「多羅尾伴内 鬼面村の惨劇」
小林旭主演「多羅尾伴内」シリーズ第2弾
当時ブームになっていた横溝正史の「金田一シリーズ」を意識した地方を舞台にした伝奇ミステリ仕立てになっているのだが、金田一もののようなオールスターキャストではなく、ほとんど無名の俳優さんを使った低予算映画になっており、テレビサスペンスでも見ているような雰囲気がある。
劇中「赤い夕日」が何度も登場するが、小林旭さんの往年の日活映画「赤い夕陽の渡り鳥」(1960)を意識した発想なのかもしれない。
正直、小林旭、財津一郎、松橋登、内田朝雄…このくらいしか役者名が出てこない。
日活の土方弘さんが医者役で出ておられるのが珍しいくらいか。
石橋雅史さんなども出ておられるが、誰もが知っているという感じではないだろう。
通常、この手のプログラムピクチャーには、その会社の大部屋俳優みたいな人が大勢出るので、名前は知らなくても顔は知っている人が出ているのが普通なのだが、1978年頃の東映には、そういう馴染みの大部屋役者もいなかったか、大幅にメンバーが入れ替わっていたのだろう。
冒頭からケレン味の強い惨劇が描かれ、金田一ものっぽくはなっているが、多羅尾伴内ものっぽいか?と言うとそうでもないのが残念。
死体をはりつけた戸板が川を流れてくるなど「東海道四谷怪談」そのままだし、さらにその戸板が突然垂直に立ち上がるなど、物理法則を無視したような演出では、超自然的な力を描くホラーなのか何なのかわからないほど。
もともと荒唐無稽の楽しさで人気があった片岡千恵蔵版「多羅尾伴内」だけに、小林旭版も荒唐無稽を継承しているのはわかるが、1970年代後半の時代にこれが受け入れられるのか?と言う疑問はあるし、そもそもターゲットはどう言う年代を意識していたのかも不明。
松竹の「八つ墓村」などのように、ケレン味の強い残虐現場を見せて、その刺激で物語に惹き込もうと言う発想なのだろうが、登場人物に誰1人として魅力がないので、どうなるんだ!と言う先を期待する気持ちがほとんど湧いてこない。
多羅尾伴内を演じる旭さんさんも、片岡千恵蔵が演じていた伴内のようなほぼ役者の年齢とキャラそのまんまみたいな年相応の自然さや体型的なユーモラスさがないので、感情移入しにくい。
閉鎖的で人も少ない狭い村での話なので、村人たちは顔馴染みが多く、部外者自体怪しまれる環境では、伴内得意の変装も披露しにくいのでは?と思っていると、早替わりの極地というか、宇宙刑事や往年の変装ヒーロー七色仮面のようなワンショット変身して見せたりで、完全に子供向けの東映変身ヒーロー化しているのだが、宇宙刑事のような変身プロセスの説明はない。
お馴染みの片目の運転手姿なども、タクシーをどこから持って来たのか?とか、訳がわからない設定になっている。
結局、この小林旭版が定着しなかったのは、片岡千恵蔵版にあった「荒唐無稽さを笑えて受け入れる時代背景」を70年代に再構築できなかったことにあったのではないかと感じる。
片岡千恵蔵版多羅尾伴内で有名な「ある時は片目の運転手…」の「片目」というセリフが今では放送が難しいように、本作での伴内が扮する用務員の山口などは、脳梗塞系の病気という設定なのか、右手をぶらぶらさせているが、この表現も昔の「シャボン玉ホリデー」でハナ肇さんが演じていた寝たきりの父親役の動きと同じで、今では放送できないような気がする。
【以下、ストーリー】
1978年、東映、比佐芳武原作、小池一夫+ 石森章太郎劇画、掛札昌裕脚本、山口和彦監督作品
「この物語は、すべてフィクションであり、登場人物、その他の名称は架空のもので実在のものとは何ら関係ありません」のテロップが、青字に白文字で出る。
荒磯に波の東映クレジット
昭和28年 夏
真っ赤に空が染まった夕暮れ時の河原に1人の少女(鈴木敦子)が笹舟を流しにくる。
信州 鬼面村(のテロップ)
少女は水車の側で、独楽を一つ拾い上げる。
その少女の目の前で回っていた水車に、着物姿の女の死体が縛り付けられ、川面から姿を現す。
それを見た少女は、お母ちゃん、お母ちゃん!と呼びかける。
女の死体は赤い夕陽に照らされた水車に逆さ吊りの体勢で持ち上がる。
水車に縛られ、赤い風景の中、何度も回る女の姿を背景に、女の悲鳴のように聞こえる尺八の音色が重なり、黒文字の筆で書いたタイトル
その黒文字が広がって漆黒の画面になると、能面のような不気味な顔が浮かび上がり、表情を歪ませる。
それを背景に赤筆文字のスタッフ、キャストロール
黒バックに複数の半裸の舞踏集団のエロティックなパフォーマンス(アリアドーネの会)
蝉の音が聞こえる田舎の風景に地蔵と墓が映る。
遠くに電車が走っている背景に(20年後というテロップ)
そんな村にやってきたのは、白い帽子にサングラスをかけた雨宮千尋(鈴鹿景子)だった。
近くで油絵の風景を描いていた青年は女性を見て驚くが、その青年 日向徹(松橋登)の右頬には目立つ痣があった。
歩いていた千尋の方も、油絵を描いていた徹に気づくが、知らん顔をして通り過ぎる。
村の雨宮家の屋敷には、大量の酒樽が運び込まれていた。
台所にいた家人たちは、サングラスの千尋が来たのを見て、おかえりなさいませと一斉に頭を下げる。
ささ、お疲れでございましょう、お荷物お持ちします、ご苦労様ですなどと、家人たちは千尋に近づいて話しかける。
千尋がお父様は?と聞くと、ただいまお二人ともお出かけでございますと女中が答える。
その時、お姉ちゃん!と呼ぶ声がしたので、奥を見ると真理子(和田瑞穂)が近づいてきたので、マリちゃん!と千尋も喜ぶ。
お帰りなさいと言いながら真理子が近づいてきたので、ただいまと千尋も答え、いよいよ明日ねと声をかけると、丸子もありがとうと言い、私これから靴作なの、ちょっと行ってくるわと言って出かけるので、じゃあ、また後でねと千尋は答えて送り出す。
千尋のバッグを持ったくめ(谷本小夜子)が、どうぞお上がりになってと千尋に声をかけ、一緒に部屋に向かう。
庭で剪定していた職人も、千尋を見ると、あ、おかえりなさいませと頭の鉢巻を取って挨拶してきたので、千尋も、ただいま、おご苦労様と礼を言うが、その時、庭の奥に、先ほどすれ違った透がいたので不思議がるが、徹はすぐさま逃げて行ってしまう。
真理子が花嫁姿になり、客たちの前に登場する「鬼面村 結婚式前夜の儀式」(のテロップ)
この度、次女麻里子が杉山産業社長杉山雄三氏の次男雅彦氏を婿に迎えることになりましたと、花嫁と対面の席に座った父親雨宮剛蔵(渥美國泰)が挨拶する。
今夜は明日の式を前に、ご親戚一同にお集まりいただき、前祝言の儀を執り行いたいと思いますと剛蔵は言う。
