Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

実質金利と株価

2026.03.02 04:18

任期満了を迎える日銀審議委員の後任人事案として、高市政権はリフレ派とされる大学教授2名を人選。現在の日銀は、政策金利0.75%に対し消費者物価指数が約2%なので、実質金利(=金利—物価)は▲1.25%と低過ぎるとして、利上げ継続の姿勢を示してきた。しかし、後任候補は、いずれも過去に金融緩和と積極財政を重視する姿勢を示しており、今後の日銀の追加利上げのタイミングやペースの決定に影響を及ぼす可能性がある。ここで実質金利が低いとどのような問題が生じるのかを考える。

実質金利がマイナスの状態では、預金金利がインフレ率に通常追いつかない。その結果、家計はお金をインフレに連動する物、あるいはインフレに連動すると期待される外貨などに交換する行動が広がる。このような行動は、インフレを加速するとともに自国通貨安を招き易い。また、インフレヘッジ手段として、金や不動産、株式といった資産価格も上昇することが多い。

図1は日本の実質金利と日経平均株価の過去55年推移である。1980年代には、プラザ合意後の通貨高を警戒してインフレ進行に対し利上げが遅れ、バブルが発生したとされる。その後、日銀三重野総裁がバブル退治と称して急速な利上げを実施し、経済は減速。バブル崩壊後はデフレの悪影響に対する認識が遅れ、政策金利引下げも後手に回り、実質金利は概ねプラス圏で推移。本格的に実質金利がマイナスとなるのは黒田日銀総裁の異次元緩和以降である。デフレ下では、現金が実質的購買力が高まる資産となる。加えて、銀行預金からの引出し手数料有料化の進展もありお金はタンス預金へと移行し、タンス預金は60兆円まで膨らんだ。日本人は金融リテラシーが低いと言われるが、当時の環境下では合理的判断だった。ただし、当時の日銀券発行残が120兆円程度だったので、長年積上げたお金による乗数効果が一気に半分まで逆行したとも考えられ、経済停滞が30年に及んだ要因の一つとも考えられる。

かつての中銀による金融調節は、日本に限らず世界的に大雑把でやや遅れ気味だったため、物価や経済成長の振幅は大きかった。例えば米国では1980年頃にCPIが10%を超え、FRBは慌てて政策金利を20%程度まで引上げた。しかし近年は、物価と雇用を金融政策のマンデートとし、中立金利に関する研究も進んだことで、物価や成長の振幅は抑制されつつある。現在の日本では、インフレ率は日銀の目標である2%を上回り(足元は、ガソリン減税廃止やエネルギー補助金の影響で1年間は抑制されるが、補助金を積増さない限り来年は元に戻る)。図1を見ると、実質金利は約50年ぶりの大幅なマイナス水準なので、株価や不動産価格が上昇し、通貨安も進む。通常であれば政策金利を引上げるべき局面だ。しかし、高市政権が掲げる積極財政と金融緩和政策のポリシーミックスは、安倍政権下で検証された通り、インフレと資産価格上昇と通貨安を加速する可能性が高い。市場では、株価上昇スピードが速過ぎるとの警戒感も広がるが、実際は金融リテラシーの高い日本国民が高市政策を受けてインフレヘッジに走ったためとも解釈できる。政策転換とならない限り、株高が当面続く可能性がある。