第5話 はじめてのピアノの生徒さん|わたしの音楽ヒストリー
音大に進学して一人暮らしに慣れてきた頃、高校時代の声楽の先生からのご紹介で、4歳の子の出張レッスンをお受けすることになりました。
経験のないままレッスンしていいのかなって思いながら、先生から「あなたなら小さい子にも楽しく教えてくれそうだからお願いするわ」と思いがけない言葉をもらったわたし。この言葉に有頂天になりながら、喜び勇んで始めたピアノレッスン。
…これが全っ然うまくいかなかったんです。
先方のリクエストに応じる形で始まった出張レッスンでしたが、今振り返ると、4歳の生徒さんにとっても、新人ピアノ講師にとっても、ハードルが高すぎる案件。だって、園から自宅に帰ってすぐ、ママのいるリビングとは違うお部屋に行って、夕飯の前にピアノレッスンを受けるっていう、子どもにとっては酷な設定だったんですもの!
ハタチ前のヒヨッコは、子どもの気持ちなんてちっともわかっていなかったんです。
それと同時に、そういう依頼をすることになったママの気持ちも、あの頃は想像もできなかったし、全然理解できていなかったなぁ。
フルタイムでお仕事しながら、ほぼワンオペの生活。その中で子どもに習い事もさせてあげたい、となると…ね。
今振り返ってみると、いろいろ思うことがたくさんあります。
出張レッスンを初めてみたものの、なかなか上手にしてあげられないなぁという思いが募るばかり。
わたし自身は、新しいテキストをもらったら、最初から最後までわからないなりにも全部弾いてみたいという子ども時代を過ごしてきたんです。だって、テキストにどんな曲が載ってるか気になるから。だから、ピアノを習う子はみんなそれが普通だと思っていたんです。(これも今ならわかる!そんな子はほとんどいません笑)
教えるってどうするんだっけ?と戸惑い、知り合いの先生に相談しにいったり、セミナーを受けに行ってみたり。
いろんな子どもと接する機会を増やしたくて、音楽遊びのサークルに入って、保育園や児童館の音楽遊びの会で進行役をするようになったのも、学習塾でバイトを始めたのも、きっかけは全部一番初めの生徒さんです。
そうこうするうちに、生徒さんが好きな手遊びやゲームと組み合わせながら、歌ったり楽譜を読んだりすると、楽しみながらレッスンを進められるということがわかってきました。だけど、結局4年ほどの間に、どこまで教えられたのか、何を残してあげられたのかわからないままでした。
そして、強く思うようになったことが2つ。
1つは、子どもの喜ぶ遊びやゲームの延長にレッスンを据えたいという思い。(これが後に幼児期の音楽教育にリトミックを取り入れたいという思いとつながっていくのですが、この頃のわたしは知る由もなく…)
そしてもう1つ。
それは、自分が子どもを育ててみるまでは、先生はできないという思い。
その後、別のお子さまたちにもピアノを教える機会をいただいて、一度は「ピアノの先生」を仕事にしてみたものの、わたしは憧れの道を一旦封印することにしました。