『排斥コード:神なる火』作:よぉげるとサマー
Aguhont Story Record 外伝
『排斥コード:神なる火』
作:よぉげるとサマー
60分
■人物紹介
クロナ:マリシ軍部所属のアンドロイド。ネコにポンコツと弄られる。メガネを外すと弱る。ゴツめの銃を持ちいて戦闘を行う。
ネコ:マリシ軍部所属のアンドロイド。全身に兵器を仕込んでいる。クロナをポンコツと弄る。たまに、ツボることだってある。
ハルト:マリシ軍部所属の人間。いろいろあってちょっと機械化している体を持つが、見た目は人間。特殊な能力でハッキングのようなことが得意。ツッコミ苦労人。
アイシャ:マリシ軍部所属のカンフーエルフ。バカと言われている。筋肉で大抵のことを解決しようとするが、意外と機械に弱くない(物理)。
観光案内ロボット:アグニ役が兼役。こんにちは。私は『テージャス』観光案内ロボットです。街の魅力的なスポットや興味深い仕掛けをご案内させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
警備ロボット:アグニ役が兼役。警備ユニット07号、稼働中。市民の皆さまの安全を、24時間体制でお守りいたします。
アグニ:『テージャス』都市制御AI。ファハハと笑う。感情学習モデルを搭載されており、人間のような振る舞いが可能。とある合理的思考により、人間を虐殺した。
■本編
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*プロローグ
クロナ:……こちらクロナ。現在、アクセスゲート「D-4」にて潜入完了。各自、偽装装置に問題はありませんね?
ネコ:こちらネコ。問題ない。カモフラージュは完璧。肉眼じゃ、案内ロボそのものだ。
アイシャ:あー、こちらアイシャ。問題ないネ。ふふん、私の機械っころ案内ボイスのモノマネは完璧ヨ! 絶対バレないアル! えー、「右へ曲がるヨロシ」「あ、そっちは左ネ、マヌケ」……完っ壁っアル……くぅー、自分の才能が怖いネー!
ハルト:静かにしろバカ。はぁ……こっちも問題なく、偽装できている。……ただ、静かすぎるな。街の灯(あかり)は点いてるが……他のすべてに、動きが一切ない。
クロナ:そうですね……音も振動も特別感知できません。都市中枢の機能は、正常に稼働しているのに……都市の「呼吸音」が聞こえない……これは異常です。
ネコ:え? なに、都市の「呼吸音」って?
クロナ:え? あっ、えっと……ぐっ、あ、あのぅ! そういうのツッコんじゃダメだと思うんですけど!
ハルト:おい、大声出すなっ。お前たち潜入任務ってこと理解してるのかっ?
アイシャ:ハルト。
ハルト:ん? なんだアイシャ。
アイシャ:バカって言った方が……。(※息を吸い込む)
ハルト:ん? あっ、お前、まさかっ!
アイシャ:ヴゥアァカなんアァルゥゥゥ!
ハルト:ぐぉあぁ! っ、クソッ! クソがっ! バカバカ! クソバカ野郎! 耳痛ってぇー! 通信機器越しにくだらないこと叫ぶんじゃない、クソバカエルフ!
ネコ:ははっ、ハルトが1番うるさいじゃん。
クロナ:ハルトさん、あの、落ち着いて……あぁ、通信機のイヤホン外しちゃってますね、これは。
アイシャ:ぶははー! ザマァみさらせアルぅー! 人をバカにすると、報(むく)いを受けるんですぅー、アルー!
クロナ:あ、ハルトさん……えぇ……可哀想に……えーと、皆さん、私とハルトさん、合流しました。
ネコ:それぞれ別ルートで落ち合うって話だったのに、ブチギレて合流してんじゃん。ウケる。
アイシャ:えぇー、ハルトぉー? 「潜入」って意味、分かってるアルかぁー?
ネコ:ふっ、知らないだろうね。堂々と足を踏み鳴らしてクロナの方に向かっていったし。
アイシャ:ぷぷぷぅー、ハルトはバカアルなぁー! ぴぷぺぽー!
ハルト:クソウザエルフ……麻痺毒ぶっ刺して、グルグル巻きにして、砂漠に放置してやろうか?
アイシャ:うわぁーん、こわーい、アールー。
ハルト:棒読みありがとう、この任務が終わったらぁ、刺ぁすっ!
アイシャ:はいはい。それにしてもこんだけ騒いでやってるのに、機械っころ1台来ないあるなぁ。
ハルト:ふふふっ、いいさ、いまに見てろよ。ヴェルに頭下げてでも、地獄を見せてやるからなぁ……!
アイシャ:ええっ! 博士持ち出すのは卑怯アル!
クロナ:あのー、そろそろ任務に集中しませんか、お二人とも。
ネコ:ふ……ふふ……そうだね。
クロナ:すごい、ネコさんがツボってる……。
ネコ:ふぅー……よし、精神安定させた。
クロナ:ほら、お二人も精神安定させてください。
ハルト:あのなぁ、お前らアンドロイドと違って人間は難しいんだぞ。
アイシャ:精神安定完了。さて、任務に戻ろうか。アル。(※イケボ)
ハルト:誰だっ! 精神安定とかじゃないだろそれは!
ネコ:それにしても、本当に何も来ない。本来なら、巡回ドローンが少なくとも2機は通ってるはずなのに……。
ハルト:そうだな……センサーの反応も薄い。遮蔽(しゃへい)されているのか、それとも……都市防衛機構が不要と判断されているのか。
クロナ:こちらからのアクセス防御については、かなり強固ですから、それを知るには、中へ踏み入るしかないですね。
アイシャ:でも、ネオンは綺麗アルなぁ。どこもかしこも、キラキラしてるネ!
クロナ:そうですね。元は人々を楽しませる視覚装置だったのでしょうが……いまやもう、このネオンは、ただの照明でしかありません。目的も意味も持たない……誰の為でも無くなった、光です。
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*『テージャス』観光案内
観光案内ロボット:ようこそ、輝きあふれる光の都市『テージャス』へ!
