【GeoValueセレクション】2026年新春インタビュー:土壌・地下水環境施策、地中熱利用施策の現状と展望2026
環境省水・大気環境局環境管理課環境汚染対策室・鈴木清彦室長に聞く
地中熱編
土壌・地下水環境分野を巡っては、2024年9月に土壌汚染対策法の見直しに向けて始まった中央環境審議会における審議が大詰めを迎えているほか、依然として社会的関心が高まっている有機フッ素化合物(PFAS)への対応の行方などが注目されています。また、2050年ゼロカーボン社会実現に向けた動きも一層関心が高まっており、再生可能エネルギー熱利用である地中熱利用への期待も高まっています。土壌・地下水汚染や地中熱利用等に関する環境行政が今後どのように進むのか。現状や今後の展望について、環境省水・大気環境局環境管理課環境汚染対策室の鈴木清彦室長に話を聞きました。(エコビジネスライター・名古屋悟)
※この記事は2026年1月5日に発行した「Geo Value」2026年新年号に掲載したもののうち、地中熱利用施策の部分を抜粋したものです。
◆普及拡大に向けて引き続きの補助金、さらなる普及啓発への広報活動強化◆
――土壌・地下水は地中熱等の貴重な熱資源としての価値もあり、2050年ゼロカーボン社会を目指す上で、地中熱利用の拡大への期待も集まっていますが、現状はいかがでしょうか?
「地中熱は土地があればおおむねどこでも利用できる使い勝手の良い再生可能エネルギーであり、潜在的なポテンシャルはとても大きいものですが、太陽光発電など再生可能エネルギー発電に比べて十分利用できていない状況だと思っています。
周辺環境への影響を考えても、地中熱利用は周辺への影響が極めて少ない低環境負荷な再生可能エネルギーであると認識しています。
環境省では2010年度から2年ごとに全国の地中熱利用設備の設置状況を調査しています。最新の2024年度の結果によると、地中熱利用における累計設置件数は全国で9,188件あり、2022年度調査から427件増加しました。このうち利用方法別で最も多いのはヒートポンプ方式の3,436件であり全体の37.4%を占めます。次いで水循環の2,342件で25.5%、空気循環の2,293件で25.0%、熱伝導の877件で9.5%、ヒートパイプの240件で2.6%となっています。(https://www.env.go.jp/water/jiban/survey.html )
環境省ではこれまでも導入時のコスト負担を軽減する補助事業による支援や低コスト化等技術の実証事業、地中熱利用状況調査結果を反映したパンフレットの作成などを行っていますが、普及拡大の動きが鈍いのは、非常にもったいない状況だと感じています」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【AD】広告クリックで株式会社興和HPへ👇
――導入コストの軽減につながる2026年度の補助事業についてはいかがですか?
「2026年度予算はまだ成立していませんが、予算案にも『民間企業等における再エネの導入及び地域共生加速化事業』や『住宅の脱炭素化促進事業』、『建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業』などを盛り込んでいますので、予算成立後、ご利用いただければと思っております。(※予算案示された場合にURLを記入)
一方で、環境省としては補助事業や低コスト化を視野に入れた技術実証等を通じて地中熱利用を支援してきましたが、導入コストが依然として高いと認識されている点や知名度が低い点が普及拡大に向けた課題になっていると考えています。
業界関係者の努力により低コスト化はだいぶ進んだと思いますが、一般での知名度は低いままであり、地中熱利用の知名度向上は大きな課題と考えています」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【AD】広告クリックで株式会社日さくHPへ👇
◆延べ1,400名が参加している地中熱懇談会◆
――地方自治体等での知名度は上がっていますが、一般ではやはり残念ながら知名度の低さは感じます。こうした点から環境省では2024年度から『再生可能エネルギー熱「地中熱」に関する懇談会』を開催していますが、これまでの状況はいかがですか?
「環境省では業界や立場を超えた多くの皆様に地中熱について関心を持っていただきたいという思いから、2024年度に『再生可能エネルギー熱「地中熱」に関する懇談会』を立ち上げ、今年度2025年度も継続して実施しています。会場参加だけでなくより幅広く参加いただきたい考えからオンラインでの参加も募り、これまでに延べ1,400名の方々にご参加いただいております。
2025年度は、対象とする施設を絞り、それぞれの分野に最適化した地中熱の導入方法について理解を深めるべく、会ごとにテーマを設定しています。
6月に開催した2025年度第1回では『工場』をテーマに導入例などを、9月に開催した第2回(写真:ECO SEED撮影)では『地産地消』をテーマに地方自治体による導入例などをそれぞれ紹介していただきました。
この2回の懇談会は、動画や資料を公開しておりますので、ぜひご覧いただければと思っております。(https://www.env.go.jp/water/jiban/page_00001.html)
また、11月には第3回として「医療施設における地中熱の役割」をテーマに、病院の脱炭素化と経営改善の2つの視点から地中熱利用設備を検討する場も設けました。この第3回は対象者を限定しているため、会場参加のみとして開催しましたが、有意義な意見等を頂戴することができました。
2025年度の懇談会は年明けにもう一度、開催する機会を予定しています。決定しましたら改めて環境省ホームページ等を通じてご案内しますので、ぜひご参加ください。
また、2026年度予算はまだ成立していませんが、2026年度も引き続き懇談会は開催していきたいと考えております」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【AD】広告クリックで東邦地水株式会社HPへ👇
――知名度の向上が課題とする中、情報収集のツールとしてどのようなものがありますか?そして2026年度はどのように展開するのでしょうか?
