などもあったことは確かだが、今の感覚からすると、特にイケオジ風でもない河津さん主役に違和感がないではない。
その河津さんが劇中、電話をしているシーンで、途中でちょっと音声が途切れたのか、受話器を置くフック部分をかちゃかちゃ押して会話が復活する描写があるが、当時はこれで通話が復活したのかと驚く。
古い映画やドラマで、よく見る不思議な動作だけに、本作のように通話が復活している描写は珍しいように感じる。
劇中「総式病院」と言う施設が出てきて、どうやら「総合病院」のことらしいが、そんな呼び方をしていた時代があったことに驚く。
やはり読み方が縁起が悪いからなくなったのだろうか?
謎解きとして見ると、明らかに怪しい人物が途中から不自然に登場しており、ミステリ好きなら誰もが怪しむと思うのだが、あくまでもミステリなどにも疎い一般大衆向けに作っているということなのだろう。
この当時のこうしたサスペンス系の映画には、物悲しい哀愁を帯びたギターの緩やかな音楽がついているのも特徴。
【以下、ストーリー】
1954年、日活、渡辺肇原案、高岩肇脚本、野口博志監督作品
日本の洋酒の瓶が砕け散る。
タイトル
雲海を背景にスタッフ、キャストロール
助監督は鈴木清太郎(つまり鈴木清順)
富士山をバックに雲海の上を飛ぶ旅客機(ミニチュア特撮)
長らくお疲れ様でございました、只今より、東京羽田国際空港に到着いたします、ただいまより下降に移ります、席のバンドをお止めくださいとスチュワーデスのアナウンスがある。
席を巡回していたもう1人のスチュワーデス植田幾子(朝美矢子)が、おタバコはしばらくの間ご辛抱願いますとと、タバコに火をつけっけていた鼻メガネの紳士風の男性客(清水一郎)に笑顔で注意すると、客はすみませんと照れ笑いを浮かべてライターを閉じる。
機内アナウンスでも、おタバコをご遠慮くださいますようお願い申し上げますと言う。
空港の見送り場には、真田猛(植村謙二郎)が子分(弘松巌)を引き連れ待ち受けていた。
外国人客に混じってタラップを降りかけた先ほどのタバコの紳士は、真田の背後に警官が二名立っていることを目ぜ知らせたので、微かに頷くと、ポケットん中からライターを取って握りしめると、またタラップを上り機内に入ったので、お忘れ物でございますか?と先ほど注意して来た幾子が聞くと、いや、これ、つまらんものだけど差し上げようと思って…とスチュワーデスを指したので、あら、困りますわ、そんな…と幾子は笑顔で困惑する。
それでもタバコを注意された紳士は、ほんのお礼のつもりですよと言ってライターを幾子に手渡すと、じゃあと言って降りてゆく。
あ、あの〜、お待ちになってくださいと幾子は呼び止めようとするが、先輩スチュワーデスが、良いじゃないの植田さん、もうこれっきり飛ばないし、仕事も終わりよ、もらっときなさいよ、お婿さんに良いお土産だわと勧める。
その間にも、他の乗客(宍戸錠)ら、幾子の身体を避けながらがタラップを降りてゆく。
困ったったな〜と言う幾子に、困りゃしないでしょうと揶揄う先輩スチュワーデス。
荷物検査を受けていた紳士は、窓の外を通り過ぎるスチュワーデス2人様子と、そこに待っていた真田と子分とを、それとなく目にしながら、メガネを外すとさりげなく拭き始める。
そんな紳士の背後から近づいた男が、ちょっと署の者ですが、あちらに…と声をかけてくる。
え?と言いながらも紳士は素直に刑事の後についていき、窓の外からそれを見ていた真田は、遠ざかってゆく息区の方に注目していた。
夜、「キャバレー グロリア」のネオンサイン輝くサロンでは、女性歌手萩原みどり(星野みよ子)が歌を歌っていた。
歌の途中で持っていた花を客として来ていた幾子に投げ渡す。
男性とのダンスも披露し、歌い終わって近づいたみどりに、良かったわ、でも酔っ払って歌うなんて…といく子が驚くと、だって今夜は行くこのお祝いでしょう?それでいつ発つの?とみどりが聞くので、明日、明後日が式なのよと幾子は教える。
そう!とみどりが納得したので、じゃあ、乾杯!と幾子が温度を取って、みどりとグラスを合わせる。
どう?ただいまのご心境は?天にも昇る心持ち…って聞きたいところだけど…とみどりが聞くと、幾子はその気持ちには慣れっこだしねと揶揄うので、だめ!どきぢきよ、飛行機ならびくともしないんだけどと行く子が言うので、大丈夫よ、幾子なら…、着陸なしの登りっぱなし…とみどりは煽てる。
そのみどりがタバコを手にしたので、はいと幾子は客雨からもらったライターで火をつけてやる。
ありがとうと感謝したみどりは、あら?タバコ吸わないくせに…と、行くこのライターを不思議がるので、押し付けられちゃったの、香港からのお客さんに…と幾子は事情を話す。
そんな幾子に近づいたのはタバコを指に持った真田で、すみません、ちょっと火を…と幾子に話しかけたので、火をつけてやると、すみません、踊っていただけませんか?と真田は幾子に頼む。
あの〜、私…と幾子は笑顔で戸惑うが、真田が強引に手を取り、どうぞと立たせようとするので、何するの?この人、私のお客さんよ!とみどりが抗議する。
しかし、真田はみどりを無視し、幾子を立たせると、行く子がテーブルに置いたライターを素早く手に取るとフロアに向かおうとするが、誰かがぶつかって来たので、真田はフロアに倒れ込み、手から離れたライターは近くのカーテンの下に滑り込む。
ぶつかった男、志津野一平(河津清三郎)は、失礼しましたと真田に詫びるが、立ち上がった真田は殴りかかり、志津野の方も応戦し出したので、他の女性客から悲鳴が上がる。
真田を殴り倒した志津野はニヤリと笑うが、そんな志津野に密かに銃を向けていた男の手を、チャイナドレスの女が抑える。
その後、幾子とみどりを乗せ、自分の車を運転して店を離れた志津野は、どっかで飲み直さない?惜別の思い出に…と話しかけたので、みどりは、賛成!どう?幾子…とノリ気になるが、幾子は、私はもうたくさん…、疲れちゃったし…と言うので、明後日は花嫁さんなんだから、やっぱり帰りましょう、送ってくださるわね?とみどりも同意し、志津野に話しかける。
運転していた志津野は、もちろん、最後まで送らせていただきますよと答えたので、気をつけてよ、大事な体なんですからねとみどりは冗談を言う。
それに対し志津野は、車はオンボロでも腕は確かなんだからと返したので、喧嘩の腕前くらい?とみどりが聞くと、そんなことかなと志津野は答え笑い出す。
その直後みどりが、あ、そこ右に曲がって!と頼んだので、志津野はハンドルを切るが、その時、幾子が持っていたライターが車の床に落ちてしまう。
それに気づかないまま家の前で降ろしてもらった幾子は、どうもありがとうございますと運転席の志津野に礼を言い、志津野もお元気でと手を差し出し握手してくる。
ありがとうと後部座席のみどりにも声をかけると、じゃあお幸せにね、さようならとみどりも笑顔で手を振って別れる。
アパートに向かう階段をあがりながら、いく子は幸せそうに、さようなら!と去ってゆく車に手を振ると、ウエディングマーチを口ずさみながらアパートの階段を登り出す。
すると27号室から犬を抱えて出てきた子供のケン坊(香川良久)が、なんだ、お姉ちゃんか、おかえりなさいというので、ただいまと幾子は答え、まだ寝てないの?はい、お土産と言いながらケン坊にお菓子を渡す。
それをもらったケン坊は、どうもありがとう、お母ちゃんがもうすぐ帰ってくる頃だからというので、そう、じゃあ、お姉ちゃんも屋上まで一緒についていってあげるねと言い、ケン坊と一緒に階段を登り出す。
お母さんもケン坊を可愛がるように犬も可愛がってくれると良いのにねと幾子が話しかけると、お姉ちゃん。お嫁に行っちゃうんだって?とケン坊が聞いてくる。
まあ、誰がそんなことを?と聞くと、お母ちゃんが言ってたよ、本当?とケン坊がいうので、うんと幾子は答える。
そこに不気味な影が近づくが2人とも気づかず、ケン坊は、僕、寂しくなるなと言いながら、犬を抱いて屋上の柵際に腰を下ろす。
ろんがいるじゃないのと行く子は犬の名前を言うが、だって僕…とケン坊は答えると、立ち上がってろんを犬小屋に入れに行く。
ケン坊と別れた幾子は、またウエディングマーチを口ずさみながら自室へ戻る。
ケン坊は、犬小屋の中に入れた犬のろんが吠えるので、もう寝るんだよ、はい、おやすみ、なんで言うことを聞けないんだ!と声をかける。
その直後、異変を察知したケン坊は、吠え続けるロンを抱いて物陰から奥を覗くと、そこに倒れた幾子と、その幾子の服から何かを探そうとしている男の姿を見つけ、すぐに身を隠す。
少しして、ケン坊は自分の部屋に入ると、急いで鍵を閉め、怖さのあまりベッドの布団の中に潜り込んでしまう。
布団に潜り込んだケン坊の耳には、杖をついた男が階段を登ってくる足跡が聞こえ、怖くて目を瞑る。
部屋の入り口に差しっぱなしにしていた鍵が鍵穴から落ち、影がベッドの布団に近づいてはぐと、ケン坊、もう寝たの?と言う優しい母親康子(津村悠子)の声だったので、ケン坊は安堵して起き上がると、いきなり、お母ちゃん!と言って泣き出したので、どうしたの?怖い夢でも見たの?と言いながら康子はケン坊の頭を撫でてやる。
