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区分所有法改正に伴い管理組合が実施すべき防災

2026.03.28 22:42


災害発生時、管理組合は「どこまで判断し、どこまで実行できるのか」。この問いに明確に答えられるマンションは、決して多くありません。

区分所有法の改正では、こうした現場の課題を踏まえ、災害時の意思決定や管理者の権限、専有部分への対応などについて、実務に即した整理が進められています。

とくに理事会にとって重要なのは、「緊急時でも合法的かつ迅速に動ける体制」を平時から整備しておくことです。そのためには、防災マニュアルの整備だけでなく、規約や意思決定ルールとの整合も不可欠です。

本サイトでは、理事会運営の観点から、区分所有法改正に対応した防災の実務ポイントを解説します。

また、今回の管理組合が実施すべき防災も、基本となる管理組合運営を理解したうえで検討すべきです。まずは「管理組合の総会・決議・理事会運営の基本(主軸)」を確認してください。




1.背景|なぜ今「防災」が重要なのか

近年の大規模災害(地震・台風・水害)の頻発により、マンションにおける防災対応は「任意の取り組み」から「管理責任の一部」へと変化しています。

とくに区分所有法の見直し議論では、以下の観点が重視されています。

 被災時の意思決定の迅速化

 共用部分の復旧・使用ルールの明確化

 管理不全マンションの防止

これにより、管理組合には事前の備え(平時の防災)と、発災後の運営(災害対応)の両面が求められます。



2.改正のポイントと防災への影響

(1)決議要件の合理化

災害時の復旧工事や安全確保措置について、従来よりも柔軟な意思決定が可能になる方向です。

影響

 応急修繕・立入制限の迅速化

 危険箇所の即時対応が可能


(2)専有部分への立入りルールの明確化

災害時における安否確認・漏水・火災対応のため、一定条件下での立入りの必要性が強調されています。

影響

 安否確認の円滑化

 二次被害(漏水・火災)の防止


(3)管理不全対策の強化

防災体制の未整備は、管理不全マンションの一因とされる可能性があります。

影響

 防災計画の未整備がリスクに

 行政介入の対象となる可能性



3.管理組合が実施すべき防災対策

① 防災マニュアルの整備

最低限盛り込むべき内容:

災害発生時の初動対応フロー

理事会・管理会社の役割分担

安否確認方法

避難場所・避難経路

エレベーター停止時対応

👉 ポイント

「誰が・何を・いつやるか」を明文化することが重要


② 安否確認体制の構築

名簿の整備(要配慮者含む)

連絡手段の複線化(掲示・LINE・メール)

班編成(フロアごと等)

👉 個人情報とのバランスに注意


③ 防災備蓄の整備

共用部で備えるべき主な備蓄:

飲料水・簡易食料

簡易トイレ

発電機・蓄電池

照明器具

救急用品

👉 「在宅避難」を前提とした備蓄が基本


④ 建物設備の防災対応

非常用電源の確保

受水槽・給水設備の耐震化

エレベーター閉じ込め対策

排水逆流防止


⑤ 防災訓練の実施

年1回以上が望ましい

内容例:

避難訓練

消火訓練

安否確認訓練

夜間・休日想定

👉 形式的ではなく「実務的」に行うことが重要


⑥ 災害時の意思決定ルール整備

理事長の専決権の範囲

緊急支出の上限

修繕の優先順位

👉 区分所有法改正により今後さらに重要に



4.よくある課題と対策

課題①:住民の参加率が低い

→ 対策:

イベント形式(防災フェア)

子ども向け企画の導入


課題②:防災が後回しになる

→ 対策:

長期修繕計画に組み込む

管理計画認定制度と連動


課題③:個人情報の扱いが難しい

→ 対策:

同意書取得

利用目的の限定



5.今後の方向性|「防災=管理の質」

区分所有法改正の本質は、単なる制度変更ではなく、

👉 「災害に強いマンション=適正管理マンション」

という評価軸の明確化にあります。

今後は以下が重要になります:

