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港で出会った“幽霊”イカ ― 4歳の発見がつないだ命のバトン

2026.03.03 00:25

「パパ、なんかいるよ!」

3月21日、千葉県南房総市の富浦新港。

魚釣りに来ていた親子が、思いがけない出会いを果たしました。

見つけたのは、なんと深海にすむユウレイイカ

しかも、生きたまま――。

■ 発見者は4歳の釣り名人?

ユウレイイカを見つけたのは、南房総市在住の武半朔弥(たけば・さくや)さん、4歳。

父・琢也さんと釣りをしていたところ、港につながれた漁船の近くに、海面をふわりと漂うイカを発見しました。

タモ網ですくい上げてみると、いつも釣れるアオリイカやコウイカとは様子が違う――。

琢也さんがスマートフォンで調べたところ、どうやら「ユウレイイカ」にそっくり。

その名の通り、胴体は透き通り、内臓が見えるほど透明。耳のように丸いヒレをもち、足先はほんのり赤みを帯びています。

まるで深海から迷い込んできた“幽霊”のようでした。

 ■ 十数年に一度の目撃例

確認を行ったのは、勝浦市にある

千葉県立中央博物館分館 海の博物館 の柳研介主任上席研究員。

画像を見て、ユウレイイカであることを確認しました。

ユウレイイカは本州中部以南の水深数百メートルに生息する深海性のイカ。

房総沖の深海にもいるとされていますが、人の目に触れることはめったにありません。

博物館に情報が寄せられるのは、十数年に一度程度

しかも、生きた状態で回収されるのは非常に珍しいとのこと。

なぜ浅瀬にいたのかは不明ですが、何らかの理由で浮上してきた可能性があるそうです。

 ■ 親子の迷いと決断

自宅に持ち帰った親子は、発泡スチロール箱に海水を入れ、エアレーションで酸欠を防ぐなど丁寧に対応しました。

しかし、イカはあまり動かず、弱っている様子。

「貴重なものかもしれない。でも、どうすればいいのか……」

悩んだ末、博物館へ連絡。

その日のうちに引き渡され、標本として保存されることになりました。

琢也さんは、ほっと胸をなで下ろしたといいます。

 ■ 深海から届いた小さなメッセージ

ユウレイイカには、目の周りや足、臓器に発光器があり、体を発光させることで外敵から身を守る「カウンターシェーディング」という仕組みを持っています。

光る透明な体――。

想像するだけで神秘的ですね。

今回の出来事は、偶然の発見でした。

でも、その偶然を大切に扱った親子の判断が、貴重な学術資料へとつながりました。

もしかすると、あの日の港で、

いちばん輝いていたのはユウレイイカではなく、

小さな観察眼をもった4歳の少年だったのかもしれません。

釣りの思い出は、大物が釣れた日だけではありません。

海はときどき、物語をくれる場所なのですね。