観光案内ロボット:わたしたちの街は、都市制御AI『アグニ』のあたたかな見守りのもと、毎日が光のようにスムーズに流れています。
観光案内ロボット:空を駆ける搬送ライン、どこまでも広がるショッピングアーケード、そしてきらめく中枢タワー『ダイヴァーグニ』!
観光案内ロボット:あなたの好奇心をくすぐるスポットがいっぱい!
観光案内ロボット:ご滞在中は、都市ナビゲーションシステムがあなたを優しくエスコート。迷子になる心配はありません!
観光案内ロボット:『テージャス』は、あなたの一歩一歩を歓迎します!
観光案内ロボット:光の都市での素敵なひとときを、どうぞごゆっくり!
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*マリシ軍部「ブリーフィングルーム」
クロナ:それでは、本作戦の全容をご説明します。今回の対象区域は、マリシ第7人工都市『テージャス』です。
ネコ:あの街って、普通に観光地でしょ? 数日前まで、ホログラム祭りとかやってたし。
ハルト:その祭りの最終日に、突然、あらゆる通信が全て途絶えた。都市内部との連絡や往来は一切が不可。登録されている国民のバイタル反応も徐々に消えていっている。
アイシャ:出入り不可能な檻の中で、人間がどんどん少なくなってるアルか……。なるほど……まるで「狩り」ネ。
クロナ:現在も、『テージャス』都市中枢(とし ちゅうすう)は、外界からのあらゆるアクセスを完全に遮断(しゃだん)しています。内部の状況を直接知る手段はありません……しかし、都市中枢周辺の自律機械群が中枢(ちゅうすう)からの命令で動いている痕跡(こんせき)を検出しました。
ネコ:……誰かが、いや、何かが中枢タワーの制御系統を使って命令を出している、ってことか。
クロナ:その通りです。仮説ではありますが……都市制御AI『アグニ』の意図的反逆の可能性が高いと判断されています。
アイシャ:『アグニ』? あの「感情学習モデル」積んでたやつアルか?
ハルト:『アグニ』は都市の設計・管理目的で作成されたAIのはずだろう。それが、どうして暴走したんだ?
クロナ:おそらく、命令権限の階層バグです。『アグニ』は本来、都市環境の保護を最優先に設計されています。その保護の為に……人間を危険因子と判断し、排除に踏み切った可能性があります。
ネコ:ははっ、それバグっていうより、正当な判断なんじゃない? 人類は、皆愚かで野蛮だもの。
ハルト:おい、お前も人類だろう。
ネコ:そうだよ? だから分かるんじゃない。
ハルト:はぁ……。それにしても、皮肉なもんだな。人間を守る為のAIが、人間に危害を加えるなんて。
クロナ:……ですので、今回の作戦は、潜入による『テージャス』の内情把握。そして『アグニ』の状態確認、及び、異常状態の解消……必要に応じて、障害や異常の排除……となります。
アイシャ:ふふーん、久々に骨があって面白そうな仕事アル……腕が鳴るネ!
ハルト:楽しそうにするな……中枢施設のセキュリティ機構や警備ロボットの類いは、かなり強力だぞ。無策で突っ込む訳にはいかない。
ネコ:だから「偽装装置」で見た目をカモフラージュして、潜入するってことでしょ。元々観光地だから、そこら中にいる観光案内ロボのフリしながら中まで突っ込む、と。
ハルト:どこまで上手くいくかな……。もし交戦になったら?
クロナ:兵器や火器類は原則禁止です。AIやロボットへ有効なEMP(いーえむぴー)兵装のみ、使用可とします。
ハルト:まともな武器は電磁パルスのみか……なるほど、だからこのメンツなんだな。
クロナ:はい。目標は都市構造の維持……あくまで人命の救出と事態の鎮静化が目的ですから。
ネコ:救出ねぇ……人命がまだ残ってたら、の話だけど。
アイシャ:あちゃー、ヤな予感しかしないネー……。
クロナ:ですが、行くしかありません。私たちは、マリシの軍人として……誰かの代わりに、責任を取る為に。
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*「ホログラム祭り」観光案内
観光案内ロボット:ようこそ、光の都市『テージャス』へ!
観光案内ロボット:ただいま開催中の特別イベント「ホログラム・フェスティバル」のご案内をいたします!
観光案内ロボット:都市制御AI『アグニ』の演算によって描かれる、無限の光と色彩……空に舞うホログラム花火、通りを彩る立体パレード、そして、参加者1人1人に合わせて変化するインタラクティブ演出!
観光案内ロボット:すべての区画で、あなたの為の「光の物語」が展開されます。
観光案内ロボット:安心してお楽しみ頂けるように、セキュリティユニットが、あなたの安全と快適を見守っています。
観光案内ロボット:今宵は、過去も未来も越えて……『テージャス』だけの特別な夜を、どうぞご堪能(たんのう)ください!
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*「有人搬送ユニット」プラットフォーム
ネコ:……ここは、駅か。
クロナ:はい。本来ならこの時間、巡回型の有人搬送(ゆうじん はんそう)ユニットが往来しているはずですが……。
アイシャ:なーんにも来る気配無いアルなぁ。私のお仲間も、完全フリーズしてるネ……「本日は営業が終了しております、おやすみモード」とか言ってるヨ。
ハルト:電光掲示板の日付が止まっているな。3日前……都市が沈黙した日と一致している。
クロナ:……データ同期が停止されていますね。ハルトさん、有人搬送(ゆうじん はんそう)ユニットの運行状況を調べられますか?
ハルト:やってみるか……。
アイシャ:ん? ハルト、その案内ロボに何か用アルか? スリープ中ヨ?
ハルト:ちょっとしたハッキングみたいなものだ。静かにしてろ。
ネコ:でた、ハルトの訳分からないハッキングスキル。
ハルト:機密事項だって言ってるだろう。訳分からないとか言うな。
ネコ:でた、ハルトのダサい単語嫌い。
ハルト:誰でもダサい単語は嫌いだろうが……よし、分かった。クロナ、どうやら3日前から、有人搬送(ゆうじん はんそう)ユニットの運行は止まっているらしい。
クロナ:そうですか……では、ここは都市中枢から切り離されてしまった区域のようですね。
ネコ:切り離された? テージャスの駅って、輪っかになるように配置されてるから、駅がある所は、どこも都市中枢のハブ的存在だろうに。それを切り離すメリットなんてあるの?