さ、もう大丈夫よ、お母さん、帰ってきましたからね、泣かないのね、良い子でしょう?と康子は語りかける。
ケン坊の涙をハンカチで吹いてやりながら、ケン坊のセーターに毛がついているのに気づいた康子が、あら、またろん抱いたのね?まさか、お部屋に連れてきたんじゃないでしょうね?と注意すると、ううんとケン坊は首を横に振る。
その時、部屋の外が騒がしくなったので、何事かと康子は階段の踊り場に出て下を覗く。
すると、階下で死んでいる幾子と近所の野次馬が見えたので、ケン坊がまた泣き出す。
車で見つけたライターを置いた机の横の椅子で寝ていた志津野は、電話で起こされ、はいはい、志津野興信所ですと答える。
あ?はあ、結婚の身元調査ですか?と受話器に問いかける志津野だったが、はい、ちょっと待ってと言ってメモ帳を手元に寄せると、はい、住所とお名前と聞き、はい、ああ、一週間ほど時間をいただきたいんですと答え、はあ、はあ、はあ、承知しましたと言って切る。
そしてタバコを咥え、机に置いたライターで火をつけようとするがつかないので、ポケットからマッチを取り出し火をつける。
入り口のドアの上に挟まれた朝刊を取ってドアを開け、おはようございます、所長と呼びかけた山中雄一郎(名和宏)は、昨夜はどちらへ?待ってたんですよ所長と続ける。
うるさいな、所長はやめろよと志津野は迷惑がるが、山中が持ってきた朝刊を広げると、「スチュワデス酔って墜死」の見出しと、昨夜出会った植田幾子(22)の写真が載っており、新宿区柏木町2ノ38山の手アパートで、咋21日夜12時頃酔って帰宅、屋上へ出たところ誤って墜落死を遂げた。なお会社へは当日付けでの辞表が低捨され近く結婚の運びとなっていた…と、記事が出ていたので、慌てて起きあがろうとしたので、お出かけですか?所長…と山中が聞いてくる。
志津野は、メモの方やっといてくれ、結婚さと山中の目の前にメモを置いて立ち上がると、急いでコートを着ながら、じゃあ頼むよと言い残し出かける。
山中は、行ってらっしゃいと送り出す。
電車が通る高架下の事務所を出た志津野は自動車に乗り込み出発するが、事務所では、山中が置いてあったライターに油を差し、またつくようにしていた。
志津野の車は、山ノ手アパート前に到着する。
現場にいた 五島巡査(柳谷寛)が、そんな柳谷寛 五島巡査に気付き、嬉しそうに、志津野さん!と呼びかける。
志津野さんの一平さんでしょう?と声をかけられた志津野が五島巡査に気づくと、ああ、やっぱりそうでしたか?珍しい方にあったもんだと後藤が喜ぶので、失礼ですが、あなたは?と志津野が聞くと、五島(いつしま)ですよ、お父さんの探偵助手していたと言うので、彼に違いない!その制服は板についてるもんだ…と志津野は思い出して褒める。
ははは…、お父さんの下じゃ役に立たん探偵助手でしたが、まあ、こっちの方はどうやら無事に勤めていますよと頭をかいた五島だったが、今日はまた何で?と言うので、うん?この事件でね…と、縄張りがしてある幾子が墜落した場所を指して志津野は答える。
それを聞いた五島は、やっぱり蛙の子は蛙ですな〜と嬉しそうに言うので、志津野も一緒に苦笑する。
そんな志津野の様子をろんを抱いたケン坊が近くで見ていた。
やっぱり事故死かい?と志津野が聞くと、捜査も鑑識もそう言う見解らしいんですが、私にはどうも納得がいかんのですよ、あの人は大酒を飲むような人じゃないし…と五島が言うので、相当酔っていたよと志津野が教えると、え?それじゃあ…と五島は驚く。
一緒だったんだよ、昨夜ここまで送ってきたのは僕なんだと志津野は告白する。
ほおと驚く五島に、屋上、案内してくれないかと頼むと、それじゃと言いながら、五島は志津野を屋上に案内する。
するとケン坊も、昨夜行く子からもらった菓子袋とろんを抱いて、後についてくる。
金網の作から下を見た志津野は、ハンドバッグが落ちてたんだね?と確認すると、そうですと後藤が言うので、部屋にも入らずここに来て立ってたわけか…と志津野は不思議がる。
ええと五島は答えるが、そこにろんを抱いたケン坊も来ていたので、この子は?と聞くと、死んだ娘さんの隣の子供ですと教えた五島は、ケン坊、おいで、おいで、ろんを抱いてるとまたお母庵に叱られるぞと声をかける。
するとケン坊は、もう叱られちゃったよと言うので、ああ、そうか…と五島は苦笑する。
今度ろんを部屋に入れたら捨てちゃうって…とケン坊が言うので、それは困ったことになったなあと五島はろんを撫でながら優しく応じる。
おじさん、あのおじさん誰?とケン坊が五島に聞くので、探偵さんだよと教えると、探偵?悪漢を捕まえるんだね?とケン坊が言うので、ああ、そうだよと五島は答える。
その間、志津野は落ちていた浮子のようなものを拾い上げるが、ケン坊は、僕悪漢を見たよと五島に教える。
ほお、どんなことを見たんだい?と五島が興味本位で聞くと、お姉ちゃんを殺すところだよというが、そこに母親の康子が洗濯物を干しにやってきて、ケン坊!と声をかけたので、ケン坊は思わず抱いていたろんを放し、五島の背後に隠れる。
それでどうしたの?と五島が続きを促すと、そいつ僕くらいの一寸法師だよとケン坊は教える。
え?一寸法師!と五島が驚くと、ジャングルから来た小人族だよ、きっと…などと言いながら、ケン坊は幾子からもらった菓子の一つを五島に手渡す。
そうか、小人族か…などと苦笑しながら、五島は菓子の包み紙を開けてケン坊に食べさせるが、ケン坊、お邪魔するんじゃないのよと康子が注意して近づいて来ると、あ、帰りましょうとケン坊の手を掴んだので、本当だよ、おじさん、このぐらいのやつで、目がパッパと電気みたいに光ってたよとケン坊は主張するので、そうか…と五島は苦笑するしかなかった。
康子とケン坊が帰ると、いやありがとう!と志津野が挨拶して来たので、あ、もうおかえりですか?と五島が聞くと、ちょっと浜崎さんに昨夜のこと話しておいた方が良いと持ってと志津野は答える。
うんと五島が納得すると、あの子何話してたんだ?と志津野が聞くので、ジャングルから来た小人族の話ですわと言い、五島は笑いだす。
「捜査第一課」では浜崎警部(伊豆肇)が、高見真之介(清水将夫)と言う訪問客を相手にしていた。
遅い子持ちでして、行くこと名付けたと聞いたのが、確か戦争が始まる4〜5年前でして、それ以来、植田さんとの消息も絶えてしまい、言ってみれば私が今日自動車の一台も乗り回せる身分になりましたのも、みんな幾子さんのお父さん三郎氏のおかげでして、常々気に留めておったんですが、今朝の新聞を見まして、もしやと思いまして…と高見は事情を話す。
ご覧のように、三郎氏は戦災で亡くなられましたので、まあお越しになったのも意味のないようなわけですが…と浜崎警部が言うと、私こそ、昔の事件でお世話になったあなたのことをふと思い出しまして、いやご迷惑をおかけしましてと高見は恐縮して頭を下げるが、その時、部屋に入って来たのが志津野だった。
それに気づいた浜崎警部は、おお、久しぶり!植田郁子のことか?と志津野に声をかけたので、お、良い勘だねと志津野も喜ぶ。
君に関係ある新聞特ダネと言ったらスチュワーデスの墜死事件くらいだからね、しかし当局の見解ではな…と浜崎警部が答えると、鑑識のデータですか、これは?と言いながら、そこにあった書類を手に取って見た志津野に、うん?うん…、まあ君には気の毒だが事故死だよと浜崎は断定する。
それに対し、事故死でもなんでも、結婚前の若い娘が死ぬってことは大した事件ですよ、それにこの僕には少し関係ある女でね…と志津野が言うので、ほお〜、少しね〜と言いながら、浜崎警部はピース缶から一本取って吸い始める。
鑑識の書類を読んだ志津野が、99%真実味がありませんと言うと、事故死にだろう?と浜崎が答えると、他殺ですよ、1%の反対説じゃ…と志津野が言うので、それを聞いていた高みが立ち上がり、失礼ですが、あなたは幾子さんは殺されたと?と聞いてくる。
あ、紹介しておこう、高見真之介氏、亡くなられた娘さんの関係ある方ですと浜崎は教え、志津野一平氏、まあ、腕のある私立探偵ですかなとも紹介したので、よろしくと志津野は帽子を取って会釈する。
私は幾子さんのお父さんに大変ご恩を受けました者で…と自己紹介しながら高見は名刺を差し出し、じゃあ、確かに他殺?ともう一度聞いてくる。
まあね、他殺を証拠立てる唯一の科学的証拠品!屋上に落ちていましたよと志津野は先ほど拾ってきたを取り出して見せると、まあ、死ぬ前にちょっとした悪戯しとくのも関東の人と大して変わりがないねと浜崎は相手にしなかった。
そんな悪知恵のある娘だとは思われませんね、自殺するには屋上の塀は高過ぎと志津野は指摘すると、低けりゃ低いほど自殺が多いとは限らないと浜崎警部はいいかすが、その時、ちょっとお待ちください、志津野さん、お電話ですと部屋の警官が知らせたので、志津野は受話器を受け取る。
電話は山中からのもので、もしもし、萩原みどりという女の人が至急所長にお会いしたいってんですと伝えてきたので、うん、すぐ行くと志津野は返事し、うん、何、電話だって?うん、良し、場所は探り済みか?と聞く。
