「宇田川源流」【日本報道検証】 アメリカ・イスラエルがイランを攻撃した今後
「宇田川源流」【日本報道検証】 アメリカ・イスラエルがイランを攻撃した今後
毎週火曜日と木曜日は、「日本報道検証」として、まあニュース解説というか、またはそれに関連するトリビアの披露とか、報道に関する内容を言ってみたり、または、報道に関する感想や社会的な問題点、日本人の文化性から見た内容を書き込んでいる。実際に、宇田川が何を感じているかということが共有できれば良いと思っているので、よろしくお願いいたます。
さて今回は2月28日の夜に衝撃が走った、イスラエルとアメリカによるイラン攻撃に関して、まだわからないところが非常に多いのですが、その内容をわかる範囲で見てみましょう。
今回の事態の背景には、数年前から続くイスラエルとイランの「影の戦争」の激化と、アメリカの政権交代に伴う対イラン戦略の変化があります。
数年前から、イスラエルはイランの核開発を自国の存立に対する最大の脅威と見なし、シリアやレバノンにあるイランの拠点への空爆を繰り返してきました。これに対し、イランも代理勢力を通じた攻撃やドローンを用いた報復を行ってきました。事態が決定的に動いたのは、アメリカでトランプ政権が発足し、イランに対して「最大級の圧力」を再開したことによります。
2025年に入ると、イラン国内では経済の低迷を背景に大規模な反政府デモが発生し、政権の基盤が揺らぎ始めました。この混乱に乗じる形で、アメリカとイスラエルはイランの核施設や軍事拠点への限定的な攻撃を数回実施し、イラン側のミサイル能力を削ぎ落とす「モグラ叩き」と呼ばれる戦略をとってきました。
しかし、イラン側も譲歩せず、2026年に入ってからも核濃縮の継続やホルムズ海峡付近での軍事的挑発を強めました。これを受けて、アメリカとイスラエルは「外交による解決はもはや不可能」との判断に至り、イランの軍事指揮系統や核関連施設を根底から破壊するための大規模な共同軍事作戦に踏み切ったのが今回の攻撃の直接的な経緯です。
この攻撃によって、イランの最高指導者層が標的になったとの情報もあり、中東全域を巻き込む大規模な紛争に発展するリスクがかつてないほど高まっています。
<参考記事>
トランプ氏、核開発を放棄しないイランに「もう我慢できない」…ミサイルを「完全に消し去る」・海軍を「壊滅させる」
2026年2月28日 19時25分 読売新聞オンライン
https://news.livedoor.com/article/detail/30670733/
<以上参考記事>
ハメネイ最高指導者の死亡という衝撃的なニュースを受け、イランの国家体制は今、建国以来最大の転換点を迎えています。今後予想される後継者争いと、亡命中の王太子の動きについて見てみましょう。
ハメネイ師の死去に伴い、本来であれば憲法の規定に基づき、88人の聖職者で構成される「専門家会議」が次期指導者を選出します。しかし、今回の死亡が米イスラエルの攻撃による「暗殺」という形をとったため、平時のような選出手続きが進むかは不透明です。
最有力候補と目されていたライシ大統領が2024年に事故死して以降、後継の本命はハメネイ師の実子であるモジタバ・ハメネイ氏に絞られていたと言われています。しかし、彼が就任すれば「革命で否定したはずの世襲制への逆戻り」という強い批判を浴びることになり、体制内の保守強硬派や軍部(革命防衛隊)の間で激しい権力闘争が勃発する可能性が高いです。
特に、実力組織である革命防衛隊が、文民の聖職者を象徴として立てるのか、あるいは混乱に乗じて事実上の軍事政権へと移行するのかが、体制維持の鍵を握ることになります。
一方で、1979年の革命で国を追われたパフラヴィー王朝のレザ・パフラヴィー王太子は、現在アメリカを拠点に活動しており、今回の事態を受けて「民主化への移行」を主導する構えを見せています。
トランプ政権はイランの体制転覆(レジーム・チェンジ)を公然と支持しており、王太子を「新しい民主イラン」の統合の象徴として担ぎ出すシナリオを検討していると考えられます。王太子自身は、自らが絶対君主として復権することには慎重な姿勢を示しており、あくまで国民投票による新憲法の制定と、立憲君主制または共和制への移行を支える「暫定的なリーダー」という立場を強調しています。
