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哲学対話

本/『ファスト&スロー』と哲学対話

2026.04.01 00:21

ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』を読んだ。とても面白かった。バイアスの抑制に哲学対話が効きそうだと思った。

人間はおおむね理性的で合理的な判断をできるが、ときどき、重大な勘違いをする。その原因が「認知的錯覚」で、そうなりやすい思考の傾向を「バイアス」と呼び、バイアスは人の思考の仕組みの性質から発生し避けられない。

そして残念ながら、専門家のダニエル・カーネマン自身が自認しているように、努力によって「認知的錯覚」をなくすことはあまり期待できない。

ただし、企業や団体などの組織で何か意思決定するときは、集団で話し合って検討すれば、経営トップが一人で判断するよりも重大な誤判断は回避できる。

哲学対話でやっている対話は、この経営判断の前段となる話し合いのような効果が期待できそうだ。多面的に物事を考えるのに一人二役三役で、まるで小説家が物語を書くように奮闘するよりは、誰かと1つのテーマについて正直に話し合う方が簡単ということだ。

と理解した。

『ファスト&スロー』は、一般の人の書物としてすべての人にお薦めしたいと、訳者が巻末に書いています。是非、読んでみてください。上下巻あわせて700頁余りなので、時間がかかりますが、全部読むだけの価値はあるでしょう。

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私の理解をもとにした簡単なまとめを以下に記す。

カーネマンが発案者ではないが、脳の思考の働きを「システム1」「システム2」という2つの性質の違う思考の仕組(システム)に分けて考えると、人の判断、選択など思考の性質を理解しやすい。

「システム1」はとにかく素早く結論を出す。基本的に複雑な思考に向いておらず、難問に直面すると、その難問によく似た、よく知っている別の問題に置き換えて、それなりに無難な(難問の回答の代わりになるような)答えを即座に導きだす。取り扱いしやすい質問にすっと置き換える性質を「ヒューリスティック」と呼ぶ。

「システム2」は、慎重に考えるゆっくり思考で複雑な問題に向いているが、怠け者で、「システム1」のように積極的に活動しようとしない。

この本のもっとも重要だと思われる点は、バイアスによって発生する「認知的錯覚」を排除することはできないということだと思う。

「認知的錯覚が排除できない」ということを理解する上でとても参考になるのが、錯視(視覚的錯覚)の事例だ。次の図は「ミュラー・リアー錯視」と呼ばれる図だ。代表的な錯視の例なので、見たことのある人も多いと思う。

二本の同じ長さの平行線の両端に「く」の字型の図形を、向きを変えて組み合わせているだけの図だが、ぱっと見て平行する2つの線分の長さが同じには見えないと思う。定規で測るなどすれば、それが同じであるということは直ぐに確認できるが、数秒目を閉じてから、もう一度見たら、前回と同じように長さは違って見えるだろう。

「錯視」の状態は、あなたがいくら「この2線分は同じ」と思いながら見たとしても、視覚的には長さが違って見えているという感覚を変えることはできない。

「認知的錯覚」もこれと同じように、錯覚する可能性を意識することはできても、錯覚自体を排除することは難しい。視覚とちがい、意識の中の錯覚は定規を当てて錯覚かどうかを確認できない。

錯覚による不適切な判断を回避するには、あなた自身があなた自身のバイアスの傾向を理解し気を付けるしかない。その危険を察知したら、少し慎重に観察して思考することだ。

どのようなバイアスがあるのか、代表例を理解したい人は『ファスト&スロー』を読んでみて欲しい。