わしはゆくゆくは、この雨宮家と雨宮興行の仕事を杉山君と真理子の2人に任せようと思っていると剛蔵は続け、千尋、異存はないなと確認する。
そのことは東京に出る時にお父様にお話しした通りですと千尋は答えたので、うん、皆様も御異存ありませんな?と来客たちにも声をかけると、では今後一つ真理子夫婦をお引き立て願いますと剛蔵は言って挨拶を終える。
剛蔵の横に座った後妻歌江(北林早苗)もよろしくお願いいたしますと頭を下げる。
赤い風鈴がなる中、お疲れでしたでしょう?と、女中が真理子の花嫁衣装を別室で脱がせながら、お綺麗でしたよと褒めるので、真理子はありがとうと感謝する。
女中はいよいよ明日ですねと言いながら、花嫁の帯を解く。
一方、剛蔵は、雅彦君、雨宮家の杉山家の地盤が結びつけば、県下有数の権力になる、まずは県会議員に出てみるんだなとウィスキーを飲みながら勧めていた。
あなた、今夜はそんな硬い話は抜きにして…、仕事の話なら、これから毎日できるじゃありませんか?と歌江は剛蔵に注意する。
それもそうだな…と剛蔵は反省する、千尋さんもいかが?と歌江はウィスキーを勧めるが、妹たと一緒にスイカを食べていた千尋は、私はこれで…とスイカを食べ続けるので、千尋、お前今度独立してやるそうだな?と剛蔵が聞いてきたので、ええ、メイクに知り合いができたので、冒険だけどやる決心しましたわと千尋は答える。
千尋さんなら、何をしても成功なさる方だと思ってましたわと歌江はお世辞を言う。
私も東京で働きたいわと3女の薫(遠藤薫)が言い出したので、お前の人形作りは趣味しか過ぎん、東京でな、金を儲けるのは生やさしいことじゃないぞと剛蔵は言い聞かせる。
すると薫は、あら、私だって、千尋お姉様くらいはやっていけるわよと膨れたので、剛蔵と歌江は笑い出す。
そんな中、真理子は1人部屋の鏡を前に髪をすいていたが、次の瞬間、突然外から風が吹き込み麻里子が悲鳴を上げる。
電話室の電話が鳴り出す。
皆さん、来てください!麻里子さんが、麻里子さんが!麻里子さんが大変d巣、早く!と言う家人の呼び声が聞こえる。
剛蔵ら家族も歌人たちも声のする真理子の部屋に集まる。
部屋にやってきた剛蔵が、そこにいた雅彦に聞くと、雅彦は黙って壁の一角を指差す。
そこには「麻里子は鬼面の生贄」と赤い血のような色の文字が書かれた紙が、ナイフで刺されていた。
外は強風が吹き荒ぶ中、脅迫状を破り取った剛蔵はそれをじっくり読む。
お嬢様~!真理子お嬢様~!と、その後、懐中電灯片手に真理子を探す歌人たちが、夜の草っ原を彷徨いていた。
やがて雨が降り出し、空には雷鳴が轟き出した中、千尋も、真理子~!真理子~、どこにいるの~!と懸命に探し回っていた。
嵐の中、川面に何か戸板のようなものが流れて来たので、千尋や歌人たちが集まって懐中電灯で照らし観察してみると、近くの木に落雷し、千尋たちは泥いて竦み上がる。
次の瞬間、川面の戸板が反転し、胸に包丁が刺さった麻里子が、戸板に縛り付けられていたことがわかる。
すると突然、戸板が垂直に起き上がり、その真理子の顔の横には鬼面が貼り付けられていた。
その事件は新聞紙上に大きく載り、「戸板にくくられ水死体で!」「殺人現場に不気味な鬼面」「雨宮家次女『真理子さん』惨殺さる!!」などと扇情的な見出しが踊っていた。
後日、村にボンネットバスが到着する。
そのバスの乗客の中に多羅尾伴内(小林旭)がいた。
バスが大きく揺れた時、伴内の背後に乗っていた男のバッグの蓋が開き、転がり出た独楽の1個が伴内の足元に転がってくる。
それを伴内が拾い上げると、どうもすいませんと後ろの席から謝りながら独楽を回収したのは、徹だった。
伴内は、次の「上鬼面」停留所で降りる。
その時、伴内は、前方から近づいてくる「雨宮麻里子」の葬儀の列に遭遇し、列に参加していた千尋が抱いた真理子の遺影を見ながら、葬儀の列を見送る。
同じ頃、そりゃあ、雨宮といえばこの土地じゃ大したもんだ、雨宮製材といえば県で一二を争う大手だしな、この辺の山は全部雨宮のものだ、鬼面村は雨宮で牛耳っていると言っても言い過ぎじゃないな…と言いながら、自転車に乗った警官と徒歩の刑事と一緒に村に来たのは宇田川警部(財津一郎)だった。
しかし反抗分子もいることはいます、剛蔵さんは先代の秘書をしていた人で、いわば成り上がり者ですからねと警官は教える。
奥さんの歌江さんは後妻だそうだねと付き添いの刑事が聞くと、そうです、仙台のお嬢様が通り魔に殺されましてね、その後釜ですよ、4女の令子さんだけが今の奥さんの子供ですと警官が言うので、ほお、4女の令子は腹違いかと宇田川刑事は納得する。
雨宮家の位牌に焼香を済ませた伴内は、どうもご愁傷様でしたと剛蔵夫婦に頭を下げる。
しかし人一倍大人しかった真理子さんが亡くなられたなんて、いまだに信じられませんなと伴内は呟く。
結婚式を明日に控えてあんなことが起きるなんて、私どもも悪夢を見ているようで…と歌江は嘆く。
剛蔵も、酷いことをする奴もいるものです、殺してやっても憎み足りない気持ちですと答える。
剛蔵さん…、真理子さんについていたあの鬼面ですが、ありゃ、お屋敷から盗まれたもんですな?と伴内が聞くと、はい、書庫に飾られた能面の中にあったものですよ歌江が答える。
そこに喪服姿の千尋が茶を持ってきて、どうぞと勧めたので、伴内もどうも…と礼を言う。
その後、書庫にやって来た伴内は、先に屋敷にやって来て、書庫内を調べていた宇田川警部と出会い、多羅尾さん!あんたなんでここへ?と驚かれる。
宇田川さん、相変わらずお忙しそうですな?と言いながら、ガニ股の伴内は宇多川に近づいて来たので、あの~、この方はどなたさんで?と警官が聞く。
こちらは私の古い付き合いで、東京の私立探偵の多羅尾伴内さんだ、いつも邪魔ばっかりするんだと宇田川は皮肉まじりで説明する。
そんな人が何でまた?と警官が不思議がると、いや、実は死んだ真理子さんは私の事務所で働いとりましてな、で、結婚式に招待されたと言うわけですよと伴内が答えると、いや~、そうだったんですか、それは可哀想に…、その結婚式が命取りだったよと宇田川は答える。
と言いますと?と伴内が聞くと、雨宮夫妻は被害者に婿を取って、ゆくゆくは全財産を任せるつもりだったらしい、それを快く思わんやつの犯行に決まっとると宇田川はいう。
その時、主任、主任とやって来た刑事が、現場付近を嗅ぎ回っていた顔に火傷の画家らしい男を農家の主婦が目撃しておりますと報告する。
火傷の画家?と宇田川が聞き返すと、麓のバンガローに同一人と思われる男が宿泊しておりますと刑事が言うので、名前は?と聞くと、宿泊人名簿には日向と書いてありますと刑事は教える。
日向…、日向なんだ、それだけか?と宇田川が苛立つと、それからバンガローにこんなものが残ってましたと刑事はスケッチブックを見せる。