「『地中熱ポータル』(https://www.env.go.jp/water/jiban/thermal.html )を開設しています。ここでは、先にお話した懇談会の情報や地中熱利用状況調査の結果などのほか、国内の地中熱導入例やインタビュー、ZEBにおける地中熱導入例などを公開しているほか、地中熱読本などの冊子やパンフレットをダウンロードできます。地中熱動画も公開していますので、ぜひご活用いただければと思います。
また、2026年度は懇談会に加え、さらに広報施策を充実させていきたいと考えています。地中熱を導入する発注者側のメリットとなるような仕組みや、広く知っていただくためのコラボレーションなども視野に入れ、取り組んでいければと思っています」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【AD】広告クリックで山梨県地中熱利用推進協議会HPへ👇
◆地中熱利用のヒートアイランド現象緩和効果に改めて焦点を◆
――省エネ、省CO2等のメリットはこれまでにも環境省も業界も多く発信してきましたが、なかなか壁が破れませんね。
「私は『ヒートアイランド現象』に改めて焦点を当ててもいいのではないかと考えています。
昨年の夏もそうでしたが、近年は夏場の高温環境が顕著であり、熱中症患者も増加の一途をたどっています。厚生労働省がまとめている都道府県別にみた熱中症による死亡数の推移によると、全国で2021年度755人、2022年度1,477人、2023年度1,651人と増加し、2024年度には2,160人と熱中症による死者は2,000人台に達しています。
地球温暖化による温度上昇に加え、特に都市部ではヒートアイランド現象が深刻化してきているように感じています。
地中熱利用は以前から冷房時の排熱を地中に送るため、ヒートアイランド現象の緩和効果が期待されると言われてきましたが、この効果をいま一度、重視していく必要があるように思います。
例えばですが、地中熱のうち帯水層蓄熱の事例では、夏期の冷房排熱だけでなく路面の熱も冬期用の帯水層に蓄熱し、冬期の暖房熱源として利用しているケースもあります。夏の熱を冬の暖房に生かす非常に効率の良い取り組みであり、冬期暖房の一次エネルギー消費量削減はもちろんですが、夏期のヒートアイランド現象の緩和効果も期待できるのではないかと思っています」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【AD】広告クリックで株式会社ハギ・ボーHPへ👇
◆地下水の熱利用に向けて揚水規制緩和の検討視野に◆
――確かに都市部では多くの建物自体が太陽熱で温められるほか、無数に設置されている空気熱源方式のエアコン室外機からの排熱による加温効果も大きそうですから地中熱利用による夏期のヒートアイランド現象緩和効果の検証の結果などもわかるといいですね。
「2026年度ですが、先ほど触れた帯水層蓄熱等にも関係してくるものとして、『揚水規制に係る検討』も行いたいと考えています。
帯水層蓄熱を含めて地下水を熱源とする熱交換方式は、非常に熱交換効率が高く、導入コストの削減やさらなる省エネ化などに大きな効果を発揮するものと考えますが、高度経済成長期の地盤沈下を踏まえ、現在でも多くの地域で厳しい揚水規制が設けられており、脱炭素化のためと言っても簡単に地下水を利用できないケースは少なくありません。
帯水層蓄熱システムの普及を目指す大阪市が、国家戦略特区において認められている規制緩和について、大阪市域における地盤環境に配慮した地下水の有効利用に関して要望を行い、ビル用水法等の揚水規制の緩和を進めていますが、ほかの地域では規制のため地下水の熱利用を進めにくい状況があります。
そこで、2026年度はビル用水法省令の見直しに向けた検討を進めるほか、ガイドラインの策定に向けた準備も進めていきたいと考えています。
このあたりも予算成立が前提になりますが、注目していただければと思っています」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【AD】広告クリックで日本地下水開発株式会社HPへ👇
――2026年度も注目される施策が盛りだくさんですね。ありがとうございました。(終わり)