ええ、それに幾子さんの許嫁の吉柳さんがアパートに来てるそうです、ええ、ええ、そうですと山中は答える。
うん、そっちはお前が当たってくれ、うん、それからついでに調べてもらいたいことがあるからね、10分後、いつものところで…、うんと言って電話を切った志津野が、浜崎さん、身柄確保お願いしますと頼むと、君のか?と浜崎が聞くので、萩原みどりって歌手と伝えると、植田幾子と関係がある女性らしいなと浜崎は察し、死ぬまで一緒にいた女ですよ、高…、勘ですよと志津野が言いながらみどりの住所を書き留めると、100%の…と浜崎が茶化すので、こうしちゃいられないっと、はい住所と言いながら、志津野は浜崎にメモを渡す。
部屋を出かけた志津野を呼び止めた高見は、ぜひ犯人を探し出してくださいと頼む。
せめてもの御恩人に、その費用を全部私に負担させてくださいませんか?と高見が言うので、は、いずれお願いに上がるかもしれませんと志津野は答えたので、お待ちしておりますと高見も頭を下げる。
そんな2人の様子を浜崎警部はニコリとして見ていた。
萩原みどりのアパートを訪ねた志津野はドアをノックしてみるが、返事がないので、みどりさん!みどりさん!と呼びかけると、そこに通りかかった掃除人らしき女性が、お留守じゃないんですか?と声をかけてくる。
あ、ちょっと開けていただけませんか?と志津野が頼むと、管理人さんご承知なんですね?と相手が言うので、ええ、あの〜、親戚のものですと志津野はごまかす。
掃除人は疑わず鍵を開けたので、中に入るとみどりはいなかった。
浴室に入り、浴槽の壁やタオルの温度を確認した志津野だったが、そこに、ダメだよ、いい加減なことをやったからってあげたりしちゃう、え?どなたです?あなた、私に断ったなんて嘘言って…と言いながら、先ほどの掃除人を連れて管理人らしき男性がやってくる。
それには答えず、僕の前に誰か来たかい?と志津野が聞くと、刑事さんですか?と管理人が警戒したので、来たのか、来なかったのかい?と志津野は繰り返す。
すると管理人は、いえ、どなたも…、あの〜、何かあったんでしょうか?と不安げに聞いてくる。
なければ良いがね…と志津野が答えると、管理人は困惑したように掃除人の方を見る。
本人が帰ったら、すぐ僕に連絡するように言ってくれよと志津野は伝え、名刺を渡すと、頼むよと念を押し帰ってゆく。
アパートを出て車に乗り込んだ志津野は、ラジオのスイッチを入れると、次は萩原みどりさんの歌、今宵また…とアナウンスと共に曲が流れる。
「株式会社 THK放送局 東京本社」に来た志津野から質問を受けた受けた受付は、どこかに内線電話をいれ、あ、そうでございますか、ちょっとお待ちくださいませ、あの〜、萩原さん、いらっしゃらないそうでございますと答えると、変わってくれと言って受付から受話器を受け取ると、もしもし?何言ってるんだね、今、現に歌ってるじゃないか!と抗議すると、え?録音!と驚く。
その頃、「グロリア」のバーに来た鼻メガネの紳士風の男に、お帰りなさい、今度は早かったですねとバーテンが話しかけると、あんまり気持ち良いところじゃないからねと答えたバーテンは笑うが、ボスは?と聞くと、お待ちかねです、ちょっと電話して見ましょうと言うと、内戦に電話をかけ、あ、もしもし?ただいま松田さんお帰りになりました、はい、おっ?ちょっとお客さんのようですから、また後ほどと言って電話を切ると、いらっしゃいまし、昨晩はどうも大変ご迷惑をおかけしましてと、やってきた志津野に話しかける。
あれからどちらかでお飲み直しでしたか?それとも…と話しかけても、志津野がそっぽを向くので、あの〜、何か?と聞く。
すると志津野は、親ね、昨夜のやつね、どこの馬の骨だか知らないけど、君んとこでご承知だろうと思って…、この辺の愚連隊かい?と聞くと、いや、私もあまり見かけない顔でしたねとマスターは答え、いかがですか?何か?と酒を注文するが、ああ、水でももらおうかと志津野は答える。
ご冗談を!私もぼちぼち飲みたくなる時刻でしてね〜、お客さんがお見えになる前にいっぱいやっとくんです、腕前の方もいささか自信がございましてね…とバーテンが笑うので、みどりさん、今日はまだですか?と志津野は聞く。
バーテンは、お店は5時に開きますが、みどりさんの歌は8時過ぎになりますから…と教える。
誰です?みどりさんのパトロンと聞くと、私は一向に…とバーテンは口をつぐんだので、ふ〜ん、それともヒモかな?と志津野はカマをかけてくる。
いや〜、みどりさんは歌の方ですし…、う〜んと…、女の子にお聞きになったらわかるかもしれませんよとバーテンは答え、お気に召しましたか?と聞く。
その頃、どうでしょう?今まで幾子さんをつけまわしていたような男でも、ご両親もなし、結局、許嫁であるあなたにお尋ねする以外に…と、山中は吉柳に質問していた。
しかし吉柳は気持ちの整理がつかないようで、しばらく1人だけにしといてくれませんか?と山中を拒否するので、やむなく山中は退去することにする。
一方、安子はケン坊に、早く繋いでこないとご飯にしませんよと言っていた。
だって僕、上怖いんだもの…とケン坊がいうので、怖いことなんかあるもんですか、まだこんなに明るいんだからと康子は言い返していた。
そこにやってきた山中が、どうしたんですか?と聞くと、いえね、この子がね、幾子さんを殺した人を見たっていうんですよと康子は答える。
え!と山中が驚くと、それがね、笑っちゃうじゃありませんか、一寸法師なんですって?と康子が笑いながらいうので、一寸法師?と山中は聞き消す。
本当だよ、おじさんとケン坊は言うので、どうせ紙芝居かなんかね、見たんでしょう?さ、繋いでいらっしゃいねと康子はろんを連れて行くようにケン坊に言いつける。
ケン坊が屋上へ向かうと、実はね、奥さん…と話しかけた山中は、これに見覚えがありませんか?と志津野が屋上で拾ったものを出して康子に見せる。
あら?これは私が幾子さんにあげた糸巻きですわと康子はそれを手に取って答える。
ケン坊はろんを連れて外を歩きながら、缶を蹴っていた。
その缶が足に当たった相手が山中だったので、帰っちゃうの?とケン坊が聞くので、うん、でも、さっきの一寸法師の話、もう少ししてくれるんならもう少しいても良いよ、本当に怖い一寸法師がいたのかい?と山中はそっぽを向いたケン坊の横にしゃがみ込んで聞く。
お母ちゃんに言わないって約束する?とケン坊が言うので、うんと答えると、ゲンマン、ゆびきりげんまんを要求し、道端の金網塀のところに行ったので、近づいた山中が、それで一寸法師ってなんのこと?と聞くと、ジャングルの小人族だよ、それで背は僕くらいしかないんだけど、大人なんだよ、それで足が3本あってね…、それで目がピカピカと電気みたいに光ってたよ、本当だよ、僕ちゃんと見たんだものとケン坊は打ち明ける。
流石に話についていけない山中は髪をかきあげ苦笑するが、本当だよ、僕ちゃんと見たんだもの…と考え込んだケン坊だったが、そうだ、ひょっとすると宇宙人間かもしれないよとまで言い出す。
山中は調子を合わせて、火星人だよと答えると、火星人?とケン坊が食いついてきたので、それともキングコングかな?と山中は笑って、ケン坊の頭を撫でてやる。
「グロリア」のフロアでは、私、昨日来たばかりなのと言う女を相手に松田は踊っていたが、じゃあ、またねと言って相手を変える。
別の女性と踊り始めた志津野が、君はみどりちゃんと仲が良かったんだろう?と聞くと、彼の方はステージですもの、挨拶する程度よと女性が答えるので、みどりの歌は時々おかしくなかったかい?と志津野は聞くが、女性は知らないようだった。
そうよ、今までも一週間くらい音沙汰なしってことがちょいちょいあったの!と、さらに別の女性が踊りながら教えたので、いやどうもありがとうと志津野は礼をいう。
カウンターでビールを飲んでいたサングラスをかけたチャイナ服の女加賀美京子(日高澄子)が、志津野の行動に気づいたのか、サングラスを取ってニヤリと笑うと、志津野の背中を叩き、私じゃどう?タダで遊ぼうったって虫が良すぎるわよと話しかける。
志津野は店のマスター(雪岡純)に近づくと、僕の踊った子に1枚ずつやってくれと言って金を渡し、チャイナ服の女が近づくと、君にも一枚と言って渡そうとするが、私は良いのよというので、何がいるんだい、君は?と志津野は聞く。
女は志津野に近づくと、あなた、悪いことは言わないから、今夜は早く切り上げた方が良いわよと忠告する。
君は一体…、ここのマダムかい?と志津野が聞くと、何に見えて?私のことより、ご自分の身を身を考えた方が良いわよ、今のところ…と京子は笑う。
そういえば、用心棒諸君もいないな、ご忠告通り帰ろう、この次付き合わせていただくよと志津野は答え、店を出る。
「グロリア」の裏口から外に出た志津野だったが、ちかのかいdあんから上がってきたコート姿の男に気付き、身を隠しながら尾行する。
角を曲がったところで、待ち伏せていた男たちに、懐中電灯の光を浴びせられ、怯んだところを襲われる。