何だ、これは?と言いながら宇田川がスケッチブックをめくると、一枚の絵が出て来たので、夕焼けの水車小屋か…と呟くと、ふ~ん、なるほど…、雨宮家の財産を狙った内部の人間が日向と言う絵描きを使って被害者を絞殺して池に運んだ…と宇田川は推理してみせる。
それを聞いていた伴内は、宇田川さん、しかし犯人はどうして面に絵の具を塗ったくって、真理子さんに括り付けるような七面倒くさい真似をしたんですかな?と、壁にかかった面を自分の顔に被りながら聞く。
だから決まっとる、鬼の面も脅迫状も我々の目を誤魔化すための道具立てに過ぎんのだ、カモフラージュだ!と宇田川は苛立たしそうに答える。
日向という男を逮捕すりゃ全て明白になる、こりゃ時間の問題だよ、多羅尾さん、あんたにゃ悪いが、出る幕なさそうだね~と宇田川が言い、ハンチングを取り出して被ると、ヒジョ~に残念だが、行くぞ!と部下たちに命じ、屋敷から出てゆく。
ご苦労様でございましたという送り出しの声を聞いた伴内は、スケッチに描いてあった水車の所にやってくる。
すると水車小屋の扉が開き、見知らぬ男が出て来たので、伴内は一旦身を隠してやり過ごす。
伴内もその小屋に入り、おが屑の下に血のような痕跡や、地面に独楽が落ちているのに気づく。
「菅池保健所」に、先ほど水車小屋から出て来た男が向かうのを、池に浮かべたボートに乗っていた伴内が目撃する。
夜、保健所に忍び込んだ伴内だったが、開いていた管理人室のドアが勝手に閉まる。
そのドアには内側から巨大な釘のようなものが4本打ち込まれており、その釘には血のような赤い液体が付着していた。
ドアを無理やり押し開けて中に入った伴内は、ドアの内側に、昼間水車小屋から出て来て保健所に入った男が首を鋤でドアごと突き刺されて死んでいるのを発見する。
床には、血で汚れた、女学生と数名の大人の男たちが記念撮影した写真が額に入って落ちていた。
その融合写真の中に、殺された口髭の男尾崎(南雲佑介)も混じっていた。
翌日、伴内は、その写真立ての裏に書いてあった「第27回信州女学院卒業記念」を頼りに、私立信州女子学院を訪ねる。
ちょっと、池上君!と声をかけられた草刈り中の池上が、何ですか?と池上(桐原信介)が返事すると、亡くなった尾崎君のことで知っていることがあったら、話してやってくれたまえと校長の江幡一臣(菅貫太郎)から紹介されたのが伴内だった。
多羅尾も申しますがな…と名乗った伴内の目の前に、まだ回っていた草刈機を威嚇するように差し出す池上に、尾崎君は時々この村に来ることがあったんでしょうか?と聞くと、ここを辞めてから一度も見たことはないねと池上は答える。
ああ、そうですが、で、学校以外で付き合っていた方をご存知ありませんかな?と伴内が聞くと、あいつとは普通のことな何も喋らなかったと池上は目を逸らしながら答える。
伴内は、収穫がないので、さようですか…と答えるしかなかったが、そこに校長先生!と呼びかけながら女性教師水沼明美(原田英子)が走って来て、大変です、又令子さんが!と報告する。
教室では、口から泡を吹いた令子(長谷川真砂美)は、奇声を上げながら教室中の教科書を投げつけながら暴れていた。
校長と池上が教室に駆け込み、2人で令子を抑えつけると、そこに伴内と医者の箱田(土方弘)も駆けつけ、様子はどうだね?と明美に聞き、水頼むぞと指示すると令子の方へ向かう。
教室の入り口から中を覗く伴内に、校長は、あの子は雨宮さんの末の娘で、夏になるといつも発作を起こすんで、私たちもどうしようもないんです、生まれながらの持病でかわいそうな子なんですと事情を話す。
箱田は令子が引き付けで舌を噛まないように布を口に咥えさせ、目の様子を見ると、明美がコップに組んできた水を、口に噛ませていた布を外して飲ませてやる。
箱田が鎮静剤を注射している時、みなさん、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんと姉の千尋がやって来て、校長らに謝罪すると、床に寝かされていた令子に駆け寄るが、ああ、千尋さん、もう大丈夫だからと箱田が伝える。
ありがとうございますと礼を言った千尋は、もう大丈夫よと妹に声をかける。
夕暮れ時、水車小屋の側に来た千尋は、賽の河原のつもりなのか、石を積み重ねていた。
そこに近づいた伴内は、千尋さん、あなた時々ここへいらっしゃるようですがと声をかけると、立ち上がって水車の方に目をやった千尋は、母が亡くなった場所なんですと答える。
母はこの水車小屋がとても好きでした…、いつもここは私の遊び場でした…と千尋は打ち明ける。
犯人と見做される日向という男も、この水車小屋に立ち寄って絵を描いとるんですよと伴内は教える。
御覧なさいと、スケッチを取り出して見せた伴内は、実に清らかな絵だと思いませんか、千尋さんと問いかける。
私にはこの絵を描いた日向が犯人とは思えんのですよと伴内は言い、おお、夕陽が随分真っ赤ですな~と遠くの山並みを見て感嘆する。
それにしても、なぜ水車小屋がこんなに真っ赤に見えるんですかな?わからん…と伴内は不思議がる。
その夜の雨宮家で、千尋が1人で寝込んでいた令子の面倒を見ていた時、歌江がお湯の入った洗面器とタオルを持って部屋に来て、千尋さん、令子のことは私がします、あなたは休みなさいと言うので、すみませんと答え、千尋は自分が使っていた洗面器とタオルを持って退去する。
その時、寝ていた令子が、人形が死ぬ~、人形が死ぬ~と譫言を言い出す。
歌江は、そんな令子の額に濡れたタオルを乗せた後、大丈夫よ、大丈夫よと言いながら、顔を優しく撫でてやるのだった。
着物を着ておらず、歯車構造が剥き出しの「茶運び人形」が近づいてきたので、後ろ向きだった千尋は振り向いて悲鳴をあげる。
すると、妹の薫が、驚いた?とイタズラっぽい顔で姿を見せる。
薫!びっくりさせないでよと千尋が叱ると、これ「茶運び人形」よと薫は教える。
へえ、よくできてるわね~と千尋は人形を持ち上げ中の仕掛けに感心する。
明美先生から預かったの、来月からくり人形の展示会があるのよと言いながら、薫は人形に衣装を着せる。
この着物、薫ちゃんが作ったの?と千尋が聞くと、うん、似合うでしょう?と薫は得意そうに答えると、明日までにもう一着作らなきゃいけないの、今夜は徹夜だわ…と言うと、さ、いきましょうと人形を受け取り自分の部屋に戻るので、千尋はお休みと声をかける。
そこに、茶を持ってやって来たしげ(小峰千代子)は、お嬢様、早くお休みにならないと、体に毒ですよというので、ありがとう、しげさんと千尋は礼を言う。