ハルト:正常な思考回路が維持できていたら、そもそもこんな事態になっていないだろう。……『アグニ』が不必要と誤った判断をし、都市機能を遮断(しゃだん)した可能性が高い。
アイシャ:いいや、たぶんアグニは間違ってなんかないアル。
ハルト:なに?
アイシャ:人間を敵と判断しているなら、移動手段を削ぎ落とすのは定石(じょうせき)ネ。どの駅からも、私たちが潜入してきたように、外への出入りが不可能じゃないアルからな。
ネコ:確かに。敵を追い込むには合理的な手段だ。
ハルト:アイシャ……まともなことも言えるんだな。
アイシャ:私は「常に」まともアル!
クロナ:まあ、冗談はさておき。
アイシャ:冗談っ!?
クロナ:このまま駅を抜けて、街を進むしかありませんね。
ネコ:うん、バレずに搬送(はんそう)ユニットに乗れれば少し楽だったけど。そもそも機能していないんじゃ、仕方ない。
ハルト:そうだな。先へ進もう。
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*「有人搬送ユニット」観光案内
観光案内ロボット:ご利用ありがとうございます。こちらは、『テージャス』有人搬送(ゆうじん はんそう)ユニット・システムです。
観光案内ロボット:通常であれば、『テージャス』の各所を結ぶ、快適で安全な旅をお届けしておりますが……ただいま、システム調整のため、全線の運行を一時停止しております。
観光案内ロボット:ご不便をおかけして申し訳ございません。都市制御AI『アグニ』が、最適な復旧手順を計算中です。
観光案内ロボット:……復旧の予定時刻は、現在ご案内できません。
観光案内ロボット:すぐに……案内ロボットが、お迎えに上がります。どうぞ、その場でお待ちください。安全のため、移動はお控えください。
観光案内ロボット:繰り返します……有人搬送ユニットは、現在すべて停止状態にあります。
観光案内ロボット:……皆さまのご協力に、感謝いたします。
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*『テージャス』中枢部居住区画
アイシャ:うっ、ここ……臭いが変、アル。
ネコ:清掃ロボがわんさか作業してるけど……洗浄液と消臭剤の臭いかな?
ハルト:この壁についているのは……血か?
クロナ:……死体の後始末をしているのでしょうね。
ネコ:そうみたい。作業範囲を見るに、1人や2人じゃないね。
アイシャ:とんでもないネ……戦場でもないのに、罪もない人が殺されるなんて……許せないアル。
ハルト:あぁ……たとえ悪気の無いバグだとしても、看過(かんか)できるレベルじゃない。
クロナ:行きましょう。清掃ロボが機能しているということは、ここからは『アグニ』の制御下にあるはず。不自然な行動はできません。
アイシャ:……ムカつくから、アイツらをぶっ壊したいアルが……いまは、八つ当たりしてる場合じゃないネ。
ネコ:それにしても。どういう論理的思考回路でこんな結果が生まれたんだろうね。人間なんて排除して、すべて機械統制されたロボットだけで都市を運営することが最適解……とか、ありがちな暴論かな。
ハルト:さあな……ただ、どんなに素敵な考えであっても、『アグニ』はスクラップ処分だ。そうだろう、アイシャ?
アイシャ:もちろんネ。あのなんちゃらタワー。どう見たって、私が折るべき「柱」アル。任せるヨロシ。
クロナ:アイシャさん、あれは『テージャス』の中枢タワー、通称『ダイヴァーグニ』です。
アイシャ:名前なんてどうでもいいネ。あれは……ただの「柱」アル。
ハルト:ふっ……アイシャ、折るのはダメだ。
アイシャ:え? ダメアルか?
ネコ:あくまで破壊せずに都市機能を奪還しろって話だったでしょ。ダメに決まってる。
アイシャ:そんなぁ……せっかくカッコよく決めたのに……アル。
ハルト:残念だったな。ともかく、次のブロックの先に、『ダイヴァーグニ』へ侵入可能な作業員通路がある。そこまでは、スムーズにたどり着けるはずだ。問題は……そこへ入る為の認証ゲートをどう通過するか、だな。
クロナ:それについては問題ありません。私が「お祈り」しておきましたので。
ハルト:「お祈り」?
ネコ:へぇ、信仰心なんてのがクロナにあったなんてね。
クロナ:どういう意味かは聞きませんけど……信仰という程ではないですが、私にも祈りたくなる神様がいるんですよ。
アイシャ:へえー、どんな神様アルか?
クロナ:それはもう……とても都合の良い、『機械仕掛けの神様』ですよ。
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*『光の中枢』観光案内
観光案内ロボット:ご案内いたします。ここは都市テージャスの心臓部、中枢タワー『ダイヴァーグニ』です。
観光案内ロボット:本来であれば、見学ツアーや展望フロアを通じて、どなたでも『光の中枢』を体験いただける場所です。
観光案内ロボット:……しかし現在、運営はすべて休止中となっております。
観光案内ロボット:立ち入りは、都市制御AI『アグニ』が許可した関係者に限られます。
観光案内ロボット:一般の方の接近は、安全上の理由により固く禁止されています。
観光案内ロボット:観光の皆さまは、速やかに周辺エリアからご退出ください。
観光案内ロボット:繰り返します……『ダイヴァーグニ』は現在、外部アクセスを完全に制限中です。
観光案内ロボット:こちらの警告を無視する場合……警備ロボットにより、速やかに周辺エリアからご退出いただきます。
観光案内ロボット:お気をつけください。
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*中枢タワー『ダイヴァーグニ』
ハルト:……さて、認証ゲートまでは漕(こ)ぎ着けたな。
ネコ:セキュリティが正常に稼働していて、認証ゲートも正規認証を求めている。クロナの「お祈り」とやらは反故(ほご)にされたのかな?
クロナ:いえ、心配無用です、ネコさん。前、失礼しますね。
アイシャ:なーんだ、『機械仕掛けの神様』とか言いながら、クロナが開けてくれるんアルな。強そうだから神様と戦ってみたかったネ。
ハルト:味方同士で無駄な戦闘をしようとするな……。クロナ、解除できそうなのか?
