【連載】(タイトル未定)#2-7
※こちらは、超絶遅筆な管理人が、せめてイベントに参加する毎には更新しようという、
雨垂れ石を穿つ精神で投稿する長編(になる予定の)連載ページです。
状況により、過去投稿分も随時加筆修正予定。
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町から出て、山に向かう途中、不意にフレイがラファに声をかけた。
「おまえ、俺たちが町に来なかったら、どうするつもりだった」
ラファは少し言い淀み、しかし諦めたように呟いた。
「一人で向かうつもりでした」
「何とかなると思ってたのか?」
「何とかできればそれでいいですし、敵わなければそれまでです。私が退治できなければ、あとの二人がどうにかしようとするでしょう」
フレイの表情に険が差す。
「あのな、最初から前提がおかしいんだよ。危険度もわからねぇ魔物退治に、なんでおまえが一人で向かう必要がある? 加護持ちじゃなくたって魔物は倒せる。誰もおまえを手助けしようとしねぇのかよ」
僅かに荒くなった語調に、ラファは怯えたように視線を逸らし、俯いてしまった。
「仕方ないです。あの町は、昔からずっとそうだし。私がいなくなったって、別に問題ないですから」
「……何言ってるの?」
後半の不穏な発言に、思わずルークが聞き返す。隣を歩いていたラファは、寂しげな笑みを浮かべて言った。
「私は、両親に疎まれているので」
「え?」
昨日もラファは、力を使うと親がいい顔をしないと言っていた。が、疎まれているとは穏やかではない。
「なんで……加護持ち、だから?」
「扱いに困るんですって」
ラファには先に生まれた、血縁上は姉と呼べる者がいる。が、後から生まれたラファの方が早く成長し、今ではどちらが姉だかわからない。両親はラファを気味悪がり、娘として可愛がってくれない。魔物に近い存在だとまで思っているらしい。
「なんでそんな……加護持ちが多いって、昨日フレイも言ってたのに、なんで?」
ルークの問いに、先頭を歩いていたフレイとラファは顔を見合わせた。
「魔力はな、基本的に遺伝しない」
「はい。たとえ両親が加護持ちでも、その子どもが加護持ちになるとは限らないし、神の加護とは何代も無縁であった家に、突然強い魔力を持った子が生まれてくることもあります」
歩きながら、フレイは続ける。ラファも、ルークに、というより、ただ事実を諳んじるように、淡々と告げる。
「魔力ってのは元々、かつて神が戯れにばらまいた神力の欠片だ。血筋ではなく、自然に深く根付いている」
「だから、この辺りのように、加護持ちが比較的多く集まっていたり、魔物が頻出しやすい場所があるんです」
そう、加護持ちが多い町、の筈だった。ところがいつの頃からか、その数は徐々に減りだした。
新しい加護持ちが生まれてこない。生まれても、なぜかそのほとんどが短命。魔力の扱い方や、家族からの接し方を、伝え教えられる者が限られていった。
ラファが生まれた時、周りに加護持ちに理解のある者は少なかった。突然、特殊な力を持った子が生まれ、両親は自分たちで子育てするのを放棄しかけた、とさえ聞く。
「幸い、と言っていいのか、私の力はそれほど強くなかったので、魔力が暴発することもなく、普通の子どもと同じように育ててもらいました。ただ、人と違うのはどうしようもなくて……見えるところで力を使うのは、今でも嫌がられます」
「そんなおまえに、力を使って魔物退治をしてこいとは、随分と勝手な話だな」
同情や、憐情のようなものが滲んでいた。フレイにも、覚えがあるのだろうか。
訊ねることはとてもできなくて、ラファは黙ったまま、長身の背についていった。