早く日向と言う男が捕まらないと、枕を高くして眠れませんね~としげは嘆来ながら、茶を差し出すと、そうそう、お嬢様、昔ね、この村に日向洋一郎って絵描きさんが住んでましたよとしげが打ち明ける。
日向洋一郎?と千尋が聞くと、珍しい苗字なんで覚えてるんですよとしげは言うので、しげ、それいつ頃のこと?と千尋は聞き返す。
昭和27~8年でしたっけ?半年間ほど水車小屋の近くに住んでいたって話ですよ…としげが言うので、水車小屋…と千尋はつぶやく。
(回想)犯人と目される日向という男も、この水車小屋に立ち寄って絵を描いとるんですよと伴内は言う。
(回想明け)しげさん、詳しいこと話してと千尋は頼むと、あの水車小屋をやってた久米さんなら知ってますよとしげは言うので、で、久米さんはどこにいるの?と千尋は聞くと、それがね~、いつの間にかこの村からいなくなっちまって、どこへ行ったか?…ととしげは言う。
柱時計が深夜の3時の時報を鳴らした時、まだ薫はからくり人形の衣装を塗っていた。
そこに突然現れたのは、顔に火傷の跡がある日向だったので、怯えた薫は逃げようとする。
襖を開けると、そこに絞首刑用のロープが吊られていたので、薫は悲鳴をあげる。
薫は誰かに捕まれ、身動きできなくなった時、別の男が首吊り用のロープを薫の首にかける。
ロープの先は滑車を使い、廊下の天井を伝っていたので、首を吊られた薫の身体は廊下を走り抜ける。
滑車を伝うロープの先には大きな石の錘が結ばれており、薫は首を疲れたまま天井に吊り下がる。
薫は口から血を吹き出し、それが正時に降りかかる。
その悍ましい首吊り死体を発見したしげは腰を抜かす。
何事かと駆けつけた千尋や他の家人たちは、しげが指差す方向を見上げて仰天する。
雨宮剛蔵と歌江も騒ぎに気づいて駆けつけ、薫の無惨な遺体を発見する。
剛蔵はあまりのショックのために胸を抑えて倒れたので、歌江が抱き止め、歌人たちも旦那様!と駆け寄る。
千尋は薫の遺体の下に来て、上を見ながら、薫!薫!と呼ぶが、4女の令子は、人形を抱えたまま薫の遺体を見て、無表情のまま、お人形がぶら下がってるとつぶやく。
早朝の村をパトカーのサイレン音が切り裂く。
ご苦労様ですと出迎えた警官に、仏はどこだ?と聞く宇田川警部。
土間に降ろされた薫の遺体を見た刑事は、頭の横に鬼の面があることに気づき、主任!と言って見せるが、宇田川警部はふざけた真似しやがって、また面だ…と怒る。
会社はこのロープで首を吊るされ宙吊りにされていました、事件が起きたのは、午前3時半から4時の間だ思われますと警官が報告する。
天井にかけた梯子を登りかけた宇田川だったが、それから事件が起きた直後、女中のげが、窓から様子を伺っていた日向を目撃しておりますと警官が言うので、日向って絵描きか?誰だ?最初の発見者は?と宇田川が聞くと、女中のしげさんですと警官が教える。
しげさんどこだ?と宇田川が聞くと、腰抜かして寝てますが…と家人が教える。
ロープと滑車の仕掛けを中二階に上がって調べた宇多川は、なるほど…、またあの日向が内部のものの手引きで忍び込み、被害者を襲い、ロープで首を絞めて殺してここに吊るした…と推測を口にする。
その時、中二階に落ちていたものを拾い上げた宇多川は、梯子を降りると、おいちょっとみんなに尋ねるが、この首飾り見覚えがないか?誰の物かわからんか?と、今拾ったものを見せる。
すると家人が、ああ、千尋お嬢さんの‥と口にしたので、千尋?長女の千尋か?と宇多川は確認する。
主任、なんでこんなものがあんなところに?と部下が聞くと、うるさい!と遮った宇多川は、推理しとるんだ、邪魔するな!としかるが、そこにやってきたのは伴内だった。
やあ、宇多川さん、とうとう第2の惨事が起きましたなと語りかけると、いや、驚くには当たらんよ、起こるべきして起こった惨事だと宇田川は答える。
と言いますと?と伴内が聞くと、次女の真理子が死んで、次の相続人は薫だったんだ、で、次の相続人は誰か?4女の令子、これはこれで特殊な病気で相続不可能だとなると、浮かび上がるのは一つしかおらんじゃないかと宇多川が言う。
と言うことは長女の千尋ということになりますがな、彼女には遺産を相続する意思はなさそうですがな?と伴内が応じると、いや多羅尾さん、それは表向きだよ、人間というものには表向きの面と密室の面とが…、奴はきっと日向と共謀して財産を狙っとるに違いない、2人のコネクションさえ掴めば即刻逮捕だ!と宇田川が反論し、証拠品を一つも残すな、写真も全部撮っとけ、家族ならびに使用人は、1人残らず外に出ないように、外出禁止だ…と部下たちに命じる。
その間、伴内は、死体の指先を拡大鏡で覗き込んでいたので、何かありましたか?と警官が聞くと、これをご覧なさい、爪の先に何者かの血がこびりついておりますぞと伴内は指摘する。
え?血が!と警官が驚くと、これは相当抵抗しとりますぞと伴内は言う。
その後、葬式が行われ、源海(内田朝雄)が読経する中、伴内と宇多川も出席する。
宇田川は千尋を注視していた。
その後、伴内は千尋から茶を振る舞われ、こりゃどうも…と礼を言うと、千尋さん、あんまり気を落とさんようにな…と話しかける。
千尋は、はい、ありがとうございますと礼を言う。
続いて千尋が急須を持って行った源海のいる席で、自分が急須を受け取ろうとした女性教師の明美が、急須の重みで左手を急に押さえて痛がったので、伴内はその女性を注目する。
女性はその後、右手一つで大きな急須を持って源海の湯呑みに茶を注ぎ、左手には包帯が巻かれていたので、伴内は何事か考える。
「私立信州女子学院」
伴内は用務員に化け、廊下の拭き掃除をしながら、家政科の教室で1人アイロン掛けをしていた明美の様子を観察する。
そこに校長と明美の兄伸介(石橋雅史)が来て、今度新しく用務員に入った山口くんですとお供の教師が紹介したので、はい、これからよろしくと声をかけ、教室の中を覗くと、お、明美先生頑張ってるねと言いながら、校長は立ち去る。
その夜の水沼明美の家から、黒犬が何かを咥えて走り去る中、用務員山口は床下に潜り込み、懐中電灯で照らして探っていた。
そこには、むしろで隠された日向の死体と、顔に火傷のあるゴムマスクが置かれていた。
その後、寝汗をかいて寝苦しそうにしていた明美は、明美さん…、明美さん…と名を呼ぶ声に気づいて目覚めると、窓から自分をのぞいている顔に火傷がある日向のような男が立っているのに気づく。
日向のように見える相手が笑い出したので、明美は怯えて寝床から逃げる。
その後、明美は、兄の伸介と一緒に部屋の畳を剥がし、床下に隠した死体を確認する。
床下を見た伸介は、そこにゴムマスクしか残っていないと知ると、明美、死体がないと告げる。
翌朝、伸介は墓で日向のゴムマスクなどを焼却する。
その様子を近くから、編笠を被った謎の男が見守っていた。