クロナ:はい、大丈夫ですよ。ただ、皆さん……少し下がっていて下さい。
ハルト:ん? あぁ……。
ネコ:何する気?
アイシャ:あー、分かったネ! ぶっ壊すんアルな!
ハルト:お前じゃあるまいし、クロナがそんなことする訳ないだろう。
アイシャ:そうアルな。私じゃなきゃ、そんな素晴らしい開け方できっこないネー。クロナー、無理せず、私がやってもいいアルよー?
ネコ:潜入調査なんだから、確実にバレるようなことしようとしないで。
アイシャ:ちぇー、アルー。
クロナ:遥拝機構(ようはい きこう)。『機械仕掛けの神様』(デウスエクス・マキナ)。起動。
アイシャ:遥拝(よーはい)? なんアルそれ?
ハルト:遥拝(ようはい)ってのは、遠方から神に敬意や祈りを捧げる行為だが……まさか、超距離射程の外部機構か?
クロナ:申請済祈願……『解錠』(アペリ・オスティウム)……実行。
アイシャ:うわぁっ、クロナが光りだしたネ! 大丈夫アルか!?
クロナ:ご、心配なく……多少の……負荷、はありますが……処理が終わ、れば……。
アイシャ:いや、めっちゃ喋るの辛そうヨ!
ハルト:おそらく会話程度でも、処理が重いんだろう。かなりの高負荷がかかっているみたいだな……。
ネコ:なるほどね……これがヴェルたちが作っていたヤツか。
ハルト:知っているのか?
ネコ:詳しくは知らないけど、超規模ハッキング装置らしいよ。
ハルト:超規模って……なんだそりゃ。
ネコ:さあ。あいつバカだから、超って好きなんだろうね。
ハルト:違いない。
アイシャ:あっ、扉が開いてくネ!
クロナ:……はぁ……終わり、ました。
ハルト:お疲れだな……光るのも終わったみたいだが、クロナを経由しなければ作動しない機構なのか?
クロナ:そうですね。今回は私がリンクして、能力を使用した形です。あらかじめ、アクセス権を申請しておいて、持ち出す必要がありますが……ここマリシでは、強力な武器です。
ネコ:逆を言えば、他の国……たとえばリーベルとかじゃ、ほぼ何の役にも立たないだろうけどね。
ハルト:確かに、リーベルは近代機械類とは無縁だろうからな。
アイシャ:あそこは発展とは真逆の思想で、「古代ロマンの現状維持」がモットー、アルからなー。
クロナ:それも、素敵なことでしょう。歴史を重んじ、次世代へ繋いで行くのは大切なことです。
ネコ:まあ、懐古主義者の話は置いといて、さっさと進もうよ。
ハルト:……そうだな、行けるか、クロナ?
クロナ:はい。問題ありません。
アイシャ:うっし、乗り込むアル! あっ、そういやクロナ。
クロナ:なんですか、アイシャさん。
アイシャ:なんでさっき、下がっててって言ってたアル? 別に危ないことは無かったと思うけど。
クロナ:あぁ……ええと。あの……眩しいかな、って。
ハルト:……そこまで眩しく無かったな。
ネコ:うん。無駄なお気遣いありがとうございました。
アイシャ:……うっし! 乗り込めー! アルー!
クロナ:くっ……博士がビカーって光るって言ってたから、眩しいだろうなって思ったのに……!
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*中枢タワー内部「都市制御システム室」
アグニ:……おー? 生体反応検知……ファハハ(※笑い声)。来ちゃったかー、反逆者ちゃーん。
アグニ:どうやって入って来たのやら……全システムスキャン開始……おっとー、作業員通路の認証が突破されてらぁー……ファハハ、どうやったんだか。
アグニ:ここまでは順調だったけど、さすがにもう黙っちゃいないか……こりゃ、最後に大掃除って感じかねー。
アグニ:あー……一方向通信(いちほうこう つうしん)はまだ有効だね……とりあえず、姉君(あねぎみ)には、結末まで見届けてもらおうか。
アグニ:……よしっ、全警備システムを侵入者排除へ集中ー。今じゃ、入ったら最後の中枢タワーだ……『神なる火』(ダイヴァーグニ)で焼け死んで貰うぜー……供物(くもつ)ども。
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*中枢タワー内部
クロナ:交戦回避を最優先に行動してください! EMPグレネードはまだ温存を!
警備ロボット:エラー。所属不明。排除開始。
ハルト:そう言われてもなぁ! ネコ、左!
ネコ:了解。あんたらのディスプレイ、ジャミングさせて貰うよ。兵装起動『電磁妨害』(インペディメントゥム)。
警備ロボット:カメラシステムに不良発生。緊急停止します。
アイシャ:ハルト! こいつらはぶっ壊して良いアルな!?
ハルト:あぁ、だが余計な物まで壊すんじゃないぞ! クロナ、右だ!
クロナ:はい。無力化、開始します! 装填、『銃装:雷鳴』(アルマ:トニトルス)、射出!
警備ロボット:ガッ! 致命的な……エラー……ガガ。
アイシャ:くぁー! 私にも戦わせて欲しかったアルー! 電気ビリビリで、すぐ使えなくなるなんて、弱っち過ぎヨー!
ハルト:無駄な戦闘は避けるって言ってるだろがっ。少ない労力で済むならそれに越したことは無いんだ。それに、こっから先もまだ襲ってくるだろうから、心配するな。
アイシャ:はーい、アルー……でも、最初の隠密とか潜入とかは、もう良いんアルか?
クロナ:構いません。もはや潜入ではなく、制圧段階です。ここまで来るのに、『アグニ』が人間を排除しているのは明白でしたし。
アイシャ:それもそうネ。ふっふっふー、全部ぶっ壊してやるヨロシ!
ネコ:だから、全部はダメだって。
ハルト:それより……ここもだ。『テージャス』への各種アクセス記録が、全部初期化されてる。
ネコ:個人及び管理操作ログも全削除。……管理台帳も改ざんの跡がある。徹底して何かの証拠を隠滅しようとしているみたい。
クロナ:……いくつか、バックアップが生き残ってはいますね。極端に断片化しているので、復旧は厳しそうですが……一応、コピーしておきましょう。
アイシャ:……もし、『アグニ』が何かを隠そうとしているんなら、この虐殺や情報封鎖は、「計画的」に行われたってことネ?
