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歴史は韻を踏むのか

2026.01.26 02:35

近年、ロシアによるウクライナ侵攻や、米国がベネズエラを急襲し大統領を連れ去ったりと、21世紀初頭に支配的だった世界平和主義的な潮流から一転、戦前のきな臭さを感じさせる出来事が相次ぐ。

現況を俯瞰すると、第二次大戦前との類似点が多い。1918年に世界的にスペイン風邪(インフルエンザ)が大流行、感染者数は約5億人に拡大し、死者数は5千万~1億人に達したとされる。人流の停滞と経済活動の停止を受け、世界各国は財政支出を拡大した。その後2年ほどでスペイン風邪が収束すると、復興局面における過剰流動性が資産価格上昇を招き、米国の投信バブルへと繋がった。1929年にバブルがはじけ大恐慌を引き起こし、米国は自国市場保護のためスムート・ホーリー法など保護主義へと傾斜する。こうした排他主義的で極端なナショナリズムは世界各国に波及、第二次大戦へと突入した。

今回、2019年の新型コロナによる感染者数は累計約4億人で死者数は500万人超に達した。各国は今回も大規模な財政支出拡大により経済の下支えを目指した。新型コロナは3年ほどで収束し、その後は現在に至るまで先進各国で株高が続く。一方で独、仏などで極右政党が勢力を拡大し、米国ではトランプ大統領が対露・対中戦略の一環としてグリーンランド所有に言及するなど、権威主義国家と民主主義国家の区別は曖昧になりつつある。平和主義国と認識されてきた日本でも、右寄りとされる高市政権が誕生。首相による台湾情勢を巡る発言を契機に、中国から様々な嫌がらせを受けており、政権高官からは核保有に関する踏み込んだ発言も飛び出すなど右傾化が進む。

各国で過激な指導者が選出される背景として、所得格差の拡大がある。自分が恵まれないと感じると民衆は自暴自棄になりがちで、ましてや他人・他国を思いやる余裕などなくなる。図1.トマ・ピケティらによる所得格差の分析「世界不平等データベース」を見ると、1920年頃の日、米、英、仏、独で国民の上位1%が所得全体の20%程度を占め、所得格差は高水準だった。その後、第二次大戦を経て所得格差は縮小し60年頃には、その比率は10%程度まで低下。しかし、80年代以降再び上昇し世界平均は20%を超え、米国でも近年再び20%に達した。日、英、仏、独は、依然として10%台前半にとどまるものの上昇傾向にある。所得格差の拡大は、社会秩序の変更や破壊、さらには他国や他民族を犠牲として、その恩恵を限られた国、民族にもたらす事を公言する人物がリーダーとして選出されやすくなる。第二次大戦以前には、独でヒトラーがユダヤ人を敵視し、日本は欧米によるアジアの植民地化に対する危機感を背景に対外拡張へと邁進した。現在の米国や欧州各国の移民排斥の動きや露によるウクライナ侵攻にも同様の思想的底流を見出すことができる。

「歴史は繰り返さないが韻を踏む」と言ったのは米文豪のマーク・トウェインとされるが、世界は今回も歴史に学ぶことなく、新たな大戦へと突入するのだろうか。