海外ダンス遠征中の生活
海外にダンスを習いに行くとき。
あるいはコンペティションで海外に赴くとき。
私の生活は、いたってシンプルだ。
基本的には、日本にいるときとほとんど変わらない。
生活の中心は、やはりダンスだ。
観光をする場合もあるが、基本的には練習の合間や早朝に、徒歩かバス、電車を使って少し街を歩く程度。
いわゆる「観光メインの旅」ではない。
そして、私の海外遠征での生活には、ひとつ特徴がある。
無理に時差に合わせないこと。
もちろん、レッスンやコンペティションの時間はコントロールできない。
その時間には、きちんと身体を合わせる。
だが、それ以外の自由な時間については、あえて現地の時間に合わせようとはしない。
眠いときには寝る。
食べたいときには食べる。
たとえ深夜であっても、お腹が空けば食べるし、昼間であっても眠ければ寝る。
無理に現地の生活リズムに自分を押し込めようとはしていない。
食事も、とてもシンプルだ。
野菜、果物、ヨーグルト、パン、チーズ。
だいたいそんな感じ。
私はもともと、こういう食べ物がとても好きなので、
このような素食で困ることはまったくない。
むしろ喜んで食べている。
ロシア、イギリス、エストニア。
どの国でもチーズやヨーグルトはとても美味しかった。
そして何より、ロシアやエストニアには黒パンがある。
私は、少し酸味があり、どっしりと重たい黒パンが大好きだ。
スーパーで黒パンを見つけると、つい嬉しくなって買ってしまう。
現地の人にしてみれば、きっと何ということのない普通のパンなのだろう。
だが私にとっては、滅多に食べることのできないごちそうだ。
そんなわけで、現地のスーパーで手に入るシンプルな食事は、
私にとっては立派なパワーフードになる。
そして、日本から必ず持っていくものがある。
カップ麺を2〜3個。
紅茶やルイボスティーなど、お湯を注ぐだけで飲めるもの。
そして、ちょっとつまめるお菓子。
日本と違って、そこら中にコンビニや自動販売機があるわけではないので、
こういうちょっとした食べ物や飲み物があるととても便利だ。
わざわざ遠くのスーパーに買いに行かなくてもいいし、
疲れてどこにも行きたくない時もある。
基本、インテンシブを受けに行くときは、
1日6時間ほどスタジオにこもってダンスのトレーニングをする。
そのため、帰宅するころには疲れ果てて、
もうどこにも行きたくない気持ちになってしまう。
そんな時、部屋にカップ麺があると飢えをしのげるし、
温かいものを食べることで少し心が緩むのだ。
今回のエストニア遠征では、時差は日本からマイナス7時間。
コンペティションの出演時間は、日本時間で言うと夜中の1時頃だった。
帰宅する頃は現地時間では夜8時頃なのだが、体の感覚としては日本時間の未明。
長時間フライト、時差、緊張、寝不足。
当然、疲れ果てて身体は限界を超えている。
その日はお風呂にも入らず、ベッドに倒れ込むようにして眠ってしまった。
エストニア滞在中の生活は、だいたいこんな感じだった。
朝9時前にバスでスタジオへ向かう。
6時間のインテンシブを受け、夕方7時過ぎに帰ってくる。
夜ご飯を食べて8時には寝落ちしてしまい、夜中の2時頃に目を覚ます。
そこからシャワーを浴び、髪を乾かし、
ゆっくり朝ごはんを食べたり、日本のYouTubeを見たりして、
またレッスンに出かける。
そんな生活だった。
遠征中は、おしゃれもしない。
ショーやパーティーで特別なドレスコードがある場合はワンピースとパンプスを持ち込むが、基本そのような指定がない場合は、私は動きやすく楽な格好で移動する。
例えばUNIQLOの暖パンやジャージ、フリース、
ウルトラライトダウン、ヒートテックのインナー、Tシャツ。
そしてカバンはいつも使っているバックパック。
足元はスニーカーやペタンコのブーツ。
おしゃれのために荷物を増やしたくないという気持ちもあるし、
常に動きやすい格好で楽に移動したいという気持ちもある。
現地ではほとんど徒歩移動やバス移動なので、
おしゃれをする余裕もないというのも本音だ。
現地の街歩きをするのは大好きだし、写真や動画を撮るのも楽しい。
だが、私には物欲がない。
特に欲しいものがないのだ。
美味しい現地の食べ物を食べることはあるが、何かを買うということはほとんどない。
だが、やはりお世話になった方々へのお土産のことは常に頭にある。
イギリスの時は、そこら中にある土産物屋でロンドンのキーホルダーや紅茶、
その他いろいろ雑貨を買って、皆さんにお渡しすることができた。
しかし今回エストニアについては、何も買えなかった。
というのは、インテンシブを6時間受けた後、
この冬の時期はお店がほとんど開いていなかったし、
ホテルの近くにもそのようなものを買える店は一つもなかったからだ。
一番近いスーパーで徒歩20分ほど。
しかもスーパーといっても、お土産物というのはほとんど置いてなく、
あっても携帯のネックストラップや国旗、ハンドタオル、
あとは現地の子供たちが食べるであろうお菓子くらいだった。
エストニア初日、食べるものを買いに凍った道路を恐る恐るスーパーまで歩いて行った。
あの日、保険のつもりで買った何袋ものキャンディが、結果的に私を救ってくれた。
インテンシブの合間に街歩きをした際は、大抵夜か早朝だった。
夜はもちろん店が閉まっているし、早朝もまだほとんどの店は開いていない。
結局、土産物店が開いている時間に街へ行くことは一度もできなかった。
それなら空港で買おうと思っていたのだが、
現地の飛行機の遅延や、乗り継ぎでのパスポートコントロールの大渋滞などで、
私は常に時間に追われ、空港内を走り回っていた。
そんなわけで、何一つお土産が買えなかったのだ。
初日に買ったキャンディが、なんとか皆さんにお渡しできる唯一のものだった。
だが家族には何もなく、私は仕方なく
関西国際空港で伊勢の赤福をひとつ買って家族に手渡した。
エストニア旅行の土産が、家族には伊勢の赤福だったのだ。
これもまた、今回の遠征らしい出来事だった。