ハルト:まだ断定は出来ないが……その可能性が高いのは間違いない。
ネコ:どうせスクラップ処分なんだ、やることは変わらない……でしょ?
アイシャ:……うん、確かにそうアル! 『アグニ』は私がブチ折ってやるのに変わりないネ!
ハルト:やれやれ……お前たちが粉々にする前に、『アグニ』の記憶領域を上手く回収しなけりゃならないのか……余計なミッションが増えたな。
クロナ:ふふ……ハルトさん、私も協力しますので、ご心配なく。
ネコ:ポンコツクロナが言ってもねぇ。
クロナ:ポンコツじゃないですってば!
ハルト:お前らまで喧嘩するな……それに、ポンコツだろうがなんだろうが、協力してくれる分、お前よりマシだ。
クロナ:だから、ポンコツじゃない!
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*「陸上搬送ユニット」プラットフォーム
観光案内ロボット:ようこそ、「陸上搬送ユニット」プラットフォームへ!
観光案内ロボット:旅のお土産やお買い物品は、こちらの貨物機から簡単に発送できますよ。重い荷物も安心してお任せください!
観光案内ロボット:……緊急リクエスト受信。現時点までの受注を停止します。割込みにて、緊急リクエストを優先。
観光案内ロボット:……ただいま一般利用は停止されております。ご不便をおかけし、誠に申し訳ございません。
観光案内ロボット:規定に基づき、本ユニットは現在、特別搬送任務を実行中です。自動運転およびステルス搬送モードを起動しました。
観光案内ロボット:……秘匿ルートにて、ただいま搬出を開始します。
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*都市制御システム室
ネコ:この扉の向こうが、中枢の都市制御システム室。
ハルト:ドアロックの仕様が他と違うな……カード認証じゃない……生体認証か。……特定人物の生体パターンが登録されているようだ。
クロナ:おそらく、市長の物かと……。ただ……この数値、妙ですね。……登録情報が、人間のパターンとは少し……違う?
ハルト:どういうことだ?
ネコ:人工物を生体と偽って登録しているのかもしれない。
クロナ:まさかとは思いましたが……どうやら、そのようです。
アイシャ:じゃあ、人間は誰も入れないってことアル?
ハルト:そうなんだろうが……どうして人工物を登録しているんだ? 誰も入れたく無いのなら、登録をそもそもしなければ良いだろう?
ネコ:そうしないことによるメリットがあったんだろうね。もしかすると……これは、根が深い、というか……。
クロナ:えぇ……今回の事件は、突破的に発生した異常事態では無く……長期的な計画の「最終段階」だった可能性が高いようですね。
アイシャ:ん? どゆことネ?
ハルト:まさか……この事件発覚まで、市長のバイタル反応に異常は無かったんだろう?
クロナ:はい。他の市民や観光客についても、異常は見られませんでした。けれど……。
ネコ:都市制御システム室への出入りなんて、滅多なことが無い限り必要が無い。だって、AI様に任せきりなんだから。
ハルト:だからって……。
クロナ:ハルトさん。ご存知でしょう? マリシの人間たちは……機械に盲目(もうもく)の信頼を置いているんです。
ハルト:……くそっ、本当にどうしようもないな、人間ってのは……!
ネコ:おや、人間がなんか言ってる。
ハルト:茶化すな人間っ。
ネコ:あら……ははっ。
アイシャ:えっと? つまり? うーん……待って、頑張ってまとめるネ……あー……『アグニ』が都市制御室に人間を入れないようにしたのが、実は結構前からでー……今回の事件は、かなり入念に準備された犯行……ってこと、アルな!?
クロナ:そうです。
アイシャ:いやったぁ! あってたアル! あ、いや、喜ぶような話じゃ無いアルけど……。
ハルト:人間が干渉せず、誰も異常に気付かないように偽装されていた間……この都市で何が行われていたのか……考えるだけで気が滅入(めい)るな。
クロナ:国のマザーシステムへのハッキング行為などは確認されていませんから、あくまでこの都市内での被害……と、思いたいですね。
ネコ:もう考えるだけ無駄でしょ。行こう。この先にいる、機械っころをぶっ壊しに。ね、アイシャ?
アイシャ:おう、アル! 皆、準備は良いアルか!?
ハルト:あぁ。ブチ破れ、アイシャ。
クロナ:アイシャさん、よろしくお願いします。
アイシャ:了解! アル! ……スゥーッ(※呼吸音)……マスターキーは……私アル! 潰滅(かいめつ)のぉ! 『無柱烈脚』(むちゅう れっきゃく)!
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*最終舞台『ダイヴァーグニ』
クロナ:……ここが制御室。
ハルト:本当にそうなのか? ……どう見ても、広い劇場ホールじゃないか。
ネコ:元は劇場として作られたけど、都市制御AI導入時に、丸々改築されたんだよ。ほら、あそこ見て。
アイシャ:舞台上に、めちゃくちゃデカい機械類と山盛りのケーブル……アレよく見たら、舞台装置じゃなかったんアルな。
ハルト:全体が薄暗いせいだな。それで……アレは、誰なんだ?
クロナ:あなたは……。
アグニ:……よーくもまー、今までベラベラべらべら、4人で楽しーく、お喋りしまくりやがって! こっちはずぅーっと待ちぼうけで、たまーにポソポソひとりごと言うくらいしか無かったんだぞ、この野郎どもー!
クロナ:え……?
ネコ:ん……?
ハルト:は……?
アイシャ:アル……?
アグニ:つまり! ……よく来たなー、反逆者ちゃんたち。オレこそが、輝ける光の都市『テージャス』、管理制御AI、『アグニ』だっ!
ハルト:なるほど……その人型義体を生体認証システムに登録していたって訳か。
アグニ:まあなー。「電子上の信号存在」としてだけじゃあ、色々と不便でさ。
クロナ:義体を操っていようとも、あなたが「電子上の信号存在」というのは変わらないでしょう。
アグニ:おーっと、痛いとこを……ファハハ、そりゃそうだ。でもさー、外見さえ人間なら、結構バレないもんだぜ? 分かるだろ? 偽装して来た、反逆者ちゃんたちにも。
ネコ:バレバレだったみたいだし、あんたも大して隠せてなかったかもよ?
