台本/そのペンギン、使い魔につき(不問3)
〇作品概要説明
主要人物3人。ト書き含めて約6000字(20分)
おっちょこちょいな師匠と弟子の失敗で、使い魔の猫がペンギンに!?
師弟の言い争いと動物豆知識が飛び交う中、果たして元の姿に戻れるのか──。ドタバタ魔法コメディ。
※口調変更自由。
〇登場人物
弟子:おっちょこちょいな弟子。ルイス。
使い魔:化け猫エル。普段は人間に化けてる。叫び有。今回人の言葉はほぼ喋らない。
師匠:おっちょこちょいな師匠。
利用前に注意事項の確認をよろしくお願いいたします。
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作者:七枝
0:ペンギンの鳴き声はイマジネーションで頑張ってください。ポケットなモンスターみたいな感じです。たぶん。リアルに寄せると難しいと思います。
0:本文ここから。
師匠:このばか弟子ー!
弟子:ひぃ、ごめんなさーい!
師匠:魔法を使うときはワシが見ているときにしろと、いつも言ってるだろうが!このっこのっ
弟子:いた、いたたた!ホウキで叩かないでくださいよぅ!
師匠:なぜ!言うことが聞けない!何度も何度も!口を酸っぱくして言ってるというのに!
弟子:だ、だってぇ
師匠:なんだ!言い訳があるなら言うてみろ!
弟子:昨日成功したから、今日も大丈夫かなって……
師匠:ばか!ばかばか!油断一秒怪我一生という言葉をしらんのか!だろう運転ではなく、かもしれない運転を心掛けろ!よそ見で失う貴様の一生!
弟子:それ、交通安全の標語……
師匠:いま口ごたえしたか!?
弟子:いえいえいえ!
師匠:(溜息)よりにもよって変身魔法と解呪魔法を間違えるとは……
弟子:元に戻せますか?
師匠:むぅ……これはややこしいぞ。二つの魔法が組み合わさって難解なパズルのようになっておる。
弟子:ということは……
師匠:ワシといえども、少々手こずるかもしれんな……
0:彼らの視線の先、木製の机の上にはペンギンが一羽。
使い魔:(ペンギンの鳴き声で絶叫)
弟子:ごめんねぇ、エル。一生このままなんだって。
使い魔:(抗議するペンギンの声)
師匠:少々手こずると言っただけだ!不可能ではない。
弟子:師匠、エルの言葉がわかるのですか?
師匠:わからん。そもそもなんだこれは?羽はあるが……飛べるのか?
弟子:これは、フンボルトペンギンです。鳥綱(ちょうこう)ペンギン目(もく)ペンギン科フンボルトペンギン属に属する鳥類で、南アメリカ大陸の太平洋沿岸地域に生息し、協調性が高く、コロニー内でも激しく争うことはほぼありません。
師匠:みなみ、あめりか……?どこだそこは。
弟子:え……?あれ、僕は何を言っているんだ。何故か突然知識がわいてきて……?
師匠:それはまずいな。もしかしたら魔法の副作用かもしれない。少しみてやろう。
弟子:あ、師匠。そんないきなりホウキを床になげだしたら、
師匠:うおっ!?
0:師匠、投げたホウキにつまずいて転倒する。
弟子:やっぱり!
使い魔:(ペンギンの鳴き声)
師匠:いたたた、腰をうった……
弟子:いい歳なんですから、落ち着いて行動してくださいよ。
師匠:うるさい!ワシはまだまだやれる!それより……
弟子:あ!
使い魔:(ペンギンの鳴き声)
師匠:むむ?これは色替え魔法の一種が発動したか?所々黄色くなっておるな
弟子:違いますよ、師匠。これはオウサマペンギンですよ!
師匠:王様?なんだ、偉いのか?
弟子:オウサマペンギンは大きいのです!先ほどのフンボルトペンギンが全長約60cm後半に比べ、こちらは約90cm!ペンギン目に属する鳥類は現在18種類確認されていますが、オウサマペンギンはその中で2番目に大きいのですよ!
