峠の釜めしを思い出して
子どもの頃から、炊き込みご飯が好きだった。
だしの匂いが立ち上るご飯には、どこか特別なものがあって、それは今も変わらない。
私の自炊には欠かせないChatGPTと、よく台所で話している。味の設計図を一緒に眺める、そんな相手だ。
ある日、さつまいもを買ってきた。それで、さつまいもご飯を作ってみることにした。
ChatGPTの言う通りに、京風だしを小さじ2くらいと、塩を少し。それだけで炊いてみたら、あっさりしているのに、ちゃんとだしが効いた、やさしいご飯になった。
そのだしご飯を食べながら、ふと思った。
峠の釜めし、好きだったな。
あの感じ、再現できないだろうか。
それでChatGPTに聞いてみた。「峠の釜めし風にしたいんだけど、何を入れたらいい?」
返ってきたのは、ごぼう、にんじん、椎茸、鶏、たけのこ、そして残っていた、さつまいも。それらしい材料を揃えて、いよいよ本番だ。
だしご飯だから、基本はだしだと思っていた。けれどChatGPTは、そこに醤油とみりんも加えるという。
見た目には結構しっかり色がつきそうな配合だった。「濃いかな」と思ったけれど、今回は再現実験だから、そのままやってみることにした。
具をどんどん入れていくと、1合の土鍋は、ほぼ具でいっぱいになった。
ここからは、画面の外の仕事になる。
私は毎日のように土鍋でご飯を炊いている。白米のときと、具だくさんの炊き込みのときでは、火の入り方が違うことも知っている。
具が多いと、ボコボコとは派手にならない。けれど、中で「ゴトゴト」と低く動いている音がする。
湯気の匂いも、水蒸気の匂いから、ご飯の匂いに変わっていく。その変化を見ながら、いつもより炊く時間を長めに、弱火の時間も多めにとった。
そうして出来上がったご飯は、本当にちょうどよかった。
だしの存在感があって、でもしょっぱすぎることもなく、具の甘みと香りがちゃんとご飯の中でまとまっている。
思っていたよりも、ずっとあのゾーンに入っていた。
味の設計はChatGPT。火加減の判断は私。
データと経験が、同じ土鍋の中で会話したみたいな夜だった。
そしてやっぱり思った。炊き込みご飯って、いい。また作ろう。