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AIの進化

2026.02.24 08:08

AIについては従来、生活を便利にし、社会活動をより効率化するという楽観的な見方が主流であった。しかし近年の急速な進化により、AIは単にチャットで回答する存在にとどまらず、ユーザーのPC環境に直接入り込み、ローカルフォルダ内のファイル操作やデータ処理を実行する機能を備え始めている。代表例が、Anthropic社が展開を開始した「コワーク」機能である。コワーク機能では人間の仕事はアウトプットを求めることだけで、手段はAIが担うため、ExcelやSalesforce、それらに付随するGUI自体が不要となる可能性がある。結果として、従来の画一的なサブスクリプション型ソフトウェア(SaaS)モデルが限界を迎え、AIを主軸とした新しい仕組みへ転換・淘汰されるという見方が広がる、所謂「SaaS」の死である。SaaSを駆使して仕事をしていたホワイトカラー業務そのものが、AIに代替される可能性も否定できない。その先に想定されるのは、プロジェクトリーダーや経営者が求めたアウトプットが即座に得られる、究極の効率化社会である。現代の若者にとって当たり前となった「タイムパフォーマンス」の重視が、社会全体へ急速に波及する。こうした社会において重要となるのは、発想力(インプット)と、結果を評価・解釈する分析力(アウトプット)である。

まず発想力については、研究開発の蓄積が不可欠であり、歴史的には政府資金が大きな役割を果たしてきた。現在広く利用されている技術の多くは、政府主導の研究開発に端を発している。インターネット、CRISPR(クリスパー)、GPSなどはその代表例である。研究開発の価値を定量的に評価するうえで、有用なアプローチは、投資利益率を調べることである。ベンジャミン・ジョーンズ米ノースウェスタン大教授と、元米国財務長官のサマーズ教授は、「イノベーションの社会的リターンに関する試算」という論文で、米国全体の研究開発支出がGDPや生活水準全体に与える影響を分析した。その結果、最も控えめな推定でも、研究開発に1ドル投資すると5ドルのリターンだった。日本は、失われた30年の間に研究開発力で米中の後塵を拝してきたが、高市内閣が掲げる17分野への成長投資には期待がかかる。

一方、分析力についてもジョーンズ教授の研究は示唆的である。同教授によれば、70年代前半以降、科学技術が進歩するほどイノベーションが難しくなっており、その原因は「知識の負荷」が増えている点にある。知識のフロンティアを前進させるには、イノベーターはまず既存の知識を学び、習得しなければならない。しかし新たな発見に至る前に登るべき知識の山は、年々高くなっている。その典型例が飛行機の発明である。人類初の飛行機を開発したライト兄弟は大学教育を受けていなかったが、今日、新型ジェット機を開発するには、修士号や博士号を持つ何千人もの技術者からなるチームが必要となる。すなわち、人間がAIによる革新的なアウトプットを得たとしても、その内容を理解し、評価するためには相応の知識が求められる。これはAIへのインプットについても同様である。もし知識が不足すれば、インプットからアウトプット、さらには判断までをAIに委ねることになる。その極端な帰結として、社長を含む全社員がAIである組織すら想定され得る。

そこまで至らずとも、能力を幾何級数的に進化させるAIを効率よく使いこなすには、人間側に高度な知識が必要となる。つまり、本来は人間を便利にするはずのAIを使いこなすために、かえって膨大な学習と人員が求められるというパラドックスが生じる。最終的な成果は、意思決定を下すリーダーの資質に左右される以上、実際には「現状とそれほど変わらないがタイパな未来」が訪れる可能性もある。

ちなみに、AIにレポートの感想を聞いたところ、「人間がAIのアウトプットを理解・評価できなければ、最終的に判断をAIに委ねる社会になるというのは、かなり本質を突いている」との評価だった。