なんとか1人の足にしがみつこうとした志津野だったが、結局気絶してしまう。
その志津野の服を男たちは探るが、ねえ!と言い合い、この野郎!と悔し紛れに蹴った後、行こうと言いながら立ち去ってゆく。
山中は事務所で1人ライターをいじっていたが、そんな山中を密かに監視する男がいた。
目覚めた志津野に気づいた京子が、目覚め?と言いながらベッドに近づくと、ああ、君か…と志津野は気付き、案外寝起きが良いのねと京子はベッド脇に腰掛け、揶揄う。
だから言わないこっちゃないわ、気になって私がついてったから良かったけど、あんなところにへたばって…、まるで野良犬みたい…と京子は言う。
ベッドから起き上がり無理に歩こうとする志津野に近づき、あら危ないわと体を支えた京子は、志津野をクッションのところに座らせ、あんな連中の相手をしてたんじゃ、命がいくつあったってたりはしないわと忠告する。
え?命が?と言いながら京子を抱き寄せた志津野はキスをしようとするが、体を離した京子は立ち上がって、ダメダメと笑って言いながら、お菓子をいただく時はおててを洗わなくちゃと言いながらタオルを持ってきたので、志津野は泥だらけの両手を見つめる。
はい、おてて…と言いながら、京子は志津野の手をタオルで拭いてやる。
汚れたタオルを持って立ち去ろうとした京子だったが、そのタオルを掴んだ志津野が、あ、待ったと言いながら引き止め、このタオルをくれという。
洗ってあげるわと京子が言うと、このままだよと言って志津野はタオルを引っ張り取ると、テーブルの上にかかっていたビニールでタオルを包み、とうとう手に入れたねと言うので、何なのよ、それ?と京子は不思議がる。
これじゃない、君さ!君は僕が欲しいって言ったじゃないかと、タオルを包んだビニールを脇に放り投げて志津野は言いながら、今日この手を取って引き寄せようとする。
いやよ、そんなヒビの入った身体なんかと京子は言い返しながらも顔を近づけるが、寸前で志津野が押し返したので、それご覧、据え膳もいただけないくせに…、またのお楽しみ…と京子はバカにする。
そして電話をかけた京子は、もしもし?志津野興信所ですか?重大な情報があるんだけど、ええ、いくらで買う?実はね、お宅の先生が犯情にあってのびてらっしゃるのよ、ええ、そうなの、お迎えに来てくださる?お金120円しかないのよ、タクシー代も私が払ったのと京子は伝える。
それを聴きながら志津野はタバコを吸い始める。
あ、もしもし、待って!慌てちゃダメよ、行き先も聞かないで、麹町のハイマート、ハイマートよ、ええ、そう…と京子は山中に伝えている。
ハイマートですね?ええ?麹町の…?所長に出てもらってくださいよと山中が要求したので、立てない?そこをなんとか…と山中は粘る。
問題のライターでタバコに火をつけた山中は、電話に志津野が出たので、あ、所長ですか?あの糸巻きはやっぱり幾子さんのでしたよと伝える。
他に;と、あ、早々、例のケン坊が、事件の晩、犬を戻しに屋上に行って、目撃したとかなんとか言ってましたが、ええ、ところが話が頓珍漢でね、どうもネタは紙芝居らしいんですよと山中は笑いながら報告する。
それを聞いた志津野は、ばか!なぜもっと詳しく聞いてこないんだ!え、あ、もしもし?明日の朝ね、まっすぐ行って、全部聞いてきなさい!と電話口で叱り、そう、もしもし?はい、あ、あのねえ、みどりさんから電話?どうしてそれを1番に言わないんだ!うん、みどりさんの行先がわかった?…と会話しながら、いつの間にか京子がいなくなったことに気づいた志津野は、畜生!と悔しがり、違う、お前じゃない!と山中に話しかけ、電話を切る。
その後、管理人からの連絡でみどりの部屋に向かった志津野は、部屋の中がもぬけの殻になって、掃除係の女性がいるだけだったので、唖然として立ち尽くす。
管理人がやってきて、この手紙なんですよね、この通りちゃんと判も押してあるし、部屋代も入っていたんです、私としては荷物を渡すよりほかありませんからねと言うので、次の借り手を入れる烏合があるんだろうと志津野は嫌味を言う。
いや、電話番号わかってますよ、念のため、かけてみて確かめたんですからと管理人が言い訳するので、わかったよ、もう一度電話をかけて聞いてみて、良いねと志津野は指示する。
ベッドのマットレスに腰掛けた志津野は、マットレスの下に挟まっていたアンプルを見つけ、その匂いを嗅ぐと、管理人室へ向かう。
電話をかけていた管理人は、もしもし?なんですって、代行電話?そんなバカな…と唖然としていたが、志津野はそれを横目にアパートから出る。
志津野が次に向かったのは「財団法人 復光会 総式病院」だった。
対応した医者(石黒達也)は、この麻薬や覚醒剤の害悪について、一般の人は案外呑気に考えているんじゃないでしょうかと言う。
ま。あなたのようなご職業の人にはわかっていただけると思うんです、我々自身だって、いつ何時凶暴な患者の犠牲にならないとも限らないですからねと医者は言う。
そこに事務員が来て、先生、萩原みどりさんの名は患者名簿には見当たりませんが…と報告する。
ご面倒をかけついでに、来客名簿の方も調べていただけませんか?と志津野が頼むと、はい、藤野君!と医者が事務員に声をかけ、それじゃ、志津野さんをご案内してくる間に、調べてみてくれないかと頼む。
じゃあ、参りましょうか?と志津野に勧めた医者は、ちょっと鍵をと事務員から受け取ると、麻薬患者が入った部屋に志津野を案内し、この間、放送局から患者の声という録音をとりに来たので、軽症患者に自分の思っていること、感じたことを自由に喋るようにと言って出席させたんですが、誰もが2度とアンプルを手にしないと言っていましたと説明する。
ご覧のように治るまでには死ぬほどの苦しみをするのですから、それが彼らの偽らない本音だと私は思うのですと医者は続ける。
まあ、それにしても年々激増する患者を防ぐには、この麻薬や覚醒剤の密輸、密造ってやつを徹底的に取り締まることです、私があなたに期待しているのもそう言うことばっかりなんですと医者が言うので、恐れ入りますと志津野は答え、じゃあと言って医者は元の事務室へ戻る。
鍵を事務員に戻した医者に、先生、死体でも中毒患者はわかるんでしょうか?と志津野が聞くと、もちろんはっきりわかりますと答えた医者が事務員にどうだった?と聞くと、やっぱりありませんでしたと来客名簿を調べた事務員は答える。
どうも…、せっかくおいでになりましたのに…と医者が気の毒がるので、いや、そちらこそ、飛んだ御迷惑かけまして…と志津野は恐縮する。
その頃、「渋谷警察署 参宮橋派出所」前を通りかかった山中は、ケン坊はここにいたんだね?五島さん、おはよう!と気づいて声をかけると、早くはないよ、もう昼だと五島は腕時計を見せながら言い返す。
頭をかきながら、いや、所長から連絡がないもんだから、留守番頼んでやっと出てきたんですと山中は言い訳する。
ケン坊、おじさん、昨日の続きの話をしてもらおうと思って足を棒にして探したんだよと山中はケン坊に話しかける。
するとケン坊はそっぽを向き、やだ、みんな嘘だと思っているんだもの…と拗ねるので、ごめん、ごめんと謝り、これをあげようとチョコレートを差し出したので、どうもありがとうとケン坊は礼を言って貰う。
で、お姉ちゃんが落ちた晩、ろんを連れて屋上に行ったんだね?と確認すると、うん、僕ね、お母さんのいない間、ろんと一緒に遊ぶんだよ、お母さんはろんが大嫌いだろう?だから帰ってくる前にろんを屋上へ戻しておくから叱らないんだよとケン坊は答える。
わかった、わかった、それであの幾子姉ちゃんがついてきたの?と山中が聞くと、そうだよ、僕はろんを寝かせていたら、ろんが唸るんだ、見ると姉ちゃんが倒れていて、一寸法師が何かを探していたんだとケン坊は言う。
流石に派出所の中で仕事をしていた後藤巡査もケン坊に注目する。
それで?と山中が先を促すと、それあら僕…とケン坊が続けようとした時、拍子木の音が聞こえてきたので、あ、紙芝居だ!と言って駆けていったので、山中も慌てて後を追う。
ちょっと待てよと、ケン坊を抱っこして立ち止まらせた山中が、それからどうしたんだい?と聞くと、逃げたんだよと言うので。逃げる時見たのかい?三本足を…と聞くと、見やしないさ、僕後ろ向いてたから音だけさ、2人って言ってねとケン坊はいうと、さよならと言い残して紙芝居の方に向かう。
鑑識?ちょっときてくれないか?捜査課の浜崎と捜査第一課の部屋に来た志津野が持ち込んだタオルを前に、浜崎警部が内線電話をする。
降るような星空で雨なんか、これっぽっちも降っちゃいないのに、そいつのズボンはぐっしょに濡れてるんだ、だからこいつから…とタオルを刺して志津野がいうので、こいつの付着物を分析してもらえないかと、浜崎警部がやってきた監視機関にタオルを渡す。
鑑識官は、は、かしこまりましたと答え、ビニールに包まれたタオルを持ってゆく。
みどりの変死体は?と志津野が聞くと、君の来栖マスプレゼントにしちゃお気の毒だな、変死体じゃ…、ひょっこりこれとかえってるかもしれないよと、浜崎警部は自分の親指をあげてからかってくる。