国内の若者や経済困窮層の間では、かつての王朝時代を懐かしむ声や、現体制への強い反発から王太子に期待を寄せる動きが一部で見られます。しかし、国内に組織的な基盤を持たない彼が実際に就任するためには、混乱する国内情勢の中で革命防衛隊の一部を切り崩し、民衆の圧倒的な支持を背景にテヘランへ凱旋するという極めてハードルの高いプロセスが必要です。
現在のイランは、ハメネイ師亡き後の「指導者不在」という真空状態にあります。体制側がモジタバ氏らを立てて結束を維持しようとするのか、あるいは王太子を旗印とした反政府勢力がアメリカの支援を受けて全土で蜂起するのか。
もし体制側が強硬に権力を保持し続ければ、国外の王太子派と国内の現体制派、そして独自の動きを見せる軍部が三つ巴となり、最悪の場合は深刻な内戦へと発展する恐れもあります。国際社会は今、イランが「革命の継続」を選ぶのか、「王朝の象徴的復帰を含む民主化」へ舵を切るのかを固唾をのんで見守っています。
さて、ここまでくれば、多くの日本の解説は「日本経済に対する影響」ということになりますが、トランプ大統領はそのようなことは考えていないでしょう。では何があるのでしょうか。持ち路にスラエルの安定ということもありますが、間違いなく、イランの体制変更による「ロシアの弱体化」そして「ロシア・ウクライナ和平交渉の有利な締結」ということになります。その観点で少し見てみましょう。
トランプ政権による今回のイラン攻撃は、単なる中東の秩序再編にとどまらず、ウクライナ戦争の終結と対中国包囲網の完成という、より大きな世界戦略(グランド・デザイン)に基づいているという見方が有力です。
ロシアにとって、イランは安価で効果的な無人機「シャヘド」や弾道ミサイルの供給源であり、西側諸国の制裁を回避するための重要な「裏口」でもありました。イランで体制変更が起き、親米的な政権や、少なくとも中立的な政権が誕生すれば、ロシアはウクライナ戦線で不可欠となっている軍事支援を完全に失うことになります。
さらに、あなたが指摘されたように、ロシアは自国の南側にあるイランとの「安定した関係」を前提に、軍事資源をウクライナや東欧に集中させてきました。もしイランが親米国家へと転換すれば、ロシアは広大な南部の国境線に対しても新たな防衛リソースを割かなければならず、軍事・経済の両面でウクライナでの戦争を継続することが物理的に困難になります。トランプ大統領はこの「供給源の断絶」と「多正面作戦の強要」によって、プーチン大統領を妥協的な和平交渉のテーブルに引きずり出そうとしていると推測されます。
イランの体制が変わることは、中国にとっても極めて深刻な事態です。現在、中国はイラン産の原油を格安で大量に輸入しており、エネルギー安全保障の大きな柱としています。また、イランは中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」の要所でもあります。
もしイランがアメリカの影響下に入れば、中国は中東における最大の足がかりを失い、原油調達をロシアや他の地域に頼らざるを得なくなります。これは結果として、中国のロシアに対する発言力を強める一方で、アメリカから見れば「中国のエネルギー生命線を握る」ことにつながります。トランプ大統領は、イランの体制変更を通じてロシアを孤立させてウクライナ問題を片付け、その後、すべての圧力を最大のライバルである中国に集中させるという「順番待ち」の戦略を描いている可能性が高いのです。
かつてのブッシュ政権などが行った「民主主義の輸出」のための体制変更とは異なり、トランプ大統領の主張は常に「アメリカ・ファースト」に基づいています。彼にとってのイラン体制変更は、アメリカが中東に長く駐留し続けるためではなく、むしろ「諸悪の根源」を叩き潰すことで、中東から米軍を撤退させつつ、ロシアや中国といった大国間競争に勝利するための「盤面の整理」と言えます。
SNS等で議論されている通り、今回の攻撃は、点で見ればイランへの報復ですが、線で結べば「ロシアの弱体化によるウクライナ和平の強制」と「中国のエネルギー供給網の遮断」という、世界規模のチェスの一手であると解釈できます。