Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

HOTELRAFFLESIA

『スパイダーマン:スパイダーバース』

2019.03.10 14:10

スパイダーマン離れとマーベル疲れをふっとばす傑作

これは1年ぶり(キングスマン:ゴールデンサークル以来)に大興奮。そんなに映画を観る方ではないけど、自分にとって映像で驚かされた映画っていうのが何本かある。

明らかに今までの何かを超越している。そんな映画に出会うことが数年に1度、自分の映画体験に訪れていた。

『マトリックス』、『アバター』、『インセプション』『インターステラー』なんかが、自分にとってはそうだった。一体どうやってこんなものを作っているんだろう。途方もない人員、予算をかけて、自分では到底想像すら追いつかないという圧倒的な映像を観ることはたまらない快感だ。映画館に行ってお金を払う価値があるというもの。その他にももちろん、ストーリーや音楽があいまって、素晴らしい作品になるんだけれど。

この『スパイダーマン:スパイダーバース』はまさにそれ。ぶっとんだ映像表現と練り込まれたストーリー、そして最高の音楽、全て揃った傑作だった。

正直、最近、“マーベル疲れ”してしまっている自分がいた。特に『スパイダーマン』シリーズに至っては距離を置いてしまっていた。トムホランドになってからは機内で寝オチしながら観るか、『アベンジャーズ』でなんとなくチェックする程度だ。やっぱトビーマグワイア版3部作が良かったなあなんて。

そんなマンネリを思いっきり吹っ飛ばしてくれた作品が『スパイダーマン:スパイダーバース』なのである。


実写とCGのあいだ。吹き替えも字幕も2度楽しめる

『スパイダーマン:スパイダーバース』のいちばん大きな特徴は、3DCGアニメーションであること。この手法が実写とアニメーションの境界線を曖昧にしていて、作品の魅力を存分に引き出しているのだ。

3DCGだからこそできる、違和感のないメタな演出が素晴らしい。今までの実写映画に対する皮肉をユーモラスたっぷりに詰め込んで、子供から大人まで誰が観ても楽しい映画体験を具現化している。

3DCGでありながら2Dアニメーションも上手に盛り込んで、アメコミを本気で映像化したらこうなるんだなというのがありありと伝わってくる。ジャパニメーションにはないアメリカンアニメのイイ部分全部乗せという感じ。

主人公マイルスの声を演じるのはNetfrix『ゲットダウン』、『DOPE』でお馴染みシャメイク・ムーア。マイルスが信頼を寄せる叔父・アーロンを演じるのは『ムーンライト』『グリーンブック』のマハーシャラ・アリ、その他、『バンブルビー』のヘイリー・スタインヘルド、帝王ニコラス・ケイジなどキャスティングも最高なのだが、吹き替え版も負けていない日本を代表する声優が集結している。

小野賢章、宮野真守、悠木碧、そして大塚明夫、坂本真綾も声を入れており日本のアニメーション界の最高峰の布陣が声を入れている。なので吹き替えでも字幕でも両方楽しめる。

吹き替えは主題歌が凜として時雨「P.S RED I」なのだけれど、本国のテーマソングはスワエ・リーとポスト・マローンの「SUNFLOWER」なので、日本版はアメコミにも詳しいHIPHOPアーティストPUNPEEでも良かった気がする(いろいろな要素でそうはならなかったんだろうけど)。曲はとってもかっこいいんだけどなー凜として時雨。




多様性、音楽とアートヘのオマージュ

そして何より斬新なのがマイルス・モラレスという、黒人とヒスパニックの両親を持つ新しいスパイダーマンであるということ。ヘッドフォンをして、ジョーダン1を履いてフードをかぶったヒップな主人公。彼はハーフだ。複雑で多用的な現代社会にマッチしたニュータイプスパイダーマンは、HIPHOPへのオマージュもたっぷり。HIPHOP好きならば劇中使用される音楽だけでもめちゃくちゃアガる。また、マイルスの部屋に貼られたChance The Rapperの『Coloring Book』のポスターにも注目だ。遊び心あるギミックがふんだんに盛り込まれており、そちらもこの作品を楽しむ要素である。

別次元からやってくる数々のスパイダーマンたちもそれぞれ特徴があって魅力たっぷり。そしてあの巨匠ももちろん登場する。

エンドロールではNYを代表するアーティスト、アンディ・ウォーホルをオマージュしたグラフィックが使用され、ストリートのグラフィティアートも多数登場する。

映画好きだけでなく音楽ファン、HIPHOPヘッズ、現代アート好きも楽しめる作品なのだ。

そしてアメコミ好きはたまらないであろう、今までのスパイダーマンを総括できる集大成的作品でもある。本当に楽しい。block.fmでもm-flo☆Taku Takahashiが絶賛しているのでぜひチェックしてほしい。(ネタバレなし)

これ、もしかしたら年末のスターウォーズによっては、2019年個人的ベストかもしれない作品。