君は案外電話で揶揄われたのかもしれないぜと浜崎警部が続けるので、賭けても良いよと志津野がいうと、うん?何か秘密があるのかい?と浜崎が聞いてきたので、秘密?秘密だろうね、浜崎さん、一体女がハンドバッグを忘れるような急な用ってなんだろう?女のハンドバッグは男のネクタイなのに…と志津野は浜崎警部に問いかける。
だからみどりは殺されたとしか…と志津野が推理すると、その男が真田って君はいうんだろう?残念ながら真田にはアリバイが立っているんだ、一晩中麻雀で動かなかったんだよと浜崎警部は教える。
そこに刑事がやってきて、麻薬関係のリストには「グロリア」は見当たりませんと浜崎警部に報告する。
ご苦労と浜崎警部が労うと、麻薬と言いますと?とその日も捜査課に来ていた高見真之介が聞いてくる。
いや、この事件の背後に密輸があるんじゃないかっていうんですよ、志津野君は…と浜崎警部は打ち明ける。
その志津野は、オール失望だと言い残し帰ろうとするので、おい、どこに行くんだ?と浜崎警部が聞くと、気晴らしに…、あ、あの分析頼みますよと言い残し、志津野は去って行く。
それを見送った高見が、あっさりしてますねというと、ああいう男ですよ、志津野って奴は…、どっかで癇癪玉を破裂させてるかもしれませんよと浜崎警部は答え、高見とともに笑い合う。
事務所に戻ってきた志津野は、山中!まだか?と呼ぶが、お帰りなさいと返事したのおは、机の下から顔を出した京子だった。
おお、据え膳の方からご出張か?と志津野がからかうと、よしてよ、夕べの埋め合わせにどっかに連れていってもらおうと思ったんだけど、120円じゃお話にならないし、ついぶらっときてみたら留守番押し付けられちゃって…と京子は答える。
暇もなし、金もなしって男によく惚れる気になったね?と志津野が呆れると、まあ、探偵をしていると、心臓も丈夫になるもんらしいわね、あ、そうそう、いつか頼んだ結婚相手の身mと調査はどうなったって電話があったわよと京子は答える。
うん?と志津野が生返事すると、人様のことより、ご自分の結婚のことでも考えたらどう?お京子はからかってきたので、そうだね…、差し当たり、君の身元調査でもするか、結婚するのに調査しなキャならないような相手ならよせって言いたいね、叩いてホコリ載せない奴はいないからな、そうだろう?と志津野は言い返す。
志津野のコーチを受け取り、衣装掛けにかけた京子は、探偵商売万々歳ね、どう?私を助手に雇わない?と京子は申し出てくる。
へえ…、君を?と志津野は驚くが、山中君って、探偵助手にしちゃのんびりしすぎてるわと京子は助言する。
第一、所長さんの居所さえ知らないんですもの、そんなことってないわよ、私なら+と京子は売り込む。
いっそ商売替えして、結婚相談所でも開くかと志津野は提案すると、電話がかかってきたので、京子が受話器をとり、もしもし?はい、あ、所長さんですか?少々お待ちくださいと答え、志津野にわたす。
もしもし?あ、浜崎さん?と志津野が受けると、うん、あの例のタオル、海水なんだ、え、海の水、うん、それもね、プランクトンの量から見て、品川から大森辺りらしいな、うん、あの辺に発生した赤潮の成分と付合するんだよと浜崎は教える。
すると奴は、あの辺の海に入ったってことになりますね、あ、ありがとう、どうもお手数かけてすいません、あ、うんと言って、志津野は電話を切ると、タバコを吸い始めた京子に、おい出かけようと指示する。
どこ行くの?と京子が聞くと、大森だと志津野がいうので、大森?つまんないわ、何があるのよ、あんなところに…と京子は不満を漏らす。
志津野は、協定だよと即答する。
京子は買った券が当たったので上機嫌で配当金を受け取っていたが、その間、志津野は地元民に話を聞いており、今日はもうてえしたことねえけど、昨日あたりの赤潮はひどかったよとその角は海の様子を話していた。
そこによってきた京子が金をみせ、ほら、すごいでしょう?次のレースになるのは1-4ですって…というので、もうやめだ、こうつかなくちゃ叶わない、お先に!と答え、志津野はそそくさと帰ってしまう。
京子は、あら、待ってよ!うん!こんな所でおっぽり出されちゃたまらないわと文句を言うので、2人は工場地帯が見える海辺に行くことにする。
君、「グロリア」休むのかい?と志津野が聞くと、休むって?と京子が聞くので、君は経営者じゃなかったのか?と志津野は問いかける。
とんでもない、常連よ、お客の中じゃ筋の通った方かもしれないわねと京子は答える。
ふ〜ん、それで店に急を知ってるってわけか、君はマスターのアルバイト知ってるかい?と聞くと、拾った石を海に向かって投げる。
京子は、売上のピンハネってことで翔?と答えると、ケチな野郎だと吐き捨て、吸っていたタバコも捨てると志津野は歩き出す。
ねえ、どこ行くの?意地悪ねえ…、どう?箱根か熱海まで突っ走らない?お金ならあるわよ、さっきの稼ぎがと京子が提案すると、ギスギスするなよと志津野は言い、車に乗って出発する。
新橋付近まで戻ってきた時、パトカーが通り過ぎるのに気付き、志津野はその後を尾行する。
事件現場には遺体があり、筵がかけられており、すでに浜崎警部や鑑識が到着していた。
現場にいた合流した山中が志津野に、所長、やっぱり萩原みどりですと教える。
残念だが、君の勘が的中したと浜崎警部も脱帽する。
死体の顔を拝み、溺死ですか?と志津野が聞くと、鑑識官は、おそらくそうでしょう、外傷は全然ありませんし…、解剖してみないとわかりませんが、死後18〜9時間といった所でしょうなと肯定する。
水を飲んでいたら…と志津野がいうと、浜崎警部は、わかっている、例のタオルと照らし合わせて知らせるよと答える。
後で電話しますと伝えた志津野だったが、死後18時間…、殺されたのはアパートか…?アパートは出て住んでなくちゃならない…呟いていると、困りましたよ、所長と山中が話しかけてきたので、うん?と顔を見る。
死体が上がったというのに所長の行方はわからず、やっと強引に警察の車に割り込んできたんですがね…と山中は経緯を説明する。
うん、ケン坊の方はどうだった?と志津野が聞くと、いや、猛撃したのは事実らしいんですがね、何しろ、恐ろしさのために現実と空想が入り混じっちゃって、どこまでが本当なのか…と山中は報告する。
その後、志津野は「グロリア」から電話を入れ、そうですか、どうもありがとうと言って切ると、何かご心配ごとでも?と横で聞いていた支配人が聞いてきたので、萩原みどりは、麻薬患者だしさ…と答える。
店に来ていた京子のそばに行くと、どうだったの?と聞くので、肺道の中には海水がなかったそうだよ、石鹸の気がある真水…、わかるかい?みどりはアパートの風呂で溺れ死んだんだよ、湯の中へ押し付けられて窒息させられたんだ、そんな残酷な殺し方ってあるもんかい!と志津野は訴える。
京子は、私に怒ったって…と戸惑うが、麻薬屋さんに昨日まで散々絞っておきながら、一旦危ないとなると容赦無く虫けらのように殺す、それが奴らなんだ…と志津野が恨みがましくいうので、あの子好きだったね…と京子は言い当てる。
好き?と志津野が聞き返すと、出なかったら、犯人を捕らえるとよっぽどお金をもらえるの?と京子は皮肉る。
金?金だったら、碌でもない身元調査やったら結構転がり込んでくる、惚れる相手なら目の前にいるじゃないか、人間好き嫌いや金の他にか〜っとなるとことがあったって良いだろう?と志津野は苦笑しながら言い返す。
京子は、ねえ、お願いだからやめて、それほどの値打ちのないことに、たった1つしかない命を張るなんて…というので、損得じゃないよ、俺はみどりを殺した奴が憎いんだ、この手で殺しても飽き足らないほど憎いんだよと志津野は言う。
志津野が帰ろうとするので、待ってと手を組んだ京子は、ねえ、少し踊りましょうよ、踊って!と誘うが、志津野は相手をせず帰って行く。
土砂降りの雨の中、濡れ鼠状態で徒歩で帰っていた志津野を追う真田と2人の男がいた。
真田はやがて、足がふらつきだす。
鉄道の高架下に近づいた時、志津野がしゃがみ込んだので、真田は子分に指示を出し、前に出た子分が銃を向ける。
電車が通り過ぎる音に合わせて銃が発射され、志津野はその場に倒れたので、子分2人は確認するため近づく。
真田はヤクが切れたのか、その場に崩れ落ちる。
死んだと思っていた志津野は近づいた2人をいきなり殴りつけ、逃げようとする相手を徹底的に叩きのめす。
真田はその場で麻薬の注射を打っていた。
志津野は高架下で子分とまだ戦っていた。
真田が近づいたことに気づいた志津野は、子分が落とした銃を拾い上げ、真田が撃ってくると自分もその銃で応戦する。
志津野の銃弾で右腕を負傷した真田は逃走するが、志津野が追いつき、取っ組み合いになる。
線路上で取っ組み合う2人に警笛を鳴らしながら電車が近づいたので、志津野は真田を線路脇に押し倒す。
その後、真田を捕まえた志津野は事務所に連れて行ったので、留守番をいていた山中は驚いて、づしたんです?と聞くので、たいしたことないんだ、ちょっと包帯持ってこい、それから湯だ!と、真田をソファに座らせた志津野は指示する。
