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Bellydance Najm Fukuoka

花びらの旅

2026.04.25 10:15

あの日、毎年恒例の桜の作品撮りをした。


散り、堕ちた花びらの中で。

小雨と晴れ間と、冷たい風が交互に通り過ぎる寒い日だった。


濡れた冷たい地面に横たわりながら、

この世の最後の景色は、この空なんだなと思った。


灰色の厚い雲の隙間に、わずかに見える光と蒼い領域。

それをぼんやりと、虚ろに見ていた。

頭の中はリセットされたみたいに真っ白で、

一瞬、自分が誰なのかわからなくなった。

 

小学生の頃、放課後に先生の片付けを手伝っていたとき、

不要になった紙芝居や絵本をいくつかいただいた。

その中にあったのが、『花びらの旅』という物語だった。


桜の花から風に吹かれ離れた一枚の花びらが、

さまざまな出会いと旅を重ね、

やがて傷つき、ぼろぼろになり、静かにそっと目を閉じる。

子ども心に、命の終わりとは何かを考えさせられ、

読むたびに涙が止まらなかったのを覚えている。

 

あの日、桜の中で撮影をしながら、

私は“花”ではなく、散り堕ちていく花びらに感情移入していた。

 

今年の桜は、もう散り始めている。

気づけば季節は少しだけ先に進んでいて、

私はそのあとを静かに辿っている。

 

散り堕ちた花びらは、終わりではなく、

またどこかへと還っていく。

命は、かたちを変えながら、静かに巡っていく。

 

だからこそ、今しか見えないものがある気がしている。

 

そんなことを思いながら、

私はまた、桜の中に自分を重ねている。

あの日の撮影の時よりも年齢を重ねた私は

人生の中で様々な世界を見、出会いや別れを重ね、ぼろぼろになった花びらに、また少し近づいた気がする。

 

※『花びらの旅』(浜田広介1893年~1973年)

桜の花びらが枝を離れ、風に舞い、やがて海へとたどり着くまでを描いた童話。

散りゆく命と、その先へと続く流れを、やさしく静かに教えてくれた物語。


※2026年4月8日 note記事より