使い魔:(雄叫びをあげるペンギン)
師匠:おまえ達は何をいっているのだ……?
弟子:師匠!
師匠:な、なんだ!
弟子:どうかもう一度!もう一度さっきの魔法をつかってくださいませんか?
師匠:はぁ!?
弟子:ひょっとしたら次は皇帝!コウテイペンギンがでるかもしれません!南極に住み、「世界でもっとも過酷な子育てをする鳥」とも有名なコウテイペンギン!全長はおよそ120cm。これは7歳ごろの子どもの身長にも匹敵します。巣を形成せず縄張り争いもしない為、気性は至っておだやか。なによりヒナがかわいい!!
師匠:近い近い。なにを興奮してるんだ、どけっ
弟子:頼みますよ、師匠~!君もでっかくなりたいよなぁ?エル!
使い魔:(雄叫び)
師匠:どういう返事だ、それは……!このっ
弟子:ああっ!
0:師匠、弟子を押しのけ杖をふるう。使い魔がフンボルトペンギンに戻る。
弟子:ひどいですよ、師匠……せっかくのオウサマペンギンが……
師匠:はぁ……わけのわからんことをいっておらんで、使い魔の心配でもしてやれ。たてつづけの変身魔法で目をまわしておる。
使い魔:(疲れ切ったペンギンの声)
弟子:あ……ごめんよ、エル。つい欲望が暴走してしまった。
使い魔:(不満げなペンギンの声)
弟子:あの、師匠……
師匠:少し頭をひやせ。ワシは薬を煎じてくる。
弟子:あ……
0:師匠、退出する。使い魔と部屋に残される弟子。
弟子:……エル、調子はどうだい?
使い魔:(まあまあかなという感じのペンギンの声)
弟子:そうだよね、つかれたよね。ごめんね、僕新しい動物に目がなくて……君のことを考えてなかった。
使い魔:(お前はそんなやつだよ、という感じのペンギンの声)
弟子:うぅ、怒ってるかい?
使い魔:(もちろんだという感じのペンギンの声)
弟子:エル……
使い魔:(やれやれという感じのペンギンの声)
弟子:本当にごめん、僕、君に甘えてた。君は僕の大事な使い魔なのに。一番の友達なのに、こんなことになっちゃった。
使い魔:(ペンギンの鳴き声)
弟子:エル、君の声がききたいよ。君とお話がしたい。
使い魔:(沈んだ声のペンギン。ちょっと間をあけて、荒々しい鼻息)
0:使い魔、机の上を歩き、投げ出されていた弟子の杖を翼で指さす。
弟子:え、なんだいエル?杖がどうかしたのかい?
使い魔:(なにかを訴えるペンギン)
弟子:魔法を使えって言っているの?でも、さっきだって失敗したのに……
使い魔:(おまえはできると言った感じのペンギンの声)
弟子:僕を、信じてくれるのかい……?
使い魔:(力強く肯定するペンギン)
弟子:ぐすっ……ありがとう、エル。僕、きっとやってみせるよ……!よし、そうと決まれば……いだっ!?
0:突然背後から頭をはたかれる弟子。
師匠:こらっ!目を離した隙に何をやっておる!
弟子:し、師匠!
使い魔:(抗議するペンギン)
師匠:なになに?使い魔が馬鹿弟子を叩きつけたのだと?弟子は悪くないだと?なにをいっておる馬鹿共!だからといって危険な魔法はワシのみているところでやれと注意したばかりだろうが!
弟子:す、すみません……
師匠:まったく、しょうがない奴らだの……
使い魔:(驚いた声をあげるペンギン)
弟子:ん?どうしたの、エル。
使い魔:(師匠を指さし何かを説明するペンギン)
師匠:ああ、そうじゃ。ワシはおぬしの言葉がわかっておる。
弟子:ええっ!?