寺の本堂で水墨画を描いていた源海の元にやってきた伸介は、始末して起きましたと報告する。
そうかと答えた源海は、ワシらの身辺を探ってる奴がおるらしい、気をつけんといかんぞと伸介に伝える。
わかりましたと伸介が答えた時、編笠を被った和装姿に、キャンバスと三脚を持った男が詩吟を歌いながら寺にやってくる。
限界と伸介のいる本堂に来たその男は、お邪魔します、わしはこう言うもんなんですがなと言いながら名刺を渡す。
その名刺には「青光会々員 小曽根青風」と書かれていた。
絵を描きたいんでしばらくこの村に滞在したいんですが、置いてもらえますかな?と小曽根が言うので、今はダメじゃと源海が答えたので、そりゃ残念じゃな〜、日向という仲間から、この村はなかなか良いと聞いてきたんですがね〜と小曽根は落胆する。
それに対し、源海が無視すると、御坊も絵をお描きで?と聞きながら小曽根は色紙を覗き込み、縁側に腰掛けると、ちょっと拝見と言って、なかなか良い腕じゃなどと褒める。
いやいや…と謙遜した源海は、ところで君の絵を見せてもらえんかなと、怪しんで逆に探りを入れてくる。
すると、見ていただけますかな?こんなもんなんですが…と言いながら、小曽根は持っていた油絵のキャンバスを開いて披露する。
それは日向を描いた肖像画で、こんなのもありますがなと見せたもう一枚は、赤い夕日に照らされた水車小屋の絵だった。
鑑賞に耐えられますかな?と小曽根が聞くので、その絵を見た源海と信介は睨みつけたので、苦笑した小曽根は、大したもんじゃない、その辺にお飾りくださいとごまかすと、いや、失礼と言って帰ろうとするが、あ、君!と呼び止めた源海に、いやお構いなく、いずれゆっくりと伺いますよと言い残し、高笑いしながら立ち去る。
檻の中を詩吟を歌いながら歩いていた小曽根だったが、側の木に小柄のようなものが次々と突き刺さる。
命を狙われていると気づき、その場を逃げ出すが、鎌や斧などが次と飛んでくるので、くそっ!と呟いた小曽根は、前転して逃げ去る。
その直後、伸介が村人2人を連れて姿を現し、後を追って来る。
大きな木の背後に隠れた小曽根は、電動鋸を抱えた木こりに変身して現れる。
それとすれ違う伸介たちは、おい、君、君!と呼び止め、絵描きを見なかったか?と聞くが、木こりはあっちへ行ったよと嘘の方向を教え、走り去った三人組に、バカと嘲る。
鬼ヶ城警察署の特別捜査本部では、宇田川が、あんたね、そんなタニシが殻閉ざしたみたいに黙っとったら何もわからんじゃないか、ちっとも解決せやせんと、参考人として呼び出した千尋を尋問していた。
それに対し、千尋は、警部さん、あんまりですわ、私が真理子を殺したなんて…と言うだけだった。
コップの水でうがいし、その水を窓から外に吐き捨てた宇田川は、あんたと日向が2人きりで会ったのは従業員の水谷が目撃しとるんだと教える。
あれは、あの人が庭で私を見ていただけですと千尋は答える。
いや、おかしい、おかしい、ヒジョーにおかしいと宇田川は信じない。
あんたと日向が子育て地蔵の前で会うとるのを、農家の婆さんも目撃しとるんだ、いい加減に吐いちまったらどうだ?真実を!と宇田川は続ける。
そこにやってきたのが伴内で、お前は2人の妹を日向という男を使って殺させたんだ、どうなんだ!うん?と追求する宇田川の声が「雨宮家連続殺人事件特別捜査本部」の部屋から聞こえてきたのに気づく。
千尋は、警部さん、どうして私が真理子や薫を殺さないといけないんですか?と聞くと、遺産そう↑うだ!お前は雨宮家の財産には目もくれんような顔しとるが、内心はそうじゃないだろう?今度、東京で始めることにした仕事も、大分借金しとるらしいな?と宇田川が指摘する。
あんまりです!と千尋が嘆いた時、お邪魔しますよと入ってきたのが伴内で、それに気づいた宇田川は、あんたね、多羅尾さん、何の用だ?と露骨に迷惑がる。
いや、宇田川さん、あんた、千尋さんを容疑者として扱っているようですが、無茶なようですなと坂内が指摘すると、あんた、また俺の捜査にケチをつけるのか?と宇田川は言い返す。
残念ですが、宇田川さん、あんたが問題にしてらっしゃる、その日向ですが、ありゃもう、殺され取りますよと伴内が教えたので、何、殺されてる!と宇田川はおろそき、聞いていた千尋も振り向く。
ええ、日向の死骸は死後10日以上経過しとりましてな、と言うことはその後現れた火傷男は偽装されとったと言うことになりますかな?まあ、真犯人とって、架空の犯人はどうしても日向である必要があったんでしょう、日向は可哀想な犠牲者ですよと伴内は教え、そのことで、千尋さんは私に預からせてもらいますよ、さ、行きましょうと伴内は千尋に声をかけ部屋を出かけるが、宇田阿川は、どこにあるんだ、死体は!と喚く。
案内から教えられた一本木のある場所にパトカーで駆けつけた宇田川は、手分けして探してみろと部下たちに指示する。
あのメガネにガセネタ摑まされたんじゃないか?などと疑う宇田川だったが、警官がむしろの下に隠れていた日向の死体を発見し、腰を抜かし、主任!ありました!と叫ぶ!。
死体にはすでに蛆虫が張っている状態だった。
1の線が上がって2が下がって…などと呟きながら勝負畑の横を通りかかった伴内は、持っていたミツバチを鼻の上に置いてやる。
その頃、屋敷内の蔵の中を整理していた千尋は、紙に包まれたキャンバスのようなものを発見していた。
それは油絵で、絵の隅に「Y.HINATA」と作者名が書かれてあった。
紙を剥いでみると、そこに書かれていたのは女性像だった。
千尋はそれを屋敷に来ていた伴内に見せる。
ほお、これが手配中の日向という男と同じ苗字の日向洋一郎という人の描いた絵ですなと伴内は確認する。
ええと千尋が教えると、なかなか静かで良いタッチだと版愛は褒める。
多羅尾さん、私にはこの2人に何か繋がりがあるように思えるんですと千尋が言うと、2人を結ぶ線は「水車小屋」と伴内は答える。
え?と驚く千尋に、日向という人は水車小屋の近くに住んでいた、最近現れた日向という男は、その水車小屋を訪ねて絵を描いた…と伴内が話すと、多羅尾さん、私の昔の記憶に、いつも男の子と遊んでいる懐かしい水車小屋の世界があって…と千尋が思い出す。
(回想)昆虫網を持って水車小屋の横の道を走る男の子と、その後についていく女の子
そのそばには優しく見守ってくれる母がいました、そして母のそばにはいつも男のシルエットが寄り添っている…と千尋は語る。
水車に縛られた着物姿の母の姿…
(回想明け)千尋さん、千尋さん!と伴内から呼ばれ、ようやく気づいた千尋は、この独楽は?と差し出された小さな独楽を見せられ、母からもらったものなんですと笑顔で答える。
