【ECO SEED10周年】①【記者目線】地下水熱利用拡大に向けて地下水の揚水規制緩和の議論始まる
◆環境省がビル用水法の技術基準見直し視野に検討本格化◆
地中熱利用を巡る動向の中で現在、クローズドループよりも効率の良いオープンループ(地下水を揚水して熱源利用)タイプに関連したシステム普及の拡大に向けた規制緩和の議論が始まっています。
これは、帯水層蓄熱など地下水の熱利用促進を視野にビル用水法の施行規則の改正を行う方針を固めた環境省の動きで、「建築物用地下水の採取の規制に関する技術的基準等に係る検討会」での検討を開始しています。
地下水の熱利用は、地中に埋設した熱交換器内に流体を循環させて間接的に地中の熱を利用するクローズドループ方式に比べて、地下水を直接熱源とするため、井戸1本あたりの採熱量が多く、非常に効率的ですが、過去の地盤沈下を踏まえた地下水の揚水を規制するビル用水法による規制が地域によってはあり、簡単に利用できない等の課題がありました。
◆「地下水還元型地中熱利用システム」◆
今回の規制緩和の検討では、揚水を規制しているビル用水法の技術的基準を見直し、現在、揚水が規制されている地域でも要件を満たせば、地下水を揚水して熱利用することを可能とするもので、2月に開かれた第1回会合では、事務局が案を示し、「揚水した地下水を同一帯水層に全量還元する構造を有すること」、「揚水量及び揚水を行う帯水層の周辺の土質の状況等を勘案し、地下水位・地盤高が著しく変化する恐れがないこと」、「稼働中におけるモニタリングの実施等の地盤沈下の防止に必要な措置を行うこと」を要件として『地下水還元型地中熱利用システム』の導入を可能にする考えとしています。
要件を満たすための検討手法やそれぞれの数値的基準は別途策定するガイドラインで示す方針で、「揚水した地下水を同一帯水層に全量還元する構造を有すること」に関しては全量還元するための井戸掘削方法や井戸構造等を示す方針です。
「揚水量及び揚水を行う帯水層の周辺の土質の状況等を勘案し、地下水位・地盤高が著しく変化する恐れがないこと」に関しては、事前の土質ボーリング・サンプリング・土質試験・現場透水試験等を示すほか、システム運用による地盤影響評価手法や数値基準を、周辺への配慮が地下水質・水温等に必要な場合、還元時の地下水の温度・水質に著しい変化が認められないことの確認方法等を示す考えになっています。
また、「稼働中におけるモニタリングの実施等の地盤沈下の防止に必要な措置を行うこと」に関連しては、必要なモニタリング項目等や揚水井や還元井、追加の観測井の設置などモニタリング地点について示す考えとしています。
◆改正施行規則施行は2027年秋を視野に◆
改正施行規則の施行は2027年秋を目指すとし、2026年秋にも改正施行規則の公布、2026年度内にもガイドラインを策定する予定としています。
環境省は今後、第1回検討会での意見等を踏まえた改正施行規則の案等について2026年度早々にもパブリックコメントを実施し、2026年夏に同年度第1回検討会、同年秋に第2回検討会を開き、施行規則の改正、ガイドラインの策定を進めていく方針としています。
◆民間団体でも勉強会◆
また、環境省の動きを踏まえ、民間団体でも呼応する動きが始まっています。
一般社団法人全国さく井協会とNPO法人地中熱利用促進協会は3月6日に「カーボンニュートラルに向けた地下水の適正熱利用勉強会~用水2法の規制緩和の可能性~」を開催。
大阪市環境局環境施策部エネルギー政策担当課長の大谷直人氏が『大阪市の帯水層蓄熱の普及促進に向けた取組』を、環境省水・大気環境局環境管理課環境汚染対策室室長補佐の松井達氏が『地下水採取規制の合理化に向けた検討状況』をテーマにそれぞれ講演したほか、質疑応答が行われ、活発な議論が交わされました。
◆補助事業情報◆
なお、『地下水還元型地中熱利用システム』の導入に当たって利用可能な補助事業は以下のようなものがあります。
【民間向け補助金】
▼民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業
▼地域共生を目指したデータセンター脱炭素化設備導入支援事業
▼建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業
▼住宅の脱炭素化促進事業
【公共向け補助金】
▼地域脱炭素推進交付金
▼地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共避難施設・防災拠点への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業(地域レジリエンス事業)
※以降のページでは、地下水の熱利用で注目される事例等を紹介します。