志津野は真田の上着を取って右腕を出し、傷口を確認し、相当に金を食っている腕だな…と感心し、こんなことしてたら50年の命使うのに1年もかからないぞと言いながら止血をしてやる。
何グラム貰えるんだ?俺を眠らしたら、ええ?もう少し俺が下手だったら、おの辺に穴が空いておめえが眠るんだぞと志津野は真田の心臓あたりに手を置いて説教する。
お前か、みどりやったのは?と志津野が聞くと、真田はそっぽを向いて口を割ろうとしない。
薬欲しさになんでもやる、また、やらなければ殺されるからな…、よく考えてみろ、薬をやってたらどのみち死ぬ、まるでミイラみたいになって、どんな死に方をするか…、遅かれ早かれ、お前は殺されるんだと志津野が指摘すると、真田の表情が歪む。
仲間の弾か薬かに殺されるのを待つか、足を洗うか、今別れ目だぞと志津野は説教すると、真田はきっと睨んでくる。
まだわからんのか?お前さえ足を洗う気なら、警察と病院に口聞いて生まれ変われるようにしてやると志津野は説得する。
そこに山中が洗面器にお湯を張ったものを持ってきたので、真田はそれを蹴飛ばすと、机に置いてあった銃を取り上げ、手当てしてもらった礼に、ぶっ放さずに帰ってやるぜと真田は志津野二重を向けながら見栄を張り、自分の上着を掴んで逃げていったので、山中が後を追おうとするが、よせ!と志津野はとめる。
真田は土砂降りの中、追ってくる山中に一発発射した後、ふらつきながら逃げてゆく。
山中はそれを見て、畜生!と悔しがる。
真田はその後、シャッターが閉まっていた「銀座美術館」という店のブザーを押し、中に入れてもらう。
奥の扉から螺旋階段を降りた地下ではカジノが開かれていた。
その部屋の隅に座っていた男(田島義文)は、倒れ込んできた真田の銃を手に取ると、弾倉を調べ、何でえ、3つも喰らわしたのかいと感心するが、薬をくれと真田が要求すると、何?と言いながらも、いきなり真田を殴りだす。
倒れ込んだ真田は、待ってくれ!俺がドジを踏んだんじゃねえ、あいつがすばしこかったんだと言い訳するが、言い訳は聞かねえと殴った男は言い、真田を蹴り落とす。
あの野郎はどうした?と男が聞くと、それが別れ別れになったんだと真田が言うので、だらしのねえやろうだと男は罵倒するが、真田は、薬をくれ、薬を…と要求し、男の足に縋り付いてくる。
しかし男は、何、薬だ?と言って真田を足蹴にすると、子分たちに連れて行かそうとするが真田は抵抗する。
そんな真田を子分たちは床に押し倒し、男はこの野郎!と言いながら踏みつけてきたので、真田は薬をくれ!と絶叫する。
そんな真田を子分たちが抑えつけ、騒ぐんじゃないと怒鳴りつけるが、そんな様子を見ていた鼻メガネの男がアンプルを一つ手に取り、おい、あっち行って大人しく休むんだと真田に命じる。
アンプルを受け取った真田は、ありがてえと言って泣き出したので、ああやって少し痛めつけてやるんだよと鼻メガネの男は、連れて行かれる真田を見送りながら、蹴っていた男と笑い合う。
その時、電話がかかってきたので、受話器を取った鼻めがねの男は、あ、もしもし、さようでございます,,,と答えるが、その時奥から真田が喚く声と怒声が聞こえてきたので、ちょっと騒がしいので、お声を大きく願えますかと電話相手に頼み、はい、ええ、それはもう万事うまく手配済みでございます。はい、お休みなさいませと丁寧に答える。
翌日もケン坊の部屋に会いに行った山中は、ケン坊頼むよ、語る気がどうしたんだ、ケン坊、お願いだから、もう一度だけおじさんに話してくれないか?一寸法師のこと…と玄関口で話しかけていた。
知らないよとケン坊は駄々をこねるが、そんなこと言わないで、ケン坊、あ、そうそう、ケン坊、一寸法師の話してくれたら、おじさん、ケン坊の好きなものをなんでも買ってあげるよと山中は懐柔しようとする。
するとケン坊は、本当、おじさん?と食いついてくる。
その時、ろんが部屋のドアに向かって吠え出したので、ケン坊も入り口に目を向けたので、どうしたんだい?と山中は聞く。
その時、外には男は立っていたのだが、ろんの鳴き声に気づいて立ちすくむ。
するとケン坊が一寸法師だ!と叫んだので、驚いた山中入り口のドアを開けて階段の様子を見るが、誰もいやしないよ、来てごらん、ほらね、誰もいやしないだろう?というと、ケン坊も階段に出てきて、誰もいないねと納得する。
ケン坊、何が欲しいんだい?と山中が聞くと、ドンの鎖、皮でできた…というので、皮でできた鎖か…、良し買ってやろう!そしたら一寸法師の続きを話してくれるかい?と促す。
ケン坊はうんと言うので、また指切りげんまんをすると、じゃあ、行ってくるからね、待っててねと言い残し、山中は犬のリードを買いに行く。
ケン坊はバイバイと手を振って見送る。
階段で山中とすれ違ったサラリーマン風の2人が、先ほど外にいた子分と真田を蹴った男で、子分は男に、あいつは志津野のとこの青二歳ですよ、今、犬の鎖を買いに行きましたから、また戻ってきますよと教えると、あいつだよ、例のライターを持ってるのはとおときが言うので、本当ですか!と子分は驚く。
ケン坊の部屋に入った男は、ろんを足で蹴飛ばすと、坊や、お母ちゃんは?と聞くので、お使いに行ったよとケン坊が答えると、そう、1人で寂しいだろうと聞くと、ううん、すぐに帰ってくるよとケン坊が笑顔で答えたので、爽快、じゃあお母ちゃんが帰ってくるまでおじちゃんと遊ぼうか?と男は声をかける。
おjちゃん、お母ちゃんい何かあるの?とケン坊が聞くので、うんmとっても良いお話があるの、ね?と男は笑顔で答え上がり込むと、ケン坊が差し出したおもちゃを手に取って、そうか、自動車と記者か、良し良しと調子を合わせ始める。
ドアの前では子分が階段の様子を見張っていた。
おじちゃんから行くぞと男は言い、機関車を走らせると、ケン坊も自動車を走らせるが、そこに靖子が帰ってきたので、あ、お母ちゃん!とケン坊が呼ぶと、いきなり男はケン坊の口を塞ぎ、騒ぐんじゃねえ!と凄み、子分が康子を背後から銃で脅して部屋の中に入れる。
ケン坊を安子に押し付けた男は、サングラスをかけ、坊や、おいちゃん、覚えているだろうと言いながら振り向いて見せる。
あっ、一寸法師だ!とケン坊が叫んだので、ケン坊を抱きしめた康子も驚く。
男は松葉杖の一部から、忍びナイフを取り出すと、部屋にあった犬のぬいぐるみに投げて刺す。
男は康子からケン棒を引き剥がし、畳に押し倒すと、子分がケン坊を捕まえたので、ケン坊は、おかあやん、怖いよ〜、怖いよ!と叫び出すが、康子は男からナイフを突きつけられているので声が出せなかった。
お母ちゃん、怖いよ〜!と叫ぶケン坊にナイフを投げようとした男の手を掴む康子。
男は、わかったか!子供に俺のことを絶対言わせないって約束するか!と康子に迫る。
靖子が震えながら頷くと、男は多々民事突き飛ばしたので、子分が手を離したケン坊も康子に抱きつく。
男と子分はそのまま帰ってゆく。
「割烹 おそめ」の一室では、和服姿の京子がマッチ棒を二本突っつける遊びをやっていた。
興信所に戻った山中は、犬のおかげでだいぶん仲良しになりましたから、他を回って、夜もういっぺん行ってみるつもりですと電話で志津野に報告していた。
ええ、今どこにいるんですって?へえ…、実はちょっとばかり、所長を脅かすことがあるんですよと山中が言うので、電話相手の志津野は、いずれにしても期待しないことでしょう、ああ、君が帰る頃には僕も帰る、じゃあと言って電話を切ると、志津野は京子が待っている部屋に向かう。
部屋に入った志津野が部屋の明かりを灯そうとすると、点けないでと京子が頼む。
そんな京子のそばに座った志津野が、寒くない?と優しく言うと、ええ、ちょっと…と京子は恥じらいながら答えると、少し開けていた川向きのガラス戸を閉めて、志津野の手を触ると、あなたの手も冷たいわと言う。
しかしその直後、手を離した京子は、ずいぶん長い電話ねと急に冷たい表情になる。
長いからっていい話ってことはないよと志津野が答えると、冗談おっしゃい、電話一本で何本って言うくせに!と京子は言い返す。
君こそ、この細口どのくらいすんの?と志津野は、部屋に飾ってあった小さな花瓶を手に取って聞く。
おあいにく様、古美術なんて洒落た趣味ないわと京子はそっぽをむくが、どうだか、大いに関係ありそうな顔してるよと志津野は言い返す。
すると真剣な表情になって座り直した京子は、そんなに私のこと知りたい?教えてあげましょうか?と言い出したので、志津野は首を横に軽く振って、知ってるよと答える。
そう、私、恐ろしい女よと京子が言うので、恐ろしい女…と呟きながらお銚子の酒を都合とした志津野だったが、そのお銚子を横から奪って盃に注いでやりながら、私、あんたを殺すかもしれないわよと睨みつける京子。
志津野はそんな京子のおちょうしをとると、京子の身体を引き寄せる。
一方、ケン坊を寝かしつけた康子は、ノックの音がし、ケン坊!おじさんだよと呼びかける山中の声が聞こえたので、はい、ただいま、今すぐ開けますからと返事をし、ドアを開け、いらっしゃいませ、どうぞと中に誘う。