これ、ちょっとお借りできますかな?と伴内は頼む。
その後、旅館に戻った伴内は、今、千尋から預かった独楽を、前に拾った独楽の軸の上に乗せてみる。
畳んだ布団に寝そべった伴内は、庭先の花の茎の上で睦あう二匹のカタツムリの姿に目を止める。
千尋は母を描いた油絵を、限界に見せに行く。
それを見た源海は、わしも少し絵がわかる方じゃが、この作品はなかなかの出来栄えじゃと褒める。
和尚さんは日向洋一郎という青年がこの村に住んでいたときに、お会いになりませんでした?と千尋が聞くと、そういう噂を聞いたことはあるが、何せあの頃はわしも走り使いの小僧だったからなと源海は答える。
じゃあ、消息もお分かりになりませんわね?と千尋が確認すると、残念じゃのおとk耐えた限界だったが、しかしわしは長い間雨宮の屋敷に出入りしてきたが、こういう絵があったとは知らなんだなと付け加える。
やっぱり水車小屋のくめさんを探すしかありませんわねと千尋はつぶやく。
くめは信心深い女子じゃったが、今時分どうしとるかのう?と源海が応じると、お父さんの容体はどうじゃと聞く。
寝たり起きたりしております、時々発作を起こすと苦しそうで可哀想ですと千尋は答えると、それを聞いた源海は頷き、あんたも大変じゃのう、歌江さんは、あんた1人が頼りじゃろうと同情する。
雨宮家では、伏せった剛蔵を往診に来た医者の箱田に、先生、大丈夫でしょうか?と歌江が聞いていた。
安静にして神経を使わないことが肝心なようですなと箱田は答えると、それからこれを一日三回必ず飲ましてくださいと薬を差し出す。
それを受け取って、中のカプセル錠を確認した歌江は、ありがとうございますと礼を言うが、その時寝ていた剛蔵が、歌江、わしは先生と話がある、お前は出てろと告げたので、歌江ははいと答えて座を外す。
歌江が部屋の襖を閉めるや否や、箱田の制止も無視して起き上がった剛蔵は、手配されていた日向は殺されていたな?と聞くので、そうらしいねと箱田が答えると、その箱田の手を掴んだ剛蔵は、お前が仕組んだのか!と睨みつける。
箱田は苦笑し、雨宮さん、まさか私が…と答えるが、この秘密を知っているのはお前たちしかいないと首を横に振った剛蔵は睨みつける。
お前たちの誰かが娘たちを殺して、わしを脅かそうとしているんだ、そうだろう!と剛蔵は言って、箱田につかみかかろうとするが、その時、また発作を起こして苦しみ出すが、箱田は無言でそんな剛蔵を布団に押し戻す。
その苦悩の声が聞こえているらしき、廊下に佇む歌江のシルエットが障子に映るが、歌江は微動だにしなかった。
外から戻ってきた千尋は、自室のテーブルに置かれた封筒を見つけ、中を見ると、「くめさんの居場所は、鬼ヶ城三ツ目川つづみ橋のそば」と書かれた書状が入っていた。
信州交通のタクシーでその場所へ向かった千尋は、運転手が鼻歌を歌い、暑いね、お客さん、どこまで行きなさるかね?と話しかけてきたので、三ツ目川ロッジまで急いでください!と頼む。
ああ、あそこか…、まああそこは寂れてるとこだよと教えて振り向いた運転手は片方のレンズがない、黒眼鏡をしていた。
千尋が黙っていると、山道は急だし、遅くでも良いからね、ゆっくり行きましょうと運転手は勝手に喋り続け、車内のカセットに「私の名前が変わります」という曲を差し込む。
くめ(谷本小夜子)に道で出会った千尋は、くめさん、母のことでどうしても聞きたいことがあるの、くめさんは日向洋一郎って方を知ってるわね?と路上で話しかけるが、くめは振り向いて首を横に振るだけだった。
くめさん、その人と母とは何かあったの?となおも追い縋って聞くが、くめが無視して歩き続けるので、ね、お願い、話して!と前に回った千尋は問いかける。
すると、きっと睨んできたくめは、お嬢様、こんなところの生きちゃいけねえだ!帰んなさいませ、早く!と言うだけだったんで、お願い、母について知ってることだったらなんでも良いのと千尋は問いかける。
くめは、お嬢様、もう勘弁してくださいませな!と抵抗する。
くめさん、どうして話してくれないの?何か秘密でもあるの?と千尋が迫ったその時、川向こうで狙っていた猟銃が火を吹き、胸を撃たれたくめは河川堤防から落下していく。
千尋は助けようと河川堤防を降りかけるが、そこにまた銃声が響き、千尋の周辺に弾丸が当たる。
川向こうの森の中では、伸介の仲間ら三人が猟銃を撃っていたが、そこにタクシーの運転手が邪魔しに来る。
3人組は、逃げた運転手に猟銃を撃ちながら追ってくる。
運転手は忍者のように、大きくジャンプして木の影に降り立つと、思いがけない所から現れ、猟銃男を投げ飛ばすと、奪った猟銃で反撃してくる。
驚いた伸介と仲間は、川を渡って逃げ去ったので、猟銃を威嚇して撃ち続けた運転手はニヤリと笑う。
河原に降りた千尋は、くめさん、しっかりして、大丈夫よと言いながら傷の手当てをする。
その時、くめが何事か言おうとしていたので、何?くめさん、何?と言いながら、千尋は耳を近づける。
くめは、本当のことを知りたかったら…、多羅尾さん…と言い残して息絶える。
それを聞き取った千尋は、多羅尾…と繰り返す。
多羅尾さん〜、大変です〜!事件です〜!と村の道を歩いていた伴内に声をかけてきたのは村の駐在で自転車でそばまで近づいて来て降りると、多羅尾さん、大変です、明美さんが学校で殺されていますと教える。
それを聞いた伴内は、明美さんが!と驚く。
明美は、女学院の家政科教室内で、顔の両脇に二つに割れた面が転がっている中、息絶えていた。
校長室に、茶を運んできた用務員の山口は、部屋のすりガラスに包容してキスする男女のシルエットも見つけ立ち止まり、わざと大きなノックをして、江幡校長からどうぞと許可を得るが、キスしていた相手は雨宮歌江だった。
山口が湯呑みをテーブルに置くと、ところで雨宮さんのご容体はいかがですか?と江幡校長が聞くので、歌江はお陰様で…と答えるが、こう暑いとどうしても病身の方にはね…、まあ、どうぞと江幡校長は答えながら茶を勧める。
山口はすでに減っていた麦茶のコップを回収して出てゆく。
用務員室に戻った山口は、回収した校長室の麦茶のコップから指紋を検出し、それを写真に撮っていた。
現像した指紋写真を見た山口は、ぴったしだとつぶやく。
赤い夕日の夕暮れ時、千尋はまた水車小屋の脇にある地蔵を参りに来ていた。
そこに飛び出してきた伸介と池上が何をするんですか!誰か来て〜!と驚いて、助けを呼んだ千尋を捉えて、水車小屋の中に閉じ込められる。
お嬢さん、雨宮家はもうお終いなんだよと伸介が告げる。
あなたたちが!と千尋は気づくが、池上が千尋の首を手拭で締め上げる。
その時、扉が開いて入ってきたのは、猟銃で射殺したはずのくめだった。