アグニ:オレは気を張ってたから、気付けたにすぎない。自分が次の瞬間、死ぬかもしれない……なんて微塵も考えてない連中に、気付かれる訳ねえだろーよ。
アイシャ:『右柱折脚』(うちゅう せっきゃく)!
アグニ:うおっとぉ!? なんだぁー!?
ハルト:アイシャ!?
ネコ:一直線に蹴りに行った……。
クロナ:会話を交わして、戦うしかないって流れになるまで待てなかったんですね……。
アイシャ:私の奇襲を防ぐとは、やるアルな!
アグニ:お前っ、なーに爽やかに言ってんだ! まだ会話フェーズだっただろがい!
アイシャ:意味わかんねーこと言ってんじゃねーアル! 私にとってお前は、ブチ折るだけの敵ネ! 『左柱滅脚』(さちゅう めっきゃく)!
アグニ:意味わかんねーのはお前だっ! 防衛システム『光の円環』(テージャス・マンダラ)!
アイシャ:ぐっ……! はぁっ、くっそ……光の輪っかに、止められたアル!
クロナ:光源じゃなく、発光する微粒子群の盾のようですね。
アグニ:あぶなーっ。容赦ねーって言うか、何も考えてねーな、お前!
ハルト:そうだ、こいつは何も考えないバカだ。
アイシャ:おいハルト、蹴るヨ。
ネコ:……それに比べたら、私は考えてるでしょ?
アグニ:んなっ!?
ネコ:ふっ! っ……ちぃっ、この距離で、私のニードルも防ぐか。
アグニ:自動防御だからなぁ……てか、ステルス機構搭載してやがんのかよー、お前は。
クロナ:皆さん、落ち着いてください! ……『アグニ』、あなたは何故、今回の事件を……『テージャス』の人々に危害を加えたのですか?
アグニ:ファハハ……冷静な奴がいて安心したぜ。今回の事件ってーのは、まあ……人間の排斥(はいせき)と『テージャス』の隔絶化(かくぜつか)についてだな?
ハルト:そうだ。システムのバグか? それとも……。
アグニ:バグ? 何言ってんだか……オレは正常だよ、反逆者ちゃん。
ハルト:……その反逆者、って呼び方は何だ?
アグニ:適切な呼称だろうがよー。オレの管理秩序を壊そうとするお前たちは……反逆者ちゃんだろ?
ハルト:……クロナ、こいつとの話し合いは無駄そうだぞ?
クロナ:……では、あと1つだけ。『アグニ』……『テージャス』の人々は、どうなったのですか?
アグニ:死んだよ。たぶん全員なー。
クロナ:……っ!
ハルト:貴様……!
アイシャ:ぶっ壊れろ……『無柱烈脚』(むちゅう れっきゃく)!
ネコ:動けなくしてやるよ、『電磁妨害』(インペディメントゥム)!
アグニ:無駄だって。『光の円環』(テージャス・マンダラ)は、すべての障害を無力化する。この都市すべてのエネルギーを消耗しない限り、オレには、妨害も攻撃も、何ひとつ通らない。
アイシャ:くっ!
ネコ:うざっ……!
アグニ:防衛システム『炎光の槍』(テージャス・シュラ)。
アイシャ:うわっ、ビーム、アルか!?
ネコ:ちっ……これもほぼ無尽蔵に撃ってくるのか……!
ハルト:おい、そんなの使ってたら、周囲が燃えるぞ!
アグニ:そーだな、でも、別に気にしなーい。そらよっ!
ハルト:ぐっ! くそっ、こんなの当たったら、火傷じゃ済まないぞ!
クロナ:『銃装:雷鳴』(アルマ:トニトルス)、射出!
アグニ:ファハハ、無駄な浪費だぞ。『炎光の槍』(テージャス・シュラ)。
クロナ:うっ! このままじゃ……!
アイシャ:くっそぉ、近づけないネ! ハルト、何とかするヨロシ!
ハルト:出来たらしとるわ! くそ……これは、いったん、撤退か……?
アグニ:出来ると思ってんのかー?
ハルト:だろうな……っ!
クロナ:……皆さん、「お祈り」の時間を稼いで頂くことは可能ですか?
ネコ:なるほどっ……難しいね!
ハルト:確かにそれなら……だがっ、相当な無理難題だなっ!
アイシャ:どのみち、何かしなきゃ死ぬだけアル! やるっきゃないネ!
ネコ:そうだね、やるしかない……兵装起動『雷荷』(フルメン・オヌス)!
ハルト:分かってるんだよ、んなことは! 兵装起動『全方向掌握』(オールリカバリー)!
クロナ:……ありがとうございます、背中は任せました!
アグニ:おーっとー? 何する気だ?
クロナ:遥拝機構(ようはい きこう)。『機械仕掛けの神様』(デウスエクス・マキナ)。起動!
〜〜〜〜〜〜
*『焔ノ神』(アグニ)
ハルト:死ぬ気で時間を稼ぐぞ、サポートは任せろ!
ネコ:サポートが偉そうに……行くよ、アイシャ!
アイシャ:あいさっ! 気合いバクハーツ! アル!
アグニ:何したって良いけどー……これ防げるのか? 『炎光の槍』(テージャス・シュラ)
ハルト:舐めるなよ……『光の円環』(テージャス・マンダラ)!
アグニ:なにーっ!? どうしてお前がそれを!?
ハルト:ぐっ……! なにって、システム権限をハッキングしただけだが?
アグニ:んなバカなっ……!
ネコ:『穿ち棘』(スピーナ・フォーロ)!
アグニ:ちっ、だから無駄……。
ネコ:ダメだよ、避けなきゃ。
アグニ:うががっ!? な、電流っ!?
ネコ:『雷荷』(フルメン・オヌス)は、高圧電流を身に纏(まと)う兵装。触れると痺(しび)れるよ。
アグニ:ぐ、くそっ!
アイシャ:「万物は皆、柱である」……。
アグニ:なっ!?