どうも、遅くすみませんと山中は詫びるが、いいえ、ちょっとどうぞと康子は歓迎する。
山中は、ケン坊と約束しちゃったんですと言い訳して靴を脱ぐ。
どうぞ、今すぐお茶でも淹れますからと言いながら座布団を出す康子に、良いんですよ、これケン坊にと言いながら山中は買ってきた皮のリードを渡す。
まあ、わざわざどうも…と令を言った康子は、ケン坊、おじちゃまよ、おっきしてと声をかけ、ベッドに寝ていたケン坊を起こすと、さ、これ着て、良い物買ってきてくださってと教える。
ケン坊、ほら買ってきたよ、見てごらんと山中はまだ目を開かないケン坊に語りかける。
康子もまだ目が覚めないケン坊を抱きながら、坊や、おじちゃんが良いもの買ってきてくださったわよと呼びかける。
しかしケン坊は目を閉じたまま、うんと言うだけなので、ほら、見てごらん、一体どうしたんです?ケン坊、具合でも悪いの?おじさんに一寸法師の話をしてよと山中はケン坊を抱いて話しかけるが、康子がお話があるんですけどと横から言い出す。
え?なんです?と山中が応じると、康子は窓の外などを警戒する。
窓のカーテンに映る康子の姿に気づいたサングラスに松葉杖の男はニヤリと笑い、近くにいた真田たちに合図をする。
京子から事情を聞いた山中は、そうか、それがケン坊が言っていた三本足だったんですねと納得する。
良いですか、すぐ迎えにきますからね、しっかり鍵を閉めて、一歩も外に出てはいけませんよ、それから窓のそばにも寄らないでねと言い残し、山中は外に出る。
アパートの外に出た山中は、周囲を警戒しながら前進しようとするが、階段付近で銃撃を受け転がって逃れる。
山中はさらに走って逃れようとするが、車が迫ってきたので、それを避けようとして壁際に寄った瞬間、持っていたライターを落としてしまう。
その時、アパート側の交番にいた五島巡査も異変を感じる。
松葉杖の男は、倒れた山中の服からライターを見つけようと探るが、見つからないので、舌打ちをして松葉杖で山下の体を叩いた後、今来た車に乗り込んで走り出す。
その車に乗り込もうとした真田だったが、松葉杖の男が車内からナイフで突き刺したので、真田もその場に倒れ込んでしまう。
そこに駆けつけた後藤巡査が倒れていた山中を発見し、ああ、山中さん、山中さん!と抱き起こすが、その足元にライターは落ちたままだった。
山中の死を知らされ、小さなクリスマスツリーが飾られた興信所にケン坊を連れてお悔やみに来た康子は、そのライターも含めた山中の遺留品を見せられ、私のために山中さん、こんなことにしてしまって!と泣きだしたので、ご丁寧にありがとうと志津野は礼を言う。
その場にいた五島巡査は、それじゃあ、これから本庁の方へ行きますから失礼しますと志津野に挨拶するので、いろいろお世話になりましたと志津野も礼を返す。
康子もさあ行きましょうとケン坊を促し、ケン坊もさようならと言うので、志津野もさようならと送り出す。
1人になった志津野は、中山が飾ったクリスマスツリーを目の前に見ながら、実は、ちょっとばかり所長を脅かすことがあるんです…と電話で言っていた山中の言葉を思い出す。
タバコを加え、問題のライターで火を点けた志津野は、その言葉の意味を考えていた。
その時、電話がかかってきたので、はあ、志津野ですと答えると、ああ、身元調査…、そんなことやめたら良いでしょう、惚れ合った同士なら一緒にしてやりゃ良いんですと言い返す。
ああ、もちろん、お金はお返ししますと言って電話を切ったところに京子がやってきて、所長さん、良いこと教えるわね、惚れた同士一緒になっても良いわよ、あら、良いライター買ったのね、どうしたの?と聞いてくる。
すると志津野は今日この手からそのライターを奪い返し、このライターが3人の命を奪ったのかもしれないというと、その場で分解し始める。
ご苦労様、どう、街出ない?街はクリスマス、賑やかよと京子は誘う。
「グロリア」ではクリスマスパーティが行われており、デコレーションされたフロアでみんな踊っていた。
シャンパンが開けられている中、志津野は京子と「グロリア」にやってくる。
マスターは、これから特別のショーがございますから、ごゆっくりどうぞと言いながら志津野を席に案内する。
また物騒なやつですか?と志津野が皮肉ると、どういたしまして、あの晩のは不意打ち…とマスターは言い訳するが、志津野がタバコにライターで火をつけると表情が変わる。
そのグロリアには、高見真之介も来ており、志津野に気づくと、サンタのお面を被る。
志津野にもマスターは三角帽などの衣装を渡していた。
志津野は三角帽の一つを京子に渡すと、どうしてお面被るか知ってる?と聞く。
何?と言いながら京子と志津野が、マスクを被ると、志津野さんと呼ぶ声が聞こえる。
サンタのお面を脱ぎながら素顔を見せた高見がメリークリスマスと挨拶してきたので、ああ、あんたでしたかと志津野も驚く。
いかがですか、事件の方?と高見が聞くので、クリスマスを祝うほどのんびりしてられないんです、この人がと京子を指差すと、高見はじっと京子を見つめ合う。
京子は踊りましょうよ、さあ、早く行きましょうと志津野を誘い、フロアで踊り出す。
あちこちでクラッカーの破裂音が鳴る中、志津野を狙う拳銃があった。
銃が発砲されると、志津野がよろめいたので、どうしたの?と京子は驚くが、人のいないところに連れてってくれと志津野はたのむ。
2回の控室に連れてきた京子が、志津野を椅子に座らせて大丈夫?と案ずると、4人目は命を助けてくれたよ、罪滅ぼしのつもりかな?と言いながら、志津野が胸ポケットから出したのは例のライターだった。
ねえ、本当に大丈夫なの?と京子が言うので、大丈夫だよと志津野は笑って答えるが、タバコを吸おうとライターを擦るがつかないので、京子がマッチでつけ、休みましょうか?と聞くので、うん、水を一杯くれと志津野は頼む。
京子が部屋を出た時、弾丸で苦ブレたライターを手に取った志津野は、ライターの底から詩篇らしきものがのぞいていたんで、そこの部分を剥がして紙片を取り出す。
そこには数字とアルファベットが書かれていたが、洗面所で水を汲んでいた京子は、そんな志津野を盗み見ていた。
そこに戻ってきた京子は、志津野が持っていた詩篇に手が滑って水がこぼれたように装い、紙を床叩き落とすと足で素早く隠す。
その時、ノックが聞こえ、姿を出したボーイが、志津野さんて方いらっしゃいますかと言うので、僕だよと答える。
こちらにお通ししますか?とボーイが言うので、いや僕が行くと答え、志津野は部屋を出てゆく。
後に残った京子は何か思い悩んだような複雑な表情になる。
下で待っていたのは浜崎警部だったので、よくわかったねと志津野が声をかけると、車だよ、君の車探すのに手間はかからんよと浜崎警部は答え、忙しそうだなと言うので、うん、昨日よりはね…と志津野は答える。
昨日より今日な…、実は真田が君の名前を呼び続けてるんだと浜崎警部は小声で打ち明ける。
志津野は、僕はここちょっと抜けられないんだが、君ちょっと聞いてくれないか?と頼む。
浜崎警部な良いだろうと答え、そばにいた風見に失礼しますと挨拶して帰ってゆく。
高見さん、犯人を探すのに、可愛い女子まで殺しましたが、もう誰も殺さずにすみそうですよと話しかけ、また二階に戻ってゆく。
それを聞いた高見は、ニヤリと笑って、またサンタの面をかぶる。
二階に戻ると、すでに京子の姿はなかった。
ここにいた女の人は?と志津野が休憩していた女性に聞くと、たった今出て行きましたわと言う。
ショールを被った京子は店の地下に来ると、秘密のドアを開き、子分たちが集まっている部屋に来ると、ボスは?と聞く。
もうおいでになると思いますが?と子分が答えると、そうと答えた京子は、これといって壊れたライターと中に入っていた紙片をテーブルの上に投げ出す。
こりゃ、どうも…、待ちかねておりました、ボスもきっとお喜びでしょうと鼻メガネの男が言う。
さっき志津野撃ったの誰?お前かい?と京子が厳しい口調で聞くと、いいえと花メガネの男は否定したので、じゃあ、お前だね?と京子は松葉付で変装する男を睨みつける。
ええと男が答えると、そのネクタイを掴んで立たせた京子は、男のうちポケットからじゅを取り出して狙ったので、男は驚き、鼻メガネの男も何をするんですか、あんたと京子を諌める。
その手を振り払った京子は、銃を持って少し距離を置くと、その人形をお抱き!と松葉杖の男に命じる。
男がためらっているので、お抱きったら!と京子は凄むので、男はやむなくエジプトの古代石像風の人形を抱く。
さらに京子は、踊るんだよと命じたので、男は石像を持ち上げてウロウロし出す。
なぜ踊らないんだ!?と京子が責めると、男は石像を抱いてダンスのように動き出す。
京子は発砲し、石像を壊すと、拳銃をテーブルの上に放り出し、男の頬を執拗に叩き出す。
泣きながら相手の頬を叩きつけた京子は、わかってない!踊ってた相手撃たれた気持ち!と訴える。
その間、志津野は地下室付近で消えた京子を探していたが、秘密の通路を発見できず戻ってゆく。
そんな秘密の地下室にボスがやってきたので、子分は笑顔で出迎える。