割烹着の腹の部分から出血したくめは、20年前の忘れ物を取りに来たんですよと言うと、壁にかけてあ ったナタを手に取って迫ってきたので、怯えた伸介と池上は古谷から逃げ出してゆく。
千尋さん、千尋さんと呼びかける村こ顔を見た千尋は、くめさん!と驚くが、一瞬気を失った直後に目覚めると、目の前にいたのは伴内だと気づく。
多羅尾さん!と呼びかけた千尋に、大丈ですか?お怪我ありませんでしたか?と伴内は聞いてくる。
千尋は緊張の糸が切れたかのように、私、怖い!と言いながら伴内に抱きつくが、もう大丈夫ですよと伴内は慰め、さ、行きましょうと言って千尋を抱き抱え、小屋の外に出る。
千尋さん、お母さんを殺した犯人をまだお知りになりたいですかな?と外に出た伴内が聞くので、千尋は、はい、教えてくださいと真剣な眼差しで訴える。
川縁にしゃがみ込んだ伴内は、千尋さん、人間というのは愚かな生き物ですよ、欲望という魔性に食いつぶされた人間を私は随分見てきた…と話し始める。
そんな哀れな宿命を背負った人間があなたのお母さんを手にかけたんですよと伴内は言う。
昭和24年の出来事でした、紀代(北川たか子)さんは、この村に立ち寄った日向洋一郎という画家と恋仲になった…、それが全ての事件の発端なんですよと伴内は続ける。
日向は子連れだったために、雨宮の旦那は二人の中を無理やり引き裂いた、そして紀代さんを剛蔵と結婚させようとした…、がその時には、もう紀代さんは日向の子を身ごもっていた。
千尋さん、その時、紀代さんのお腹の中にいた子があなただ!と教えた伴内に、驚いた千尋は、私の父は日向洋一郎!と気づき、じゃあ母を殺したのは誰なんですか?と聞く。
紀代さんは剛蔵と結婚した後も、日向洋一郎と水車小屋で会っていました、あなたの頭の中に残っていた思い出は、あなたの兄さんだった徹さんとの思い出ですよと伴内は教える。(回想シーンを背景に)
しかし、2人が会っていることを知った剛蔵は…、(水車小屋のそばで紀代に襲い掛かり、着物を剥いで殺害する剛蔵の姿)紀代さんを水車小屋にくくりつけたのは通りがかりの犯行に見せかけるためだったのですよ、そして剛蔵は当時部下だった箱田、源海、水沼を使って、紀代さんが待ってるからと呼び出し…、(雨宮酒造の倉庫に日向親子を招き入れると、外からかんぬきをかける箱田と、そこに現れた剛蔵たちが火のついた松明を窓から投げ込み、倉庫を全焼させる回想)
火をつけられたと知った洋一郎は、徹!早く逃げるんだ!となんとか息子の徹を倉庫の外に逃がすと、顔に火傷を負った透を抱え、その顔に水をかけた救出したのはくめだった。
(回想明け)夕陽が随分真っ赤ですな〜と伴内が呟く。
水車小屋が赤く見える夜景の中、やっとわかりましたよと伴内は言うが、それを聞き終えた千尋は涙を流していた。
着物がない茶運び人形が進む姿と、屋敷内の廊下を剛蔵のため、水の入ったデキャンタを運ぶ歌江の姿が交互に描かれる。
歌江が剛蔵が寝ていた部屋に入ると、水をくれと剛蔵が言い、さ、どうぞと往診していた箱田が薬を差し出してくる。
歌江がその薬を受け取った時、襖が開き、江幡、源海、水沼伸介と、その配下の池上たちが立っているのが見える。
ズカズカと寝室に入ってきた江幡は、剛蔵さん、いくら足掻いても、あんたの命は後数時間持たんのだよと、剛蔵の枕元で告げる。
何!と睨みつけた剛蔵に、箱田先生に調合してただいた薬は、急激に神経を侵す、すべた私たちの計画通り行った、あんたはこの20年間、雨宮の主人として君臨してきた、そろそろ引退して良い潮時だなと江幡が立ったまま剛蔵を見下ろして告げると、江幡!、貴様ってやつは¡おい!誰かいないか、誰か!となんとか起きあがろうとしながら剛蔵は人を呼ぶ。
すると横に座っていた歌江が、使用人は誰もおりませんと教え、部屋の隅に座っていた源海も微笑む。
代々この地方の資産家であった江幡家は、雨宮の先代のために、その莫大な財産を全て騙し取られたと言いながら、江幡は隣室の椅子に腰を下ろし、そのために父親は自殺!家族は離散!俺はことあるごとに、雨宮家を呪い、いつかは必ずこの家を思うまま支配してやろうと思い続けてきたと明かす。
その思いがやっと実った…、真理子と薫にくくりつけたあのお面も、かつては江幡家の家宝も同様の品であったと江幡は続ける。
そんな話を、からくり人形を持った令子が、密かに聞いていた。
今日からは、この家も山林も、雨宮の資産は全て俺が支配すると江幡はステッキを剛蔵にうきつけながら言い渡す。
歌江、剛蔵に最後の薬を与えて楽にしてやれと江幡が命じると、歌江、お前までか!と剛蔵は妻の裏切りに気づくが、歌江は無視して、赤い薬包紙に入った粉薬を飲ませようとする。
箱田も抵抗する剛蔵の体を押さえつけようとするが、その時、お父様!と言いながら令子が剛蔵に抱きついたので、薬はこぼれてしまう。
歌江は、退きなさい、令子!と叱って離させようとするが、いや!お父様!と剛蔵の首にしがみついた玲子は動こうとせず、剛蔵も令子!と呼びかける。
令子は、お父さんは殺させない!と歌江たちを睨んでくる。
歌江は、令子、令子、退きなさい!と必死に体を離そうとするが、いや〜!と令子は離そうとしなかった。
すると令子は立ち上がり、お父様が殺される!と喚きながら、逆に歌江の首を絞めようとしてくる。
何をするの!と歌江が令子の身体を振り払った時、壁に掛けてあった紀代の絵の額縁が落下し、令子の頭を直撃したので、令子はその場で目を開けたまま息絶える。
それに気づいた歌江は、令子!令子!と叫びながら令子の身体を抱き上げるが、令子はもはや息を吹き返さなかった。
寝ていた剛蔵も、令子!と呼びかけ、布団の下に隠していた銃を取り出すとそれを歌江に向け、歌江!貴様、良くも…と撃とうとするが、それに気づいた源海が咄嗟に数珠を剛蔵に投げつけ妨害する。
剛蔵は源海に向かって発砲するが、それは時計に命中しただけで、池上が投げたナイフが剛蔵の肩に突き刺さる。
剛蔵は苦しみながらも起き上がり、上から垂れ下がっていた引き紐を引くと壁がどんでん返しになっていて、そこから逃げ出して行く。
秘密の通路の奥へ逃げ込んだ剛蔵は、そこに千尋がいるかのように見えるが、その千尋は紀代に変化する。
紀代!紀代!と剛蔵は驚いて呼びかけるが、近づいてきたのは千尋だった。
目を凝らし、千尋かと気づいた剛蔵に、お父様!と言いながら千尋が迫ってきたので、千尋、どうしてここへ?と剛蔵は驚く。
お父様、あなたの口から本当のことを話してくださいと、地下の中に掘られた石像の前で千尋は迫る。
本当のこと?何だそれは…と剛蔵はとぼけるが、千尋は、私の母、そして私の父日向洋一郎を殺したこと!と伝えるが、わしは知らん、わしじゃない、それは…と剛蔵は否定する。