師匠:さきほど、別室で動物の言葉がわかる薬を飲んできたのだ。こんなこともあろうかと用意しておいて正解だった。
弟子:じゃ、じゃあ僕も!
師匠:ストックはひとつしかない。
弟子:そんなぁ……
師匠:代わりにお前にはこれを。
弟子:これは?
師匠:魔力増量薬だ。
弟子:魔法薬の納期が近い時につかう、あの……?
師匠:余計なことは言わんでよろしい!(咳払い)さっき、ワシがこやつをオウサマペンギン?とやらからフンなんちゃらペンギンに戻したのをみただろう。
弟子:フンボルトペンギンです。
師匠:名称はよい。そう、それだ。あのように、自分がかけた魔法なら解くことは容易なのだ。
弟子:でもさっき……
師匠:自分のかけた魔法なら、な。他人のかけた魔法は方程式の違う高等数学のようなものだ。お前の魔力を遡ってねじ曲がったパズルを二つ同時に解かねばならん。ワシとしてもそんなめんどく……ややこし……大変なことはなるべくしとうない。そこで、だ。
弟子:本心が漏れてます、師匠。
師匠:(無視して)これを飲んで、お前が再度解呪を試みよ。
弟子:ええっ
使い魔:(疑問をなげかけるペンギンの声)
師匠:なぜ魔力増量薬を飲む必要があるのかだと?それはな、一応の安全策だ。もしまたこやつが失敗しても、薬を飲んでおけば魔力が暴走することはないだろう。
使い魔:(再び疑問をなげかけるペンギン)
師匠:副作用だと?それは……
弟子:そういえば、繁忙期が終わった後の師匠はよく寝込んでますね。まさか……
師匠:……うむ、まあ少々魔力筋が痛む程度だ。黙って飲め。
弟子:まりょくきんって何ですか!?
師匠:うるさい!つべこべ言わず飲め。お前の使い魔を助けたくないのか!
弟子:うっ……!
使い魔:(無理をするなという感じのペンギンの声)
弟子:エル……いいよ、僕はやるよ。えいっ
0:弟子、覚悟をキメて魔力増量薬を一気飲みする。
弟子:ぐっ……
使い魔:(弟子を心配するペンギンの声)
弟子:まずぅ……
使い魔:(安堵のためいき。やれやれという感じのペンギンの声)
師匠:よし、飲んだな。ではさっさと杖を構えろ。
弟子:水のませてくださいよぅ……
師匠:慣れろ。いずれ一人前になればこの薬を愛用することになる。
弟子:もしかして魔法使いってブラック……?
師匠:よいか、魔法の基本はまず呼吸だ。凪の心で杖を構え、規則正しい呼吸を心掛けろ。
弟子:はい。
師匠:目の前の対象をしっかりとみつめ、魔力の痕跡をたぐれ。そしてそれを解きほぐすイメージで杖を振るんだ
弟子:解きほぐす、イメージ……
師匠:同時に、己の使い魔の正しい姿を思い浮かべるのだ。おまえの使い魔はどんな姿をしていた?どのように言葉を操り、どのように動いていた?
弟子:僕の使い魔エルは、猫……化け猫だ。人に化けることができる猫で……普段は僕と同じ背丈でサポートしてくれる。シマシマのしっぽの、小さな猫。僕の大事な使い魔……!
師匠:よし、今だ!杖を掲げよ!
弟子:はいっ!
0:部屋に光が満ちる。使い魔が猫に変化する。
使い魔:(猫の鳴き声)
弟子:せ、成功した!
師匠:やればできるじゃないか!よくやった!やったな!
0:師匠、喜びのあまり弟子の背中を強く叩く。
弟子:も、もう背中叩かないでくださいよ師匠~!へへ、僕やった……やったんだエル!
使い魔:(歓喜の声をあげる猫)
師匠:よしよし。これからもワシの言葉をちゃんと心に刻み、励むことだ。さすればお前もいつか一人前の魔法使いになれることだろう。
弟子:はい!
