“存在を生きる”Beと、機能としてのBeの違い
人の変化を扱うコーチングとして有名なものに、
リチャード・バンドラーらが開発したNLPがあります。
NLPの前提は、「よりよく機能する自分になること」。
思考や言語、イメージを通して自己状態を最適化し、望む結果を実現していくこのアプローチは、現実を動かすうえで非常に有効です。
ただ、そのプロセスを十分に経験した先で、次の問いが立ち上がることがあります。
それは、「どうすればよりうまくいくか」ではなく、
「そもそも、この“自分”という枠組みの中で最適化し続けること自体に、限界はないのか」という問いです。
このとき初めて、自己をよりよく機能させる方向から、自己という枠組みそのものを相対化していく視点が開かれます。
これは、ケン・ウィルバーらの統合理論にも通じる、いわゆる“自己超越”の領域です。
この段階に移行すると、目的は「自己の最適化」から、自我に同一化している構造そのものに気づき、より深い存在の基盤から生きる在り方へと変化していきます。
本記事ではNLPに代表される目標達成型コーチングで扱うBeと、トランスパーソナル領域で扱うBeの違いを整理していきます。
◆一般的な目標達成型コーチングでのBe
NLPを含めた目標達成型コーチングは、「最適な自己状態」を整えるものです。
どのような状態であれば、望む結果を手にすることができるのか。
たとえば、これまでの自己イメージに囚われない目標を設定し、そのための最適な行動を設計し、実行できる自分になる。
また、潜在意識を書き換えやビリーフの変容、セルフイメージを高めるといったアプローチも含まれます。
Be(在り方)→Do(行動)→Have(結果)
どんな在り方でいれば、行動が変わり、結果が変わるのか。
その「在り方(Be)」を整えることで、行動(Do)と結果(Have)を変えていく。
この流れは非常に合理的で、多くの場面で有効に機能します。
ただしその前提には、
「結果を変えることを起点に在り方を設計する」という構造があります。
◆トランスパーソナル的なBe
一方で、トランスパーソナルの文脈でのBeは、まったく異なる意味を持ちます。
それは「すでに在る、変わらない中心」です。
何かを達成するために作る状態ではなく、どんな状況でも戻ることができる基盤です。
この位置からは、構造が逆転します。
Be(存在)
Do(自然に立ち上がる行為)
Have(結果として現れる現実)
ここでは、Doは努力が不要になるという意味ではなく、「達成のための緊張」から「自然な発現」へと変わります。
Haveもまた、追い求める対象ではなく、その延長として副次的に現れるものになります。
◆ふたつのBeの決定的な違い
この二つは、同じBeDoHaveを扱っていても、前提が大きく異なります。
NLPは、外側の結果を基準に在り方を整えます。
トランスパーソナルは、内側の存在を基準に世界と関わります。
・NLP:外側(成果・評価)
・Transpersonal:内側(存在そのもの)
それにより、Beの性質も大きく違います。
・NLP:可変(作る・変える)
・Transpersonal:不変(戻る・気づく)
NLPのBeは、「どう在ればうまくいくか」“設計されるもの”。
トランスパーソナルのBeは、「すでにある場所から生きる」“思い出されるもの”。
この違いは、”コントロールできない”状況で顕著に表れます。
成果前提の在り方は、前提が崩れたときに揺らぎます。
存在前提の在り方は、「揺れても戻れる」在り方です。
◆成果主義から、存在へ
成果主義のなかでは、うまくいかないとき、それは「回復すべき課題」として扱われます。
成果か、回復か。
そのどちらかで自分を定義する視点に縛られてしまいます。
しかし、存在を基盤に立つと、
成果も回復も起きながら、それに規定されない位置に立つことができます。
現実では両方が起き続ける。
ただし、それが「自己定義の軸」ではなくなるのです。
このとき、努力の質も変わります。
何かを達成するための手段としての努力ではなく、在り方から自然に立ち上がる行為へと変わる。
“手段としての緊張”から“自然なエネルギー”に変わるのです。
「どうすればうまくいくか」ではなく、
「どこから生きるのか」
この問いに立ったとき、
Beは「作るもの」から「戻るもの」へと変わります。
結果を生むための在り方から、結果があってもなくても崩れない場所へ。
そしてこの違いに気づくことが、
「成果を追い続ける生き方」から
「存在から生きる在り方」への転換点になります。