お父様、あなたは卑怯です、まだしらを切るつもりなんですか、卑怯ですと訴える。
その時、もうそのくらいで良いだろう、千尋さん!あんたと剛蔵さんのこの不幸な雨宮家は、今日ここで終わるんじゃから…と言いながら、源海たちが近づいてくる。
和尚様!と驚く千尋に、そう我々の雨宮家は今日から始まる、あなた方には死んでもらいましょうと江幡が言う。
歌えの姿にも気づいた千尋が、お母様!と驚くと、その千尋を庇うように、止めろ、歌江!と剛蔵が頼む。
江幡!貴様ら結託を組んで…と剛蔵は睨みつけるが、前に進み出た歌江が、往生際の悪い人ねと嘲ってくる。
あの世へ行く時は誰でも一人なんじゃからの〜、剛蔵さん…と源海も言う。
畜生…と言いながら、肩に刺さっていたナイフを抜いた剛蔵は、それを歌江に投げつけ、歌えの首筋に突き刺さる。
歌えが苦しみながら倒れると、怒った江幡が池上から、先ほど剛蔵が撃った銃を受け取り、剛蔵を射殺する。
倒れた剛蔵に、お父様!と駆け寄った千尋に、千尋!秘密を知ったからには生かしておくわけにはいかん、親父と一緒に死んでもらおうというと江幡は銃を向けてくる。
千尋は石像の横の岩肌に追い詰められる。
その時、突然、奇怪な笑い声が響いてきたので、江幡は声の主を探す。
姿を現したのは用務員の山口だったんで、池上が、じじい!ここで何をしていると叱りつける。
山口は、お前たちの葬式の取りまとめにやってきたんだ、地獄の閻魔様の使いさ…と笑って言いながら、隠し部屋の階段を降りてくる。
どこに行くんだ!と言いながら山口を押し退けた江幡だったが、山口は急に背筋を伸ばすと、掴み掛かってきた敵を投げ飛ばすと、驚く千尋を抱えて岩陰に身を隠す。
江幡は発砲し、逃すな!と部下たちに命じる。
部下たちは、村部屋の隅に置かれていた銃器を手に取り、山口と千尋の方へ発砲してくる。
山口は、危ない!と言いながら千尋を奥へ逃すと身を翻らせてドラム缶の影に隠れたので、只者ではないと気づいた江幡は、貴様、誰だ!と呼びかける。
するとまた笑い声が聞こえてきて、ある時は用務員、またある時は貧乏絵描き!という声と共に、以前、寺にやって来た和服の絵描き小曽根がドラム缶の上に姿を現し、天井から吊り下がっていたチェーンをつかむと、迫って来た部下たちを蹴り飛ばしたので、源海は驚く。
銃弾を避けて転がった男は、ある時は流れ者の木こりだと言って、フックの付いたチェーンをぶつけてくる。
木こりが柱の背後を通りすぎると、運転手に変身しており、ある時は片目の運転手!と自己紹介すると、片方だけレンズが入ったサングラスを取って投げつけてくる。
運転手はかかって来た部下たちと乱闘する。
さらに銃撃を避け、大きく木箱の上をスライディングし、隣の部屋にジャンプした男は、障子の影でシルエットになり、ある時は水車小屋の番人くめババアと言う。
そして姿を現した伴内に向けて、伸介たちが発砲するが、それは鏡だったので、割れて砕けると伴内の姿も消え、また笑い声だけが残る。
源海らの背後の石像の横に姿を現した伴内は、またある時は、しがない私立探偵多羅尾伴内と名乗り、しかしてその実態は…と続け、柱の背後を通ると、スッとした紳士に変身していた。
石像の前に立ちはだかったその紳士は、正義と真実の人、藤村大造!と正体を明かし、腰から二丁拳銃を取り出して構える。
江幡たちは反撃しようと銃を構えるが、あっという間に藤村の銃弾に弾かれ、蝋燭の火も銃弾で消される。
さて事件の解明だと大造は言う。
発端は雨宮家を呪う江幡君!あんたの雨宮家の復讐計画だと大造は指摘する。
歌江と内通していたあんたは、真理子が婿を迎えて雨宮家の跡を継ぐ話を聞き、歌江の手引きで、手下を使い、これを抹殺した、そして遺体を沼に放置した…。
たまたまこの地に立ち寄った画家の日向徹の仕業に見せかけるために、能面に赤い絵の具を塗りたくり、遺体の側にくくりつけた…と、大造が話す間、少しづつ移動する江幡、箱田、源海らに、動かんでもらおうと大造は銃を向ける。
これが第一の犯行…、そして第二の犯行は、犯人に見立てた日向徹を手下の尾崎に命じ、水車小屋で殺害した、そして遺体を明美の下宿の床下に埋めた…と大造は続ける。
しかしあんたは尾崎の口の軽さに危険を感じて、この尾崎をも殺害したと説明する大造は、配下の男が飛びかかって来たので、横手で構えた銃で射殺すると、逃げ出そうとした江幡らに、動かんでもらおうと命じ、それは第三の犯行だと続ける。
復讐を急ぐあんたは、水沼明美兄妹に薫をも絞殺させ、その嫌疑をうまく千尋に向けさせた。
しかし明美は罪に慄き動揺したために、これを殺害し、その上雨宮家の謎を握るくめ婆さんまで殺した。
その上にさらに罪を重ねて、とうとう剛蔵まで眠らせた訳だ…と大造は指摘する。
これで全財産は全て手中に収まる…、そう思ったのかな?と大造が問いかけた背後で、石像の前に置かれた数珠を拾い上げた源海は、静かに拝み始める。
あんたの計画を助けるような顔をして、最後に雨宮家の全財産を我が物にしようとしている男がいる…、仏の皮を被った悪徳坊主、源海!貴様だ!と大造は銃を向けて指摘する。
それを聞いてゆっくり振り向いた源海は、いきなり数珠を投げつけてくるが、大造の銃撃で手を撃たれる。
そこに、そのまま動くな!と銃を持った宇田川と警官隊が到着する。
動くんじゃない!出口は固めた!無駄な抵抗は止めろと指示しながら、大造に近づいた宇田川は、殺人、お呼びに殺人幇助の容疑で全員逮捕だ!一人残らずしょっぴけと部下に命じ、刑事が逮捕状を出して見せる。
それを見守った大造は笑顔で静かに退場する。
源海や江幡、箱田、伸介らが刑事や警官に連行されていく中、事情を忘れるな、雨宮の事情をしっかりおさえろと宇多川は指示する。
よし終わった、事件は全面的に解決だと石像の前で安堵した宇多川は、あの老耄探偵、今度こそ花を明かしてやると言いながら、その場でポケット瓶の酒を煽ると、うがいして吐き捨てる。
いや〜、本当にご苦労さんでしたと言いながら、藤村の姿を探した宇多川だったが、すでに姿が見えなかったので、藤村さん?と呼びかけながら部屋中を探し出す。
水車小屋のそばでは、母と同じ白い着物姿になった千尋が、母紀代を描いた絵を焼いていた。
そこに、大小二つの独楽もくべる千尋。
ふと側の川面を見た千尋は、そこにう浮かんだ紙に「人、命を断つことに急ぐことなかれ 人生の歩みは永し 足を大地につけるべし 多羅尾」と書かれてあることに気づく。
千尋は、多羅尾さん…と嬉しそうに呟く。
水車がいつの間にか止まった中、千尋は立ち上がり、多羅尾さん、多羅尾さ〜ん!と呼びかける。
その頃、伴内は、千尋さん、私はひと足先に東京に帰りますよ、お幸せに…と呟いて、田んぼに囲まれた道を1人歩いていた。
終