他の子分たちも会釈する中、近づいた松葉杖に変装する男に、どうした?バカにしょげてるじゃないかとボスが話しかける。
ちょっとドジ踏んだもんですから…遠ことは答える。
あ、いらっしゃいませ、あNO~,先ほどお電話いたしましたが、ちょうど手に入ったものですからと近づいてきた鼻メガネの男が紙片を差し出したので、ご苦労とボス入って受け取る。
鼻メガネの男は、ボスに顔を近づけると、はっ、はっと何事かを小声で言われたのか、頷き離れていく。
鼻メガネの男から何か耳打ちされた松葉杖の男も驚いたように立ち上がったので、早くしろよとボスは命じ、2人は慌てて出かけてゆく。
次に京子に近づいたボスは、京子、私は疲れたよ、この所、ミコのお守りばかりで…と言うと、今日この表情が曇ったので、どうしたね?とボスは聞く。
その頃、病院に駆けつけた浜崎警部は、ベッドで息も絶え絶えになった真田の様子を見守っていた。
真田!おい、わかるか?浜崎だ、おい、わかるか?と浜崎警部が話しかけると、志津さん、志津さん、やっぱりあんたの言うとおりだと真田が譫言のように言うので、おい、浜崎だよと言葉をかけると、おい、おい、おい、ボスは誰だ?と問いかけるが、真田は首を横に振るだけなんで、おい、おいと再度呼びかけると、銀座、銀座…、銀座美術館…と真田は漏らし、そのまま息絶える。
何?銀座?美術館?と浜崎は聞き返すが、すでに答えはなかった。
浜崎はその言葉で何事かを察する。
「キャバレー グロリア」のステージでは、クリスマスデコレーションの下でクラッカー音が鳴り響く中、新しいダンサーが踊っていた。
ダンサーは演奏の最中、胸をあらわにする。
そんな中、刑事らしき男が店にやってきたので、志津野が近づくと、メモが渡される。
そこには「銀⚪︎美術⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎ハマ」と書かれてあった。
それを読んだ志津野は刑事に頷いてみせ、そのメモはその場で破り捨てる。
サイレン音と共にトラックに乗った警官隊が、「銀座美術館」前に停まる。
トラックを降りた警官隊は、閉まっていた「銀座美術館」のシャッターの入り口を開け、中に侵入する。
「グロリア」ではまだ客たちがマスク姿のまま踊っていた。
志津野は、僕に手を貸してくれと踊っていた女に話しかけると、もう踊ってるじゃないのと相手は言うので、来るだろう?どんなことがあっても、君は黙って動いてくれと志津野は言い聞かせる。
何しようって言うの?と女が聞くので、ちょっとしたショーだよと志津野は笑いながら言うと、踊りながらマスターの背後に回ると、マスターの手を後ろ手に締め上げる。
その間、警官隊は「銀座美術館」の内部に入り込んでいた。
待ち伏せしていた子分たちが発砲してきたので、警官隊との銃撃戦が始まる。
マスターの手を捻り上げて地下室に降りてきた志津野は、どこなんだ?と問い詰めるが、マスターはなかなか打ち明けない。
さらに締め上げると、諦めたのか、マスターは秘密のドアのスイッチを押す。
するとロッカーごと壁がどんでん返しのようにまわり、向こう側への通路が開く。
志津野はマスターの腹をついて気絶させ、その秘密の通り道から中に侵入すると、京子を連れて逃げ出そうとしたボスが、鼻メガネの男を銃で撃ったので、鼻メガネの男は裏切り者!あんた、そんな人だった…と叫んで倒れる。
美術館内では、子分たちと警官隊の銃撃戦がまだ続いていた。
その戦いの最中に入り込んだ志津野は、死んだ子分が落とした銃を二丁拾い上げ、敵の子分たちの撃ち合う。
松葉杖の男も松葉杖にサングラスに変装し警官隊と撃ち合っていた。
敵の子分たちは手榴弾のような火炎弾を投げ始める。
松葉杖の男たちは螺旋階段を降りてさらに地下室のアジトに逃げ込むが、警官隊も後を追ってくる。
何も知らない客たちが踊りまくっていた「グロリア」のフロアに逃げてきたのは、サンタの面を被った男と京子だった。
松葉杖の男ががぶ飲みしていた酒瓶も銃弾で割れてしまう。
ヤクを自分に打っていた男は口から吐血して倒れる。
京子を連れたボスは外に停めてあった車に乗り込み逃走しようとしていた。
京子を後部座席に押し込んだ時、「高見」とネームが入ったハンカチが床に落ちる。
「銀座美術館」の表に出た志津野は、そこにいた浜崎警部に「グロリア」の表固めてください、肝心のボス逃げるかもしれないと頼む。
ボス?と驚く浜崎警部。
その時、走り去る車を見かけた志津野は、お願いしますと浜崎警部に言い残すとその後を追う。
松葉杖の男は、秘密の通路を使って「グロリア」に逃げこもうとするが、通路を開く装置は破壊されていたので、逃げるに逃げられなくなり、そのまま警官隊に追い詰められてしまう。
弾切れになった松葉杖の男は、落ちていた拳銃で警官を撃つが、それも弾切れになり、松葉杖に仕込んだナイフを投げつけ警官を1人倒したりするが、最後は警官隊の銃撃で蜂の巣状態になる。
サングラスの片方が割れ、顔面血まみれ状態になった松葉杖の男は、近くの壁の鏡にぶつかり、鏡を破壊して倒れる。
それを冷静に見守る浜崎警部。
「銀座美術館」の前には消防車も駆けつける騒ぎとなる。
志津野が車で訪れたのは「高見」の屋敷だった。
シャム猫を抱いてソファに座っていた高見は、「銀座美術館』!と驚いていた。
そこの地下室に麻薬密輸団の本拠がありましたと志津野が報告していたので、ほお、あなたの睨んだ通りでしたな、しかし良かった、幾子さん殺しの犯人が殺されて…と感心する。
ところが高見さん、申し訳ないんですが、肝心のボスを逃がしてしまった…と志津野が悔やむので、いやいや、そんな事は…と高見が庇おうとすると、冷酷無惨…、そんな形容がぴったりするような男だとお見ます、卑怯なようですが、これ以上この事件に」首を突っ込んでおりますと、私の命もかっさわれかねないとも限りません、まあ、お恥ずかしい話ですが、年甲斐もなくある女を愛し始めまして…と志津野が打ち明けると、高見も笑い、恋愛は多分あなたもご存知だと思いますが、「グロリア」で一緒にいた女ですと志津野は打ち明ける。
高見は、お羨ましいことで…と言いながらシャム猫を愛撫する。
で、ご依頼の件もお断りするより致し方ありませんというと、志津野は胸ポケットから小切手を取り出しテーブルに置くと帰ろうとしたので、ああ、これはお取りください、この小切手は…と高見は言葉をかけ、それよりあなたとその女性のために乾杯させていただきたいですなと高見は申し出る。
これには志津野もありがとうございますと会釈する。
高みが酒を注ぐ間、部屋の美術品を見た志津野は、素晴らしいコレクションですな…と褒めると、これが私のたった一つの道楽でしてねと高見は言う。
やはり、お集めになる経路は香港方面かな?と志津野が呟くと、このウィスキーも…と高みは酒瓶をかざして答え、さ、どうぞと勧めてくる。
グラスを受け取り、高みと乾杯した時、パトカーのサイレン音が近づいてきたので、高みは動揺し始める。
もうお出かけの時間では?と志津野が聞くと、ちょっと約束がありますので…と高見は答えたので、横浜2号桟橋、やめたほうが良いですよ、ありのはいでる隙間もありませんと志津野が言うと、持っていたグラスを床に落とし、拳銃を取り出した高見は、それを志津野にむけ、謹んであんたのご忠告を受けましょう、私もまだ命は惜しいですからなと答える。
志津野は苦笑し、気が早いですな、あんた…と告げると、言うことはそれだけか?と高見は脅してくる。
もう一言、暗号はもっと複雑にするんですなと志津野が指摘すると、ありがとう、今度は気をつけるよと高見は言い、冷酷無惨…、確かにそう言ったな?と志津野を睨むと高見は銃を撃とうとするが、次の瞬間、銃声が鳴り響き、二階から銃を持った京子が姿を見せる。
唖然とした表情の高見は持っていた銃を落とすと、左手で猫を抱いたまま、背後のカーテンを掴んで引きちぎりながら床に倒れる。
ソファの背後に身を隠していた志津野が立ち上がると、二階から京子が降りてくる。
階段の途中で拳銃を落とした京子は、私って、私ってこんな女なのよ…と言って泣き出す。
ふさわしいよ、俺には…と志津野は答え、だから君の身持ち調査をしなかったろう?と言う。
2人は近寄り合い、互いに見つめ合うと、外へ出てゆく。
桜田門の警視庁が見えるお濠端を歩く2人。
私の姿が見えなくなるまで見送っていてちょうだいね、でないと、私、あの階段を登りきれないかもしれないの…と京子は志津野に声をかける。
志津野は、わかった…、今度京子が出てくる時、きっと同じところで見ていてあげるよと答える。
それを聞いた京子は、もう一度、もう一度言って…とせがむので、今度京子が出てくる時、きっと同じところで見ていてあげるよと志津野は繰り返すと、持っていたコートを京子に着せてやる。
2人は顔寄せ合いキスをする。
その横を散水車が通り過ぎる。
志津野と握っていた手を振り解き、京子は警視庁の方へ土佐加茂取りで歩いて行き、途中で振り向いて志津野の顔をじっと見返す。
立ち止まり、それを見送った志津野は、反対側に歩いていく。
終