防災体制の可視化

管理計画認定制度との連動

資産価値との直結



6.まとめ

区分所有法改正を踏まえ、管理組合が取り組むべき防災は以下の通りです。

 防災マニュアルの整備

 安否確認体制の構築

 備蓄・設備の強化

 訓練の実施

 意思決定ルールの明確化

👉 防災は「コスト」ではなく「資産価値維持の投資」です。



7.管理組合向けチェックリスト

□ 防災マニュアルがある

□ 安否確認方法が決まっている

□ 備蓄品の点検をしている

□ 年1回以上の訓練を実施している

□ 災害時の意思決定ルールがある






《参考》

管理組合 防災マニュアル(例)

第1章 目的

本マニュアルは、災害発生時における被害の最小化および迅速な復旧を目的とし、管理組合・居住者・管理会社の役割と行動指針を定めるものである。


第2章 対象とする災害

本マンションにおいて想定する主な災害は以下とする。

 地震

 火災

 台風・豪雨(水害)

 停電・断水

 その他緊急事態


第3章 防災体制

1.防災責任者

 防災責任者:理事長

 副責任者 :副理事長

 実務担当 :理事・管理会社

2.防災組織(例)

 区分     担当      主な役割

 本部     理事長     指揮・意思決定

 情報班    理事      安否確認・情報収集

 設備班    管理会社    建物・設備点検

 救護班    居住者協力   負傷者対応

3.連絡体制

 緊急連絡網(電話・メール・SNS)

 掲示板・エントランス掲示

 管理会社緊急連絡先

👉 複数手段を確保すること


第4章 災害発生時の初動対応

1.基本行動(共通)

 自身の安全確保

 火災の有無確認

 エレベーター使用禁止

 管理組合への連絡

2.理事会の初動対応

 理事長は対策本部を設置

 管理会社へ連絡

 被害状況の把握

 必要に応じて避難指示

3.安否確認

 各階・各戸の確認

 要配慮者の優先確認

 安否確認結果の記録


第5章 災害別対応

(1)地震

 揺れ収まるまで安全確保

 火元確認

 建物損傷確認

 エレベーター閉じ込め対応

(2)火災

 初期消火(可能な範囲)

 119番通報

 避難誘導

 防火扉の閉鎖

(3)水害・台風

 地下設備の浸水確認

 排水設備の確認

 土のう設置(必要時)

(4)停電

 非常用電源の確認

 エレベーター停止対応

 照明・通信確保


第6章 共用部分の管理対応

1.立入・点検

 災害時には必要に応じて以下を実施する。

 共用部の緊急点検

 専有部分への立入り(緊急時)

👉 漏水・火災等の防止のため

2.応急措置

 破損箇所の養生

 危険区域の立入禁止措置

 応急修繕の実施


第7章 意思決定ルール

1.理事長の専決事項

応急修繕の発注

緊急支出(〇〇万円以内)

立入制限の実施

2.理事会決議事項

大規模修繕の実施

長期的復旧方針


第8章 備蓄・設備

1.備蓄品(例)

 飲料水

 非常食

 簡易トイレ

 発電機

 照明

2.点検

 年1回以上の点検

 使用期限の管理


第9章 防災訓練

 年1回以上実施

 安否確認訓練

 避難訓練

 消火訓練

👉 記録を残すこと


第10章 個人情報の取扱い

 安否確認目的に限定

 本人同意の取得

 適切な管理


第11章 見直し

 年1回名簿等の見直し

 災害発生後の改善

 法改正への対応


別紙① 緊急連絡先一覧(例)

管理会社:

警察:110

消防:119

電力会社:

水道局:


別紙② 安否確認シート(例)

号室    氏名    安否    備考


別紙③ 備蓄チェックリスト

□ 水

□ 食料

□ トイレ

□ 照明

□ 電源


■ 実務上のポイント

「紙+デジタル」の両方で保管

理事交代時に必ず引継ぎ

総会で承認を得ると実効性が上がる