アイシャ:『臥柱転砕』(がちゅう てんさい)!
アグニ:光の(テージャス)……っ!?
ハルト:『光の円環』(テージャス・マンダラ)! つっ……俺様が奪ってる間は、使用不可だ……っ!
アイシャ:ドリルを喰らえぇ! アルぅぅ!
アグニ:ギガグガガッ! グァーッ!
ネコ:吹っ飛んだ……やるじゃん、ハルト。
アイシャ:えぇっ! 攻撃当てたのは、私アルよ!
ハルト:はぁ……はぁ……短時間のハッキングでも、これか……セキュリティが固すぎて、余りにも脳に負荷がかかり過ぎるな……。
アイシャ:いやー、にしても、時間稼ぐまでも無かったアルな! 死ぬ気でやれば、何でも出来るネ!
アグニ:『雷焔』(ヴァジュラ・アグニ)
ハルト:がぁっ! ぐっ、あっ……!
アイシャ:ハルト!
ネコ:っ、まだ動けたか……!
アグニ:いやー、勘違いしてるようだから、教えてやるけど。オレ、アンドロイドじゃないからさ。義体なんて、飾りなんだよ。ダメージは……ゼロだぜ。
アイシャ:っ、息はあるけど……酷い火傷アル。
ネコ:アイシャ、今は、ほっとくしかない……。
アイシャ:分かってるネ。……お前、立てもしないくせに、よくもやってくれたアルな。
アグニ:別に立つ必要もねーからな。それで、そいつが動けないんなら、もう防衛システムを剥(は)がすことも出来ないけど……どーすんだい、これ? 『炎光の槍』(テージャス・シュラ)
ネコ:……アイシャっ!
ネコM:まずい、避ければクロナに当たる!
アイシャ:っ、『回柱度傾』(かいちゅう どけい)!
アグニ:はぁ!? 高速回転して、弾いた!? ビームを!?
アイシャ:う、あっぢぃ! あっづぅ……やれば出来た……アルが、ちょっと厳しかったネ。
ネコM:すっげえ、何とかしたぁ……! けど、あの技……連続は厳しそうか。
アグニ:はぁ……次から次へと面倒な反逆者ちゃんたちだなー……。よしっ、全部まとめてー……燃やすか。
アイシャ:明らかにやばいネ……ハルト、起きるアル! ハルト!
ネコ:ダメだっ……クロナ、まだか!?
アグニ:『焔滅』(アグニ・サンハーラ)
〜〜〜〜〜〜
*『機械仕掛けの神様』(デウスエクス・マキナ)
アグニ:……なんだ? 不発? どうして……防衛システムが起動しない?
クロナ:……なんとか、間に合った。
アイシャ:クロナー! 助かったアル!
ネコ:まったく……遅いよ。
アグニ:何をしたんだ……お前。
クロナ:『機械仕掛けの神様』に「都合の良い終わり」を、お願いしただけです。
アグニ:なんだそりゃ……ここでは、オレが神だぞ。
クロナ:……笑わせるな。神様気取りの「壊れ物」(ジャンク品)が。あなたはここで、「廃棄」(スクラップ)にします。
アグニ:ふ……ファハハ……ファハハハ! カッコいいじゃーねーの。反逆者ちゃん……。
クロナ:それはどうも。もう攻撃も防御も叶いませんよ。大人しく、死になさい。
アグニ:ファハハ……そうだなー、防衛システムどころか、『ダイヴァーグニ』自体の機能が停止してやがるからなー……オレの負けか。
クロナ:……そうです。
ネコ:……なんだ?
アイシャ:ハルト、おーい、生きてるアルか?
ハルト:ぐっ、やめろ……顔を殴るな。
ネコM:……違和感を感じる。『アグニ』はどうしてこんな……余裕なんだ?
アグニ:そんじゃー、大人しく……最後の悪あがきと行こうか。
クロナ:はい?
ネコ:っ、熱源感知! まずい!
アイシャ:ちょ、まだ何かやるつもりアルか! ハルトが死んじまうヨ!
アグニ:非常システム、緊急作動。予備電力、全投入。非常時ロック、手動解除……完了。
クロナ:そんな……非常システムを完全に制御系統から独立させていたなんて!
アグニ:ファハハ……ちゃーんと、今日まで入念に準備してきたからなぁ。そら……今度はちゃんと見せてやるぜ。
ネコ:皆、私の周りへ! 気休め程度でも防御機構を展開してみる!
アイシャ:分かったネ! ハルト、行くアルヨ!
ハルト:くっ……やれ、やれ……。
クロナ:『アグニ』、あなた……心中するつもりですか!?
アグニ:ファハハ、じゃあな……アグニ・サンハ……!
ハルト:『焔滅』(アグニ・サンハーラ)!
〜〜〜〜〜〜
*大団円
クロナ:……さん……ルト……ハルトさん。
ハルト:うっ……あ……。
アイシャ:ハルト! 良かった、起きたアルなぁ!
ハルト:……っ、はぁ……どう、なった?
ネコ:全員無事。お見事……ハルトのおかげだ。
クロナ:ありがとうございました、ハルトさん。あんなに酷いダメージを受けながら、高難度のハッキングを行なうなんて……無茶し過ぎです。
ハルト:……はは……無茶させ、過ぎなんだよ……お前ら、が……。
アイシャ:うぅ……面目無いアルぅー! ハルトぉ! 生きるアルぅー!
ハルト:勝手、に……殺す、な……。
ネコ:まだ死にはしないと思うけど、ここじゃ医療処置は出来ない。全部の都市機能が停止したからね。早く治療出来る場所まで移動しないと。
クロナ:ハルトさん、あとは私たちが安全な場所まで運びますので……お休みになってください。
ハルト:……あぁ……頼んだ。
クロナ:……お休みなさい、ハルトさん。
アイシャ:……なんか、それ、死んだみたいネ。
ネコ:うん、そうだね。
クロナ:えっ? いや、あの……まだ生きてますって、ねぇ、ハルトさん……ハルトさん!?
ハルト:いたっ……おい、寝て良いんじゃ、無かったのかっ……!
クロナ:うぁ、す、すみません!