使い魔:(呼応するように鳴く猫)
師匠:……さて、ワシは鍋の片づけでもしてくるかな。やれやれ薬の調合は肩がこるわい。……おや。
0:師匠、何かを発見する。それに気づかず会話をする弟子と使い魔。
弟子:よかったぁ、一安心だよ。またその姿の君に会えてよかった。
使い魔:(今度からは気をつけろよという感じで鳴く猫)
弟子:はは、ごめんごめん。気を付けるよ。……そういえば今日はもう人に化けないの?
使い魔:(疑問符をつけて鳴く猫)
弟子:力が出ない?どうして……解呪はちゃんと成功したよね?
使い魔:(心配そうな猫)
師匠:……我が弟子よ。
弟子:あれ、師匠。鍋のお片付けはどうなさったのですか?
師匠:そのことなのだがな……これをみよ。
弟子:これは……薬のレシピ……?でもタイトルが……魔力吸収薬……?
師匠:うむ……
弟子:あの、師匠。説明をお願いしても……?
師匠:魔力吸収薬とはな、魔法を使った時、周囲から一時的に魔力をぶんどる薬だ。あくまで一時的であって、魔力の全体総量は変わらぬが、抗争の時は便利でな……
弟子:こ、抗争?
師匠:いまはよい。
弟子:あ、はい。それでこれがどうしたんです?
師匠:その……ワシも焦っておってな。魔力吸収薬のレシピと魔力増量薬のレシピを……
弟子:間違えたんですか!?
使い魔:(驚く猫)
師匠:そう騒ぐでない!時間をおけば解決する!
弟子:どれくらいです?
師匠:そうさの……成人男性なら半日、子どもなら1日。子猫となれば……三日間くらい?
使い魔:(猫の絶望の叫び)
弟子:そ、その間エルは人間に化けられないってことですか?
師匠:ええい、それもこれもお前がワシの言いつけに背いたことから始まったことだろう!罰だと思って大人しくしとけっ
弟子:そんなぁ~!師匠~!
0:SEドアの音。
0:師匠は部屋から出て行ってしまう。暗転。それからしばらくして。猫は人間に化けている。弟子とふたりっきりの会話。
使い魔:……まったく、ひどい目にあった。
弟子:はは、そんなこともあったねぇ。
使い魔:笑いながら言うな馬鹿。あれから三日間私は大変だったんだぞ。
弟子:僕が道を間違えたり、師匠が発注書より一桁多く薬をつくったり……
使い魔:ベッドが水浸しになったり、あやうくボヤになりかけたり。君たち師弟はうっかりが過ぎる。
弟子:いやはや、いつも頼りにしてますはい。
使い魔:ふん。
弟子:そ、それで?今はなにをしてるの?さっきまでは紙に色を塗っていたみたいだけど。
使い魔:(得意げに)どうだ、みろ。
弟子:これは……折り紙のペンギンと猫?
使い魔:君たちの教訓にと思ってな。私のありがたみを忘れないよう、これを机の上に貼っておけ。
弟子:はは~!
使い魔:ホントは注意書きでもしようかと思ったのだが……
弟子:あ~……師匠、プライド高いから……
使い魔:「こんなのがなくてもワシは大丈夫だ!」と剝がされてしまった。
弟子:全然だめなのにね。
使い魔:おまえもだろ、馬鹿弟子。
弟子:エルまで馬鹿弟子って呼ばないでよ~
使い魔:ならば少しはうっかりを直す努力するんだな。
弟子:へへへ……いつもありがとね、相棒。
使い魔:どういたしまして、相棒。
0:みつめあい微笑む二人。
弟子:さて……そろそろ師匠を迎えにでかけようか。雨がふってきたみたいだ。
使い魔:ああ……ってちょっとまて馬鹿。それは傘じゃなくてビーチパラソルだ!
0:おしまい。