偽善エコロジー―「環境生活」が地球を破壊する
武田先生の書籍シリーズです。多少、今までの本と重複する内容もあるので、ピックアップ箇所は少ないように思います。
■レジ袋を使わないはただのエゴ
環境問題でよく出てくるスーパーやコンビニでのレジ袋についての議論です。現在、日本では年間で300億枚ものレジ袋が使われているのだとか。これが全くの無駄かというと、むしろ今まで無駄に燃やしていた石油残渣物の有効利用になっているようです。
仮にこれが全て悪だとして、別の袋を用意するなどした場合、どんな弊害が起こるのでしょうか。
1.レジ袋に使われていた石油成分を、違う用途に回す事を考えてなくてはいけない
2.レジ袋に代わる袋を新しく製造する必要がある
3.ゴミを捨てる時にレジ袋に代わる専用ゴミ袋を作る必要がある
せっかく有効に活用されていた流れをストップし、新たに作るものがたくさん出てきます。経済は少し刺激がされるかもしれませんが、こちらの方が無駄なようです。どうしてこのような事が産まれるかは簡単で、自治体や国がこうしたエコ・環境をテーマに掲げる事で、特定業者(例:新たな袋を作る業者)と癒着してるためだそうです。
■バイオエタノールを使うエゴ
オレンジやコムギの畑を、燃料用のトウモロコシ畑に切り替えてしまおうという政策が米ブッシュ大統領時代にあったようです。食べ物を燃料にする、という発想は、環境に良いように見えるかもしれませんが、世界の貧困問題を考えるとお門違いな内容です。
世界の穀類の生産高は年間20億トンですが、現状の人口から考えると一人あたりほぼ280KGほど、飢えずに食べていける量です。しかし、実際は約8億人が飢えています。中でも、1500万人は餓死に至っています。
わたしたち日本人は食糧の40%を自給し、60%を輸入し、輸入分の半分である30%は捨てている、と言われています。
世界では飢えている人が8億人、自動車を運転している人も約8億人と言われています。上記を踏まえると、食糧として渡せば飢えを凌げる人たちから食糧を奪い、自動車に食べさせている、とも言えるとのことです。興味深い例え方です。
また、バイオエタノールに限らず現代の農業全般に言える事ですが、エネルギー換算で考えた場合に、化学肥料(石油由来)も利用することで、1のエネルギーの食糧を産み出すのに、5のエネルギーの石油を費やしているという数字があります。バイオエタノールも、エネルギー換算で言うと、環境に良い(石油を節約できる)とは言えないわけです。
■牛乳パックのリサイクル
続いては物量(生産性)に関するエコの勘違いについてです。牛乳パックのリサイクルはほぼ意味が無いというものです。
日本の紙の消費量は年間で3000万トン、牛乳パックに使われるのは約40万トンです。開いて洗って、と手間のかかる牛乳パックは、25%の10万トンしかリサイクル回収されていないようです。という、紙消費全体の0.3%のみです。ここに多くの時間と人的リソースを掛けるのであれば、もっと他の事に頭を使って改善策を考えていこう、という示唆があります。
■ドイツがエコ先進国のウソ
本当かどうか耳を疑ってしまう内容ですが、最後にドイツのウソについて記載されているものに触れておきます。日本とドイツは似ており、例えば、一人あたり国民総生産は約2.7~2.8万ドル。ただ、その収入で買ったもので比較すると、日本は21トン、ドイツは42トンと約2倍です。
国民あたりの総廃棄物量では、日本人3.6トン、ドイツ人は4.5トンとのことです。国内総生産あたりのエネルギー消費量で比較すると、日本が106(石油換算トン)、ドイツは184と、日本は1.7倍ドイツより優れているのだとか。
そこで、なぜ日本人は「ドイツを見習え」としきりに言うのか、についてです。
1.日本人の白人コンプレックス
2.税金でビールに外遊
かなり抽象的な批判かとも思いますが、あながち外れても無い気がします。前述の別書籍でも、科学者が自らの研究のためにロジックを作り上げる愚を指摘していましたが、これも似たようなものかと。というか、民間企業でも会食やら経費やら、理由をこじつけて個人の消費にまわしている事例はいくらでもあります。経済とはそういうものです。正直者がバカを見る、とも言われる話かもしれませんが。
こういった面から考えても、真剣に環境問題やら貧困やらに向き合い続けるのはしんどいことの連続なのだな、と感じます。