お礼の言葉と別れの言葉
2年前、私に1枚の食パンをおすそ分けしてくれた学生がいました。
「せんせい、これ・・」
まだつたない日本語を添えて。
やさしい気持ちが食パンの美味しさとなって伝わってきました。
そんな彼ももう卒業です。
東京の専門学校に進みます。
彼に、2年前の食パンの写真を見せて、あの時の嬉しかった気持ちを伝えました。
彼は覚えていなかったようで、逆に私の話を聞いてとても感激したようでした。
「先生、2年間本当にありがとうございました。このご恩は一生忘れません」
大袈裟じゃないかと思いつつ、2年間でこれだけスラスラ言えるようになったんだなぁ、とまたこちらが感激しました。
「ご家族はみんな国にいるの?」
「四月から妹が千葉の日本語学校に来ます」
「そうなんだ、じゃあ妹さんとも会うことができるし、よかったね」
「はい。ありがとうございます」
「東京は忙しくて大変だと思うけど、健康でがんばってね」
「ありがとうございます。先生、東京に来る時は連絡ください」
「はい、ありがとう」
私は別れのシーンでは、よく斉藤由貴さんの「卒業」の歌詞を思い出します。
♪卒業しても友達ね それは嘘ではないけれど
でも過ぎる季節に流されて 会えないことも知っている
そう、会うことはもしかしたらもうないかもしれないなぁ。
彼には沖縄を離れて新しい生活と新しい出会いが待っています。
私の事は忘れても、初めて日本語を沖縄で勉強したことは覚えていて欲しいです。
「先生、ありがとうございました」
何て言おうかな・・。
「またね」じゃないな。やっぱりこっちかな・・。
学校では最初に勉強して当たり前によく使う言葉、それでいて日常の生活ではあまり使わない別れの日本語。
「さようなら」
これからもっと日本語を勉強していくうちに、彼も言葉の重さに気がつくだろうか。
「はい、先生。さようなら」
・・そんなに深く考える必要もないかな。。(苦笑)
軽く手を振ってお別れしました。