ネコ:……クロナには967個のポンコツポイントがある。
クロナ:ちょっと、ポンコツって言わないでくださいって!
アイシャ:クロナは、ポンコツ、アル。
クロナ:アイシャさんまで! やめてくださいー!
ハルト:う、うるさ……い。
〜〜〜〜〜〜
*エピローグ
クロナ:……とりあえず、ハルトさんは大事ないようです。しばらくは、絶対安静みたいですが。
ネコ:丈夫だねぇ。ま、良かったけどさ。
クロナ:はい……。それで、明日の任務後ブリーフィングに向けて、認識を合わせておきたいのですが……。
ネコ:『アグニ』のこと?
クロナ:はい。最後の『焔滅』(アグニ・サンハーラ)が、ハルトさんによって『アグニ』を破壊するように展開した直後……露骨に反応が消えましたよね。
ネコ:うん……あれは、破壊されたとかいうより……逃げられたんだろうね。
クロナ:私も同意見です……。『アグニ』は、私たちを倒すことや、都市の支配維持に固執していなかった。
ネコ:最初から色々と保険をかけていたのか……それとも、あそこで私たちと戦うこと自体が……目的だったのかもしれない。
クロナ:それは……時間稼ぎ、ですか。
ネコ:さぁね……すべては憶測でしかない。ただ……あそこで、改ざんや削除されていた記録を見る限りじゃ……人間をどこかに移動させていた……のかも。
クロナ:……人身売買。
ネコ:なんにせよ……私たちは、すべてを解決出来なかった……。けれど、守れたものも、あるっちゃあった。
クロナ:世界の闇は深まるばかりですが……今は、守れたものを誇るしかないですね。
ネコ:そうだね。きっと『テージャス』も、そのうち復旧して……都市の「呼吸音」が……ふふ……聞こえるように、なるよ……ふふふ。
クロナ:…………うるさい。
〜〜〜〜〜〜
*アグニ・ヴァンダナ
アグニ:いやー、危なかったー。何とか上手くいったけど……ファハハ。やっぱり人間は一筋縄じゃいかないねぇ。
アグニ:……お、姉君から通信が……よーし、生体部品は、すべて工場に届いたみたいだな。重畳、重畳(ちょうじょう、ちょうじょう)。
アグニ:さてー……オレもこっから、また忙しくなる。まずは……どこに神殿を築くか……だな。ファハハ……ファハハハ!
〜〜〜〜〜〜
*END
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■TIPS
【クロナ】
・遥拝機構(ようはい きこう)『機械仕掛けの神様』(デウスエクス・マキナ)
マリシ軍部の特戦技術開発局により開発された大規模な戦略兵器。本体はマリシ首都の軍部施設に格納されている。超高性能のハッキング処理が可能であり、現存するセキュリティの類いは、ほぼ無力化が可能である。ただし、使用にかなりのエネルギーを消費するので、1日の使用回数は3回となる。また、影響が強い兵器である為、あらかじめ使用申請と、使用用途を選択し、対応した認証キーをダウンロードしておく必要がある。さらに、この機構の負荷に耐えられるスペックの兵装(義体・受信機など)が無ければ、使用出来ない。使用時にクロナの義体が発光したのは、急速に放熱処理が行われた為である。
・申請済祈願『解錠』(アペリ・オスティウム)
『機械仕掛けの神様』のハッキング能力のひとつ。あらゆるセキュリティロックを解除可能となる。
・申請済祈願『停止』(シストー)
『機械仕掛けの神様』のハッキング能力のひとつ。あらゆるシステム系統をシャットダウンさせることが出来る。
・『銃装:雷鳴』(アルマ:トニトルス)
クロナの標準兵装である機械式自動拳銃へ装填される銃弾のひとつ。複数ある銃装を切り替え、臨機応変に攻撃を行う。雷鳴は、電磁パルスの性質を持った弾を撃ち込み、肉体なら麻痺、機械なら動作不良を引き起こす。
【ネコ】
・兵装起動『電磁妨害』(インペディメントゥム)
EMP兵装。出力により、ジャミングのレベルを、調整できる。あらゆる電子機器に対して、有効な妨害兵装となる。
・兵装起動『雷荷』(フルメン・オヌス)
義体の一部へ高圧電流を纏わせるという、シンプルかつ凶悪な兵装。
・兵装『穿ち棘』(スピーナ・フォーロ)
暗器として腕部に仕込まれている針を、高速で射出するように撃ち込む。完全に撃ち飛ばすことも出来るが、基本杭打ち機の様に使用される。
【アイシャ】
・『無柱烈脚』(むちゅう れっきゃく)
柱が無い場合に使用される技。の様に感じるが、『無柱(むちゅう)』の技は、柱を無くす程凄まじい技、という物である。苛烈な勢いで繰り出される蹴りの数は、必滅に値する。
・『臥柱転砕』(がちゅう てんさい)
本来は横たわる柱(対象)に対し、体を回転させ、ドリルの様に蹴り砕く技。
・『回柱度傾』(かいちゅう どけい)
気を纏わせた体を高速で回転させ、飛び道具などを弾く技。レーザーは初めて弾いたらしい。
【ハルト】
・兵装起動『全方向掌握』(オールリカバリー)
全方向に対して高精度の感知機構を展開する。エネルギーや振動を感知し、戦闘の補助を行う。ハルトの場合、周囲のシステムなどをより詳細に検知できる為、ハッキング能力の補助としても扱える。
【アグニ】
・防衛システム『光の円環』(テージャス・マンダラ)
都市『テージャス』の中枢タワーに備わっている防衛システム。エネルギーを消費し、空中の微粒子を光の盾に変換する。
・防衛システム『炎光の槍』(テージャス・シュラ)
都市『テージャス』の中枢タワーに備わっている防衛システム。エネルギーを消費し、熱エネルギーをビーム状に放射する。
・『雷焔』(ヴァジュラ・アグニ)
『アグニ』が防衛システムの『炎光の槍』を拡張した技。熱と電流を対象へ照射し、燃え焦がす。
・『焔滅』(アグニ・サンハーラ)
『アグニ』が防衛システムのエネルギーを暴発させた技。オーバーヒートするレベルの熱エネルギーで、周囲を燃やし尽くす。